本格的な就職活動が始まりました。さて、ここで質問です。なぜ、就職活動をする必要があるのでしょうか?即答できないあなたは、一度立ち止まって、しっかりと考えることをお勧めします。中途半端な考えで就職活動を始めるとその結果も中途半端になってしまいます。なぜなら、就職活動は自分の考えを誰かに伝えることがとっても多いからです。例えば、「エントリーシートに何を書いてよいかわからない。」「面接で何を話してよいかわからない。」「自分の良いところがわからない。」等 ・・・このように自分の考えが整理されていない状況だと自分の良い部分を誰かに伝える力は半減してしまいます。その誰かというのは、あなたを評価する企業の面接官です。まずは、自分の考えの軸になる「就職活動の意義」を考えてみましょう。さて、繰り返しになりますが、なぜ、就職活動をするのでしょうか?それは、企業に就職するためだと思います。それでは、何のために企業に就職したいと思っているのでしょうか?「お金を貯めるため」「能力を活かすため」「成長するため」「誰かに貢献するため」「社会に貢献するため」等と思う人もいれば、正直、「周りが就職するから何となく・・・」と思う人も多いでしょう。もし、面接官に「この学生はなんとなく就活しているのだろうな・・・」と思われたとしたら、どのように面接評価されるでしょうか?きっと面接官はこう思うはずです。「この学生を採用しても、なんとなく仕事するんだろうな・・・。不合格にしよう。」面接官は、あなたの発言内容や態度からあなたの入社後の活躍を予想して、面接評価していきます。なんとなく就活をしている学生は、自分の考えが整理されていないので、面接官からの質問に対しても、論理的に答えられない傾向があります。会社で仕事をするようになると、普段から論理的な発言を求められるようになります。非論理的な受け答えでは、仕事が効率的に進められないからです。そのことを知っている面接官は、就活生の辻褄が合わない発言を嫌います。これを回避するためには、ブレない自分なりの就職軸を見つけることが重要です。なんとなく考えた発言よりも、就職軸から考えた発言のほうが、断然、論理的になるからです。あなたは、自分の就職軸をもっているでしょうか。次回は就職軸の見つけ方について紹介しますので、是非、参考にしてください。(文:丸山 智士 著書:不安を自信に変える!就活面接【正しい】答えかた/秀和システム)
監査法人で描くコンサルティング・キャリア 【第3回】 公認会計士が集い、監査業務を行っているのが監査法人。そんな画一的なイメージが先行しがちだが、PwCあらた有限責任監査法人では、監査業務を通じて得たリスクマネジメントの知見をコンサルティングサービスとして提供する部門の存在感が増している。それが“守りのコンサルティング”と呼ばれる領域で企業の経営基盤を支える、システム・プロセス・アシュアランス(SPA)部門だ。監査法人の枠を超え、チャレンジングなビジネスを手掛ける同部門の実態に迫る。連載第3回は、同社パートナーの綾部泰二氏に、SPAで手掛けるプロジェクトについて聞いた。――リスクマネジメントという領域は、外からはなかなかイメージしにくい領域です。例えば、どのような案件を扱うのでしょうか? 監査法人という組織が、企業の経営状況を精査し、リスクについて報告することだけを使命にしているとイメージされている方も多いと思います。しかし、少なくともPwCあらたでは、そうした既存イメージの枠を超えた役割を多様に果たし始めています。 特にSPAが担うアドバイザリーの機能においては、単にリスクの抽出と管理を行うだけでなく、その軽減のための対策を具体的に打ち出し、実行に至るまでコミットする役割も担っています。例えば、システム障害が原因となったケースを例にとって、少し詳しくお話ししましょう。 ある企業ではシステム障害が原因となって、事業継続も危ぶまれる状況に陥っていました。早急に障害の要因を特定し、システムを完全復旧せねば、会社は倒産しかねない。そうなれば社員の方々は皆、路頭に迷うことになってしまう――。最大の敵は時間、という状況です。 SPAはITリスクと向き合う専門集団ですから、即座にシステム上の問題点追及を開始。また同時に、なぜ復旧作業が迅速に行えないのかという観点から、組織上の問題点の洗い出しなども進めていきます。役員レベルの階層にも、プロジェクトメンバーははっきりと物申す態度で向き合い、社員全員で事業継続という目標に向かうための共有シートまで作成します。 結果として、事業を健全に遂行できる状態へ切り戻すことができ、この企業は事業継続が叶いました。 ただし、SPAの使命はそこで終わりではありません。なぜ今回のような事態が起きたのか、今後何を留意すべきなのかを全員が認識し、問題意識の共有を維持できるようにするため、仕組みや制度や組織風土まで改善していく取り組みを続けていきます。 ――こうした企業再生を懸けた緊迫感のある現場に立つSPAとは、どんなチームなのでしょうか? リスクマネジメントの番人であり、“守りのコンサルティング”を自認するからには、私たちは今後もこうした企業再生の案件にも向き合っていくことになります。 SPAは単に「ITに詳しい監査の人たち」ではなく、リスクマネジメントのプロフェッショナルとして、企業活動や社会に役立っていこうという理想を持つ集団です。企業活動につきまとうリスクの可能性を探り、問題点を指摘し、改善していくことによって、企業という集団を守り、そこで働く人の生活を守り、社会の営みを円滑にしていく。そんな重大な役割を担うことができるチームなのです。 もちろん 、若手であっても一人のプロフェッショナルとしての成果が求められます。マネージャーやシニアアソシエイトのサポートを受けながらも、個人としてのパフォーマンスの高さから、1人の専門家としてクライアントの信頼を得ている若手アソシエイトも数多くいます。 例えば、情報セキュリティーに関する評価業務において、クライアント側の担当者1名とペアになり、積極的にディスカッションを繰り広げ、プロジェクトを推進しているアソシエイト。また、入社3年目ながら、システムレビューのインチャージ(現場監督者)としてクライアントとのコミュニケーションを管理し、マネージャーの指示のもとでIT全般統制の評価を行っている者もいます。後者については、不備が出た際にも毅然とした態度でクライアントに理解してもらえるまで何度も当該不備の対応を依頼し、結果的にクライアントを動かすことにも成功しています。 ――綾部さんは日頃、20代の若手社員の皆さんにどんなふうに仕事に向き合うことを期待しておられるんでしょうか? 何より も、プロフェッショナルとしてのマインドをもって日々の業務に臨んでもらうことです。 自分がプロなんだという意識は、人から与えられるものではなく、自分で想うものです。また、プロ意識とは自分を支えてくれている360度全方位の人々の期待を理解し、それに応えようとするとともに、そうした人々に感謝することだとも思います。 私たちの仕事は、上司やチームメンバーだけでなく、たくさんのバックオフィスの方、ひいてはクライアントの方など、さまざまな期待に支えられて成立しています。その期待から逃げず、また支えてもらっていることに感謝しながら業務に向き合うマインドをぜひ持ってほしい。正直、専門性は後から付いてきます。でもマインドだけは、自分が意識して確立しなくてはならないものです。 20代のうちに、こうしたプロフェッショナルとしての土台を築くことは、とても重要だと考えています。 ――若手であってもプロフェッショナルとして重要な役割を担っていく環境の中、どのような成長を実現できますか? いわゆるITコンサルは、目に見えている課題の達成にITを使う存在。私たちITリスクコンサルは、ITを多用する現代企業に向け、目に見えない不確実なリスクの可能性を示し、「転ばぬ先の杖」になることで貢献するのが仕事。前者よりも遥かに高度な専門性と多様性を培うことができます。 もちろん、会計や業務やITなど、多様な領域に関わる専門知識やスキルの多様性が私たちには必須ですが、それらはPwCあらたの育成プログラムやネットワーク、そして多数のプロジェクトで獲得できる知見によって醸成していくことが可能です。 また 、組織内の職階ごとの役割で見ると、メンバー時代はアサインされた案件で与えられたミッションを全うすることがまず求められ、マネージャーになると案件の獲得からチームメンバーのアサインのほか、組織運営・人事評価なども行うようになります。 昇進の考え方としては、“卒業基準”ではなく“入学基準”方式です。例えばアソシエイトなら、アソシエイトとして期待されることをすべて完璧にできるかどうかではなく、シニアアソシエイトとして期待されることを実施できるかどうかを見ていくということ。常に次のステップを意識した仕事の仕方が求められます。 ただし、成長スピードやレベル感などは、それこそメンバー一人一人、千差万別です。私たちが既定路線を描いて押し付けるものではなく、最終的には本人のキャリアに対する考え方次第ですし、私たちはそれを尊重したいと考えています。 ―――最後に、綾部さんが目指すSPA部門の今後のビジョン についてお聞かせください。 私としては、先の例などの体験からも痛感したのですが、人としての多様性、チームとしての多様性を今よりもさらに引き上げていきたいと考えています。多様な人材が集い、オープンなディスカッションを通じて互いを高め合っていく現在の風土をさらに充実させて、既存の監査法人の枠を超えるような役割でも成果を上げていきたいと望んでいます。 強い向上心と、当事者意識とを持って、数々のプロジェクトで成果を上げ、それによってチームとしての多様性も引き上げていく。そんな使命を背負うSPAに魅力を感じてくれる人材が増えていくよう、今後も皆で努力を重ねていきたいと思います。 (取材・文/森川直樹、撮影/大島哲二)
監査法人で描くコンサルティング・キャリア 【第2回】 公認会計士が集い、監査業務を行っているのが監査法人。そんな画一的なイメージが先行しがちだが、PwCあらた有限責任監査法人では、監査業務を通じて得たリスクマネジメントの知見をコンサルティングサービスとして提供する部門の存在感が増している。それが“守りのコンサルティング”と呼ばれる領域で企業の経営基盤を支える、システム・プロセス・アシュアランス(SPA)部門だ。監査法人の枠を超え、チャレンジングなビジネスを手掛ける同部門の実態に迫る。連載第2回は、転職を経て同社へ入社した佐藤要太郎氏に、SPAならではのビジネスの面白さについて聞いた。――大手シンクタンク、総合系コンサルティングファームでキャリアを重ねていらした佐藤さんから見て、PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)のシステム・プロセス・アシュアランス部門(以下、SPA)の仕事の面白さとは何でしょうか? 会計、IT、ビジネス(業務)という要素と向き合い、企業経営に潜むリスクを見つけ出し、管理して、課題解決を導いていくのがSPAの仕事です。一見、私が前々職や前職で担ったミッションに似ているようにも見えますが、決定的な違いがあります。それは「徹底した外部からの目線」、つまり「世の中目線」でクライアントの業務やシステムを精査し、信頼の醸成を第一の使命とする点です。 私はもともと、社会と自分とがどうつながっているのか、確かな手応えを感じながら生きていきたい、という思いが強い人間なんです(笑)。だからこそ、世の中からの信頼性を醸成する、PwCあらたの「ビルド・トラスト」という使命にはとても共感しました。現職への転職を決めた最大の理由も、ここにあります。 前職で私は大規模なシステム構築プロジェクト等を担当し、そのプロジェクトが円滑に効率良くゴールに到達するようPMOと言われる役割を実践しながら、企業経営陣の意思決定にも提案をする立場でした。 そこで直面したのが「外部からの目線」の重みです。企業経営陣は、単に「自社のプロジェクトがうまくいくことだけ考えていればいい」のではありません。例えば株主やエンドユーザー、そのビジネスに関わる規制当局といった、外部のさまざまなステークホルダーからの評価を意識しながら、経営の意思決定をしていかなければいけない。 その判断は非常に高度で難解であり、多くのCxOと呼ばれるチーフ・オフィサークラスの経営陣が悩む姿を目の当たりにしていました。SPAの仕事は、まさにそうした経営陣に寄り添い、同じ視点で課題解決に取り組める点が大きな魅力だと思っています。 極論すれば、経営陣に「変革をしましょう。そのためのソリューションはこれです。共に成し遂げましょう」と提案するのがコンサルタントで、「変革に向けた新たなチャレンジには、こういうリスクが想定されます。それを回避する解決策はこれです。さて、チャレンジを決断しますか?」と問い掛けるのがSPAです。 現代の経営者の多くは「リスクテイクをしてでもチャレンジをしないと生き残れない」という危機感を抱いています。そうした経営者に対して、SPAは客観的な視点を持ったリスクマネジメントのプロフェッショナルとして、想定されるリスクとその解決手段を提示し、意思決定のサポートをしていきます。 ――リスクの提示によって、企業の新たなチャレンジを止めることにはなりませんか? リスクとは基本的にはネガティブなもの。一見、そう受け取られるかもしれませんね。ですが、むしろ逆なのです。 ネガティブな「変動可能性」をマネージし、強固な守りを築くのがリスクマネジメント。守りを固めていくことで、新たな挑戦の成功可能性を引き上げ、むしろ企業の変革スピードを加速させることができるのです。企業が継続的に前進するために、堅牢な土台を創ることがSPAの最大のミッションだと考えています。 もともと、企業の活動を阻害するようなリスクの可能性を察知し、それに立ち向かうための備えができているかどうかを判断するのは、監査法人の重要な仕事です。SPAではさらにその一歩先まで踏み込み、「このリスクの可能性を排除するために、具体的にこういう備えをしませんか?」という提案を先んじて行うことも多くあります。 リスクマネジメントは“守りのコンサルティング”と呼ばれる領域ですが、決して受身でいるわけではないんですよ。 ――例えば、どのような提案をしているのでしょうか? 具体例を挙げましょう。国連が近年提唱している災害リスク管理のプラットフォーム構築を行う『R!SE(ライズ)』(※1:関連情報) という取り組みがあります。 リスクレジリエンス(※2:関連情報)と呼ばれる領域ですが、SPAのパートナーには、この分野の第一人者がおり、先鋭的なリスクマネジメントを望む企業に対し、その可能性を提示したりもしています。 SPAには、自分で案件を取ってきてチームをアサインし、自ら主導してプロジェクトを動かしたい、と考えている若手社員たちがたくさんいます。自分の提案が世の中に流通していくことにモチベーションを感じる社員が多いですね。 私自身も現在、デジタルトランスフォーメーションに対応した新サービスを企画中で、上司であるパートナーに相談しながら、クライアントへの提案準備を進めています。とても思い入れのある企画なので、絶対実現させたいと思ってるんですよ。 ――佐藤さんは理系出身で、前職でもシステム開発に携わっておられました。SPAの仕事でも、ITの知見が必要とされると聞いています。新卒入社でも、やはり理系出身者の方が有利なのでしょうか? 正直なところ、大学で何を学んでいたかというのは、SPAではあまり関係ないと思っています。 SPAの仕事でも、プレゼンや報告書作成などの論理的な説明が必要とされる場面では理系の発想が役に立つこともあるでしょうし、クライアントのCxOクラスなどとディスカッションをする局面では文系人材が得意だとされているコミュニケーションスキルが問われます。結局、理系・文系のどちらの特性も必要ですし、そもそもほとんどの人間が現場の仕事を通じて専門性や汎用性を高めているのが現実ですから、あまりそこは意識しなくてもいいと思います。 ただ、理系学生の多くは、「監査法人に自分の知見が活かせる場などあるはずがない」という認識ではないかと思うのです(笑)。そうした意味では、先ほどの意見と相反するようですが、SPA部門であれば理系バックグラウンドも大いに活かせますから、先入観でキャリアの選択肢から外すことはしないでほしいですね。 SPAにいる人材のバックグラウンドは凄まじく幅広いんです。 PwCあらたには、当然のことながら会計のエキスパート、監査の達人、ITのスペシャリスト、業務や経営の専門家など、多様な人材が在籍していますし、PwCグループ全体で見れば、攻めのコンサルもいれば、税金や法律の専門家などもそろっています。独特の多様性がチームにも個人にも蓄積された環境です。 「自分は理系だから」とか「文系だから」という単純な発想で私たちの存在を圏外に置いてしまうのではなく、興味を持って見てくれたらうれしいですね。 ――そうした多様性溢れる環境の中で経験を積むことで、どのような成長が実現できますか? 特にSPAは、企業と社会との結び付きというものを大局的に見る力と、システムや業務を細かに見つめていく専門性というのをグッドバランスで磨いていける点が魅力です。ITベンダーやコンサルとの大きな違いもここにあると思っています。 経営の意思決定をサポートするためには、経営層に対し、システム・業務プロセス・組織・データ分析など、企業経営のあらゆる領域に潜むリスクを洗い出し、その解決手段までを提示していく必要があります。ITの専門性も、ビジネスや業務についての深い理解も求められますが、クライアントが私たちに求めるのはあくまでも同じ視点で経営を語ること。決して、いち分野の専門家であれば良いわけではないのです。 クライアントが組織の中でITをどう活用して事業を進めているかを深く理解し、会社の実情を大局的に把握することが求められますが、私はそれこそが一番面白いと思っています。 世の中のメガトレンドを先取りして、その知見を企業経営に活用してもらう。その領域がリスクに関わるため“守りの”という呼び方をしていますが、先ほども申し上げたように、私たちは前向きな経営に役立つ新しいことを、どこよりも早く吸収し、その活用を推進する立場にもいます。 だからこそ、学生の皆さんには偏見を捨てて、もっと私たちを知ってほしいと願ってもいるんです。変化が激しい時代だからこそ、“守りのプロ”への期待はどんどん高まっていますし、どこよりも新しいことに積極的にトライしているのが私たちだと自負しています。 (取材・文/森川直樹、撮影/大島哲二) =関連リンク= ■ビジネスパーソンの3種の神器「IT・会計・英語」が磨かれる、企業の“リスクマネジメント”というフィールド (監査法人で描くコンサルティング・キャリア 第1回) ■大手監査法人が新卒採用を積極展開中! リスクマネジメントという“守りのコンサル”で新たなキャリアの可能性
監査法人で描くコンサルティング・キャリア 【第1回】 公認会計士が集い、監査業務を行っているのが監査法人。そんな画一的なイメージが先行しがちだが、PwCあらた有限責任監査法人では、監査業務を通じて得たリスクマネジメントの知見をコンサルティングサービスとして提供する部門の存在感が増している。それが“守りのコンサルティング”と呼ばれる領域で企業の経営基盤を支える、システム・プロセス・アシュアランス部門だ。監査法人の枠を超え、チャレンジングなビジネスを手掛ける同部門の実態に迫る。連載第1回は、スピード感を持って成長を遂げている若手社員たちに話を聞いた。――お2人が所属するシステム・プロセス・アシュアランス(以下、SPA)部門はPwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)が推進する“守りのコンサルティング”の最前線だと聞いています。具体的にどのようなお仕事を担っているのでしょうか? 糸久祐子氏(以下、糸久) 監査法人が担う役割は、市場の番人として、クライアント企業の実情をしっかりととらえ、経営やビジネスプロセスにおけるリスクおよび課題を明確にすることで、高品質な監査を実施し、クライアントの永続的な発展に寄与することです。 SPAはその名前が示す通り、システム・業務プロセス・組織・データ分析の領域において、内部統制監査を通じて得た知見を活かして、保証業務のみならず、経営課題解決のためのアドバイザリーサービスも提供している部署となります。 下城未月紀氏(以下、下城) ビジネス領域におけるIT技術の導入は急速に進んでいますので、監査法人においても情報システムに関わる知見はどんどん重要性を増しています。 今はITを深く知る存在がなければ、企業の実情を正しく把握することも不可能な時代。SPAはまさにこの分野に特化したチームなんです。 糸久 ITの価値は、ともすると売上の増進や事業の確立など、経営の“攻め”の部分で語られがちだと思うのですが、例えば日々の業務を着実にこなしていくための業務システムや、経営の根幹を担う会計システムにも複雑多様なIT技術が用いられています。 そこに潜むリスクや課題を早期に把握して、改善すべきものは改善していくこと、つまり“守り”の部分でのIT強化もまた事業会社には強く求められています。 経営における“攻め”の領域ではコンサルティングのプロフェッショナルが、そして“守り”の領域ではリスクアシュアランスの担い手である監査法人が機能していくことで、企業の成長や競争力向上に貢献していけるのです。 下城 PwCグループにはPwCコンサルティング、PwCアドバイザリーが存在し、主に“攻め”の領域で価値を提供していますが、“守り”の領域での価値提供を期待していただいているのが私たちPwCあらたであり、SPAはとりわけITにおける“守りのコンサルティング”を提供しているわけです。 ――監査法人の仕事というと、どうしても公認会計士をはじめとする数字のプロフェッショナルが企業の経営を監査していくもの、というイメージが強いのですが、SPAではITに関する知見が強く求められるわけですね? 糸久 ビジネスの根幹となる会計と業務プロセス、そしてITを見ていくのが私たちの使命です。 私自身は、学生時代からずっと会計の領域に軸足を置いて自分のキャリアを築いていこうと考えておりましたが、ITについても強い関心を持っていました。 そのため、就職活動の際にPwCあらたのSPAの存在を知った時には、大いに魅力を感じました。ここでなら、ビジネスパーソンの三種の神器と言われている「IT・会計・英語」のすべてを身に付け、プロフェッショナルとして成長していくことが可能だと思い、入社を決意しました。 下城 私と糸久は同期入社で現在4年目なのですが、SPAの新卒採用第1期生でもあります。 ビジネスの世界でどんどんIT化が進む中、監査法人として情報システムに注力していくチームの存在に、私もまた強く惹かれて入社することを決めたんです。 “守りのコンサルティング”を自認する以上、会計ばかりでなくITやクライアント企業の多様な業務プロセスを理解していなければいけません。学ぶべきことは非常に多いのですが、その分、ほかでは経験できない成長や達成感を手に入れることができています。 ――SPAのメンバーが多くの学びを必要とすることは理解できたのですが、お2人は当初から会計以外の分野についても学んでいたのでしょうか? 下城 実際の業務では、例えばクライアント企業が用いているシステムの中身をチェックしたり、プログラミングを自分でも実行していく局面があります。 監査法人がそこまでITに精通する必要があるのか、と驚かれることもあるのですが、もともと私も糸久も、ITについてはゼロからのスタートでした。 糸久 先ほど三種の神器のお話をしましたが、入社時には「現時点で高度な知識や経験を持っていなくてもいい。大切なのは向上心だ」と明言されました。 今になって振り返ってみれば、自分でもその通りだと思います。下城ともよく話をするのですが、今の仕事で用いている知見の大部分はPwCあらたの一員になってから吸収したものばかりです。 勉強は重要だとは思いますが、学生時代の知識よりも、実際に働いて、現場で学び取っていくことの方がずっと大事ですし、当社は向上心を持って臨めば多くのインプットが得られる環境だと感じています。 下城 先日も糸久とランチでつくづく話したんです。「入社前のイメージと、入ってからの実像の間にまったくギャップがなかったよね」と(笑)。 ――入社前のイメージ通りだった、というのは、例えばどのような部分ですか? 糸久 例えば面接などを通じて「風通しの良い職場だ」という話を聞いていました。実際に入ってみると本当にその通りで、年齢や職階に関係なく意見を尊重される“Speak up”のカルチャーが根付いていたんです。 若手の発言を職階が上の人間が積極的に取り上げてくれる。こういうことが「風通しの良さ」の本質なんだ、と入社して改めて実感しました。 下城 監査という業務の性質上、日々の仕事において、一つ一つの事象にきちんと判断を下し、その判断の根拠を明確に伝えることが求められます。「どっちでもいい」という曖昧な判断はあり得ません。 “Speak up”のカルチャーは、自分の意見をはっきりと持ち、なぜそう考えたかという理由を伝えることを習慣付けてくれますから、実業務にもとても活きていると思いますね。 糸久 SPAでは1つの案件に対して、少なくとも最高責任者・管理職・現場責任者の三者を立て、プロジェクトを進めていきます。早ければ2年目から現場責任者を任され、クライアントとディスカッションをする機会も数多くあります。 会計、IT、ビジネスプロセス、リスクマネジメント等、多様な学びを進めていきながら、同時に若手であっても一人の専門家としてクライアントの管理職クラスと対峙することになるわけですから、大変といえば大変です(笑)。 下城 でもそれが醍醐味でもあります(笑)。 糸久 もちろん、チームにはさまざまな領域に精通したエキスパートの先輩や上司がいますから、その背中を見て学び、相談に乗ってもらいながら成長していくことができます。 当社にはあらゆる業種のクライアントが存在し、それぞれの企業でリーダーを務める「この道何十年」という管理職の方々と対峙していくわけですから、毎回のように緊張もします。しかし、早い段階で高い視点を身に着けることができるからこそ、SPAのメンバーは急速に成長していけるのだと思います。下城 早い段階から責任ある役割を任せてもらえる、というのはとても大きな喜びです。それがあるから、責任を果たすために、精力的に学んでいこうという気持ちにもなります。 向上心さえあれば、学びのプログラムも豊富にあるし、PwCというグローバルなグループが持つ知見や人的ネットワークを活用して、幅広く学びを得ることができますから。 糸久 クライアントとの間で議論が分かれるようなタフな局面もあります。 「どこにリスクがあるのか」「それは本当にこの会社にとってリスクなのか」「もしもリスクなのだとしたら、クライアントにとってどう対処するのがベストなのか」等、判断が求められるケースは無数です。 もちろん、こちらの提案についてディスカッションを重ねていくことも数多くありますが、そうした過程を共にした結果、クライアントの皆様に納得と満足をしていただけた時には言葉では表現できない喜びが待っています。 下城 「次もまたあなたに担当してほしい」と言っていただけた時には、本当にこの仕事をしていて良かったと感動しますよね。 ――最後にお2人の今後について聞かせてください。どのようなキャリアビジョンや目標を持っていますか? 糸久 私は就職活動の時から「なりたい自分」を明確にして、それを目指せる場に参画したい、と考えていました。 そうして選択したのがPwCあらただったわけですが、私にとっての「なりたい自分」とは、”自身の成長に責任を持つ”プロフェッショナルとして常に成長し続け、人生のイベントで仕事を離れる時があったとしても、また仕事をしたいと思った時に必要とされるような人財になることです。 監査やITに関わる仕事をする女性は少数派だ、というイメージが今でも世の中にはあるようですが、少なくともここは違います。尊敬できる女性の先輩や上司が多数いますし、そうしたロールモデルから吸収できることがたくさんあります。 また、SPAではIT知識や特定の業務領域など、専門性を磨くことができるので、自分ならではの価値を高めていくことが可能です。育休等でブランクが空くことがあっても、きっと必要としてもらえるプレイヤーへ成長していけると確信しています。 そのためにも、今後は最新の知見や技術を学び続けながら、自身の強みを養うことでプロフェッショナルとして成長していきたいと考えています。 下城 私は就職時には、なりたい将来像がはっきりしていませんでした。でも今は少しずつ見えてきた気がしています。 SPAでは、個としてプロフェッショナルに成長していくことが求められますから、「個人事業主の集合体」と表現されることがよくあります。しかし、だからといって仕事の仕方が個人プレーばかりというわけではありません。チームでタッグを組んで戦っていく局面ももちろんあります。 最近になって、こうした個の力を最大化し、高いパフォーマンスを挙げられるチーム作りに貢献したいという思いを持つようになってきました。私自身、まだまだ個としての力を磨いていかなければ、と考えてはいるのですが、将来のために少しずつマネジメント力も鍛えていけたらと思っています。 自分らしいと思える、将来のビジョンが描けるようになったこと。それが私にとっての一番の成長なのかもしれませんね。 (取材・文/森川直樹、撮影/大島哲二)=関連リンク= ■大手監査法人が新卒採用を積極展開中! リスクマネジメントという“守りのコンサル”で新たなキャリアの可能性
就職マーケットニュース 新卒採用市場の最新動向や旬のトピックを紹介。今採用意欲が高まっている業界・職種、社会的注目を集めている新たな採用手法や就職支援サービス、学生の就職動向など、多岐にわたるテーマに迫る。外的環境を理解し、自分らしい就活スタイルの確立に役立てよう。 ヤフー株式会社は、2016年10月3日より新卒一括採用を廃止し、通年採用の実施に踏み切った。 新卒、既卒、第二新卒など、経歴に関わらず30歳以下であれば応募できる「ポテンシャル採用」を新設。エンジニアやデザイナー、営業職など全ての職種を対象に、年間で300名程度を採用予定とした同社の発表は、各種メディアで報道され、話題を集めた。 しかし実際、“通年採用”とは学生にとってどんなメリットがあるのだろうか? ニュースを目にしたことはあっても、自分事として捉え、具体的に活用の仕方をイメージできている学生は少ないだろう。 2017年4月、ヤフーはポテンシャル採用における初の選考通過者となる新卒入社組をすでに迎え入れており、2018年4月以降の新卒入社者は、全員がポテンシャル採用枠となる。 いよいよ本格稼働フェーズへと移行する同社の通年採用。その背景と実態を探ると、就職活動の本質が見えてきた。 なぜ、皆一律に同時期から就職活動を始めねばならないのか? 日本固有の新卒一括採用システムに疑念を抱いたことのある学生も少なくないはずだ。 通年採用は、そんな旧来の価値観に一石を投じる施策であることは間違いない。ここ数年、ファーストリテイリング、ソフトバンクなど、通年採用に切り替える企業は増えつつあるとはいえ、全体で見ればまだ少数派。今後、拡大が見込まれるものの、今はまさに過渡期だ。 こうした中、ヤフーが通年採用へのシフトを決断した理由を、同社クリエイター人財戦略室の金谷俊樹氏はこう語る。 「大学院生は研究で忙しい時期と就活シーズンが重なってしまったり、留学生は帰国する頃には企業のエントリーがもう締め切られていたり。タイミングが合わず、思うように就職活動ができない学生が年々増えてきています。通年採用によって、こうした個々のニーズに応える体制を整えたいと考えたことが一番大きな理由なんですよ。学生の皆さんには、安心して勉強に励んでほしい。そう強く思っています」 実際、2017年4月入社および10月入社予定の新卒者たちは、院生や海外留学生たちが多くを占めている。また、第二新卒の応募者も増えているという。 「短い就活期間の中で一生働きたいと思える会社を選ぶのは難しいことです。自分に本当に合う仕事や会社とはどんなものか、働いてみて初めて分かることもあるでしょう。第二新卒応募者の大半は、就活時には当社を受けていなかった方です。当時は気付けなかったけれど、働き始めて改めて当社の仕事の面白さを見いだしてくれた方もいるのではないでしょうか」(金谷氏) 同社が目指す、優秀な“人財”を採りこぼすことのない柔軟な採用体制は、すでに一定の成果を上げ始めているといえそうだ。 一方で、通常の就活スケジュールに則って動く大半の学生たちにとって、通年採用は異文化でしかない。通年採用を実施している企業とは、つまり“いつ受けてもいい会社”でもある。となれば、エントリー期限のある、今しか受けられない企業を優先する流れになってしまう。通年採用実施企業が割を食う形にならないのだろうか? 「確かにその懸念はあります。だからこそ、私たちは自社の仕事内容や働く人、風土などをもっと理解していただけるよう、努力をしていきたいと考えています。具体的には、採用HPを刷新して情報量を増やしたほか、昨年から『linotice(リノティス)』というブログメディアの運営もスタートし、年間を通して継続的に当社の情報を発信することに積極的に取り組んでいます。また、当社のテクノロジーの高さや、保有する膨大な量のビッグデータを活用したビジネスの広がりに触れていただく機会を増やすため、サービス開発体験インターンシップの拡充も図っています」(金谷氏) エントリー解禁のタイミングで情報公開を強化する企業群に対して、短期集中の情報戦では伝えきれぬ自社のスケール感を、年間を通して打ち出していく戦略だ。 同社が目指すのは、「情報技術を使って人々や社会の“課題”を解決し、日本をアップデート」(金谷氏)すること。そのビジョンをより具体的に体感してもらえる場として、インターンシップには特に力を入れているという。 「当社の場合、サービス認知度の高さに比べて、扱っている技術領域やビジネス構造が見えにくい部分があると思っています。インターンシップで実務を通して技術に触れてもらうことで、学生の方に自分が学んできた技術がどう当社のサービスと結び付くのかを、具体的に理解してもらえる。また、客観的に自分の技術の汎用性を知る良い機会にもなると思います」(金谷氏) ヤフーをはじめ、通年採用実施企業の多くがインターンシップを積極的に開催している。就業体験を機に、インターンシップ開催企業で働くイメージが湧いた場合、通年採用ならばいつでも門戸が開かれているため、スムーズに選考に進めるというメリットもある。 就活シーズンの限られた時間の中で、複数の企業を比較検討する。それは、相対評価による取捨選択を招き、少なからずミスリードが生まれるリスクがある。通年採用は、絶対評価で第一志望を選び取るという、就職先選びの本来の形に添うものだ。 「通年採用は、『行きたい』と思った時にいつでも応募ができる、シンプルなシステムです。入学してすぐに社会人になった後の目標を具体化したい人もいるだろうし、学業に専念して学生生活を全うした後に自分の知見を活かせる場所を選びたい人もいる。そうした学生の方の多様なライフスタイルに向き合える体制だと思っています」(金谷氏) 社会や組織の歯車になることを忌み嫌いながら、就活は周囲と同調して「時期が来たから」という理由だけで始めるなんてナンセンスだ。一括採用実施企業の採用スケジュールに合わせて意思決定するのではなく、「こんな大学生活を送りたい」「こんな社会人になりたい」という自分の都合で、意志を込めて自分で就活スタート時期を決め、スケジューリングするのが本質ではないだろうか。 自分の人生は、自分でコントロールし、舵を取るのが筋だ。就職という大きな人生の決断こそ、主体的であるべきだろう。生き方の選択は、もうすでに始まっている。 (取材・文・撮影/福井千尋[編集部])
就職マーケットニュース 新卒採用市場の最新動向や旬のトピックを紹介。今採用意欲が高まっている業界・職種、社会的注目を集めている新たな採用手法や就職支援サービス、学生の就職動向など、多岐にわたるテーマに迫る。外的環境を理解し、自分らしい就活スタイルの確立に役立てよう。 大手監査法人各社で新卒採用意欲が高まっている。中でも、PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)は、2019年度卒採用人数を前年の倍に引き上げる方針だという。 なぜ今、監査法人が採用に積極的なのか? その背景には、日本のビジネス環境の変化が大きく影響している。就活生にとって、新たなキャリアの選択肢となり得る、監査法人が持つ意外なビジネス領域の広がりを読み解いてみたい。 「監査法人の新卒採用対象というと、公認会計士の有資格者または資格取得を目指す人材のみをイメージされがちですが、大きな誤解です」 そう語るのは、PwCあらたでパートナーを務める岸泰弘氏だ。その真意を汲み取るには、まず『Big4』と呼ばれる四大会計事務所の業務領域を理解する必要がある。 Big4とは、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)、デロイト トウシュ トーマツ(Deloitte)、アーンスト・アンド・ヤング(EY)、KPMGのこと。会計・監査・税務・コンサルティングなどのサービスを提供する総合プロフェッショナルファームだ。 本拠地を置く欧米では、監査とコンサルティングはファームの一機能として集約されているが、日本では法令に従ってコンサルティングと監査は別法人として存在している。 「したがって日本においては、PwCあらた有限責任監査法人、PwCコンサルティング合同会社、PwCアドバイザリー合同会社、そしてPwC税理士法人等の複数の法人が存在します。そのため、監査法人は会計監査だけを行っていると思われがちですが、監査はPwCあらたが手掛けるビジネスの一角でしかありません。“守りのコンサルティング”ともいうべきアドバイザリー業務が重要な事業の柱となりつつあります」(岸氏) PwCコンサルティングが提供するのは、主に売上構築や事業拡大を目的としたビジネス戦略を策定する、いわば“攻めのコンサルティング”。一方、PwCあらたが仕掛けるのは、業務プロセスやコンプライアンス管理に係る組織体制など、企業のビジネス周辺に潜むリスクを洗い出し、未然に防ぐ“守りのコンサルティング”だ。 「多くの企業で業務のあらゆるプロセスがIT化されています。当然、会計監査を行う上でも、顧客企業が導入している会計システムや、そこにつながる業務システムが正しく活用されているかどうかをレビューする必要がある。こうした監査業務を通じて得たリスクマネジメントの知見を、コンサルティングサービスとして提供しているのです」(岸氏) この“守りのコンサルティング”を展開しているのが、岸氏が率いるシステム・プロセス・アシュアランス部門(以下、SPA)だ。 企業経営をする上で、利益最大化を実現するためには、「新たな利益を生み出すこと」と「利益を失うリスクを減らすこと」は常にワンセットで考える必要がある。欧米ではすでにこのスタイルが根付いているが、ビジネス環境のグローバル化やITの導入・活用が進んだことを背景に、日本の企業経営も欧米型へシフトしているという。 「大規模システム開発時のコスト・納期・品質の担保、自然災害やテロ攻撃など有事の際のBCP(事業継続計画)立案、情報漏えいやサイバー攻撃を防ぐセキュリティ対策など、IT化に伴い、企業の外部・内部に潜むリスクとその対策は多様化しています。これらのリスクを未然に防ぐため、外部に知見を求める企業が増えており、当法人のSPA部門で請け負う案件も拡大しています」(岸氏) 例えば、大手金融機関の巨大ITプロジェクトの進捗を第三者としてモニタリングし、遅延リスクを調査する案件。設計済みのBCPをチェックし、有効化するためのアドバイスを提供する案件。企業が抱えるリスク・アセスメントを洗い出した上で、導入済みのサイバーセキュリティー対策が適正かを評価する案件など、SPA部門が取り扱う領域は多岐にわたる。 「日本経済全体は拡大しているとは言いがたいですが、リスクマネジメント分野のマーケットは確実に伸びています。だからこそ今、SPA部門の組織拡大に着手しており、新卒採用にも力を入れているのです」(岸氏) SPA部門では、これまで即戦力重視で中途採用者を主軸に組織作りを進めてきた。経理、営業など、企業経営のあらゆる業務プロセスに習熟した人、ITに通じたエンジニア出身者など、さまざまな専門領域を持つ人材が集う組織へと成長した今、中長期的な発展を目指し、新卒入社者の受け入れを強化している。 「一昨年から実施しているインターンでは、架空の企業の新規ビジネスに対するリスクを特定し、その対応策を提案するプログラムを提供しています。この企画が非常に好評で、参加をきっかけにリスクマネジメントの仕事の面白さに気付き、志望してくれる学生の方も増えつつあります。業務プロセスの深い理解とIT知識という2軸の専門性を磨くことで、ビジネスを俯瞰し、全体把握できる汎用性の高いスキルを得ることができるのが、この仕事の醍醐味だと思っています」(岸氏) 監査法人が持つ特性を、「インディペンデントであること」と岸氏は語る。 どこにも依存しない、独立した存在であるからこそ、企業が有するあらゆるビジネスプロセスを第三者として評価・保証し、結果、企業に“社会的信頼”という大きな価値を提供することができる。 「いまや社会的信頼なくして企業のビジネス成功はあり得ません。企業の経営基盤を支え、より良い社会を創るために、ITガバナンスとビジネスプロセスの知見をベースに、できることはすべて提供していくのがPwCあらたの姿勢です」(岸氏) 監査法人は今、監査という枠を超え、さまざまなチャレンジを仕掛けるプロフェッショナル集団へと進化している。 “守りのコンサルティング”の重要性がますます問われていくこれからの時代、社会貢献性の高い仕事を志望する学生たちにとって、新たなキャリアを築ける、最高にエキサイティングなフィールドがまた一つ登場したといえそうだ。(取材・文/浦野孝嗣 福井千尋[編集部]、撮影/大島哲二)=関連リンク= ■ビジネスパーソンの3種の神器「IT・会計・英語」が磨かれる、企業の“リスクマネジメント”というフィールド