2022/9/21 更新

アビームコンサルティング株式会社

公共セクターへの改革支援で圧倒的強さを誇る

アビームコンサルティングの「成果にこだわる」

社会課題への貢献

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さまざまな社会課題の解決に向けて、公共分野でのコンサルティングニーズが高まっている。多くのファームが公共セクターへの支援を行う中、圧倒的な強さを誇るのがアビームコンサルティングだ。コンペの勝率は90%を超えるという。

その強さの背景には何があるのか。公共ビジネスユニットの執行役員2名に聞いた。

この記事の前半では、公共ビジネスユニット長の松田智幸氏のインタビューより、「アビームが支持される理由」について探る。

後半では松田氏と、同社執行役員の織田美穂氏の話から、公共セクターの改革支援の具体的な事例を紹介する。

  • アビームコンサルティング株式会社
    公共ビジネスユニット長 執行役員プリンシパル
    松田智幸
  • 公共ビジネスユニット 執行役員プリンシパル
    織田美穂

「社会課題の解決」ができなければ、成果とは言えない

公共ビジネスユニットは、国の中心である中央省庁や全国約1700の地方自治体、独立行政法人や第三セクターなどの公的機関、大学や教育委員会などの文教分野や医療分野に対するコンサルティングを提供しています。

デジタル・ガバメントの実現や、急速に進展する少子高齢化への対策、災害の激甚化が進む中での国土強靱(きょうじん)化推進など、公共領域はさまざまな課題に直面しているのが現状です。

行政に携わる人々は「日本のため、地域のため」という志を持って仕事に向き合っています。社会構造の大きな変化を目の当たりにし、「変わらなくてはいけない」という強い危機感を持っているのです。

一方、難易度の高い課題に対応すべく、行政サービスは多様化し、極めて複雑になっています。職員の数が限られている中、日々のオペレーションをこなすだけで手一杯。

だからこそ、課題を分析し、ビジョンや企画の立案、変革する部分に、われわれのような専門家が求められているのです。

とはいえ、公共部門の仕事には独自の難しさもあります。主に税金を財源とする公共分野のプロジェクトでは、公平中立に企画コンペが行われるのが基本。

厳しい競争に勝ち抜かなくてはなりませんから、提案の精度も極めて高いレベルが求められます。その競争に勝ち続けるのは、簡単なことではありません。

もともと公共ビジネスユニットは2003年に部門として設立されましたが、実は設立当初は知名度も実績もなく、先行していた競合にコンペで勝てない日々が続いていたのです。

それでもこの部門を立ち上げた時から、「社会課題の解決」を最上位の目標に掲げてきました。社会課題の解決が図れなければ、それは成果とは言えません。

つまり公共ビジネスユニットは単に公的機関に対するコンサルティングを行う部門ではなく、それを通じて国や地方が抱えている難しい課題の解決を支援することにこそ、われわれの存在意義があると考えています。

「アビームなら改革を実現してくれる」信頼の裏にある、地道な積み重ね

現在のアビームのコンペでの勝率90%超という高さは、コンサルティング品質の高さと提案の精度を評価されてのことに他なりません。さまざまな社会課題の解決に取り組んできた中で圧倒的な知見を蓄え、それをナレッジとして整備し、組織全体で共有しているのです。

その背景には、常に成長し続けること(進化と深化)へのこだわりがあります。

コンサルティングの内容においても、部門の規模においても、各メンバーの能力においても、われわれはさらなる成長を目指しています。プロジェクトやコンペの結果から、問題点や改善点を一つ一つ検証してきました。

こうお話しすると、一見当たり前のようで、地味に感じるかもしれません。ですが、問題を検証し、改善に向けて着実にやるべきことをやる。これを長きにわたり継続するのは、口で言うほど簡単なことではありません。

部門の設立から20年近くがたち、数的にも質的にも、豊富な実績を持つことが業界内でも知られるようになりました。

今では当社のコンサルティングサービスへの信頼は高まり、「アビームなら確実に改革を実現してくれる」と、多くの引き合いをいただいています。

知名度も実績もなかったアビームが今のポジションを確立できたのは、成長を目指して日々行っている、地道な積み重ねがあってこそなのです。この姿勢は、これからも変わりません。

不可欠なのは「日本のために」という志

そして、アビームがこれだけ高い評価を得られているもう一つの理由が、最初に申し上げた通り、「社会課題の解決」という成果にとことんこだわり続けてきたことです。

いくら規模が大きくても、社会的なトレンドであっても、一過性のブームで終わりそうな案件や、長期的に見て関わる人々が幸せになれない案件には手を出しません。それらは社会課題の解決にはつながらないと考えているからです。

逆に、小規模な案件でも、社会的な意義が感じられれば積極的に取りに行く。このように取り組む案件については「10年後、20年後を見据えて日本のためになるのか」「クライアントへの成果が定義できるか」を重視しています。

またそれぞれの案件で、若手が積極的にチャレンジをすることで大きく成長しています。公共ビジネスユニットは、今も成長し続けています。若手であっても活躍次第でより裁量の大きな仕事を手掛けることができるのです。

近年、当社は新卒採用に公共ビジネスユニットの専門コースを設けました。それにより、社会貢献がしたい優秀で意欲の高い新卒社員が集まり、活躍してくれています。

私が若手社員に日頃からよく話しているのは、「夢」と「志」の違い。夢とは「自分がこうなりたい、こうしたい」という思いであり、志とは「人のため、社会のため」の思いです。コンサルティングとは、まさに後者の仕事に他なりません。

国から地方、学校まで、あらゆる分野・種類の社会課題解決に挑むことができ、さらには戦略立案だけでなく、実行・実現にまで携われるのは、総合系コンサルティングファームならではの醍醐味。

「日本のために」という志を持った若い人と、ぜひ一緒に働きたいですね。

中央省庁
事例
申請手続きの
デジタル化

今も紙による手続き・事務が残っているといわれる行政機関だが、政府のデジタル・ガバメント構想の下、業務のデジタル化の動きが加速している。

アビームが手掛けた中央省庁の案件も、その改革の一つ。医師や研究者、個人・法人が医薬品などを輸入する際の申請手続きをデジタル化するというものだ。

デジタル化は手段の一つにすぎない

執行役員 織田美穂氏

クライアントの要望は、現在紙ベースで行われている申請手続きをデジタル化することでした。

もちろんデジタル化による効果は当初から想定できていました。ただ、私たちはクライアントの要望を聞き、それをそのまま実行するというアプローチは取りません。現状の問題を解決し、成果を出す。プロジェクトの目的を達成するために、「手段として何を選択するのがいいか」から考えるためです。

デジタル化はあくまで申請手続きを改善するための一つの手段。達成したい目的によっては他に良い解決手段があるかもしれません。目的を明確にし、クライアントにとってのベストな解決方法を提示するのもコンサルタントの役目です。

このプロジェクトにおいても、「デジタル化によって何を達成したいのか」という本質をクライアントと議論するところから始めました。

すると、クライアントには、「事務処理でなく、申請された『内容の精査』にもっと時間を掛けたい」「審査結果を返信するまでに時間を要している」といった具体的な問題意識があることが分かりました。そこで省内で行われている業務とそのプロセスを可視化し、課題を抽出し、検証を実施。

また、申請者がどのような目的で、どのような手順や関係者を経て医薬品などを輸入するのか、その際に生じる不都合・不便と感じる事項もあわせて調査を進めました。

そうやって課題と目的を丁寧に整理し、多くの選択肢を検討した上で、このケースでは「業務改革と合わせたデジタル化」がベストだと判断しました。業務プロセスや人、組織、ルール、システムなど広範囲にわたることを冷静に分析し、最適な提案を徹底的に考え抜く。それこそがコンサルタントの役割です。

新たな申請手続きの運用はもうすぐ始まりますが、申請者である国民の利便性は上がり、省内の手続き業務は大幅に効率化され、全国各地からの年間約10万件の申請は、より短期間で審査できるようになります。その分、国民の健康・安全を守るための申請内容の精査や不正監視など、職員の方々はより重要な業務に時間を掛けられる見込みです。

そして、われわれの支援は運用開始後も続きます。新しい仕組みを円滑に進めるのはもちろん、さらに次のステップとして、申請データの利活用を図り、審査の精度や不正監視・検知につなげていければと考えています。

地方自治体
事例
スポーツを軸にした地域活性化

急速な少子高齢化と人口減少の影響が深刻な地方では、地域社会の存続さえ危ぶまれるケースも。それぞれの特長を生かした持続可能な地域活性化は喫緊の課題だ。

地元の産業を育てたり企業を誘致したりと、地方創生にはさまざまな手段が考えられるが、アビームが携わったある案件では、スポーツを軸とした地域活性化策が実を結んでいる。

地域にあるスポーツ施設を軸に、関係人口を増やす

執行役員 松田智幸氏

アビームが支援を行ったとある地方自治体では、若者の流出による人口減が深刻でした。

そこで、まずは観光などによってその土地を訪れる人を含む「関係人口」を増やすことに重点を置き、もともと地域にあったスポーツ複合施設を有効活用することを提案したのです。

具体的には地元の施設を核に、プロ、アマチームのスポーツ合宿の誘致を進めるため、周辺の宿泊施設などとも連携し、旅行会社を巻き込み、各種ツアーを企画しました。

他に医療関係の企業とも連携し、コンディションチェックをパッケージ化するなど、きめ細やかな受け入れサービスを提供。その結果として地域外から人を呼び込めれば、地域経済への効果は大きいと考えました。

また、施設の運営会社とは別に、関係する企業や自治体をつなぎ合わせ、複合的にコーディネートするスポーツコミッションを設立。新たな雇用も生み出すことができたのです。

約3年を掛けて徐々に人を呼び込めるようになり、今ではスポーツ施設も周辺の宿泊施設も予約が埋まるようになっています。その施設を企業や学校部活動の合宿場所とする、全国大会の開催が決まるなど、にぎわいを見せています。

今ではそのスポーツ施設が、町の象徴的な施設として地域内外の人々から広く知られるようになりました。

文教
事例
大学の経営統合

少子高齢化の影響で就学人口が減少する中、政府の後押しもあり、大学の経営統合が加速している。

文教分野で多くの実績を持つアビームでは、由緒ある公立大学の統合や、場所の離れた3つの大学の統合など、大型案件を多数手掛けてきた。

改革に対する不安を取り除く「根拠ある提案」と「実績」

執行役員 松田智幸氏

大学には、それぞれ歴史と伝統があり、規模や業務のやり方、運営ルールが異なります。それらを一つにまとめるのは容易ではありません。

多くの場合、統合する日程以外はほとんど何も決まっていない状況からのスタートとなり、場合によっては新大学のビジョンづくりから携わります。

どこかの大学のやり方に合わせればいいという単純なものではないので、限られた期間で複数の大学の状況を調べ、組織や業務の在り方を徹底的に分析し、提案まで作り込むのは、かなりタフな作業になります。

統合を成功させるには、提案の精度が重要です。改革に対する不安や抵抗感は付き物ですが、根拠となるデータを交え、定性的、定量的な効果を丁寧に伝えることで納得感を高めることができます。

客観的に見直してみると、やらなくてもいい業務は意外とあります。統合に伴い改革することによって、どれだけ経営が高度化、効率化するかを明確に示すこと、そしてクライアントの文化や思いを踏まえた提案をすることで、現場の意識も変わっていきます。

教育分野の経営・業務改革の実績が豊富にあるのはアビーム最大の強み。さまざまな先行事例があるからこそ、それをベースに現実感のある成功への道筋を示すことができます。

それが「できない理由」を取り除き、現場の改革に向けた大きな後押しになっているのは間違いありません。

取材・文/瀬戸友子 企画・編集/天野夏海 撮影/竹井俊晴

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