各社のプロジェクト現場で起きている課題を、さまざまなソリューションを用いて解決するマネジメントソリューションズ(MSOL)。クライアント先の現場に入り、各所の連携をスムーズにする調整役を担うことで、プロジェクトや組織全体をより良い方向へ導くことをミッションとしている。 MSOLでは、数百名・数百億円規模のビッグ・プロジェクトに20代のコンサルタントがPMOとして参画する。同社で、若手のうちから「プロジェクトマネジメント」のプロとして働くことで味わえる仕事の醍醐味とは何なのか。 入社3年目の若手コンサルタントと、その成長をバックアップするディレクターに話を聞いた。 ――お二人の現在の仕事内容について教えてください。大内雄司氏(以下、大内): 私は大手外資系のコンサル部門やIT系コンサルティング・ファームで経験を積んだ後、MSOLに入社しました。PM(プロジェクト・マネジメント)コンサルタントとして現場を経験し、現在はディレクターとして金融業界やサービス業界における各種プロジェクトを統括しています。 江口 輝氏(以下、江口): 私は2017年の入社以降、主にクレジットカードの基幹システムに関わるプロジェクトを担当してきました。昨年の7月からは国内の大手企業で、自社クレジットカードシステムを新規組成するプロジェクトに携わっています。これは数百億円規模のビッグ・プロジェクトで、協力会社なども含めると数百名が関わっています。 ――現場では、具体的にどんな仕事を手掛けるんでしょうか? 江口: 一つのプロジェクトの中に、各種領域を担当するいくつものチームが編成されているので、その各所のマネジメントを行うのが私の仕事です。クレジットカードは、支払いから決済、顧客データの作成・管理まで、いくつもの機能が連携するシステムの塊。そしてその領域ごとに担当チームが分かれています。各所で問題が起きれば、関連する他の領域にも影響を及ぼすため、双方を調整していく業務がたくさん発生する。その調整を担うのが私たちです。大内: 私たちのミッションは、大規模なプロジェクトを構築する各チームの間に落ちた問題を拾って対処し、プロジェクト全体の進行をスムーズにしていくことにあります。つまり、全体像を見据えた上で、各所の間に立って調整とコミュニケーションを行い、「ゴールに向かう最適な道筋」をつくるスペシャリストというわけです。 ――なるほど。技術的な部分のコンサルティングではなく、チームや組織のマネジメントにおけるコンサルティングを手掛けているのですね。 大内: そういうことです。昨今のプロジェクトは非常に複雑化しているので、技術者を含め、複数の専門家が集まり、一つの目的に向かう必要があります。専門家と専門家の間をつなぎ、複数部署をまたいで意思決定をするためには、我々のように、マネジメントに特化したスペシャリストが求められているんです。 江口: 私たちは現場に入り込んで主導する調整のプロフェッショナルですが、プロジェクトの全貌を知るためには要件定義書や設計書といったIT領域の知見も必要。こうしたさまざまな業界知識を深めながら、マネジメントの経験を積めるところに大きなやりがいと成長を感じる仕事です。――マネジメントというと「ある程度経験を積んだ人が行なう仕事」というイメージですが、MSOLの若手社員は、現場でどのようなことを任されているのでしょうか。 大内: 我々の仕事は大別すると2つに分かれています。プロジェクト全体にかかわる重要課題を解決する「問題解決型PMO」と、議事録の作成や進捗の管理・調整などの業務マネジメントに特化した「事務局型PMO」。若手社員は、まず後者を経験しながら、成長に応じてより高度な仕事を担当していきます。 江口: 管理や調整というと、若手の仕事を雑用のように解釈する人もいますが、決してそんなことはありません。実はこのポジションも、PM層やリーダー層と接する機会が多いので、プロジェクトの中枢に関わっている実感があります。私も1年目から業務マネジメントを任されていますが、今では「ここの調整は難しいので、江口さんに任せたい」という声をクライアントからいただくことが増えました。業務チーム50名の成果物チェックやタスクの進捗管理も一任され、自分の力を認めてもらえる喜びを感じています。 プロジェクトに関わる全ての人の意図を汲み取り、ベクトルを合わせてプロジェクトを成功に導くことがこの仕事の一番の醍醐味だと思いますし、難しいところ。そういった現場に、最初から「先輩のアシスタント」としてではなく「一担当者」として関わるので、自然と責任感が生まれてきました。 ――MSOLでは、若手コンサルタントの育成をどのようにサポートしていますか?大内: 成長フェーズを2つに分けて、適切な経験を積んでもらえるようマネジャーがフォローしています。第一フェーズでは新卒なりにできることからスタートしつつも、しっかりとその役割と責任を担い、次のステップにつながる課題をクリアしながら経験を積んでいく。そして、一個人としてのコンサル能力を高めるまでに成長することで、ようやく第二フェーズに入ります。 ――第二フェーズでは、どんなことを任せていくのでしょうか? 大内: 組織のリーダーとして活躍してもらいます。とはいえ、MSOLでのリーダーは「会社に与えられたポジション」のようなものではありません。江口で言えば、“江口株式会社”をつくって、そこのボスとなるイメージです。複数のお客さまからの信頼を得て、自分の後輩や部下を従えながら、チーム単位で業績をアップしていく。「自分だけが優秀であればいい」ではなく、多くの人材を育成しながら、トップとして事業を回していく。会社に仕事をもらうのではなく、自律的にキャリアをつくっていくことが求められます。 江口: 私はまだこの第一フェーズにいるので、早く一人前のコンサルとして求められる存在になれるように頑張っていきたいと思っています。そして数年後には自分のチームを持ち、お客さまにより良いサービスを提供していくことが目標です。 ――プロジェクトマネジメントのスキルを、若手のうちから身に付けることの良さは何だと思いますか? 大内: 今は世の中的にも「プロジェクトマネジメントこそが、プロジェクトを成功に導く」という考え方が広まりつつあるんです。そして、その分野にいち早く取り組んできたMSOLでスキルを磨くということは、その後のキャリアにも役立つはず。これから入社する方は特に、「自分たちの力で、社会に大きなインパクトを与えていく」というやりがいを感じられると思います。 ――就活生の中にも「世の中にインパクトを与える仕事がしたい」と考える人は多いです。そういう人は学生のうちにどんな経験をしておくべきか、アドバイスをお願いします。 大内: これはPMにも言えることですが、「自分の価値」を見出せない仕事では、「社会にインパクトを与える」までのことは成し遂げられません。だからこそ、どんなことでも構わないので、学生のうちに「自分が心から頑張りたいと思える、価値のあること」に挑戦してほしいです。何かに打ち込んで自分の価値を見出す経験をすることで、自分の価値観や、望む生き方、人生における優先順位などが明確になりますから。MSOLではそういう「自分の行動に価値を見出せる人」に入社してほしいと思っています。 江口: 仕事は「人と人」の関係性で成り立つものであり、インパクトを与える相手も「人」。だからこそ学生のうちに多くの「人」と出会い、いろんな価値観に触れ、知見を広げていけば、自分にとって“本当に価値ある仕事”が見つかると思います。もし「MSOLなら自分にとって価値ある仕事ができそうだ」と考える学生がいるなら、ぜひ一緒にいろんなチャレンジをしましょう! 取材・文/上野真理子 撮影/赤松洋太合わせて読みたいこの企業の記事 ■【マネジメントソリューションズ代表取締役社長/高橋信也氏】プロジェクトに特化した戦略実行マネジメントで顧客を成功に導く ■【マネジメントソリューションズ】失敗を前向きに生かす実直さが、コンサルタントの成長を生む ■【マネジメントソリューションズ】「改革」の呼び声が高まる今こそ 「実行」を担う集団として先駆をなす ■【マネジメントソリューションズ】確固たるキャリアの軸を築くために将来の理想をイメージしておく
アクセンチュアのビジネスプロフェッショナルに聞く!成長しながら「自分らしく働く」方法 組織の中での圧倒的な成長と、自分らしく働くこと。この2つがリンクしていることは、個の時代と言われる今、自立したビジネスパーソンになるための欠かせない条件だろう。世の中に大きなインパクトを与える仕事を数々手掛けるアクセンチュア社員は、まさに成長しながら自分らしく働くビジネスプロフェッショナル。そんな彼らの仕事観を探ってみた。-まずは皆さんのチームについて教えてください。 角山 アクセンチュアの中でも、より先進的な技術を取り扱っているチームです。技術力の高いメンバーが多いですね。 星川 ある程度、実績があって、自分から率先して動いていける人ばかりです。先端技術に精通しているメンバーがここに集まっているので、一つのプロジェクトを回していくだけでなく、同時並行で複数のプロジェクトに関わり、アドバイザー的な立場で別のプロジェクトメンバーから技術的な相談を受けることも多いです。 山田 2人とも技術力は突出していましたから。星川さんが新卒入社してきた時は、新人研修で周囲を置き去りにしたらしいと社内で噂になりました。「すごい人が来た」と思っていたら、3年後に角山さんが中途で入ってきた。当初から物怖じせずにぐいぐい意見を言ってきて、またしても「すごい人が来たな」と(笑) 角山 そんなメンバーを、山田さんがうまくまとめてくれていますよね。コミュニケーションをとって、チームとして確実に課題をクリアしていく手腕は見事です。人を巻き込むのもうまくて、僕も巻き込まれた一人です(笑) -テクノロジーを活用して、新しい働き方を実践しているそうですね。 星川 一つのプロジェクトに固まらず、横断的に技術を見ているわけですが、人数も限られるので、一人一人の生産性を上げていかなくては仕事が回っていきません。そこでテクノロジーを活用して、クイックに物事を進め、時間あたりの効率を上げていこうというのがきっかけです。 山田 例えば、社内では最近メールはほとんど使いません。ビジネスチャットで短文のやり取りをする形に変わってきています。私たちの場合は『Slack』というツールを使っていますが、社内標準ツールは『Microsoft Teams』のため後者を使う社員も多いです。こうしたツールを使うことで、定型作業をできる限り自動化。今ではミーティング資料を提出しろとか、もう締切だとか、タスクの管理についてもボットが自動的に ハンドルしてくれます。 角山 個々の勤務時間をチェックして、ボットが「○○さん、疲れてない?」なんて気遣ってくれたりもするんですよ。 星川 メンバー間のコミュニケーションは、プロジェクトごとにグループを作ってチャットベースで行います。メッセージが届くと通知が来るので、その場でさっと見て返事をする。プロジェクトの場所が異なっていても、リモートで対応できるのが便利です。メールと違って「おつかれさまです」といった前置きも不要で、すぐに本題に入れる点もいいですね。 角山 大規模なプロジェクトになると、皆が一堂に集まって対面で話すのも難しいですし、どこにいても情報共有できるのは助かります。時には出社せずに家で仕事をする こともできる。こうしたツールを導入したことで、時間や場所に縛られずに働け るようになりました。 山田 単に生産性を高めるのではなく、こうしたツールを導入することで、皆の可処分時間、つまり自由に使える時間を増やしたいと考えています。その方がイノベーションに近づくからです。イノベーティブなアイデアは、いろいろな体験をしている多様な 人たちがコラボレーションすることで生まれると思っています。ですが、いつも同じ生活を送っていたら、そんなアイデアなど、なかなか浮かんでこない。ツールを使っ て効率良く働くことで、一人一人の可処分時間を増やし、友達と食事に行ったり、旅行に出掛けたりと、普段とは少し違うことをどんどんやってほしいですね。 星川 ツールを入れてから、生産性が高まると同時に、より楽しく働けるようになりましたよね。皆が「いいね!」のようなスタンプをどんどん自作するので、最近では派手なスタンプが繁殖しています。 角山 コミュニケーションはとりやすくなりましたね。いちいちメールで知らせたりはしませんが、チャットだと「こんなことをやりました」という報告も、会話のように気軽にできます。それに対して「いいね!」と反応してもらえると、モチベーションも上がりますし。 山田 人は接する頻度が増えるほど仲良くなると言いますが、チャットのやり取りはメールの何十倍にもなるので、お互いの距離がぐっと縮まります。 星川 時には泣き言のようなメッセージも見かけますが、オープンにすることで気持ちが楽になる。気楽に発信できる場があることで、一人で抱え込まずに済んでいるのではないでしょうか。 山田 これまでの経験から、成功したプロジェクトに共通するのは、柔らかい空気が流れていることだと思います。根底に不信感があると何重にもチェックが必要になるなど、時間もコストも掛かってしまう。お互いを信じられれば、生産性も上がります。チャット上ではこうした柔らかい空気が流れていて、例えば「寝坊しました」という報告に対して、「人間だもの」というスタンプが返ってきたりしています 星川 寝坊ばかりしていては困りますけどね(笑)。でも上司もメンバーのやり取りをよく見ていて、何か問題が起こると、すかさず突っ込んでくれるので、安心です。 山田 マネジャーとしては、かなり意識してメンバーの状況把握に努めていますね。 角山 メールと違ってオープンなコミュニケーションなので、自分の領域だけでなく、全体の状況を把握できる点も良いと思います。プロジェクト全体が見えると、お互いにカバーできる範囲も広がるし、取りこぼしや認識違いを避けることができる。何よりも、担当とは異なる領域の仕事や、いろいろな人の考え方に触れられるので、視野が広がりますし、とても刺激を受けています。 山田 私自身も、仕事の時間や場所にとらわれなくなり、オンかオフかではなく、ハイかローかで考えるようになりましたね。休日でも、何か思いつくとチャットに投稿するなどローモードを保っています。アイドリング運転のようなもので、これが自分に合っていると感じています。 -常に連絡が取れる状態に、プレッシャーは感じませんか? 星川 私は家では仕事をしない主義です。休日はチャットの通知も切ってしまいます。技術が好きなので、結局、休日も自分の興味のある技術のことを考えているのですが、業務は一切しません。 角山 僕は通知が来たら気になってついチェックしてしまうタイプですが、チャットではリアルタイムな対応を求められているわけではありません。緊急の場合は、直接会ったり、電話で話したりするので、特にプレッシャーは感じないですね。 山田 むしろツールを使いこなすことで、一律の働き方に縛られず、それぞれがより自分らしく働けるような気がしています。 取材・文/瀬戸友子 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)
アクセンチュアのビジネスプロフェッショナルに聞く!成長しながら「自分らしく働く」方法 組織の中での圧倒的な成長と、自分らしく働くこと。この2つがリンクしていることは、個の時代と言われる今、自立したビジネスパーソンになるための欠かせない条件だろう。世の中に大きなインパクトを与える仕事を数々手掛けるアクセンチュア社員は、まさに成長しながら自分らしく働くビジネスプロフェッショナル。そんな彼らの仕事観を探ってみた。-お二人は現在、どのような仕事に携わっていますか? 大橋 私は製造・流通業のお客さまへサービスを提供するグループに所属しています。お客さまの課題に基づくシステムの提案から関わり、目指す効果を出すために必要なスキルを持った人材を集め、計画通りにシステムを導入する、プロジェクトマネジメントが専門です。 佐藤 私はお客さまの人事管理システムの保守運用と追加開発を担当しています。具体的にはフィリピンにいるオフショア開発部隊と連携して、インターフェース開発やモジュール開発、開発環境の改善などに取り組んでいます。 -エンジニアにとってコンサルティングファームで働く魅力はどこにあるとお考えですか? 大橋 私が以前在籍していたメーカー系Slerと比較すると、いわゆる上流工程から関われる点が大きく違います。アクセンチュアでは開発に携わるエンジニアも、プロジェクトの早い段階からお客さまとコミュニケーションをしながらコンサルタントとともに課題解決を目指します。また開発に際しても自社製品を持たず、特定のベンダー製品やソリューションを使うことを前提としないので、お客さまにとってベストな選択肢を取りやすいというメリットがあると思います。 佐藤 私は新卒入社なので他社との比較はできないのですが、プロジェクトの多様性、取り扱うデータ量もそうですが開発規模の大きさは、グローバルファームが手掛けるシステムならではだと感じます。その上で、福利厚生も手厚いですし、LGBTへの支援体制などを見ても、インクルージョン&ダイバーシティ活動にも積極的なのがよく分かります。アクセンチュアにはいろいろな人がいますが、それぞれが働きやすい環境の整備を目指しているなと感じます。 -コンサルタントとエンジニアの関係について教えてください。 大橋 コンサルタントがお客さまの経営課題を見つけ、ビジネスプロセスやビジネスモデルの変革を促す立場であるなら、我々はテクノロジーによって、コンサルタントが描いたソリューションを実現する立場。お互い得意分野が異なるだけで上下関係はありません。よりイノベーティブで実験的なアプローチが必要なときは、コンサルタントとエンジニアが協力して手早くプロトタイプを作り、実証実験につなげることもあるほど、その関係は緊密です。 -入社2年目の佐藤さんは、これまでどのような場面でご自身の成長を実感されましたか? 佐藤 人事システムと他のシステムとの連携といっても、その方法は一つではありません。先日もどのようなアプローチを採るのがベストか、チームメンバーで話し合ったところ、運用の妨げにならず、リスク回避の面でも優れていると認められ、最終的に入社2年目の私が提案した方法が採用されました。大学でコンピューターサイエンスを学んでいたころは、大型システムの運用にまで考えが及ばなかったので、自分の中では大きな進歩だと思っています。また、入社後間もない私がこうした経験ができたのは、部下も上司も関係なく、自由に意見を出し合える環境があるからです。アクセンチュアは外資系企業とはいえ、日本にある以上は少しくらい年功序列的な風土があるだろうと思っていたのですが、完全に取り越し苦労だったようです。 -ビジネス環境の変化は激しさを増しています。社員の成長を支援する仕組みについて教えてください。 大橋 代表的なものはキャリアカウンセラー制度。この制度は、プロジェクトの上司ではない管理職がメンターとして今後のキャリアや働き方について相談に乗るという制度で、全社員が対象です。また管理職以上の職務候補の全ての社員が十分に成長機会を得られているかを定期的に確認する「3Rアセスメント」という制度や、上長の許可を必要とせず異動願いが出せる社内公募制度「キャリアズ・マーケットプレイス」な ど、社員の意思や希望に応える仕組みが整っています。 佐藤 スキル面でのバックアップ体制も充実しています。先日もユニットテストの自動化ツールをどうやったらうまく現在の開発フローに適した形で導入できるかをフィリピンの開発メンバーと考えていたところ、すでに複数のオンラインプログラムが準備されていることを知りました。オンライン研修は2万種以上あり、対面型研修やワークショップも豊富に用意されているので、スキルを高める環境は十分整っていると感じます。 -今後、エンジニアとしてどのようなキャリアを歩みたいと考えていますか? 大橋 アクセンチュアは、多様性こそ競争力の源泉だと信じている会社です。同質な人間がいくら集まってもイノベーションは起こせないことを理解しているからです。事実アクセンチュアには多様な専門性を持ったコンサルタントやエンジニアが数多く在籍しており、働き方もキャリアの方向性も人それぞれです。さまざまなプロジェクトがあるため、いろいろな経験をしながら自分が進みたい方向性を見つけることもできます。こうした環境の中で私が目標にしているのは、プロジェクトマネジャーとしてチャレンジングなプロジェクトを一つでも多く成功させること。今までも、先端テクノロジーを使ったり、今までやったことのないやり方を取り入れたりしましたが、これからもこういった先進的な取り組みを続けていきたいと思っています。こうした個人の選択を尊重してくれるのも多様性を重視するアクセンチュアだからだと思います。 佐藤 私が目指しているのはインフラの状況を踏まえつつ、先進的なアプリケーション開発ができるエンジニアになることです。それを実現するには幅広い技術分野を経験する必要があります。幸いアクセンチュアには課題解決についての豊富な知見と個人の挑 戦を支援する土壌があります。マネジャーになってもテクノロジーの動向には敏感でいたいので、今後もエンジニアとしての成長にはこだわり続けるつもりです。 取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)
「大企業勤めの肩書きではなく、自分の名前で勝負できるように」――。安定が約束された企業なんてない今の時代、ビジネスパーソンには個人の力を磨くことが、世代を問わず求められるようになっている。 今回登場するマネジメントソリューションズ(MSOL)の李成蹊氏と吉村康氏も、それぞれ大手企業で長年会社員経験を積み、50歳を越えて新天地を求めた二人だ。「新しい挑戦がしたい」とMSOLに入社した二人は、改めて「企業名で仕事を選ぶのではなく、自らキャリアを選び、つくっていく力を養うこと」の重要性を認識しているという。 30年以上ビジネスの世界で第一線を走っている二人の先輩に、自らキャリアをつくるとはどういうことなのか、そのためにはどんな環境を選べばいいのか、就活生に向けたメッセージを聞いた。 ――お二人とも50代でMSOLに転職されています。その経緯を教えてください。 李: 私が転職をしたのが、59歳9カ月。前にいた企業の定年が60歳でしたから、定年前に「転職」をしたかったんです。定年後は第一線を退いてゆったり働くというのが、自分としてはもったいない気がしていて、まだまだやるぞという思いでした。 MSOLとの出会いは10数年前、前職で組織的にプロジェクト強化に取り組んでいた頃でした。その中で「プロジェクトマネジメント」に特化したコンサルティングサービスを行なっているMSOLのことを知り、仕事を依頼したのが最初です。つまり、私はもともとMSOLのクライアントだったんです。 当時からプロジェクトマネジメントのスキルは、グローバルに通用するビジネスパーソンのリベラルアーツ、教養として持つべきものだと感じていました。それまでは大手企業でいろいろな経験をさせてもらったので、今度はプロジェクトマネジメントを事業として行っているMSOLに移り、このスキルを広く世の中に広めて、社会に貢献していきたいと考えたんです。 吉村: 私の場合は新卒で東洋経済に入って33年間、販売、宣伝、広告、マーケティングを中心に、営業畑を歩いてきました。その間、一度も転職を考えたことがありませんでしたが、きっかけは組織改革です。それまでプレイングマネジャーとしてやってきていたのが、マネジャーに専念することになり……。ちょうど55歳と定年も視野に入ってくる年齢だったこともあり、改めて「残りの仕事人生、このままで良いのか」と考えてみたら、やはり「プレイヤーとして現場で働き続けたい」と初めて気付いたのです。 MSOLのことは以前から知っていました。社長の高橋(信也氏)とは、前職時代、個人的に参加した勉強会で知り合い、オンラインメディアに広告を出してもらうなど、ビジネス上の付き合いもありました。転職先として改めて考えたときに、前職の経験が活かせるポジションがあったことに加え、世の中的にこれからプロジェクトマネジメントのニーズは急増していくだろうなという予想もあって。MSOLはこれからますます会社が大きくなり、成長を共有できると思ったんです。 ――お二人が「転職して良かった」と思うのはどんなときですか? 李: 私はもうすぐ61歳になりますが、今でもビジネスの第一線で、若い人と一緒にMSOLが成長するための戦略を考えています。そのたびに刺激を受けたり、勉強して新しい知識を取り入れたりして、とても充実した毎日です。あとは六本木という華やかな場所で働くのも楽しいですね(笑)。 吉村: 私の場合は、会社の成長と共にどんどん新しい仕事が増えていくときですね。プレイヤーとしていろいろなことに挑戦できるので楽しいんです。やはりイスに座って管理だけしているのは自分の性に合わないと思いますし。あとは、やはり若い人たちが多いので社内全体が活気に溢れていますよね。私と李さんが平均年齢を押し上げているんですが(笑)、この中にいるとつい年齢を忘れてしまいます。 李: そうそう。年齢関係なく、やる気のある人にどんどん仕事を任せる会社ですから。昔は細かいことは部下に任せて、頭を動かしていれば済みましたが、今は自分で頭も手も動かしている。刺激的な環境に身を置けるので、この年齢になってもなお日々成長を感じられます。――今は人生100年時代と言われ、働く環境は日々変化しています。20代の若手が、これから豊かなキャリアを築くために必要なことは何だと思われますか。 吉村: これからは個人が、会社に対していかにフェアな関係性でいられるかが重要になってくると思います。私も昔、自分が会社から貰っている給料以上の働きをしているのか、ふと考えたことがありました。そのとき、まだ自分は会社に“借り”をつくっているんだと気付いて焦った記憶があります。給料以上の成果を出して、会社に“貸し”をつくるくらいでないと、会社にぶらさがることになってしまう。 そこから必死に借りを返し始めましたね。自分の中で「もう会社への借金は返し終わった」と感じてからは、貯蓄するように貸しをつくり始めたという実感です。 これは転職を考えて初めて気付いたのですが、会社に借りをつくっていたままでは、自由に転職もできなかったのではないかと思うのです。だから若い人には、早くから会社に貸しをつくれと言いたい。そうすれば、会社とフェアな関係性でいられるし、組織に依存することなく自由になれますから。 李: 私も同感ですね。自分自身を振り返ると、私は20代でベンチャー企業で働いた経験が、自分のキャリアにとってプラスだったと思います。大企業のように社名が通用しないので、自分のプロフェッショナリティーを意識せざるを得ませんでした。自分の強みは何か、これから何を自分の専門性として生きていくのか、早いうちに考えることはとても大事なことだったと。 その点でいうと、MSOLはベンチャーから上場企業へと成長し経営基盤はしっかりしていますが、働く環境面では、若い人たちが力を付けるために最適な条件が揃っていると思いますね。 ――「若手が力を付けるための条件」とは、具体的にはどのようなことでしょうか。 李: 将来どのような方向を目指すとしても、共通の土台となるような経験を、20代の頃から徹底的に積み上げていくことができるかどうかということです。 ピーター・ドラッカーは、「リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である」と残しています。プロジェクトマネジメントって、まさにそのためのツールといえるんですよ。だからこそ、プロジェクトマネジメントはビジネスパーソンのリベラルアーツであり、どんな仕事にも当てはまるビジネスの基本スキルなのです。 そんなスキルを使って、MSOLではさまざまなクライアントの社内に深く入り込んで実践していける。多種多様な業種・業務に触れながら、学ぶことができるんです。 ――なるほど。そこで早いうちから自分の専門性を見つけ、磨くことができるということですね。 李: はい。さらに付け加えれば、MSOLは若い会社ですから、会社と共に成長していけるのも大きなメリットです。自分たちの力で会社を良くしていくという経験はなかなかできるものではありませんから。 吉村: そうですね。成長過程の会社ですから、与えられる仕事、決まっている仕事はあまりない。自分次第で仕事の質をどんどん高めていけますよね。先ほどの貸し借りの話でいえば、借りをつくって会社にぶら下がっている人は見かけません。逆に、与えられるのを待っている“借り”の姿勢の人には厳しいかもしれませんね。 李: 若いうちにこうした環境でみっちりとプロジェクトマネジメントの経験を積んで、もし次のステップとして新しい環境を求めるのなら、それはそれで良いことだと思います。さすがに1~2年で辞めてしまうとなるともったいないとは思いますが、5年~10年ぐらい後にここで培った経験を生かして、次の挑戦に向けて羽ばたいていく人がいても、人生100年時代を見据えた上ではキャリアプランの一つだとは思います。 ――MSOLでは新人育成をする上で、どんな環境が整っていますか? 李: MSOLの社員はあくまでも、「自分のキャリアを自律的に考える」ことを重視していますから、自分のキャリアは、会社が用意してくれるのではなく、自分で考えるものという意識が強いです。 ただ、それと同時に、人を育てようという意識もとても高い会社です。知識やスキルを磨くトレーニング体系はかなり充実していますし、社長自ら研修を実施したりすることも多い。他社と比べても人事評価プロセスがしっかり整備されているので、意欲のある人にはさまざまな仕事のチャンスが与えられ、自分が学んだことを実践できます。 吉村: サービスラインにも「教育・トレーニング」があるように、社内でもどんどんメンバーを育てて、早く自分の業務を任せたい。そして自分自身は、次の新しい挑戦をさらに続けていきたいという人が多いように思います。だからこれから入社してくる皆さんにも、たくさんの面白い仕事を経験しながら、飽くなきチャレンジ精神を持ってキャリアを歩んでもらいたいです。 取材・文/瀬戸友子 撮影/赤松洋太合わせて読みたいこの企業の記事 ■【マネジメントソリューションズ代表取締役社長/高橋信也氏】プロジェクトに特化した戦略実行マネジメントで顧客を成功に導く ■【マネジメントソリューションズ】失敗を前向きに生かす実直さが、コンサルタントの成長を生む ■【マネジメントソリューションズ】「改革」の呼び声が高まる今こそ 「実行」を担う集団として先駆をなす ■【マネジメントソリューションズ】確固たるキャリアの軸を築くために将来の理想をイメージしておく
働き方改革、テクノロジーの進化など、変化の激しい今の時代、企業経営の在り方も大きく変わっている。変革の渦の中、2020年以降を見据えたとき、コンサルタントには何が期待されるのか、どうすれば求められる人材になれるのか。“コンサルティング業界のサードウェーブ”と呼ばれる戦略実行型のマネジメントコンサルティングビジネスを展開するマネジメントソリューションズ(MSOL)の高橋信也氏と、キャリア学の権威、高橋俊介氏の対談からその解を探る。――世の中は変革の時代に入り、コンサルタントに求められる役割も変わってくるのでしょうか。 高橋信也氏(以下、信也氏): これからのコンサルタント像について語る前に、そもそもコンサルタントとは何かを明らかにしておいた方がよいでしょう。今は「コンサルタント」という言葉の定義が非常にあいまいで、単に「コンサルタント」という肩書きを冠しているだけというケースも見受けられます。これでは学生の皆さんも混乱するでしょう。 高橋俊介氏(以下、俊介氏): 私もコンサルティング志望の学生から相談を受けたことがありますが、その時は「あなたはコンサルティング会社に入りたいのか、それともコンサルタントになりたいのか」と確認しました。例えば、最終的に経営者を目指すなら、コンサルティング会社に入って若いうちから経営の知見を広げるのもいい。逆にコンサルタントになりたいなら、まずは事業会社に入って実業の経験を積んでいく道もあります。いずれにしても、コンサルティング会社に入れば、いきなりコンサルタントになれるわけではないということは理解してほしいですね。 信也氏: 本来コンサルタントとは、クライアントの課題解決のための相談に乗り、確実に成果を上げていくプロフェッショナルのことです。プロフェッショナルであるからには、弁護士や会計士と同じように、コンサルタントも時間単価いくらというフィー制で仕事をすべきだと思います。ところがコンサルタントと名乗りながらも、フィーに見合う価値を出すことができず、長時間労働で単価を埋め合わせているケースも少なくない。これは本末転倒です。 俊介氏: 同感ですね。自分の単価を時間内で稼げないから長時間労働でカバーするというのは、悪しき日本的慣習だと思います。昔から日本が得意としている手法に、とにかく人数を投入して一生懸命さをアピールするというものがあります。SEの派遣などにでも、実際に使える人材は1人か2人に過ぎないのに、5、6人まとめて派遣してセット販売してきました。 しかし本来のコンサルティングビジネスでは、セット販売は通用しません。3、4人のコンサルタントが派遣されても、クライアントから「AさんとBさんだけで十分です」「Cさんは要りません」などと個別に評価されてしまいます。つまり、一人一人がマーケットにさらされているわけです。 信也氏: クライアントの方は、その意識が高まってきていると思います。企業はもう結果が出ないものにお金を払わない時代になっている。我々マネジメントソリューションズ(MSOL)が、戦略実行型のマネジメントコンサルティングに特化しているのも、「プロジェクトが回らない」「実行までに至らない」というクライアントの困りごとに対して、プロフェッショナルとして確実に価値を出していかなくてはいけないという使命感から生まれてきた結果なのです。MSOLはコンサルティング業界の中では「サードウェーブ」と呼ばれていますが、そうした分類の前に、我々の本質は「プロフェッショナル人材の集まり」であると思っています。――では、プロフェッショナル人材には、どのようなスキルや能力が必要になるのでしょうか。 俊介氏: コンサルタントとしての基本的な能力は当然必要ですが、私はその上で専門性が重要だと思います。これまで戦略系コンサルタントは、どちらかというと特定の産業や機能に偏らず、コンサルタントとしての能力を高めることで対応してきましたが、今後は専門性を持たないと価値を出すことは難しいでしょう。でも困ったことに、日本では「専門性」のイメージが悪いんですよ。実際、資格試験は丸暗記で乗り切るようなものが多く、企業の専門職制度もマネジメント職に就けなかった人の救済策の意味合いが強い。 しかし、本当に成果に繋がる専門性を持つ人は、その分野の基礎理論から体系的にしっかりと理解しています。しかも今のように変化のスピードが速いと、10年、20年かけて専門性を構築しても、すぐに陳腐化してしまいますから、常に新しい流れを取り入れています。資格を持っていること、長く経験していること=「専門性」という発想は、今すぐ捨て去ってほしいですね。 信也氏: 資格などは最低限の知識があることの証明に過ぎませんからね。やはり成果が重要で、自分でしっかりと成果を出し稼いでいけるかどうかです。弊社の社員にもよく言うのですが、プロフェッショナルにはそう簡単になれるものではないと覚悟する必要があります。 俊介氏: その通りだと思います。そういった前提がある上で、コンサルタントの能力として重要だと思うのは、クライアントリーダーシップです。やはりこれも日本的な感覚ですが、営業は下手に出るものというイメージが強いですよね。「何でも言ってください」「何でもやります」と頭を下げていては、コンサルティングになりません。コンサルタントはクライアントが分かっていないことを助言する立場。クライアントの半歩先を行き、「目指すべきはこちらです」と、ぐいぐい引っ張っていくリーダーシップが必要です。 というのも、コンサルタントは、自分でお客さまを取れないといけません。若いうちはなかなか難しいですが、クライアントから「あなたに頼みたい」と言ってもらえる仕事を経験することが、最もコンサルタントの成長にとって重要だと思います。 信也氏: 私自身も20代の頃、自分で提案して仕事を取ってきた経験が今でもとても役に立っていると感じています。最初はそれほど大きな案件ではなくても、指名された仕事が次の大きな仕事に繋がって、チャンスが広がっていきました。 だから若手にもどんどん前に出て、自分で取った仕事を経験してほしいと思っています。お客さまにペコペコするのではなくて、日頃クライアントと接する中で、彼らが困っていることがあれば「我々の支援が必要ではないですか」と声を掛ける。まずはそんなところから始めてみればいいんです。――コンサルタントを目指す学生に、キャリア形成の考え方についてアドバイスをお願いします。 信也氏: 学生には、プロフェッショナルとして会社に依存せず、自律的にキャリアを形成していく生き方を考えてほしいですね。人生100年時代の今、この先の長い人生を考えたとき、日本の国際競争力はますます落ちていき、年金制度も破綻するかもしれません。そんな厳しい環境の中で、どうやって稼いで生きていくのか。プロフェッショナルとしての技量を身に付け、自分の足で立って歩んでいくほうが、豊かに力強く生きていけるのではないでしょうか。MSOLではそんな「自律的キャリア形成」を応援したいと思っています。 俊介氏: 昔は、上昇志向が強くてハングリーなタイプがコンサルティング会社に多く集まり、入社すると、「2年でマネジャーになって、4年でシニアに上がって、6年でパートナーになれ」などと言われたものです。でも、そんな働き方が全てではありません。成長のスピードを競うのではなく、目の前のクライアントの仕事を一生懸命やっていけばいい。価値を出すためには自分が成長するしかないのですから。一つ一つの仕事の質にこだわって、丁寧に一歩一歩成長していけばいいんです。焦る必要はありません。 信也氏: 仰る通りです。日本では年齢にこだわりすぎですよね。コンサルタントを目指すにしても、最初は別の仕事で揉まれて実態を知って、30歳で大学院に行ってもいい。また別の経験を積んで、40歳で転職してもいい。大切なのはロングスパンで考えることです。 俊介氏: 人生にはフェーズがあるので、若いうちは100%仕事にのめり込む時期があったとしても、その後に学び直しをしたり、育児を楽しんだり、親の介護が必要になったりと、フェーズによって働き方も変わってきます。学生のうちから明確なキャリアプランを描けるわけがないのですがから、今は大まかなキャリアビジョンで十分です。将来こうありたいという自分の姿をイメージして、最初にどんな会社を選ぶのか考えてください。そこで主体的に仕事をしていけば、やりたいことも段々見えてきて、一歩ずつキャリアを積み重ねていくことができるはずです。信也氏: 「自律的キャリア形成」のベースにあるのは、仕事のことだけではなくて、自分はどういう人生を送れたら幸せなのかということ。40歳になったときにどうありたいのか。50歳になったときはどうなのか。漠然としたイメージでもいいから、長い目で常に先のことを考え続けることが大切です。そうして主体的に人生を歩んでいく姿勢が、プロフェッショナルとして自立することにも繋がっていくと思います。取材・文/瀬戸友子 撮影/竹井俊晴合わせて読みたいこの企業の記事 ■【マネジメントソリューションズ代表取締役社長/高橋信也氏】プロジェクトに特化した戦略実行マネジメントで顧客を成功に導く ■【マネジメントソリューションズ】失敗を前向きに生かす実直さが、コンサルタントの成長を生む ■【マネジメントソリューションズ】「改革」の呼び声が高まる今こそ 「実行」を担う集団として先駆をなす ■【マネジメントソリューションズ】確固たるキャリアの軸を築くために将来の理想をイメージしておく
人生100年時代。誰も経験したことがない、予測も計画もできない未来をタフに生き抜く鍵は何だろうか? その答えを求めて、日本のビジネス界を牽引する経営者、KPMGコンサルティング宮原正弘氏と、キャリア学の権威、高橋俊介氏にお話を伺った。広く浅い知識に価値はない。物事の本質を深く理解せよ ─人生100年時代と言われています。人の一生が長くなり、社会環境の変化も激しい現代では、キャリア形成のあり方も従来の常識を見直す必要があると思います。お二人のお考えはいかがでしょうか? 高橋 日本では長らくの間キャリアは〝積み上げる〞ものだと考えられていました。けれど、これだけ不確定要素の多い時代に長期計画に基づいてキャリアを積み上げることはもはや不可能。計画的偶発性理論によれば人のキャリアの約8割は偶然によってつくられると言いますが、これからのキャリアは、積み上げるのではなく、〝つなぐ〞ものとなります。そのときに不可欠なのは、深く学ぶ力。短期間で物事の表面だけかじっても、数年後には〝広く浅く〞しか物事を知らない人間になってしまう。うわべだけの知識なんて、今や検索すれば誰でも手に入ります。そういう浅い知識に今は何の価値もありません。だからこそ、与えられた場所でその業界なり産業なりの〝本質〞を深く理解しておくこと。そうして、別のフィールドに移ったときに横展開できるスキルを養うこと。それさえできれば、どんなにキャリアが非連続的になったとしても、各所で得た知見をつないで、自分のバリューにすることができます。 宮原 情報が溢れ、容易に手に入る時代において、コンサルティング業界も、これまでと同じことをやり続けてクライアントからお金をいただける時代ではなくなりました。そこで重要となるのは、業界やテクノロジーがめまぐるしく変化していく中で、他の人よりも一足早くそれらの動きをキャッチし、次の時代の戦略をスピーディーに提案できるかどうかです。クライアントの後塵を拝したら意味がない。こうしたスピード感は、今まで以上に強く求められるようになるでしょう。 高橋 自分のバリューにつながるものは何か、常にアンテナを張っておくことも非常に大切です。私はそれを〝先物キャリア〞と呼んでいるのですが、「これだ」というテーマを見つけたら、とにかく自分でどんどん勉強し、社内外に向けて広く知見を発信してみてほしい。そうすれば、もしそのテーマが世の中のトレンドになったときに、第一人者になれますから。先行者利益というのは大事ですよ。レガシーな分野を狙っても、すでに専門家が大勢いる。だったら、まだ誰も開拓していない未知の分野に目をつけた方がよほど手っ取り早い。20代のうちに、そういうテーマを見つける癖を付けたらいいですね。 宮原 そうした感度を磨くためにも、いろいろなことに好奇心を持って首を突っこんでいくことが大事だと思います。コンサルタントの仕事に置き換えて言うなら、クライアントの状況を俯瞰的に捉えた上で、どんなニーズが今あるのか、CEOやCFOは何に悩んでいるのかを常に考え、検証すること。その蓄積が、先を読む目を鍛えてくれるのです。それから、付け加えるなら、自分が専門とするテーマはなるべく2つ以上あるといいと思います。なぜなら、もう今の時代は専門性が1つでは武器にならないからです。 高橋 例えば、「会計」×「IT」でもいいし、「英語」×「IT」でもいい。2つ以上の異なる専門性をミックスさせることで、自分ならではの強みとなりますね。 仕事は理屈だけでは動かない。タフな心で意思を貫こう ─今後はAIの普及により単純労働は消滅し、より重要な判断を伴う業務を若いうちから担っていく必要があると予測されています。そんな中で、これからの世代に必要なのは、どんなスキルでしょうか? 高橋 これからの世の中は、大量の事例や情報を網羅的に収集するだけの人材は早晩必要なくなります。請われるのは、複雑な物事を自分の言葉で要約した上で、その〝本質を見抜く力〞です。そのためにもこれからの若い世代は、世の中のありとあらゆる事象に対して、「その本質は何か」と考える思考特性を身に付けておく必要があると思います。例えば、ニュース1つ見ても、それをただ見て終わらせずに、「これはつまりこういうことだ」というのを自分で要約してみるといいですね。 宮原 今後身に付けるべきスキルについて違う角度からお話しするとしたら、私は〝人を動かす力〞を磨いてほしいと思います。まず単純に、一人でやれることには限界がある。大きなテーマに取り組もうとすればするほど、他のチームと連携し、総合力で勝負をしなければならない。そのときに、周りを巻き込み、舵を取れる力があるかどうか。これは人間にしかできない領域なので、意識して磨いておけば、確実に自分の武器になります。もう1つは、意思の強さと柔軟性。物事は、理屈だけで動くものではありません。論理的でないことも山ほどある。コンサルタントの仕事で言えば、どんなにクライアントにとって素晴らしい提案をしても、それが必ず受け入れられるとは限らない。現場の反発で頓挫することもあるし、上司の承認が得られないこともある。そのときに、どれだけタフかつ柔軟な対応ができるか。こういう言い方は今風ではないかもしれませんが、〝めげない力〞というのもまた、より高次な業務を遂行していく上では重要になってきます。 高橋 そのトレーニングの一環として、ぜひもっと学生の皆さんには自分の意見を言うことも含め、アウトプットをすることに取り組んでほしいですね。日本の大学の授業は、インプット型が主流。ですが、ビジネスで重要なのはアウトプット力です。仲間とディスカッションをする場を積極的に設けたり、チームでアウトプットする機会をつくってみたりするといいですね。 不確実な世の中では 自律型のキャリアがベース ─KPMGコンサルティングでは、新時代のコンサルタントに必要な素養をどのように伸ばしているのでしょう? 宮原 まずは社会人として力強くスタートを切れることが第一。メンター制度や人事面談などのサポートはもちろん、育成期間の18カ月は約半年ごとに計3つのプロジェクトにアサインし、さまざまな業界やサービスラインを経験してもらうようにしています。その上で、自分自身の進むべきキャリアを考えてもらいたい。当社では、社内だけでさまざまなプロジェクトが動いていますし、サービスラインも多彩なので、興味次第でいろいろな分野に関われるチャンスがあります。何か新しいことをやってみたいと手を挙げれば、積極的に挑戦してもらいます。一社にいながら豊富な経験を積めるという点は、今後のキャリア形成において非常に価値があると思います。 高橋 素晴らしいですね。不確実な時代だからこそ、自律型のキャリア形成がベース。自分のキャリアプランは自分で考えていかなければいけません。ですが、決してそれは自己責任という意味ではない。むしろ個人の自律を促していくためにも、企業のサポートが重要です。一人一人が自分のキャリア形成にコミットできる体制を整えることが、これからの企業の責務だと思います。 【column】良い偶然を呼び込む 5つの習慣って? 計画的偶発性理論によれば、人のキャリアの8割は“偶然”によってできているという。「予測不可能な時代こそ、良い偶然を呼び込む習慣がカギになる」と宮原氏、高橋氏は話す。20代が実践すべき習慣とは? 1.常に自分を主語にして話す 世の中のあらゆる問題に対し、自分はどう思うのか、常に持論形成の癖をつけよう。その上で人に「なるほど」と思わせる切り口を見つけられれば、自分のバリューになる。 2.欲望をどんどん口にする 新たなサービスの種は、「もっとこうすれば便利なのに」「もっとこうすればいいのに」という人の欲望から生まれる。自分なりの改善策を口にすることは、仕事の基本だ。 3.グローバルな交流を深める 価値観を磨くためには、自分と異なる価値観の人と話をすることが最善策。特に、文化や価値観の異なる海外の人々とのやりとりは、人間としての幅を広げる上でも有効。 4.情報収集に取り組む 海外メディアの情報に触れるなど、さまざまなメディアから情報を集めてみよう。日本にはまだ持ち込まれていない情報をいち早く見つけ、自分なりの要約で人に伝える練習を。 5.「皆と同じ」を避ける 人と同じことばかりしている人に、ビックチャンスは訪れない。誰も開拓していない道を最初に進んでいく癖付けをしておくと、ビジネスの場でも自分の市場価値を上げやすい。 取材・文/横川良明 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) イラスト/石山好宏
「成長」と「自分らしく働く」を両立する方法 /Theme 3・ライフステージの変化と仕事の関係 組織の中でパフォーマンスを上げ、ビジネスパーソンとして圧倒的に成長したい。同時に、個人としての価値観を大事にしながら自分らしく働きたい――。この両方をかなえられてこそ、働く醍醐味は最大化される。世の中に大きなインパクトを与える仕事を数々手掛けているアクセンチュアのビジネスプロフェッショナル6人の仕事論から、“両立の秘訣”を探ってみたい。 【Theme 3】ライフステージの変化と仕事の関係 育休取得経験があるイクマネ/上端純平 × 2児を育てる管理職/大河原 久子 ─ ビジネスの最前線で仕事に専念するのと、家庭生活を両立するのは難しいイメージがあります。 上端 正直、私も結婚するまでは全く両立生活のことを考えていませんでした。20代の頃は今よりずっと長い時間働いていましたから。それが、妻と理想の家庭像を話し合う中で少しずつ価値観が変わっていきました。私の場合は、妻の出産に合わせて4カ月の育休を取りました。今も家族との時間を過ごすため、18時頃には退社します。仕事も家庭も大事にするのが今の僕らしい生き方です。 大河原 私は29歳の時に結婚しましたが、はっきり働き方が変わったのは、子どもを産んでからです。第1子の出産が31歳の時で、上の子の時は11カ月、下の子の時は7カ月の育休を取りました。当時は周りにワーキングマザーが少なかったので、復職後の働き方は手探りで模索していきました。 上端 幸いにも、コンサルタントは長期の休みが取りやすい職種です。僕たちは、プロジェクトベースで仕事をするので、他業種の方に比べてまとまった休みが実は取りやすい。次のプロジェクトに参画するまでは休みを取る、という感じです。仕事から離れて活力や新たな視点を得ることを『ビーチタイム』と呼んでいて、組織としても休みを重視しています。 大河原 私も子どもをつくると決めた段階で、直属の上司には産休に入る可能性があるので、長期的なプロジェクトには入れないと伝えていました。─ 実際に育児が始まり、仕事にはどんな影響がありましたか? 大河原 私に起こった大きな変化は3つ。1つ目はタイムマネジメントスキル。時間の制約がある中で成果を上げるには効率アップの工夫が欠かせません。例えば、資料を作るときも最初から完璧を求めず、最後の詰めはお客さまと対話しながら行うというスタイルを覚えました。2つ目はポジティブシンキング。20代はそれこそ仕事が自分の全てだったけど、今は母という揺るぎない場所が職場の外にある。だから、上司に少しぐらいシビアなことを言われても落ち込みません(笑)。3つ目は自分の数年後のキャリアについて真剣に考えるようになったこと。働く量ではなく質で勝負するために他者と差別化できるスキルをどう身に付けるのかということを、より考えるようになりました。 上端 お客さまやチームとコミュニケーションする際の共感力が増しました。コンサルタントというと、資料作成やプレゼンをする姿が一般的なイメージだと思いますが、本質にあるのは、お客さまが言語化できない課題をいかに読み解き、ゴールに向かって一緒にチャレンジしていくかということ。子育ては、まさに子どもの気持ちを〝察する〟行為の連続です。どうすれば相手が喜ぶか、今自分がすべきは何か、相手に向き合いながら読み取り、対話する力が相当鍛えられました。 ─ 残業削減や有休取得の奨励など、貴社では働き方改革に力を入れていますよね。 大河原 はい、今も社員一人一人が効率的に働き、成果を最大化させるような働き方を会社として奨励しようという取り組みは進んでいます。基本的な育児休業などの制度はもちろん整っていますし、テクノロジーに強い会社ですので、対面の必要性がない会議は全てSkype会議でOK。私は子どもがいるため地方出張ができないのですが、地方のお客さまとのコミュニケーションも自宅からSkypeやメッセンジャーで対応することもあります。ただ、重要なのはこうした制度よりも、むしろカルチャーだと思います。例えばSkypeなどのツールを使って場所に縛られず働くことは、ワーキングマザーだけに限らず、多くの社員が当たり前に実践しています。おかげで「ママだから特別扱いされている」という引け目は感じません。 上端 育児中の社員に限らず、皆が日々の仕事以外の時間も大切にしようと考えるようになってきています。家庭のこと、趣味のこと、新しい仕事へのチャレンジ、何でも構いませんが、「自分にとって大事な時間」があるなら、それこそが人生を豊かにしてくれるものだし、最優先した方がいい。その上で、仕事でも最大のパフォーマンスを出せるようにマネジメントするという考え方が広まりつつあります。こういったカルチャーがあることが、制度面の充実よりもよっぽど大きいですね。 ─ お二人のような「イクボス」の存在は、若い世代にどんな影響をもたらしていると思いますか。 上端 先例をつくるという意味では、影響があると思いますね。そのためにも、「上端さんだから両立できる」、つまり他の人には真似できそうにないと思われたらダメだということは意識しています。仕事も育児も大変なところや、失敗をオープンにして、どんどん部下や後輩にダメな自分も含めて見せていくこと。そして、周囲のサポートを仰ぐこと。そうやって僕が完璧ではないながらに育児参加している姿を見たら、後輩たちも「自分にもできそう」って思ってくれるんじゃないかな。 大河原 自己開示、それは本当に大事ですよね。私は第1子を産んだ時点で既に管理職だったので、ある程度自分で仕事をコントロールでき、両立もしやすかった。でも、メンバークラスだったらそうはいかなかったかもしれない。私はそこに課題を感じ、もっと組織で育児中の社員をサポートできる体制をつくるよう働き掛けました。それからは、育休から復職する社員に対し、マネジング・ディレクターがサポーターに付いたり、お互いの不安や悩みを相談できるコミュニティーをつくったり、さまざまな風土改革に取り組んでいます。メディアで取り上げられるワーキングマザーは大半がスーパーウーマン。でも、大多数の人がそれを見て「私には無理」と冷めてしまっている。私は、仕事と家庭を両立させることは決して特別ではないと下の世代に伝えていきたいですね。私自身、失敗もします。そんな普通の人でも両立できると知ってほしいし、一口に両立と言ってもやり方は十人十色。それぞれが自分らしいスタイルを模索しています。そんな先輩たちを見て、「ワーキングマザーはこうあるべき」なんて答えはないことや、自分らしいやり方で仕事も家庭も楽しめばいいんだと感じてもらえたらと思います。 取材・文/横川良明 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)合わせて読みたいこの企業の記事 ■【アクセンチュア】コンサルタントとの真剣勝負を通じ、学生のレベルを超えた思考体験を ■【アクセンチュア執行役員/堀江章子さん】ビジネスと技術を融合し企業のグローバル化とデジタル化を支援する ■【アクセンチュア】社内外で関わる全ての人に最適解をもたらす人材になる 企業情報 ■アクセンチュアの企業情報
「成長」と「自分らしく働く」を両立する方法 /Theme 2・テクノロジーコンサルタントの仕事と成長 組織の中でパフォーマンスを上げ、ビジネスパーソンとして圧倒的に成長したい。同時に、個人としての価値観を大事にしながら自分らしく働きたい――。この両方をかなえられてこそ、働く醍醐味は最大化される。世の中に大きなインパクトを与える仕事を数々手掛けているアクセンチュアのビジネスプロフェッショナル6人の仕事論から、“両立の秘訣”を探ってみたい。 【Theme 2】テクノロジーコンサルタントの仕事と成長 シニア・マネジャー/郡司陽介 × 文系出身エンジニア/川内 美桜里 ─ お二人は今、どんなお仕事を担当されているのでしょうか? 郡司 2017年の夏頃からRPA(Robotic Process Automation)の開発プロジェクトを担当しています。RPAとは、単純作業と呼べるようなルーティン業務をロボットが自動で行うこと。でも、ここで言うロボットというのは皆さんがイメージするPepperくんとは異なり、パソコンの中で動くソフトウエアのようなものです。請求書や申請書の登録業務なども、RPAを活用して自動化できる業務の一つ。RPAを用いて業務の効率化を進めたいと考えるお客さまが増加しているので、当社でも、この分野には特に力を入れて取り組んでいるところなんです。 川内 私もRPAを扱うプロジェクトのメンバーとして、現在はあるお客さま先に常駐し、開発業務を担当しています。この間までは、Excelベースの依頼書を基幹業務システムに自動登録するための開発を行っていました。 ─ システム開発会社やWeb系の企業ではなく、コンサルティングファームでエンジニアとして働く違いは何でしょうか。 郡司 一般的にはエンジニアのことをシステムエンジニアと呼びますよね。けれど、当社ではその呼称を使っていません。当社のエンジニアは、ソリューション・エンジニア。つまり、システムを作ることが目的ではなく、テクノロジーを使ってお客さまにソリューションを提供することが第一の目的です。そのためには、まずはお客さまの業務内容の全体像を知ることからスタートします。その上で、どうビジネスを改革すればお客さまの課題をスムーズに解決できるか、それをどうシステムに落とし込んでいくかを徹底的に考えていきます。 ロボット開発は単なる手段。ゴールはお客さまの課題解決 ─ つまり、エンジニアであっても技術力だけでなく、ビジネス的視点や、コンサルティング能力が求められるんですね。 郡司 はい。簡潔に言うと、当社のエンジニアは提案型。お客さまから「これを作ってください」と言われたものをそのまま作ることはしません。なぜそれを作る必要があるのか、目的と本質をとことん議論します。その中で、もっとこうした方がいいという意見が出れば必ずお客さまにも伝えますし、その結果、「RPAを導入する必要はない」という結論に至ることもあります。でも、それでいいんです。なぜなら、先端技術を企業に導入することが私たちのゴールではないからです。他の方法でより早く効果が出る施策があるならば、迷わずそちらを選ぶと思います。─ 川内さんは、そんなアクセンチュアの環境の中で新卒1年目を過ごし、ご自身の成長をどのように実感していますか? 川内 私はそもそも文系出身で、コードも何も書けないところからのスタートでした。だから、この1年間で学んだこと全てが私にとっては成長そのもの。自分の作ったシステムを自分で起動させ、それがちゃんと動いているのを見た時は感動しましたね。この間も、私の作ったシステムに対して、お客さまが「ここの工程は人がやる とついミスをしがちなんだけど、やっぱりロボットはミスしないんだ。すごい!」って喜んでくださって。その時は、自分の仕事の価値を感じられました。 1年前はコードも書けなかった。今では「技術力」が自分の強みに ─ 貴社では若手エンジニアの成長を加速させるために、どのような工夫をしていますか? 郡司 一つは研修制度ですね。当社では、新人研修をはじめ、クラスルーム型、オンラインなど、いろいろな研修があり、オンラインだけでも2万4000種類以上。各々のニーズ、レベルに応じたトレーニングを常に受けられます。また、もう一つ特徴的なのが、キャリアカウンセラー制度。全社員にプロジェクトでの上司とは別にキャリアカウンセラーが付き、今後伸ばしたい領域や世の中で求められるスキルなど、自分自身の成長について定期的にディスカッションします。また、2年前から新たな評価制度を導入。社員同士を比較するのではなく、一人一人がプロフェッショナルとして成長することに主眼を置いています。組織の多様性を重要視する中、画一的な評価基準のもとで社員同士をランク付けし、競争させても、多様な人材は育ちません。 川内 それは私もすごく実感しています。キャリアカウンセラーだけでなく、現場の上司とも話し合う場が業務時間内に設けられていて、そこで自分の目標と組織から期待されていることは何かを整理できるのは、すごくありがたいですね。私の場合、人とコミュニケーションを取るのが得意。そういう私らしさを理解した上で、上司からは今一緒に働いている中国のメンバーとの橋渡し的な役割をお願いしたいと言われました。組織の中で自分に期待されていることがはっきり分かるだけで、自分の意識も変わるし、行動も変わる。単に目の前の開発だけをやっていればいいわけじゃないと気付かされます。─ 貴社では技術系部門においても一人一人の志向性や適性を尊重したキャリア支援があるんですね。 郡司 まさにそうです。“Think Straight, Talk Straight”がアクセンチュアの文化。皆が素直に自分の色を出してくるので、むしろ目が痛くてチカチカしてしまうくらいです(笑)。 川内 エンジニアだけで見ても、本当にいろいろな人がいますよ。私のチームにも、時短で働くワーキングマザーもいれば、育休明けの男性マネジャーもいる。国籍もさまざまで、働き方に対する考えも十人十色。だからこそ、お互いの違いを受け入れるカルチャーがある。自分の個性や価値観を活かして働いている状態が自然なので、すごく心地良くいられますね。 郡司 それをシンボリックに表しているのが、『キャリアズ・マーケットプレース』という制度です。これは社内転職サイトのようなもので、Webから応募ボタンを押すだけで、別の部署への異動を申請することができます。しかも、上長の承認は一切不要。異動がかなうかは受け入れ先次第ですが、自分で自分の未来を選べる自由があります。アクセンチュアは、常に「市場価値の高いプロフェッショナル」を育てるための最高の環境をアップデートし続けている会社です。それは、自信を持って断言できますね。 取材・文/横川良明 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)合わせて読みたいこの企業の記事 ■【アクセンチュア】コンサルタントとの真剣勝負を通じ、学生のレベルを超えた思考体験を ■【アクセンチュア執行役員/堀江章子さん】ビジネスと技術を融合し企業のグローバル化とデジタル化を支援する ■【アクセンチュア】社内外で関わる全ての人に最適解をもたらす人材になる 企業情報 ■アクセンチュアの企業情報
自分らしいキャリア&ライフを確立したい。が、どうすればできるのか――? これから社会へ出た後、20代~30代でぶつかるであろうキャリア選択の課題について経営コンサルティングファーム・BCGのコンサルタントを中心に、第一線で活躍中のプロフェッショナルたちにその解決策や思考法を聞く。より良い人生を送るために、仕事とどう向き合い、キャリアを切り開いていくべきか、本質思考で考えてみよう。 最終回となる今回のテーマは、オリンピックイヤー後のキャリア形成。少子高齢社会の本格到来による人手不足の常態化や、働き方改革、グローバル化やイノベーション追求の加速など、働く環境が猛スピードで変わる中、2020年の東京オリンピック開催までは好景気が続くと予測されている日本。ではその2020年の向こう側には何が待っているのだろうか? 現在新卒採用の責任者を務め、本連載を俯瞰してきたパートナーの丹羽恵久氏に話を聞いた。――約1年続いたこの連載企画も今回が最終回になります。丹羽さんは、これまでのインタビューで交わされる会話に耳を傾けてこらましたが、振り返ってみていかがでしょう? BCGの採用に携わる立場としても、省庁や先進企業の変革を見つめている人間としても、非常に興味深くインタビューの数々を傾聴しました。この連載企画では「これからの『働く』」がテーマでしたが、激動の時代における働き方やキャリア形成の在り方について、私自身もいろいろと考えさせられました。 >>連載バックナンバーはこちら 全編を通じて感じたのは、皆それぞれの考え方を持って働き、転職なども経験しながら、自分ならではのキャリアを作り上げていた点です。 例えば第2回に登場した学生の皆さんが、今どんなことを考え、何を知りたがっているのか、新鮮な思いで受け止めましたし、彼らと向き合うことで、私の知らなかった一面を見せてくれた当社の千田や日浦の話もまた、とても興味深かったです。 また、第5回は経産省の菊池さんとクロスフィールズの小沼さん、そして元外務省のキャリアを持つ当社の石田による座談会でした。社会貢献をテーマにしながらさまざまな話題が登場しましたが、結局のところ「どこで働くか」ということよりも、「どう生きていくか」「どんなふうに社会と向き合うのか」を考えることが大切であるという意見には共感すると同時に、今この時代ならではのキャリア観の変化を強く感じました。 第1回で当社の水越が発信した「これからは不確実性の時代。だから自分のキャリアや自分のブランドは、自ら考え、作り出し、磨いていかねばならない」という視点を、実はすでに多くの方が無意識のうちに備え、「自分ブランドの磨き方」を模索し始めているのではないでしょうか。 ――オリンピック開催が近づくにつれ、開催後に起こる社会や経済の変化についても、少しずつささやかかれるようになっています。今から2年後、就職やキャリア形成をめぐる環境にも変化がやってくるとお考えですか? 2020年だから何かが突然変わる、ということはないと思います。しかし今現在、既に世の中全体で旧来のキャリア観は変化し始めてきており、この変化が一層顕著になるのが、2020年以降ではないかと感じています。 連載の第3回にはPKSHA Technologyの上野山さんと当社の上山が、第4回にはBCGデジタルベンチャーズの平井と山敷が登場し、各自が歩んできたキャリアヒストリーや、今後についての考え方を語ってくれました。 先端テクノロジー領域に携わる彼らの対話を聞いていると、キャリア形成のピークを、従来よりもずっと早いタイミングで意識していることが分かります。四者四様に異なる発想や認識はあるにせよ、少なくともこれまでの日本のビジネスパーソンに根付いていたものとは明らかに違うキャリア観を持っています。 終身雇用を前提にしていた時代は、40~50代に自分のキャリアのピークが訪れるようなビジョンを描くのが当たり前でした。しかし、今の時代は全く異なるスピード感で動いています。 ――キャリアを構築していくための道のりである成長曲線。それを上り坂に例えるならば、坂道の勾配が以前よりも急になっている、ということでしょうか? そうですね。近年の欧米の実情を見れば分かりやすいでしょう。例えば、大学の学部卒でいわゆるシリコンバレーのテック企業に入社して、いきなり責任あるポジションを任され、高額な年収を受け取ったり、大学在学中に設立したベンチャーで画期的なアプリ等を開発して大成功しているようなケースがいくつも生まれています。彼らは社会人になってすぐに、あるいはまだ学生のうちから、キャリア形成の上り坂を一気に駆け上がっています。 一方、これまでの日本はどうだったでしょう? 大学3~4年生になってから初めて社会に出て行くことを意識し始め、「ヨーイ、ドン!」で始まる一括採用のプロセスを経て会社に入った後、少しずつ経験を積みながら、皆が同じ足並みでゆっくりと成長をしてきました。 もともと日本は、学校教育と社会人教育が分断された構造です。学生時代は学業に専念し、仕事やキャリアについては社会に出た後に学べば良い、という考え方をしていました。終身雇用を謳う企業は、学生たちをポテンシャル採用し、就職後に10年、20年という長い時間をかけて一から育てることが当たり前だったのです。 しかし、日本の社会も変化の時機を迎えています。企業の体力は昔ほど堅牢ではなくなっており、テクノロジーの進化によってビジネスが目まぐるしく変化していく中で、これまでのような悠長な人材育成では国際的競争力も失ってしまう。新卒入社社員にも即戦力としての活躍がより期待されてくるでしょう。また、かつてはスーパージェネラリストが優秀な社員とされていましたが、その価値観も変わりつつあります。これからは、強みとなる専門性を備えたエキスパートこそが高く評価されていく環境になっていくはずです。 そうなれば当然、学歴で判断するようなポテンシャル採用ではなく、真に活躍できる人材を見極めて採用する必要が出てきます。特に、インターンシップの在り方などは大きく変容する可能性があります。 ――今後、就職の形が大きく変化していくことが予測される中、これから就職活動を始める学生たちには、何が必要になってくると思いますか? 学生のうちから、自分の強みを認識することが重要だと考えます。これからの時代、プロフェッショナルなビジネスパーソンであるために必要な要件を、私は「ソフト」「ハード」「ハイブリッド」の3つの側面で捉えています。この中のどれを自分の強みとして磨いていくか、整理してみてほしいのです。 「ソフト」、つまり内面的な部分で言えば、アダプティブ・ケイパビリティー(環境適応能力)を高めていくことが重要になるでしょう。つまり、物事を柔軟に考え、臨機応変に問題解決をしていく能力や心構えです。 一方、「ハード」とはモノを創る力や知識のこと。例えば、今やどんなビジネスにおいてもデジタル領域の知見が必要とされる時代です。その領域に関する技術的なスキル、もしくは一定の知識を蓄えることは必要になってくると思います。 そしてハイブリッドとは、文字通り、このソフトとハードとをつないでいく資質や能力のこと。英語をはじめとする言語能力などは典型例で、英語のテストの点数の高低などではなく、言語を通して「正しくコミュニケーションできるか」が大事です。連載の第6回でユニ・チャームの横関さんや当社の滝澤が示していたような、異文化との向き合い方もその一例と言えます。 以上の3つの側面から、自己の強みを把握し、高めていく学生が、キャリア構築において大きなアドバンテージを持つようになると私は考えています。また企業側も、これらの力量を正しく評価し、質の高い採用活動を実現できる企業が、競争力を高めていけると思います。 オリンピックを間近に控え、メディアなどでは「オリンピック開催後には今の好景気も一旦終息するだろう」という論調が目立っています。世界各国の過去の事例を見ても、自国開催のオリンピック終了後に不況が訪れている例が多いからです。 私自身はそうした単純な発想に疑問も持っていますが、もし仮に不景気がやって来れば、企業の採用方針もガラリと変わります。「本当に活躍してくれる人材だけを見極めよう」と採用を絞る姿勢が強まる。こうした局面になればなおさら、ソフト、ハード、ハイブリッドの能力をきちんと示せることは重要になってくるはずです。 ――ソフト、ハード、ハイブリッドを高めていくために、学生のうちにできることはどんなことでしょうか? 特別なことではありません。例えば、昨今では多くの若者が留学を経験したり、NPO活動に参画しています。このような場で異文化や多様な価値観と向き合う体験をすることによって、ソフトやハイブリッドの側面を鍛えていくことは可能です。また、本を読むことでさまざまな知識を得ることもお勧めします。 ただし、そうした機会に恵まれても、学びへと昇華されていないケースも散見されます。ただ「留学しただけ」「本を読んだだけ」では、学びにはなっていません。重要なのは、本質的なモノの見方、論理的思考力があるか否かです。正しい解釈や知見を得るためには、多面的に物事を見て、その上で自分はこう思う、なぜならば……と言えるレベルになること。これがまず大前提です。まずは、自分自身のベースとなる“考える力”を養うことが何より重要だと思います。 ――先ほど、インターンシップの在り方も変わっていくだろう、というお話がありました。具体的にはどのような変化が訪れるとお考えでしょうか? 近年は人手不足の実情もあって、学生側は志望企業に入りやすい状況が生まれているはずなのですが、企業と接触する機会を春の説明会からつくり始めるのではなく、それより前の時期に実施されるインターンシップにも参加する傾向が、ここ数年でむしろ強まっています。 この現象が意味しているのは、「企業に採用してもらう」という従来の学生側のスタンスが、「自分にとって相応しい企業をしっかり見極める」というものへと移行しつつあるということです。「説明会と面接だけで自分の働く場を決めたくない」と思うからこそ、インターンシップや各種の就職関連イベントに足を向ける学生が増えているのだと私は捉えています。 同じような心理変化は企業にも起きています。「1人でも多くの人材を確保したい」という量的な発想の企業もありますが、「『誰でもいいから採用したい』のではなく、真に有望な人材と出会いたい。そのためにも自分たちのビジネスやそれを支える理念や価値観をしっかりと発信して、共感してくれる学生と向き合いたい」と考える企業が圧倒的に多い。そして、このような思いがあるからこそ、良質なインターンシップを実施して参加者を募るところが増えているのです。 おそらくこうした就職する側と採用する側の変化は、今後ますます加速すると考えていますが、学生側の目線で考える時、懸念していることも私にはあります。それは「とりあえずインターンシップに数多く参加してみる」という発想では駄目だ、ということです。 先程も申し上げたように、インターンシップを開催する企業側は、真に価値観を共有できる学生と出会うことを目指しています。私たちBCGも、まさにそういうスタンスでいます。闇雲にたくさん参加するのではなく、「自分がイメージするキャリアビジョンに適した場はどこなのか」をしっかり見極めるための貴重な機会としていかなければいけません。 さらに今後は、学生自身が「本来持っている自分のポテンシャルを企業側へ伝える場」へと進化していくと見ています。これまで以上に、学生側には自分が持つ能力や伸びしろを発信する力、企業側にはそれを正しく見定める力が必要になるでしょう。――最後に、変化の激しい時代に、自分らしくキャリアを築いていくために必要なこととは何だとお考えでしょうか? 冒頭でも水越のコメントに触れましたが、これからは「自分のキャリアに自分で責任を持たなければいけない時代」です。受け身にならず、一人一人がプロアクティブにキャリアを創ることが何よりも大事であると考えます。 この連載企画のタイトルでもある「キャリア&ライフデザイン」というものを、学生のうちから明確にイメージし、ビジョンを持つことは容易ではないでしょう。私自身、学生時代にそんな立派なものを持ってはいませんでした。 しかし、これからキャリアをスタートする人たちにとっては非常に重要なものになるはずです。自分なりのキャリアイメージや人生設計というものに取り組みつつ、そのために必要なものは何かを考え、同時に今の自分に不足しているものも見つけ出し、「それをどこで、どんな人たちに囲まれながら、どうやって手に入れるのか」を考えなければいけません。 最初はモヤモヤした曖昧な中身でも構わないのです。ただし、「“何”がやりたいかはあるが、“どうやれば”できるかは分からない」なのか、「“何”がやりたいかはまだ分からないけれど、絶対に見つけたい」なのか、曖昧さの中身を明確に認識することは必要です。自分の立ち位置を正確に把握できれば、次第に次のステップが見えてくるはずです。 そのためには、自分に足りないものを素直に認める姿勢とそれを補う努力や工夫、そして腹をくくり、責任を持って自分の選択したキャリアと人生を全うする。そうした“強さ”がこれからの学生には不可欠だと思います。私としても、そのような学生と出会える場を今後ますます模索していきますし、巡り会えた方々と共に、このBCGを通じて成長していきたいと望んでいます。 取材・文/森川直樹、撮影/竹井俊晴
自分らしいキャリア&ライフを確立したい。が、どうすればできるのか――? これから社会へ出た後、20代~30代でぶつかるであろうキャリア選択の課題について経営コンサルティングファーム・BCGのコンサルタントを中心に、第一線で活躍中のプロフェッショナルたちにその解決策や思考法を聞く。より良い人生を送るために、仕事とどう向き合い、キャリアを切り開いていくべきか、本質思考で考えてみよう。 第6回のテーマは「グローバルキャリア」。業種や企業規模に関わりなく、あらゆる企業が国際市場での成功を目指す今、グローバル人材の育成は経営の至上命題ともなっている。果たして「世界で活躍する人材」になるためには、どのようにキャリアを形成すれば良いのか? ユニ・チャームのグローバルマーケティング部門で活躍中の横関秀憲氏と、BCGで数多くのグローバル案件を担う滝澤琢氏に、実体験に基づくアドバイスをもらった。――20代からグローバルビジネスに携わってこられたお二人ですが、「グローバルで活躍したい」という意向はいつごろから持っていたのでしょうか? 横関秀憲氏(以下、横関): 正直なところ、入社当時の私の関心は国内にありました。もちろんユニ・チャームがアジアを筆頭に海外での業績をどんどん伸ばしていることは知っていましたが、私自身は成熟した日本市場での事業に魅力を感じていたんです。グローバルマーケットのことをろくに知りもしないで「日本が一番」なんて思っていたんですよ。 ですから、異動で今の部門に入り、アジアでのベビー向け紙おむつ事業に携わることになって初めて、成長市場でビジネスを展開することの醍醐味に触れ、強烈に魅力を感じるようになりました。 滝澤 琢氏(以下、滝澤): 私は逆に、就活をしている時から「グローバルなビジネスに携わりたい」という志向で、それが就職先選びの軸でもありました。ですからトヨタのようなグローバルメーカーのほか、総合商社なども応募していましたし、トヨタ入社時の配属先希望でも「海外事業に携われる部署へ」と強く主張しました。 願いが叶って海外市場向けの商品企画を担当し、そこでのオペレーションを一通り覚えた後は、より経営に近い領域でグローバルビジネスに携わりたいと考えるようになり、BCGへの転職を決めました。もちろん前職での経験も、今の仕事にとても活きていると実感しています。 ――「グローバルなキャリアを形成したい」という学生は多くいます。実際に海外での仕事に携わっているお二人は、その醍醐味や魅力を特にどういう場面で感じるのでしょう? 滝澤: 現地に足を運び、現物に触れ、人と出会って初めて遭遇できる新鮮な驚き。それが一番ですね。 私が前職で参画したあるプロジェクトでは、ヨーロッパで販売する小型車の商品企画を担当することになりました。同じ車に乗るのでも、その使われ方や生活シーンは日欧で全く違うのではないか、という発想から現地に飛び、現地スタッフと共に車を走らせて何日もヨーロッパ内を移動したんです。 例えば大型量販店の駐車場などで買い物客の動向を観察したり。大きな商品を購入した人が、それをどうやって自分の車に乗せるのか。どんなふうにシートを倒して、どう自分たちが乗り込んでいくのか。そういう何気ない日常の生活シーンを見るだけでも、日本と全く違っているのです。日本にいるだけでは見えてこない、小さな発見の一つ一つからインサイトを得ていく過程が実に面白いんですよ。横関: ああ、すごく分かります。私は今まさに東京とアジアの複数の都市を行ったり来たりしているんですが、対象が紙おむつという毎日の消耗品の場合でも同じですね。 日本とは使用頻度など、使われ方が全然違いますし、同じアジアでも国によって違いがあったりします。それを知っていくだけでもワクワクしますよね。 滝澤: はい。現地・現物こそがマーケティングの基本、という発想は何も当時のトヨタや自動車産業に限ったことではなくて、今私がBCGで携わっているさまざまな企業の多様なプロジェクトでもベースになっています。 泥臭いと思う人もいるかもしれませんが、あらゆる製品やサービスが、世界各国でそれぞれ独特の使われ方、親しまれ方をしている。世界を見渡せば、想像もつかない、知らないことだらけです。だからこそグローバルな仕事は面白いし、やりがいもある。 横関: もちろんアンケート調査などもします。日本に居ながらにして取得できるデータもありますが、やっぱり現地に行かないと見えてこないことがたくさんある。 それに、アジアの新興国では急速に成長している地域も多いので、同じ街であっても去年行った時と今年とでは生活ぶりがガラッと変わっているケースがあります。 生活者の所得水準が低くて、紙おむつが高価な商品だった時には「紙のおむつを使うのは夜寝る時に1枚だけ」だったのが、急激な経済成長でより身近な商品に変わっている、などということも珍しくありません。 滝澤: 成熟市場である日本では経験できないような変化のダイナミズム。それと向き合う醍醐味もグローバルビジネスの面白さの一つですよね。 私の場合、前職時代にも中国市場を担当した経験があったのですが、その後BCGで中国関連のプロジェクトを担当し、何年ぶりかで向こうに行ったんですよ。そうしたら、まさに横関さんが仰った通り、現地の様子が経済成長のおかげで一変していてとても驚きました。 ――「グローバル」というキーワードが出ると、必ず英語をはじめとする語学力が話題に出ます。お二人はどの程度、外国語を習得しているのでしょうか? 滝澤: もともと英語は苦手でした(笑)。何とか通じる程度でしかなくて、ほとんどがOJT、仕事で必要に迫られる中で少しずつ覚えていきました。 横関: 私なんていまだに苦手です(苦笑)。それでも、なるべく自分で話すようにはしています。現地では通訳の方に入ってもらう場面もありますが、現地の人の心に飛び込んでいかないと、先ほどお話をしたような実態にも触れられません。ですから、下手でもいいからなるべく自分で話すようにしています。 アジアだと相手側も英語が流ちょうなわけではありませんので、カタコトながらも現地の言葉を使ってコミュニケーションしてみることも多いですね。滝澤: 同感です。アジアだろうとヨーロッパだろうと、大切なのは言語ではなくて、どれくらい相手の懐に飛び込み、相手と同じ目線になれるかです。 ですから、グローバルなキャリアを目指す学生の皆さんにも、まずは物怖じしないメンタリティーを持つことをお勧めしたいです。 横関: 私は最初の数年間、日本市場と向き合いながら仕事を覚えていきましたが、そこで得た教訓の一つが「悩んだら消費者に聞け」ということです。それは海外でも同じで、分からないことがあったら、現地の人に聞くのが一番。 「外国だから」とか「語学に自信がないから」といって、自分で壁を作っていたらビジネスなんて前に進みませんよね。 滝澤: 仰る通りですね。私の場合、BCGのミュンヘンオフィスに赴任した際に実感しました。 クライアントはドイツ人で、ドイツ人のコンサルタントばかりのプロジェクトチームに、ごく当たり前にメンバーとして組み込まれる。メーカーでの若手時代と違って、一人のプロフェッショナルとして価値を出すことが常に求められる状況です。私が英語やドイツ語を話せるかどうかなんてことは関係ありません。問答無用での武者修行でした(笑)。 しかし、そういう環境があったおかげで、少なくとも現地で通用するだけのメンタリティーを養っていくことができました。 ――物怖じせずに飛び込んでいく姿勢の他に、何かグローバル人材に必要な素養や資質があれば教えてください。 滝澤: プロジェクトをリードする立場を任されるようになると、クライアントの経営幹部クラスと話をする機会が増えていきます。その時、痛感するのが思考様式の違いです。 グローバル企業の経営幹部は物事をストラクチャー化(構造化)して捉えた上で、ロジカルに判断する方が多いです。非常に忙しい中で、スピーディーに決断を下すのが当たり前の環境がそうさせるのでしょうね。そうした経営幹部クラスと対峙するには、自分の言いたいことを、分かりやすくシンプルに伝える力が問われます。もたもたしていては「いいから、早く結論を言え」と言われかねない。横関: すごく分かります。アジア市場の場合、日本のメーカーの人間が行くと、向こうの人たちは何か重要な意思決定ができる存在が来た、と思って迎えます。判断を仰がれた時、「社に持ち帰って検討します」と答えればすむような状況ではないことが、非常に多いですね。求められるスピードが違う。 滝澤: 日本のビジネスにはスピード感がない、みたいな話がよく出ますけれども、実際のビジネスのスピードに差があるわけではなく、思考プロセスの速度の違いが大きい気がしています。 ですから国内での仕事に携わりながら、いつか海外を目指したいという方は、日本にいるうちから物事を構造化して捉え、言いたいことをシンプルに分かりやすくまとめるというスタイルを常に意識し、鍛えていくといいのではないでしょうか。 横関: 私はまさに日本での仕事経験を積んでからグローバルビジネスに携わるようになりましたが、滝澤さんが仰る通り、日本という恵まれた環境にいる間に、学んでおけることがたくさんありますよね。 滝澤: 私は国内での仕事は、人材育成視点で見たときの“道場”のような存在だと思っています。国内のビジネスは、企業にしても商習慣にしても長い歴史の上で確立されてきたものであり、深い学びが得られます。ここで修行を重ねて“ビジネスをする力”を養った上で、グローバル市場に出てストレッチされると、より大きな成長が得られるのではないでしょうか。 ユニ・チャームさんのように海外で成功している企業の場合、当然グローバル部門に人気が集まりますよね? 横関さんのように抜擢されるためには一定の基準のようなものがあるのでしょうか? 横関: 明確な基準は聞いたことがありませんが、やはり国内のビジネスで一定の実績を上げることは必要だと思います。 とはいえ、新卒入社2~3年目の若手がいきなり大きな成果を挙げられるはずもありません。大事なのは、自分で目標設定をし、それを達成するという小さな成功体験を積み上げることです。そしてそれらの経験を通して、社内外の幅広い人たちとの間に信頼関係を築いていくことも重要です。 私自身は20代で、「お得意先に『横関さんを』とご指名をいただけるようになること」、「何かのテーマで『全国で一番』の成果を挙げること」という2つの目標を立て、どちらもクリアすることができました。そのための数々の地道な努力や行動が、自分の自信になり、その後のキャリアの広がりへ繋がっていると思います。――これまでのグローバルな取り組みの中で、特に成長できたと思える経験について教えてください。 滝澤: BCGに入って3年目に、グローバル展開をしているあるクライアントからの依頼で、日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国という4つの地域を対象に、消費者インサイトを調査するプロジェクトを担当しました。 それぞれ異なる市場特性を持つ地域で個別に成功していくための手立てを考えるのではなく、この4エリアの特性を踏まえた上で、グローバル全体でどういう方針を取るべきかを導き出すチャレンジでした。 当然、とても難しいテーマです。単に固有の複雑性を持つ各エリアの特徴をピックアップして、最大公約数的な結論を出しても、実際のビジネスに役立つ価値にはなりません。しかし、これこそが本当の意味でのワールドワイドな取り組みですから、難問ではありましたが、自身を成長させる機会になりました。 横関: 私も似たような経験を今現在していて、成長を実感しているところです。2018年以降に発売する計画の新製品についてのマーケティングプロジェクトで、今リーダーを務めているのですが、パッケージやPR用のコピーなどを作っていくオペレーションだけでなく、原価計算から事業すべての設計まで任されています。 ここまで大きな裁量を任されるのは私にとって初めての挑戦で、経営陣から叱咤激励を受けつつ(苦笑)、今までとは比べものにならないほど複雑多様な人たちと向き合って仕事をしているところです。 私もまた多様性の中で調整能力を発揮して結果を出す、という試みをしているところなので、これを乗り越えたらまた一つステップアップできるのではないかと思っています。滝澤: やはりグローバルな仕事には、複雑性や多様性が必ず付いて回りますよね。文化も価値観も異なるし、スピード感や意思決定プロセスも違う中で、次々と知らないことや驚きに出会う。 新しい体験の連続ですから、知的好奇心が大いに刺激されます。それを面白いと思えれば、国内で得られるものよりも数段大きな成長が実現できるのではないでしょうか。 横関: そうですね。国内市場にも独特の成熟度や深みがあるので、学べることはたくさんあるけれども、世界に出てみれば知らないことの方が圧倒的に多いです。それを知るのが面白いと思えれば、少々しんどくても自分を高めていくことができます。しかも成果のスケールも大きい。 私の夢は世界中の「不快」をユニ・チャームの製品で「快」に変えていくことなので、これからもさらに成長していかないと、と思っています。 滝澤: 素晴らしいですね。私も30代は経営視点でビジネスに携わりたいという強い思いを持ってBCGに入社しました。実際、自己を高める多くのチャンスが広がっている環境ですから、新しいものをどんどん吸収して、コンサルタントとしてさまざまな領域でクライアントに貢献できるよう頑張ろうと思っています。 (取材・文/森川直樹、撮影/竹井俊晴)