2018年に50周年を迎えたデロイト トーマツ グループ。そのメンバーファームであるデロイト トーマツ コンサルティング(以下、DTC)は、コンサルティング業界において独自のポジションを築いてきた。次の50年の成長を支える、事業戦略とは何か。また同社のコンサルティング力は、どのように磨かれているのか。同社代表執行役社長 宋 修永氏、人事担当者に聞いた。 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 代表執行役社長宋 修永氏 韓国の大手電機メーカーで大規模のGlobal BPRプロジェクトに携わる。コンサルタントに転身後、グローバルSCM分野での戦略策定、業務プロセス・組織改革、IT計画策定・実行支援などを、自動車、電機といった製造業中心に数多く手掛ける。2018年より現職 50周年を迎えたデロイト トーマツ グループ 2018年、デロイト トーマツ グループは50周年を迎えました。その一員としてコンサルティングサービスを担うデロイト トーマツコンサルティング(DTC)は、コンサルティング業界の中でも極めてユニークなポジションを築くことができました。戦略特化のファーム、テクノロジーに強いファームなど、各社さまざまな特徴がある中で、DTCはあらゆる業種・業界のクライアントに、戦略策定から実行までを一貫して支援する総合コンサルティングファームとして地歩を固めています。総合ファームとしてあらゆる課題に対応できる理由としては、創業以来、徹底して「クライアントファー スト」の姿勢を貫いてきたからだと思います。 DTCは華々しくアドバルーンを打ち上げて満足するような会社ではありません。むしろ極めて地道な会社と言えるでしょう。いたずらに目先の収益のみを追求することはせず、我々のサービスがいかにクライアントの成果につながったのかを重視してきました。そのために、自社で高い基準を設けて、提供するサービスの品質にこだわり、ひたすらクライアントのビジネスの成功を追求してきた歴史があります。 我々は、その時々の流行のソリューションに安易に走ることなく、一つ一つの課題に真摯に向き合い、真に必要な改革を支援してきました。その結果として、特定分野にとどまらず、あらゆる領域における知見が蓄積されていったのです。 業種と課題の2軸でサービスラインを整備 DTCでは現在、二つの軸によるチーム編成をとっています。製造、金融、資源、パブリックセクターといった業界・業種別のインダストリーサービスと、戦略、組織変革、オペレーション、テクノロジーなど機能別のコンピテンシーサービスがあり、各領域にプロフェッショナルを有しています。 例えば、私自身はもともと電機メーカー出身で、半導体の専門家でした。コンサルタントとしては製造業を中心に、主にSCM分野でのストラテジーやオペレーション改革のプロジェクトに数多く携わってきました。このように、それぞれの専門分野において豊富な経験と高度な知識を持つメンバーがチームを組み、複雑な課題を解決に導きます。 そして重要なのは、このマトリックスが日本国内にとどまらないということです。全世界150カ国に及ぶデロイト ネットワークのエキスパートと連携して、グローバルな知見を共有しているのです。 これにより、クライアントに提供できるサービスの幅が大きく広がります。人材採用や組織改革における課題であっても、オペレーション変革であっても、DTCなら幅広い領域の知見を駆使してコミットし、いかなる難題にも応えることが可能です。そして、その積み重ねがDTCへの圧倒的な信頼につながるのです。 一方、社内のコンサルタントの視点から見ると、活躍のフィールドがそれだけ広いとも言えます。特に若い方々にとっては、あらゆる産業・領域のプロジェクトを、グローバルレベルで経験できるのは大きな魅力でしょう。DTCのクロスボーダーなアプローチは、世界中のどこにいってもその領域の第一線で活躍できることにつながるのです。クライアントファーストを徹底する厳しいサービス基準の下で、幅広い経験を積んで成長していただきたいです。 若手がクリエーティブに働ける環境を整えていきたい これまでにDTCは未来を見据えた投資を行いながら、総合ファームとして体制を固め、急成長を遂げてきました。しかし、この先も従来のやり方が通用するとは思えません。人口問題や環境問題などさまざまな社会課題への対応も必要ですし、デジタル、AI、クラウドなどテクノロジーの革新も進んでいます。 それに伴い、クライアントのビジネスも大きく変化していきます。例えば自動運転が普及したとき、自動車保険はどうなるのか。保険会社はどのようなサービスモデルを提供し、新しい時代をどう生き抜いていくのでしょう。このようなことを、クライアント自身も真剣に考えています。 そこでコンサルタントが従来の延長線上のアドバイスしかできないようでは、やがて必要とされなくなってしまいます。今、我々がなすべきことは、この先30年、50年後のDTCがどうあるべきか、大局的な見地から未来を描いていくことなのです。 私は、DTCの未来を創る主役を担うのは、若い方々だと信じています。我々の固定観念を軽々と飛び越えるような自由な発想をどんどん出してもらい、新しいDTCをつくってもらえたらと考えています。 私の役割は、若い人たちがクリエーティブに働ける環境を整えること。そのための投資は惜しみません。次の50年のために、未来を創るという挑戦に挑む若い人たちをしっかりとサポートしていきたいですね。 【人事インタビュー】DTC「次の50年」を支える 人材育成の取り組み デロイト トーマツ グループ50年の歴史で培ったノウハウを強みに、グローバルに通じるプロフェッショナル人材を育成してきたDTC。「次の50年」を担うコンサルタントを育てるための取り組みを、人事担当者に聞いた。 デロイト トーマツ コンサルティング 新卒採用チーム マネジャー押切 麻里子氏 コンサルタントの実力を伸ばす「基礎スキル」と「専門性」の強化 「デロイト トーマツ グループの一員として、『100年先に続くバリューを生み出すコンサルティング力』を強みに成長してきた私たち。今後のDTCを支えるプロフェッショナルを育てるための仕組みや機会を多く提供しています」 そう話すのは、DTCの人事を担当する押切 麻里子氏。実際に、新入社員の育成については特に力を入れている。 「入社するとまず、約2カ月間の『BA(ビジネス・アナリスト) ブートキャンプ』と呼ばれる新人研修が待っています。ここでは、プロジェクトに配属されてすぐに役立つスキルセットのトレーニングはもちろん、チームワークの醸成や自己の殻を破るためのプログラムも用意しています。活躍するビジネスパーソンとしての素地をつくるため、スキル・メンタル両面から成長をサポートすることが重要だと考えています」 とはいえコンサルタントが本当に成長するためには、実際のプロジェクトにおいて経験を積むこと以上のものはない。そこに、『インダストリー/コンピテンシーマトリックス組織』を持つDTCならではの成長機会がある。 「入社後数年は、数カ月単位のサイクルでさまざまな領域のプロジェクトにアサインされます。DTCでは、戦略・テクノロジー・組織変革・オペレーションなどの分野に分けられる『コンピテンシーサービス』の縦軸と、金融・資源・パブリックセクターなど業界別の『インダストリーサービス』の横軸が組み合わさってプロジェクトが発足します。専門性の高い各分野のプロフェッショナルたちのもとでプロジェクトに参画することで、コンサルタントとしての基礎スキルを身に付けるとともに、各業界や分野について学ぶことができます。そしてさまざまな領域を経験した後、自身のこれまでのプロジェクトを振り返りながら、適性や将来を考え専門領域を絞り込み、その中でさらにスキルを積み重ねていく成長モデルです」 その後は各プロジェクトの現場責任者ともいえるマネジャー、そしてプロジェクト全体を取り仕切るパートナーへとキャリアパスを歩んでいく。 「代表の宋をはじめ、社内は次世代の活躍に対して期待が最高潮に高まっています。コンサルタントとしての総合力・実践力だけではなく、専門性の高いプロフェッショナルに育ち、これから先のDTCをつくっていってほしい。そう考えるマネジャーやパートナーが多く、若手の方々が挑戦できる機会も豊富に用意されています」 専門性の高いビジネスプロフェッショナルとしてコンサルタントを育てる仕組み、そして若手の成長を大きく促す組織風土が、これからもDTCの成長を加速させる。 取材・文/瀬戸友子、大室倫子(編集部) 撮影/赤松洋太
DTCの今後を担う若手に求められる高いコンサルティング力とは、どんな仕事を通して磨かれていくのか? 4年目のコンサルタントと、その成長を支えるマネジャーに話を聞いた。 シニアマネジャー尾山耕一氏 2005年入社。自動車産業を中心に、次世代車の開発や新規事業立ち上げのプロジェクトに参画。その後、新設のソーシャルインパクトユニットに移り、シニアマネジャーとして環境経営や水素社会の実現をテーマに活動中 ─まずはお二人の、現在のお仕事の内容を教えてください。 尾山耕一氏(以下、尾山) 私はもともと自動車関連のプロジェクトを数多く手掛けてきたのですが、現在はソーシャルインパクトユニットに所属し、水素社会の実現や環境経営の実践といったテーマで社会課題の解決につながる活動を進めています。 直井聡友氏(以下、直井) 私は2015年に入社後、学生時代から環境領域に関心があったこともあり、2年ほど前に自ら手を挙げてソーシャルインパクトユニットに参加させてもらうようになりました。 ─具体的にどのようなプロジェクトを手掛けているのでしょうか。 尾山 最近では、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)ガイドラインへの対応が中心です。これは、企業が気候変動の影響を把握し、その情報を開示していこうという国際的な提言のことで、日本でも金融庁や環境省をはじめ、賛同を表明する企業が増えています。プロジェクトでは、このガイドラインに沿って具体的に何をするのか、クライアントとともに検討を進めています。 直井 中央省庁からの受託事業や個別企業からの依頼で、並行して複数のプロジェクトが走っています。業種別では、製造業など比較的CO2排出量の多い産業が真剣に取り組んでいます。 ─これまでの環境対応の取り組みとは何が違うのでしょうか。 尾山 もちろん従来多くの企業が環境負荷削減に取り組んできましたが、世界の年平均気温は上昇を続け、異常気象も各地で起こっています。新興国も含めて今後さらに世界経済が成長していけば、環境問題が深刻化していくことは明らかで、よりアグレッシブな対策を取っていく必要があります。 直井 気候変動に真剣に対応することが企業の経営そのものを変えていくのです。社会的に大きなインパクトを持つプロジェクトと言えます。 尾山 資本主義社会では、企業が利潤を追求するのは当然のことです。しかし、これまではそれを優先するあまり、環境負荷などのマイナスの影響が見落とされてきた面もあります。今後は、公益性を確保しながら利潤を追求する経営スタイルへの変革が求められます。将来的には、企業活動が環境に負の影響を与えない、むしろポジティブな影響を与えるような社会にしていければ理想ですね。 ─壮大な目標ですね。どうすればそれが実現できるのでしょうか。 尾山 社内の仕組みを変革したり、ディスクロージャーの制度を整備するなど、多角的なアプローチが必要です。さらには、個々の企業を支援するだけでなく、投資家や金融機関、NGOや国際機関との連携も重要でしょう。企業活動に影響を与える重要なプレーヤーと連携することによって、複数の企業の変革が進むような働き掛けも進めています。 シニアコンサルタント直井聡友氏 学生時代から環境問題や社会課題の解決に興味があり、2015年入社。製薬会社に携わるプロジェクトなどを経て、16年からソーシャルインパクトユニットに所属。尾山氏のもとで、社会課題の解決に尽力する 直井 TCFDはそうした社会を創るための第一歩であり、他にもさまざまな取り組みを進めているところです。13年からスタートした「水素社会実現の研究会」では、我々は事務局を務め、政財界の有志メンバーによるさまざまな課題検討を支援しています。 ─難易度が高そうですが、若手でも活躍できるのでしょうか。 尾山 実際、各ランクのメンバーが活躍しています。まだ経験の浅いビジネスアナリストは、コーチングやトレーニングを並行して行いながら、リサーチや資料作成の支援から始めて、基本的なコンサルティングスキルを身に付けていってもらいます。 コンサルタント、シニアコンサルタントには一定領域を任せ、担当部分に関しては、責任を持ってやり遂げてもらいます。マネジャーになると、自らが中心となって、個別の活動を推進する。それを束ねるのがシニアマネジャーの役割。ランクごとにチャレンジの幅が広がります。 ─直井さんはシニアコンサルタントとして担当を任されていますね。 直井 そうですね。担当クライアントとのコミュニケーションや、プレゼンテーションを担当しています。自分なりに課題を整理して、ビジネスアナリストにリサーチワークを依頼したり、あがってきたリサーチの結果をもとにクライアントに何をどう伝えるかなど、提案資料を作り込んだりしています。企業の部長クラス以上の方々が相手ですから、当然高いレベルが求められます。責任ある仕事を任せられることで、自身の成長につながっていると感じますね。 尾山 直井には、コンサルタントとして自分の価値をどんどん高めていってほしいと考えています。例えば正確に資料を作るだけでなく、それを使って誰に何を訴えるのかが重要になります。 ─仕事で難しさを感じることはありますか。 直井 先進的なテーマを扱っていることもあって、いくらリサーチしても正解が見つからないことも少なくありません。その中でもファクトを拾い上げてロジックを構成して、自分なりの考えをまとめていくのは苦労することもあります。以前、尾山に資料を確認してもらった際、「自分のクライアントだけにとどまらず、その先にあるクライアントのお客さまの視点も持った方がいい」というアドバイスを受けました。もっと多角的な視点で深みのある提案ができるようになりたいですね。 尾山 今はまさに正解がない世界で、自分たちの手で新しいメソッドをつくっていこうとしているところ。変革につながるインパクトを周囲に与えていけるよう、個人としてのパワーをどんどん強めてほしいと期待しています。 ─最後に、この仕事を目指す学生へのアドバイスをお願いします。 尾山 難しさはあるけれど、これまで誰もやったことがないことに挑みたいと思う人は、思い切って飛び込んできてください。そのために、学生時代はたくさん遊んで、たくさん勉強して、いろいろな経験を積んでおけば十分だと思います。 直井 企業経営のあり方を変える現場に立ち会えるのはとても刺激的です。私自身は海外の大学院に留学して、日本の国や企業を相対的に眺めたことが、この仕事を選ぶきっかけになりました。社会人になる前に広い世界を見ておくのはお勧めです。 取材・文/瀬戸友子、大室倫子(編集部) 撮影/赤松洋太
就職マーケットニュース 新卒採用市場の最新動向や旬のトピックを紹介。今採用意欲が高まっている業界・職種、社会的注目を集めている新たな採用手法や就職支援サービス、学生の就職動向など、多岐にわたるテーマに迫る。外的環境を理解し、自分らしい就活スタイルの確立に役立てよう。 ヤフー株式会社は、2016年10月3日より新卒一括採用を廃止し、通年採用の実施に踏み切った。 新卒、既卒、第二新卒など、経歴に関わらず30歳以下であれば応募できる「ポテンシャル採用」を新設。エンジニアやデザイナー、営業職など全ての職種を対象に、年間で300名程度を採用予定とした同社の発表は、各種メディアで報道され、話題を集めた。 しかし実際、“通年採用”とは学生にとってどんなメリットがあるのだろうか? ニュースを目にしたことはあっても、自分事として捉え、具体的に活用の仕方をイメージできている学生は少ないだろう。 2017年4月、ヤフーはポテンシャル採用における初の選考通過者となる新卒入社組をすでに迎え入れており、2018年4月以降の新卒入社者は、全員がポテンシャル採用枠となる。 いよいよ本格稼働フェーズへと移行する同社の通年採用。その背景と実態を探ると、就職活動の本質が見えてきた。 なぜ、皆一律に同時期から就職活動を始めねばならないのか? 日本固有の新卒一括採用システムに疑念を抱いたことのある学生も少なくないはずだ。 通年採用は、そんな旧来の価値観に一石を投じる施策であることは間違いない。ここ数年、ファーストリテイリング、ソフトバンクなど、通年採用に切り替える企業は増えつつあるとはいえ、全体で見ればまだ少数派。今後、拡大が見込まれるものの、今はまさに過渡期だ。 こうした中、ヤフーが通年採用へのシフトを決断した理由を、同社クリエイター人財戦略室の金谷俊樹氏はこう語る。 「大学院生は研究で忙しい時期と就活シーズンが重なってしまったり、留学生は帰国する頃には企業のエントリーがもう締め切られていたり。タイミングが合わず、思うように就職活動ができない学生が年々増えてきています。通年採用によって、こうした個々のニーズに応える体制を整えたいと考えたことが一番大きな理由なんですよ。学生の皆さんには、安心して勉強に励んでほしい。そう強く思っています」 実際、2017年4月入社および10月入社予定の新卒者たちは、院生や海外留学生たちが多くを占めている。また、第二新卒の応募者も増えているという。 「短い就活期間の中で一生働きたいと思える会社を選ぶのは難しいことです。自分に本当に合う仕事や会社とはどんなものか、働いてみて初めて分かることもあるでしょう。第二新卒応募者の大半は、就活時には当社を受けていなかった方です。当時は気付けなかったけれど、働き始めて改めて当社の仕事の面白さを見いだしてくれた方もいるのではないでしょうか」(金谷氏) 同社が目指す、優秀な“人財”を採りこぼすことのない柔軟な採用体制は、すでに一定の成果を上げ始めているといえそうだ。 一方で、通常の就活スケジュールに則って動く大半の学生たちにとって、通年採用は異文化でしかない。通年採用を実施している企業とは、つまり“いつ受けてもいい会社”でもある。となれば、エントリー期限のある、今しか受けられない企業を優先する流れになってしまう。通年採用実施企業が割を食う形にならないのだろうか? 「確かにその懸念はあります。だからこそ、私たちは自社の仕事内容や働く人、風土などをもっと理解していただけるよう、努力をしていきたいと考えています。具体的には、採用HPを刷新して情報量を増やしたほか、昨年から『linotice(リノティス)』というブログメディアの運営もスタートし、年間を通して継続的に当社の情報を発信することに積極的に取り組んでいます。また、当社のテクノロジーの高さや、保有する膨大な量のビッグデータを活用したビジネスの広がりに触れていただく機会を増やすため、サービス開発体験インターンシップの拡充も図っています」(金谷氏) エントリー解禁のタイミングで情報公開を強化する企業群に対して、短期集中の情報戦では伝えきれぬ自社のスケール感を、年間を通して打ち出していく戦略だ。 同社が目指すのは、「情報技術を使って人々や社会の“課題”を解決し、日本をアップデート」(金谷氏)すること。そのビジョンをより具体的に体感してもらえる場として、インターンシップには特に力を入れているという。 「当社の場合、サービス認知度の高さに比べて、扱っている技術領域やビジネス構造が見えにくい部分があると思っています。インターンシップで実務を通して技術に触れてもらうことで、学生の方に自分が学んできた技術がどう当社のサービスと結び付くのかを、具体的に理解してもらえる。また、客観的に自分の技術の汎用性を知る良い機会にもなると思います」(金谷氏) ヤフーをはじめ、通年採用実施企業の多くがインターンシップを積極的に開催している。就業体験を機に、インターンシップ開催企業で働くイメージが湧いた場合、通年採用ならばいつでも門戸が開かれているため、スムーズに選考に進めるというメリットもある。 就活シーズンの限られた時間の中で、複数の企業を比較検討する。それは、相対評価による取捨選択を招き、少なからずミスリードが生まれるリスクがある。通年採用は、絶対評価で第一志望を選び取るという、就職先選びの本来の形に添うものだ。 「通年採用は、『行きたい』と思った時にいつでも応募ができる、シンプルなシステムです。入学してすぐに社会人になった後の目標を具体化したい人もいるだろうし、学業に専念して学生生活を全うした後に自分の知見を活かせる場所を選びたい人もいる。そうした学生の方の多様なライフスタイルに向き合える体制だと思っています」(金谷氏) 社会や組織の歯車になることを忌み嫌いながら、就活は周囲と同調して「時期が来たから」という理由だけで始めるなんてナンセンスだ。一括採用実施企業の採用スケジュールに合わせて意思決定するのではなく、「こんな大学生活を送りたい」「こんな社会人になりたい」という自分の都合で、意志を込めて自分で就活スタート時期を決め、スケジューリングするのが本質ではないだろうか。 自分の人生は、自分でコントロールし、舵を取るのが筋だ。就職という大きな人生の決断こそ、主体的であるべきだろう。生き方の選択は、もうすでに始まっている。 (取材・文・撮影/福井千尋[編集部])