各社のプロジェクト現場で起きている課題を、さまざまなソリューションを用いて解決するマネジメントソリューションズ(MSOL)。クライアント先の現場に入り、各所の連携をスムーズにする調整役を担うことで、プロジェクトや組織全体をより良い方向へ導くことをミッションとしている。 MSOLでは、数百名・数百億円規模のビッグ・プロジェクトに20代のコンサルタントがPMOとして参画する。同社で、若手のうちから「プロジェクトマネジメント」のプロとして働くことで味わえる仕事の醍醐味とは何なのか。 入社3年目の若手コンサルタントと、その成長をバックアップするディレクターに話を聞いた。 ――お二人の現在の仕事内容について教えてください。大内雄司氏(以下、大内): 私は大手外資系のコンサル部門やIT系コンサルティング・ファームで経験を積んだ後、MSOLに入社しました。PM(プロジェクト・マネジメント)コンサルタントとして現場を経験し、現在はディレクターとして金融業界やサービス業界における各種プロジェクトを統括しています。 江口 輝氏(以下、江口): 私は2017年の入社以降、主にクレジットカードの基幹システムに関わるプロジェクトを担当してきました。昨年の7月からは国内の大手企業で、自社クレジットカードシステムを新規組成するプロジェクトに携わっています。これは数百億円規模のビッグ・プロジェクトで、協力会社なども含めると数百名が関わっています。 ――現場では、具体的にどんな仕事を手掛けるんでしょうか? 江口: 一つのプロジェクトの中に、各種領域を担当するいくつものチームが編成されているので、その各所のマネジメントを行うのが私の仕事です。クレジットカードは、支払いから決済、顧客データの作成・管理まで、いくつもの機能が連携するシステムの塊。そしてその領域ごとに担当チームが分かれています。各所で問題が起きれば、関連する他の領域にも影響を及ぼすため、双方を調整していく業務がたくさん発生する。その調整を担うのが私たちです。大内: 私たちのミッションは、大規模なプロジェクトを構築する各チームの間に落ちた問題を拾って対処し、プロジェクト全体の進行をスムーズにしていくことにあります。つまり、全体像を見据えた上で、各所の間に立って調整とコミュニケーションを行い、「ゴールに向かう最適な道筋」をつくるスペシャリストというわけです。 ――なるほど。技術的な部分のコンサルティングではなく、チームや組織のマネジメントにおけるコンサルティングを手掛けているのですね。 大内: そういうことです。昨今のプロジェクトは非常に複雑化しているので、技術者を含め、複数の専門家が集まり、一つの目的に向かう必要があります。専門家と専門家の間をつなぎ、複数部署をまたいで意思決定をするためには、我々のように、マネジメントに特化したスペシャリストが求められているんです。 江口: 私たちは現場に入り込んで主導する調整のプロフェッショナルですが、プロジェクトの全貌を知るためには要件定義書や設計書といったIT領域の知見も必要。こうしたさまざまな業界知識を深めながら、マネジメントの経験を積めるところに大きなやりがいと成長を感じる仕事です。――マネジメントというと「ある程度経験を積んだ人が行なう仕事」というイメージですが、MSOLの若手社員は、現場でどのようなことを任されているのでしょうか。 大内: 我々の仕事は大別すると2つに分かれています。プロジェクト全体にかかわる重要課題を解決する「問題解決型PMO」と、議事録の作成や進捗の管理・調整などの業務マネジメントに特化した「事務局型PMO」。若手社員は、まず後者を経験しながら、成長に応じてより高度な仕事を担当していきます。 江口: 管理や調整というと、若手の仕事を雑用のように解釈する人もいますが、決してそんなことはありません。実はこのポジションも、PM層やリーダー層と接する機会が多いので、プロジェクトの中枢に関わっている実感があります。私も1年目から業務マネジメントを任されていますが、今では「ここの調整は難しいので、江口さんに任せたい」という声をクライアントからいただくことが増えました。業務チーム50名の成果物チェックやタスクの進捗管理も一任され、自分の力を認めてもらえる喜びを感じています。 プロジェクトに関わる全ての人の意図を汲み取り、ベクトルを合わせてプロジェクトを成功に導くことがこの仕事の一番の醍醐味だと思いますし、難しいところ。そういった現場に、最初から「先輩のアシスタント」としてではなく「一担当者」として関わるので、自然と責任感が生まれてきました。 ――MSOLでは、若手コンサルタントの育成をどのようにサポートしていますか?大内: 成長フェーズを2つに分けて、適切な経験を積んでもらえるようマネジャーがフォローしています。第一フェーズでは新卒なりにできることからスタートしつつも、しっかりとその役割と責任を担い、次のステップにつながる課題をクリアしながら経験を積んでいく。そして、一個人としてのコンサル能力を高めるまでに成長することで、ようやく第二フェーズに入ります。 ――第二フェーズでは、どんなことを任せていくのでしょうか? 大内: 組織のリーダーとして活躍してもらいます。とはいえ、MSOLでのリーダーは「会社に与えられたポジション」のようなものではありません。江口で言えば、“江口株式会社”をつくって、そこのボスとなるイメージです。複数のお客さまからの信頼を得て、自分の後輩や部下を従えながら、チーム単位で業績をアップしていく。「自分だけが優秀であればいい」ではなく、多くの人材を育成しながら、トップとして事業を回していく。会社に仕事をもらうのではなく、自律的にキャリアをつくっていくことが求められます。 江口: 私はまだこの第一フェーズにいるので、早く一人前のコンサルとして求められる存在になれるように頑張っていきたいと思っています。そして数年後には自分のチームを持ち、お客さまにより良いサービスを提供していくことが目標です。 ――プロジェクトマネジメントのスキルを、若手のうちから身に付けることの良さは何だと思いますか? 大内: 今は世の中的にも「プロジェクトマネジメントこそが、プロジェクトを成功に導く」という考え方が広まりつつあるんです。そして、その分野にいち早く取り組んできたMSOLでスキルを磨くということは、その後のキャリアにも役立つはず。これから入社する方は特に、「自分たちの力で、社会に大きなインパクトを与えていく」というやりがいを感じられると思います。 ――就活生の中にも「世の中にインパクトを与える仕事がしたい」と考える人は多いです。そういう人は学生のうちにどんな経験をしておくべきか、アドバイスをお願いします。 大内: これはPMにも言えることですが、「自分の価値」を見出せない仕事では、「社会にインパクトを与える」までのことは成し遂げられません。だからこそ、どんなことでも構わないので、学生のうちに「自分が心から頑張りたいと思える、価値のあること」に挑戦してほしいです。何かに打ち込んで自分の価値を見出す経験をすることで、自分の価値観や、望む生き方、人生における優先順位などが明確になりますから。MSOLではそういう「自分の行動に価値を見出せる人」に入社してほしいと思っています。 江口: 仕事は「人と人」の関係性で成り立つものであり、インパクトを与える相手も「人」。だからこそ学生のうちに多くの「人」と出会い、いろんな価値観に触れ、知見を広げていけば、自分にとって“本当に価値ある仕事”が見つかると思います。もし「MSOLなら自分にとって価値ある仕事ができそうだ」と考える学生がいるなら、ぜひ一緒にいろんなチャレンジをしましょう! 取材・文/上野真理子 撮影/赤松洋太合わせて読みたいこの企業の記事 ■【マネジメントソリューションズ代表取締役社長/高橋信也氏】プロジェクトに特化した戦略実行マネジメントで顧客を成功に導く ■【マネジメントソリューションズ】失敗を前向きに生かす実直さが、コンサルタントの成長を生む ■【マネジメントソリューションズ】「改革」の呼び声が高まる今こそ 「実行」を担う集団として先駆をなす ■【マネジメントソリューションズ】確固たるキャリアの軸を築くために将来の理想をイメージしておく
「大企業勤めの肩書きではなく、自分の名前で勝負できるように」――。安定が約束された企業なんてない今の時代、ビジネスパーソンには個人の力を磨くことが、世代を問わず求められるようになっている。 今回登場するマネジメントソリューションズ(MSOL)の李成蹊氏と吉村康氏も、それぞれ大手企業で長年会社員経験を積み、50歳を越えて新天地を求めた二人だ。「新しい挑戦がしたい」とMSOLに入社した二人は、改めて「企業名で仕事を選ぶのではなく、自らキャリアを選び、つくっていく力を養うこと」の重要性を認識しているという。 30年以上ビジネスの世界で第一線を走っている二人の先輩に、自らキャリアをつくるとはどういうことなのか、そのためにはどんな環境を選べばいいのか、就活生に向けたメッセージを聞いた。 ――お二人とも50代でMSOLに転職されています。その経緯を教えてください。 李: 私が転職をしたのが、59歳9カ月。前にいた企業の定年が60歳でしたから、定年前に「転職」をしたかったんです。定年後は第一線を退いてゆったり働くというのが、自分としてはもったいない気がしていて、まだまだやるぞという思いでした。 MSOLとの出会いは10数年前、前職で組織的にプロジェクト強化に取り組んでいた頃でした。その中で「プロジェクトマネジメント」に特化したコンサルティングサービスを行なっているMSOLのことを知り、仕事を依頼したのが最初です。つまり、私はもともとMSOLのクライアントだったんです。 当時からプロジェクトマネジメントのスキルは、グローバルに通用するビジネスパーソンのリベラルアーツ、教養として持つべきものだと感じていました。それまでは大手企業でいろいろな経験をさせてもらったので、今度はプロジェクトマネジメントを事業として行っているMSOLに移り、このスキルを広く世の中に広めて、社会に貢献していきたいと考えたんです。 吉村: 私の場合は新卒で東洋経済に入って33年間、販売、宣伝、広告、マーケティングを中心に、営業畑を歩いてきました。その間、一度も転職を考えたことがありませんでしたが、きっかけは組織改革です。それまでプレイングマネジャーとしてやってきていたのが、マネジャーに専念することになり……。ちょうど55歳と定年も視野に入ってくる年齢だったこともあり、改めて「残りの仕事人生、このままで良いのか」と考えてみたら、やはり「プレイヤーとして現場で働き続けたい」と初めて気付いたのです。 MSOLのことは以前から知っていました。社長の高橋(信也氏)とは、前職時代、個人的に参加した勉強会で知り合い、オンラインメディアに広告を出してもらうなど、ビジネス上の付き合いもありました。転職先として改めて考えたときに、前職の経験が活かせるポジションがあったことに加え、世の中的にこれからプロジェクトマネジメントのニーズは急増していくだろうなという予想もあって。MSOLはこれからますます会社が大きくなり、成長を共有できると思ったんです。 ――お二人が「転職して良かった」と思うのはどんなときですか? 李: 私はもうすぐ61歳になりますが、今でもビジネスの第一線で、若い人と一緒にMSOLが成長するための戦略を考えています。そのたびに刺激を受けたり、勉強して新しい知識を取り入れたりして、とても充実した毎日です。あとは六本木という華やかな場所で働くのも楽しいですね(笑)。 吉村: 私の場合は、会社の成長と共にどんどん新しい仕事が増えていくときですね。プレイヤーとしていろいろなことに挑戦できるので楽しいんです。やはりイスに座って管理だけしているのは自分の性に合わないと思いますし。あとは、やはり若い人たちが多いので社内全体が活気に溢れていますよね。私と李さんが平均年齢を押し上げているんですが(笑)、この中にいるとつい年齢を忘れてしまいます。 李: そうそう。年齢関係なく、やる気のある人にどんどん仕事を任せる会社ですから。昔は細かいことは部下に任せて、頭を動かしていれば済みましたが、今は自分で頭も手も動かしている。刺激的な環境に身を置けるので、この年齢になってもなお日々成長を感じられます。――今は人生100年時代と言われ、働く環境は日々変化しています。20代の若手が、これから豊かなキャリアを築くために必要なことは何だと思われますか。 吉村: これからは個人が、会社に対していかにフェアな関係性でいられるかが重要になってくると思います。私も昔、自分が会社から貰っている給料以上の働きをしているのか、ふと考えたことがありました。そのとき、まだ自分は会社に“借り”をつくっているんだと気付いて焦った記憶があります。給料以上の成果を出して、会社に“貸し”をつくるくらいでないと、会社にぶらさがることになってしまう。 そこから必死に借りを返し始めましたね。自分の中で「もう会社への借金は返し終わった」と感じてからは、貯蓄するように貸しをつくり始めたという実感です。 これは転職を考えて初めて気付いたのですが、会社に借りをつくっていたままでは、自由に転職もできなかったのではないかと思うのです。だから若い人には、早くから会社に貸しをつくれと言いたい。そうすれば、会社とフェアな関係性でいられるし、組織に依存することなく自由になれますから。 李: 私も同感ですね。自分自身を振り返ると、私は20代でベンチャー企業で働いた経験が、自分のキャリアにとってプラスだったと思います。大企業のように社名が通用しないので、自分のプロフェッショナリティーを意識せざるを得ませんでした。自分の強みは何か、これから何を自分の専門性として生きていくのか、早いうちに考えることはとても大事なことだったと。 その点でいうと、MSOLはベンチャーから上場企業へと成長し経営基盤はしっかりしていますが、働く環境面では、若い人たちが力を付けるために最適な条件が揃っていると思いますね。 ――「若手が力を付けるための条件」とは、具体的にはどのようなことでしょうか。 李: 将来どのような方向を目指すとしても、共通の土台となるような経験を、20代の頃から徹底的に積み上げていくことができるかどうかということです。 ピーター・ドラッカーは、「リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である」と残しています。プロジェクトマネジメントって、まさにそのためのツールといえるんですよ。だからこそ、プロジェクトマネジメントはビジネスパーソンのリベラルアーツであり、どんな仕事にも当てはまるビジネスの基本スキルなのです。 そんなスキルを使って、MSOLではさまざまなクライアントの社内に深く入り込んで実践していける。多種多様な業種・業務に触れながら、学ぶことができるんです。 ――なるほど。そこで早いうちから自分の専門性を見つけ、磨くことができるということですね。 李: はい。さらに付け加えれば、MSOLは若い会社ですから、会社と共に成長していけるのも大きなメリットです。自分たちの力で会社を良くしていくという経験はなかなかできるものではありませんから。 吉村: そうですね。成長過程の会社ですから、与えられる仕事、決まっている仕事はあまりない。自分次第で仕事の質をどんどん高めていけますよね。先ほどの貸し借りの話でいえば、借りをつくって会社にぶら下がっている人は見かけません。逆に、与えられるのを待っている“借り”の姿勢の人には厳しいかもしれませんね。 李: 若いうちにこうした環境でみっちりとプロジェクトマネジメントの経験を積んで、もし次のステップとして新しい環境を求めるのなら、それはそれで良いことだと思います。さすがに1~2年で辞めてしまうとなるともったいないとは思いますが、5年~10年ぐらい後にここで培った経験を生かして、次の挑戦に向けて羽ばたいていく人がいても、人生100年時代を見据えた上ではキャリアプランの一つだとは思います。 ――MSOLでは新人育成をする上で、どんな環境が整っていますか? 李: MSOLの社員はあくまでも、「自分のキャリアを自律的に考える」ことを重視していますから、自分のキャリアは、会社が用意してくれるのではなく、自分で考えるものという意識が強いです。 ただ、それと同時に、人を育てようという意識もとても高い会社です。知識やスキルを磨くトレーニング体系はかなり充実していますし、社長自ら研修を実施したりすることも多い。他社と比べても人事評価プロセスがしっかり整備されているので、意欲のある人にはさまざまな仕事のチャンスが与えられ、自分が学んだことを実践できます。 吉村: サービスラインにも「教育・トレーニング」があるように、社内でもどんどんメンバーを育てて、早く自分の業務を任せたい。そして自分自身は、次の新しい挑戦をさらに続けていきたいという人が多いように思います。だからこれから入社してくる皆さんにも、たくさんの面白い仕事を経験しながら、飽くなきチャレンジ精神を持ってキャリアを歩んでもらいたいです。 取材・文/瀬戸友子 撮影/赤松洋太合わせて読みたいこの企業の記事 ■【マネジメントソリューションズ代表取締役社長/高橋信也氏】プロジェクトに特化した戦略実行マネジメントで顧客を成功に導く ■【マネジメントソリューションズ】失敗を前向きに生かす実直さが、コンサルタントの成長を生む ■【マネジメントソリューションズ】「改革」の呼び声が高まる今こそ 「実行」を担う集団として先駆をなす ■【マネジメントソリューションズ】確固たるキャリアの軸を築くために将来の理想をイメージしておく
働き方改革、テクノロジーの進化など、変化の激しい今の時代、企業経営の在り方も大きく変わっている。変革の渦の中、2020年以降を見据えたとき、コンサルタントには何が期待されるのか、どうすれば求められる人材になれるのか。“コンサルティング業界のサードウェーブ”と呼ばれる戦略実行型のマネジメントコンサルティングビジネスを展開するマネジメントソリューションズ(MSOL)の高橋信也氏と、キャリア学の権威、高橋俊介氏の対談からその解を探る。――世の中は変革の時代に入り、コンサルタントに求められる役割も変わってくるのでしょうか。 高橋信也氏(以下、信也氏): これからのコンサルタント像について語る前に、そもそもコンサルタントとは何かを明らかにしておいた方がよいでしょう。今は「コンサルタント」という言葉の定義が非常にあいまいで、単に「コンサルタント」という肩書きを冠しているだけというケースも見受けられます。これでは学生の皆さんも混乱するでしょう。 高橋俊介氏(以下、俊介氏): 私もコンサルティング志望の学生から相談を受けたことがありますが、その時は「あなたはコンサルティング会社に入りたいのか、それともコンサルタントになりたいのか」と確認しました。例えば、最終的に経営者を目指すなら、コンサルティング会社に入って若いうちから経営の知見を広げるのもいい。逆にコンサルタントになりたいなら、まずは事業会社に入って実業の経験を積んでいく道もあります。いずれにしても、コンサルティング会社に入れば、いきなりコンサルタントになれるわけではないということは理解してほしいですね。 信也氏: 本来コンサルタントとは、クライアントの課題解決のための相談に乗り、確実に成果を上げていくプロフェッショナルのことです。プロフェッショナルであるからには、弁護士や会計士と同じように、コンサルタントも時間単価いくらというフィー制で仕事をすべきだと思います。ところがコンサルタントと名乗りながらも、フィーに見合う価値を出すことができず、長時間労働で単価を埋め合わせているケースも少なくない。これは本末転倒です。 俊介氏: 同感ですね。自分の単価を時間内で稼げないから長時間労働でカバーするというのは、悪しき日本的慣習だと思います。昔から日本が得意としている手法に、とにかく人数を投入して一生懸命さをアピールするというものがあります。SEの派遣などにでも、実際に使える人材は1人か2人に過ぎないのに、5、6人まとめて派遣してセット販売してきました。 しかし本来のコンサルティングビジネスでは、セット販売は通用しません。3、4人のコンサルタントが派遣されても、クライアントから「AさんとBさんだけで十分です」「Cさんは要りません」などと個別に評価されてしまいます。つまり、一人一人がマーケットにさらされているわけです。 信也氏: クライアントの方は、その意識が高まってきていると思います。企業はもう結果が出ないものにお金を払わない時代になっている。我々マネジメントソリューションズ(MSOL)が、戦略実行型のマネジメントコンサルティングに特化しているのも、「プロジェクトが回らない」「実行までに至らない」というクライアントの困りごとに対して、プロフェッショナルとして確実に価値を出していかなくてはいけないという使命感から生まれてきた結果なのです。MSOLはコンサルティング業界の中では「サードウェーブ」と呼ばれていますが、そうした分類の前に、我々の本質は「プロフェッショナル人材の集まり」であると思っています。――では、プロフェッショナル人材には、どのようなスキルや能力が必要になるのでしょうか。 俊介氏: コンサルタントとしての基本的な能力は当然必要ですが、私はその上で専門性が重要だと思います。これまで戦略系コンサルタントは、どちらかというと特定の産業や機能に偏らず、コンサルタントとしての能力を高めることで対応してきましたが、今後は専門性を持たないと価値を出すことは難しいでしょう。でも困ったことに、日本では「専門性」のイメージが悪いんですよ。実際、資格試験は丸暗記で乗り切るようなものが多く、企業の専門職制度もマネジメント職に就けなかった人の救済策の意味合いが強い。 しかし、本当に成果に繋がる専門性を持つ人は、その分野の基礎理論から体系的にしっかりと理解しています。しかも今のように変化のスピードが速いと、10年、20年かけて専門性を構築しても、すぐに陳腐化してしまいますから、常に新しい流れを取り入れています。資格を持っていること、長く経験していること=「専門性」という発想は、今すぐ捨て去ってほしいですね。 信也氏: 資格などは最低限の知識があることの証明に過ぎませんからね。やはり成果が重要で、自分でしっかりと成果を出し稼いでいけるかどうかです。弊社の社員にもよく言うのですが、プロフェッショナルにはそう簡単になれるものではないと覚悟する必要があります。 俊介氏: その通りだと思います。そういった前提がある上で、コンサルタントの能力として重要だと思うのは、クライアントリーダーシップです。やはりこれも日本的な感覚ですが、営業は下手に出るものというイメージが強いですよね。「何でも言ってください」「何でもやります」と頭を下げていては、コンサルティングになりません。コンサルタントはクライアントが分かっていないことを助言する立場。クライアントの半歩先を行き、「目指すべきはこちらです」と、ぐいぐい引っ張っていくリーダーシップが必要です。 というのも、コンサルタントは、自分でお客さまを取れないといけません。若いうちはなかなか難しいですが、クライアントから「あなたに頼みたい」と言ってもらえる仕事を経験することが、最もコンサルタントの成長にとって重要だと思います。 信也氏: 私自身も20代の頃、自分で提案して仕事を取ってきた経験が今でもとても役に立っていると感じています。最初はそれほど大きな案件ではなくても、指名された仕事が次の大きな仕事に繋がって、チャンスが広がっていきました。 だから若手にもどんどん前に出て、自分で取った仕事を経験してほしいと思っています。お客さまにペコペコするのではなくて、日頃クライアントと接する中で、彼らが困っていることがあれば「我々の支援が必要ではないですか」と声を掛ける。まずはそんなところから始めてみればいいんです。――コンサルタントを目指す学生に、キャリア形成の考え方についてアドバイスをお願いします。 信也氏: 学生には、プロフェッショナルとして会社に依存せず、自律的にキャリアを形成していく生き方を考えてほしいですね。人生100年時代の今、この先の長い人生を考えたとき、日本の国際競争力はますます落ちていき、年金制度も破綻するかもしれません。そんな厳しい環境の中で、どうやって稼いで生きていくのか。プロフェッショナルとしての技量を身に付け、自分の足で立って歩んでいくほうが、豊かに力強く生きていけるのではないでしょうか。MSOLではそんな「自律的キャリア形成」を応援したいと思っています。 俊介氏: 昔は、上昇志向が強くてハングリーなタイプがコンサルティング会社に多く集まり、入社すると、「2年でマネジャーになって、4年でシニアに上がって、6年でパートナーになれ」などと言われたものです。でも、そんな働き方が全てではありません。成長のスピードを競うのではなく、目の前のクライアントの仕事を一生懸命やっていけばいい。価値を出すためには自分が成長するしかないのですから。一つ一つの仕事の質にこだわって、丁寧に一歩一歩成長していけばいいんです。焦る必要はありません。 信也氏: 仰る通りです。日本では年齢にこだわりすぎですよね。コンサルタントを目指すにしても、最初は別の仕事で揉まれて実態を知って、30歳で大学院に行ってもいい。また別の経験を積んで、40歳で転職してもいい。大切なのはロングスパンで考えることです。 俊介氏: 人生にはフェーズがあるので、若いうちは100%仕事にのめり込む時期があったとしても、その後に学び直しをしたり、育児を楽しんだり、親の介護が必要になったりと、フェーズによって働き方も変わってきます。学生のうちから明確なキャリアプランを描けるわけがないのですがから、今は大まかなキャリアビジョンで十分です。将来こうありたいという自分の姿をイメージして、最初にどんな会社を選ぶのか考えてください。そこで主体的に仕事をしていけば、やりたいことも段々見えてきて、一歩ずつキャリアを積み重ねていくことができるはずです。信也氏: 「自律的キャリア形成」のベースにあるのは、仕事のことだけではなくて、自分はどういう人生を送れたら幸せなのかということ。40歳になったときにどうありたいのか。50歳になったときはどうなのか。漠然としたイメージでもいいから、長い目で常に先のことを考え続けることが大切です。そうして主体的に人生を歩んでいく姿勢が、プロフェッショナルとして自立することにも繋がっていくと思います。取材・文/瀬戸友子 撮影/竹井俊晴合わせて読みたいこの企業の記事 ■【マネジメントソリューションズ代表取締役社長/高橋信也氏】プロジェクトに特化した戦略実行マネジメントで顧客を成功に導く ■【マネジメントソリューションズ】失敗を前向きに生かす実直さが、コンサルタントの成長を生む ■【マネジメントソリューションズ】「改革」の呼び声が高まる今こそ 「実行」を担う集団として先駆をなす ■【マネジメントソリューションズ】確固たるキャリアの軸を築くために将来の理想をイメージしておく
自分らしいキャリア&ライフを確立したい。が、どうすればできるのか――? これから社会へ出た後、20代~30代でぶつかるであろうキャリア選択の課題について戦略コンサルティングファーム・BCGのコンサルタントを中心に、第一線で活躍中のプロフェッショナルたちにその解決策や思考法を聞く。より良い人生を送るために、仕事とどう向き合い、キャリアを切り開いていくべきか、本質思考で考えてみよう。 第3回は、理系出身でBCGに参画し、研鑽を積んだ2人の対談。BCGを卒業してベンチャー起業の道を選択した上野山勝也氏と、現在BCGでコンサルタントとして活躍している上山聡氏に、理系出身者にとってのキャリア形成の在り方や広がりについて、語り合ってもらった。 ――お2人とも理工系のご出身で、共にコンサルティングファームへの就職からキャリアをスタートされています。当時、どんな志向や仕事選択の判断軸を持って、就職活動を進めていらしたんでしょうか? 上野山 勝也氏(以下、上野山): 私の場合、研究していた内容がオペレーション・リサーチと呼ばれるもので、主に企業活動を研究対象としていましたから、周囲にも就職先としてコンサルティングファームを選ぶ人間が少なくありませんでした。 自分自身、就職活動時には「3~4年ほどの短期スパンで最も“没入”できる仕事に就きたい」という思いがあって、それをかなえられそうなコンサルティングの領域に自然と興味を持ったのです。複数社のインターンシップに参加して、一番面白そうに思えたボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)に入社を決めました。 上山 聡氏(以下、上山): 一概には言えませんが、理系の中でも工学系の場合、「社会にいかにインパクトを与えるか」という面に絡む研究をするので、修士課程や博士課程に進んで専門性を高めている学生であっても、ビジネス領域への関心は高いですよね。 上野山: そう思います。当然、理系の学生の中にはアカデミックなキャリアを選ぶ人もいますが、工学系は比較的自然に企業への就職を考えている人が多かったし、その傾向は今も変わらないはずです。 上山さんは社会基盤専攻ですが、周囲の学生はどのようなキャリアを選択していましたか。 上山: 社会基盤、すなわちインフラに関わる事物が研究対象ですから、アカデミック以外のキャリアでは、国やゼネコン、交通機関やエネルギー会社などに就職する人もいました。私自身も研究対象だった土木の領域を通じて「世の中を変え、多くの人々に貢献したい」という志から、当初は国土交通省に進む道を考えていたんです。 しかし、いよいよ具体的に就職を意識するようになり、さまざまなインターンシップに参加して実務の一端に触れ始めてみると、「膨大な数の人々と、どちらかと言えば間接的に向き合う公共機関よりも、人々により直接的に貢献できる仕事がしたい」と思うようになりました。 そうして広い意味でのサービス業に興味を持ち始め、最終的に最も自分の価値観に合致したのがコンサルティングの仕事だったのです。 ――実際、コンサルタントとして働き始めてから、理系出身ならではの強みや利点を実感されたことはありますか? 上野山: 基本的に文系理系は関係ないと思っていますが、あえて言うなら理系出身者は現象に目を向け、因果律でモノを考える習性が染み付いています。研究室時代の仮説検証型の思考プロセスがそのままコンサルティングの仕事で役に立ったのは、強みの一つと言えるかもしれません。 ただ、コンサルタントが向き合うのは生身の人間たちが営むビジネスですから、サイエンスを学んだ者の発想だけでは問題を解決できません。人を巻き込み、動かすためのソフトスキルを融合させていく必要があります。 BCGの環境が素晴らしいなと思ったのは、そういう自分の不足分をしっかりカバーしてくれるプロフェッショナルな仲間がいること。コンサルタントとして経験豊富なシニアだけでなく、さまざまな領域で研鑽を積んだ中途入社の方もいる。 こうした仲間とチームを組み、共にディスカッションを重ねていくことで、多様な視点や意見が融合されて問題解決の答えにつながっていくのが、自分にとっては驚きでもあり面白さでもありました。 上山: そうですね。私もコンサルタントとして働いてみて初めて、チームで考えるからこその思考の厚みという価値を、より強く実感するようになりました。研究は基本的に1人で考えていましたから。 それぞれ違う強みを持つ人と共にチームで取り組む中で、人の馬力の引き出し方や動かし方も学びましたね。 上野山: 私が入社間もなく驚いたもう一つの点が、新人だろうとなんだろうと、議論で意見を言わない者は価値がない、という文化です。実績豊富なシニアが会議で発した意見に、若手が反論をすると、とがめるどころか褒めてくれる。今もその風土は残っているんですか? 上山: もちろん変わっていません。まあ、褒めてもらえるかどうかは反論の内容と質次第ですが(笑)、「1年目なんだから発言できなくても許される」というような甘さがない代わりに、1年目からでもどんどん発言させてもらえる。大変ですが学びがあります。 上野山: 「偉いか偉くないか」なんて関係なく、「議論の中で意見しない者はコンサルタントとして価値がない」という考え方が面白かったし、すごく勉強になりました。 コンサルティングファームは、「新人だから下積みからスタートする」という考え方ではなく、最初からプロジェクトのいちメンバーとして役割を担う。それをシニアや中途の方にフォローしてもらえる、という仕組みなので、とけ込んで行きやすいとも思いました。 もう一つ、入社後に実感したのが1週間の密度の圧倒的な濃さですね。学生時代の1カ月分に当たる刺激量が5日間に凝縮されているイメージです。1日の中で大きく自分の考えや価値観が変わるなんてことも日常茶飯事でした。 知的好奇心や成長欲求の強い人には、とても恵まれた環境だと思います。脳に入る刺激量が違う。振れ幅がとてつもなく大きかったことを鮮明に記憶しています。 上山: 分かります。短期間でさまざまなレベルの未知なるモノが自分の中にどんどん取り込まれていく感覚。先輩やパートナークラスの上司たちから日々助言やフィードバックをもらいつつ、グローバルな見識や異領域の発想なども、多様な人員構成の中で当然のように触れる毎日ですからね。 短時間で自分という人間が猛スピードで進化している感覚を私も感じました。今なら修士論文だって3カ月で書き上げる自信があります(笑)。 上野山: それ、本当ですよ。自慢話みたいになってしまうんですが、BCGを退職後に大学へ戻り、博士課程に進んだ時、1本目のジャーナル論文を実際3カ月で書き上げました(笑)。 これはもう間違いなく、BCGで学んだおかげです。コンサルタント時代に、絶対的な頑張りが必要な時の尋常でない馬力の出し方を学びましたから。自分の能力の上限はBCG時代に圧倒的に引き上げられました。――お2人は1980年代生まれの30代ですが、「今の20代にとってのキャリア選択」について、どうお考えですか? 上山: 私は今この時代に安定を志向している大学生を見かけると、人ごとながら彼らのキャリア観に危機感を覚えます。これほど猛スピードで世の中が変化している時代に、「この会社に入って、こういうキャリアをたどれば安定した生活が……」などと発想しても意味がないのではないでしょうか。 皆が自分のキャリアを自分で描かなければいけない時代です。いち早くビジネスの本質に触れて、汎用性の高いスキルを養い、どのような環境下でも自身の力を発揮できるようになることが、本当の意味での安定を得ることにつながると思います。 そうした意味では、私にとってはコンサルティングの世界で経験を積むことがそのスキルを得る最短ルートだと考えています。 上野山: 冒頭で、学生時代の私が「短期スパンで最も“没入”できる仕事に就きたい」と考えていたと話しましたが、まさに今、上山さんがおっしゃったことと同じ発想があってのことでした。 特に今という時代においては、私の学生時代以上に変化が激しいわけです。世の中をまだ知らない学生が「10年後、15年後の自分」を想像して、先々までプランニングをしたところで、おかしな結論にたどり着きかねない。 それならば、1年後や3年後など、手の届く範囲の未来を一区切りと捉え、その間とにかく全力投球できることに取り組む方が、結果的に後のキャリアに有効な成長が得られるはずです。 それともう一つ、私や上山さんの世代と、今の10代、20代との間には決定的な“価値観の違い”があると思っています。 私がBCGに入社した2007年というのは、Google が初めて日本で新卒社員を採用した年であり、Webビジネス界にとっては節目とも言える年でしたが、当時はまだ「Webは怪しい世界」などという風潮がありました。上山: 分かります(笑)。「中高生になる頃にはスマホを持っていた」という現代のデジタル・ネイティブ世代とは違いますよね。 上野山: そうなんです。一方で2008年にはリーマンショックが起きて、それまでのビジネスの常識のようなものに、大きな疑問が生まれた時代でもあります。 私や上山さんは、インターネット以前の時代のビジネスと、インターネットが当たり前になってからの時代のビジネスとのちょうど狭間を生きてきた世代。今の50代以上の発想も何となく分かるし、20代のデジタル・ネイティブ世代の気持ちも何となく分かる。 上山: 我々の世代が「両世代の橋渡しをしなければ」ですね? 上野山: そう、それです。私の会社にも20代の社員が多くいるんですが、「たまには(高い)うまいものでも食べに行くか?」と聞くと「いや、別にいいです。(高い)うまいもの、興味ないです」と言われたりしてしまう(笑)。 彼らには世間一般から「良い」とされている事やモノよりも、自分の好きなものを大事にする価値観が根付いている。インターネットやスマートフォンが浸透したことで、旧来のマス的な価値観にとらわれていないわけです。世の中が大きく変わり始めていることを実感しています。 恐らく私たちは今、新旧の異なる2つのパラダイムが共存する、不思議なタイミングに生きているのだと思います。 上山: 個人が好きなものを見つけて、それを存分に追求できるようになったのはいいことですよね。昨今誕生しているスタートアップ・ベンチャーでも、マスではなく個人の小さなニーズにフォーカスしたWebサービスを展開していたり、テクノロジーを活用して大きな資本を必要とせずにビジネスとしてある程度成立しているケースが珍しくなくなってきています。 しかし、若い世代の価値観だけで創られたビジネスに、「それだけではないでしょ?」と思うことがあるんです。 上野山: そう、どんなに時代が変化していても、ビジネスを形作っているのはインターネットが浸透する以前からずっと存在する人であり組織であり会社なわけですね。そうした世の中を形成する大手企業のビジネスを間近で見たことのない世代は、自身が持つデジタル・ネイティブ世代ならではの価値観やテクノロジーを、そこでどのように活かすことができるのかにどうしても気付きにくい。世代の異なるパラダイムのすり合わせがしにくいのです。 しかし、私はこの旧来のビジネスフィールドと、今の時代ならではの価値観や情報技術との接点を生み出し、融合させるところにこそ、大きなビジネスチャンスがあると考えています。 狭間の世代としては、前の世代と後の世代の橋渡しをしたい、と思いますし、若い世代にはせっかくチャンスがあるのだから、自分たちの住む世界だけに目を向けてばかりいたらもったいない、と思ってもいるんです。 上山: 実はBCGで開催しているインターンシップにも、上野山さんがおっしゃったような気付きを得てもらいたいという思いが込められています。 学生たちにもっと社会のダイナミズムを知ってもらい、彼らが持っている知識や経験、志向が世の中にどんなインパクトを与え得るのか、少しでも体感してもらえるようなプログラムになっているんですよ。 ――具体的にはどんなことをするのでしょうか? 上山: あえてビジネス寄りではない課題が出されたりしています。学生たちはやはり実際のビジネスを経験していませんから、売上や利益の話をしてもピンとは来ません。そういうものは入社後からでも覚えられる、と考えられています。 ですから、お題として提示されるのは、例えば「2020年にオリンピックが東京で開催されるが、社会にどんなメリットやデメリットが生まれるか、皆で考えてほしい」といったもの。つまり、ビジネスよりももっと大きな枠組み、社会的な現象というものに触れてもらおう、という主旨です。 非常に面白いのは、こういうざっくりとしたお題を前にした学生たちが、「自分たちの持っている力が役に立つかもしれない」と考え始めたりするんです。 例えば理系の学生ならば、「今自分が研究している内容が、もしかしたら世の中のこういう部分に使えるんじゃないか」という発想を得る。社会との接点を見つける。そういう機会になってくれたらうれしいと思います。上野山: それ、いいですね。私も自社の採用活動をする中で多くの若い方とお会いします。当社のビジネスがAIや機械学習の領域をベースにしていることもあって、ほとんどの方が情報技術の世界にいるわけですが、何より伝えたいのが「あなたが好きでやってきた情報技術はこんなにも社会に役立つし、ビジネスとして期待されているんだ」ということ。 「入りたい会社が見つかりません」なんて言っている学生もいるんですが、そういう人にこそ理解してほしいんですよね。自分の力が世の中に大きなインパクトを与えるんだという面白さを。 ――これからの社会やビジネスに情報技術は必要不可欠。そうした意味ではテクノロジーのバックグラウンドを持つ理系学生は、今後のキャリアの広がりに、よりアドバンテージがあると言えそうです。最後に、これからキャリアを切り拓こうとしている学生たちへアドバイスをお願いします。 上野山: マサチューセッツ工科大学のMITメディアラボ所長である伊藤穣一さんの言葉に、「地図よりもコンパスを持て」があります。キャリアを切り拓いていくのに、プランニングは意味を成さず、“コンパス”つまり「何をしたいのか」という自分の軸が大事になってくるということです。 私はもともと情報技術を軸に社会へインパクトを与えるビジネスを手掛けていきたいと考えていました。 PKSHA Technologyを創業し、その思いをかなえるにあたって、BCGで得た知見や経験が大きな力になったことは間違いありません。先に述べた通り、世の中のビジネスの主戦場に立つ大企業の論理というものを理解していることは、事業を進める上でも大きな強みになりました。 2030年には、ビジネスも働き方も仕事も、世の中全体が予測もつかぬほど変わっていることでしょう。そのような中で、PKSHA Technologyの事業領域もどんどん広がっていくと思います。 私自身は今後、PKSHA Technologyを「アルゴリズム・サプライヤー」として成長させ、社会に大きなインパクトを与えていきたい。 AIやIoTの浸透によって、今後ソフトウエアはどんどん知能化し、高度化していきます。そこで鍵を握るのがアルゴリズム。そのクオリティーや機能を強化していくことで、社会の神経網を形作っていくことができると信じています。 上山: 私も、この激動の時代に、自分が情熱を持ってやりたいと思えるビジネスを定めて挑戦したいと考えています。 こうした夢を追うための力を付ける場として、理想的な環境がBCGにはあります。「自分の未来を創るためのコンパス」を見つけ、磨きをかけていける場所だと私自身が実感しています。だからこそ、同じように「情熱を傾けるもの」を探し求めている学生の皆さんに、どんどんチャレンジしてほしいと願っています。 上野山: そうですね。私もBCGがキャリアの起点になったことは、本当に良かったと思っています。 今は「やりたいことが分からない」という人も、まずは熱量を持って仕事に没入する経験をしてほしい。多様な人と協働する中で、人との違い、自分ならではの固有性がクリアになっていく。それが、自分ならではのコンパスを見つけることにつながっていくはずです。 私は「意味」とは「生成」されるものと考えます。やっていない状況では意味など何もないし、分からない。やった結果、意味は生成され、分かるのです。 学生たちには、社会人としてまずは夢中になれる3年間を経験することを目標に、もっとアグレッシブに自分の知らない世界へ飛び込んでほしいですね。 (取材・文/森川直樹、撮影/竹井俊晴) =関連リンク= ■不確実な時代だからこそ自分を磨く! “自分ブランド”こそがビジネスパーソンの確実な財産に ■10年後、20年後にどう生きたいか――。「自分らしく働く」を見つける就活とは?【学生×20代コンサルタント座談会・前編】 ■就職して分かる“成長”の奥深さ。ビジネスの現場で求められる本当に必要な力とは?【学生×20代コンサルタント座談会・後編】 ■ボストン コンサルティング グループの企業情報 =外部リンク= ■ボストン コンサルティング グループ公式Webサイト ■ボストン コンサルティング グループ採用トップページ ■PKSHA Technology公式Webサイト
自分らしいキャリア&ライフを確立したい。が、どうすればできるのか――? これから社会へ出た後、20代~30代でぶつかるであろうキャリア選択の課題について戦略コンサルティングファーム・BCGのコンサルタントを中心に、第一線で活躍中のプロフェッショナルたちにその解決策や思考法を聞く。より良い人生を送るために、仕事とどう向き合い、キャリアを切り開いていくべきか、本質思考で考えてみよう。 第2回は、若手コンサルタントが学生たちの質問に答えていく形で、就職活動のあり方や、20代の時期に挑むべき「成長」について、自由に語り合ってもらった。 ――まずは、コンサルタントのお2人の就職活動時のお話を聞かせてください。どんな経緯でボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)への入社を決めたのですか? 千田秀典氏(以下、千田): 私は大学、大学院と、一貫して航空宇宙工学を学んでいました。ずっと航空機開発エンジニアになることを目指していたのですが、就活を始めようかという時期、航空業界をはじめ日本の製造業が厳しい状況に陥っていました。 そのような中で、いちエンジニアとして技術の部分で付加価値を出すことだけではなく、もっと別の立場から業界全体の復興に寄与することはできないかと考え始めたんです。 そうしてたどり着いたのが2つの選択肢です。一つは経済産業省などの一員になって、行政の立場から産業界に貢献していく道。もう一つはコンサルタントとして、戦略策定やその実行支援によって企業に貢献していく道。 迷った末に、最終的に選んだのがコンサルタントの道でした。 サカイ シュンスケさん(以下、サカイ): 私は千田さんと同じく大学院生で理系専攻です。どうしても研究などに時間を取られがちで、就活を進める時にどうタイムマネジメントしていこうかと考えてしまいます。千田さんはどうしていたんですか? 千田: 私も就活中のタイムマネジメントの難しさは感じました。その点からも、夏のインターンシップ前には、2つの選択肢に絞り込むことにしたんです。インターンは官公庁とコンサル業界のみ参加することにして、選考を受ける会社も数社に限定しました。 細かいスケジュール管理やプランニングはあまりしていませんでしたが、早い時期に集中して自分の進むべき道をゆっくり考えて吟味する時間を取っておいたことで、その後の就活は効率的に進められました。 数打ちゃ当たる方式の就活をやらなかったから、研究と両立することができたんだと思っています。 シラカワ アユキさん(以下、シラカワ): 僕はパブリックセクターへ進むべきか、コンサルタントを目指すべきかで今迷っています。 何となく、官公庁が指示を出したり決済権を持ったりする上の立場で、コンサルや一般企業がそれに従って現場で動く下の立場、みたいなイメージでいるんですが……。 千田: どちらかが上で、どちらかが下ということではなく、そこは役割の違いかなと思います。 サッカーに例えるなら、プレーヤーが動きやすいようにコートの外でルールを決めるのがパブリックセクターで、コートの中のプレーヤーをどのようにサポートするかを考えているのがコンサルタント。関わり方は違うけれど、共により良い試合を行うために貢献しています。上下の序列というよりは、それぞれ違う役割を担いつつ、共に産業や企業の発展をサポートしているんです。 シラカワ: なるほど。では、千田さんはそこでなぜコンサルタントの方を選んだんですか? 千田: 「法律や制度に軸足を置くのではなく、ビジネスの側面からダイレクトに関わっていく方が面白い」と感じたことが最大の理由です。これはもう直感というか、自分自身の好みの問題ですね(笑)。 もう一つ挙げるとすれば「現場主義・成果主義」であること。つまり、現場で起きているファクトをベースにして企業に寄り添った戦略を練り上げ、その成果がすぐに目に見えて求められるコンサルティングのスタイルが、私には合っていると思えたんです。 また、BCGのように世界中のあらゆる業界のコンサルティングを手掛けるファームに入れば、個人的な思い入れがある航空業界に限らず、さまざまな産業や企業と向き合い、知見を得ながら、短期間で成長できると考えたんです。 日浦瞳子氏(以下、日浦): 私もBCGへ入社を決めた最大の理由は、ここでなら成長できると確信できたからです。 私は大学にいる間、ずっとアメリカンフットボール部のマネジャーをしていて、学生時代のほとんどの時間を部活に捧げていました(笑)。 ですので、毎日それはもう忙しく過ごしていたのですが、就職活動を始める時にはいったん立ち止まって、目の前のことだけでなく、「10年先、20年先の長いスパンで自分の将来を考えてみよう」と思ったんです。 文系の学生でしたから、専門性や突出した強みを持っているわけではありません。やりたいこともまだ分からない。だから「働き方」を軸に、自分がどうありたいかを考えていきました。 女性ですので、やはり出産・育児のことも視野に入れておきたい。ちょっと大げさかもしれませんが、就活をきっかけに人生設計をしてみたんですね。 10年後、20年後、自分はどう生きていたいか? まず、仕事は続けていたい。 とすると、ライフイベントがある前の20代前半は一番仕事に没頭できる重要な期間になる。それなら男女差なく成長チャンスが得られるフラットな環境で、思い切り力を付けたい。 そんなふうに考えて、就活当初は「女性社員がたくさん活躍していそうだから」という理由で、消費財メーカーや化粧品メーカーを中心に情報収集していました。 ですが、たまたま参加した合同企業説明会で初めてコンサルティング業界という存在を知り、その仕事内容や環境に魅力を感じて、複数社受けてみたんです。――消費財や化粧品メーカーからコンサルティング業界へ志望業界が変わるとは、大きなシフトチェンジでしたね。 日浦: 実は、コンサルティング業界の仕事を知って、就職先選びに対する考え方がガラリと変わったんですよ。 それまで私は、10年後も20年後も活躍できる環境へ身を置くべき、と思って就職先選びをしていたのですが、そうじゃないと気付いたんです。10年後も20年後も活躍するためには、そもそもその時点で活躍できるだけのスキルや能力を自分が持っていないとダメなんだって。 それには、20代でいろんなことを吸収して成長し、やりたいことを見つけられる環境を就職先として選ぶ必要がある。それがかなうのが、まさにコンサルタントの仕事だなと思ったんです。 ただ、最初はコンサルティング業界やコンサルタントについてほとんど知識がなかったので、中長期で続けていける仕事なのかを確かめるために、複数の会社の方々に話を聞いてみました。同じコンサルティングファームの方でも、会って話を聞くと、各社それぞれカラーが全然違います。私には、BCGのカラーが一番フィットしているなと思い、入社を決めました。 ユアサ チヒロさん(以下、ユアサ): 外資系コンサルティングファームのカラーの違いってどういう差なんですか? 確かに、お2人を見ていると、私自身がファームに抱いていたイメージとは違う気がするんです。あの、「いい意味で」ですけど(笑)。でも、お2人はまたそれぞれ違うタイプの方ですよね。そうすると、BCGのカラーって一体何なのだろうと思いますし……。 千田: いわゆる「外資系」とか「コンサルティングファーム」という言葉からイメージすると、ロジカルな口調で話すクールな人ばっかりがいそうに思いますよね? 私も同じようなイメージを就活していた頃に抱いていました。 もちろんそういうカラーのファームも存在します。ところがBCGはそうではないんですよ、「いい意味で」(笑)。 日浦: そうですね。私も学生時代は、外資、コンサルというと、自分のキャラクターとは遠く離れたスマートで華やかなイメージを持っていました(笑)。でもBCGには、気取らない人が多くて、私のように「ガッツで頑張ります」みたいな人も普通にいます。 千田: むしろ、そういう多様性がBCGの特質だし、定義しにくいところこそがBCGのカラーなのだととらえてくれたらうれしいです。 BCGは、人の個性や文化、発想の違いというものに対する許容度が高い。もちろん仕事に対する価値観や理想は共有していますが、似たようなタイプの人が集う集団ではなく、本当の意味で多様性が根付いているんです。 シラカワ: 商社もコンサルティングファームと同じく、経営に近い仕事の一つだと思うのですが、就活の時に商社は考えなかったのですか? 千田: 商社に就職した場合、恐らく特定の業界の中で長く経験を積んで行くことになるんだろうと思います。 それはそれで特定の領域で自分の力を高めたり、業界に貢献したりする上で意義のある形だと思いますが、私の場合は、そもそも航空業界や製造業に貢献したいというアスピレーション(願望)がベースにあったので、プロジェクト単位でさまざまな業界のサポートに携わることのできるコンサルを選びました。より自分のアスピレーションに近いプロジェクトに関わるチャンスに恵まれるだろうと。 それと私自身、大人しい気質なもので、商社のパワーに溢れたタフな文化よりも、コンサルの方が性に合うと感じたこともありました(笑)。 ユアサ: お2人とも、就職先の選択肢ってたくさんあったと思うんです。その中で1社を選ぶための判断軸ってどうやって定めていったんでしょうか? きっとご自身の価値観に照らし合わせて整理していったと思うんですけど。 日浦: 私は学生時代に部活で辛かったこと、成功したこと、それぞれから何を得られたかを洗い出していきました。今までの人生の中で、自分が意思をもって決断したことの基準は何だったかも、改めて考えましたね。千田: 死ぬ時に「この人生良かったなぁ」と思いたい。では、何ができていたらそう思えるのか?と自問自答しましたね。 結果、「自分ならではの社会貢献ができる」「人に感謝される」「自分が楽しいと思える」、この3つを満たす仕事をしていたいという答えに、私はたどり着きました。 好きなものは何か。問題意識を持つポイントはどこか。 自分の人生を豊かに過ごすためにどうするべきかを考える時間をしっかり持ってみたら、おのずと判断軸は整理されてくると思いますよ。 ウカイ ジュンヤさん(以下、ウカイ): 大学で学んだことの中で、自分の強みになったことってありますか? 就活時に役に立ったものとか。 日浦: 働き始めてから気付いたんですが、学生時代に何かにものすごく打ち込んでいた経験を持つ人が周囲にたくさんいるんですよね。 翻って考えると、つまりはそういう経験の持ち主が入社しているということ。勉強でも、活動でも、学生時代にこれに力を注いできましたと断言できる何かがあることは、就活でもきっと活きてくるんじゃないでしょうか。 ――ご自身の就職活動を振り返って、これから就活を始める学生たちへ、今お2人が改めて伝えたいことは何でしょうか? 千田: 昔のような終身雇用の時代ではありませんから、新卒時の就職をそれほど重々しくとらえていない人もいるはずです。実際、転職したりして、幾度か大きな分岐点を経ていく人も多いでしょう。 けれども、だからといって就職を「ファーストステップでしかない」かのように軽くとらえてはほしくないのです。 せっかくこれからの人生を考える良い機会なのだから、「自分は何がしたいのか、何を面白いと感じるのか」、「何を大切にして生きていこうか」というように、自分を見つめながら進めてほしいと思います。 半面、「自分はこうなんだ」と決めつけてシャットアウトしてしまわずに、就活を通じて出会う人やチャンスから、自分の新しい可能性を広く見いだしていってほしいですね。 日浦: 私も同じく、「どの会社に入るか」と考える前に、「自分はどんな風に生きていきたいか」という人生のビジョンを描いてみてほしいです。そして、自分のキャリアを数十年先までいったんイメージしてみてください。人生のどの時期に、仕事にどのくらいのパワーをかけたいかまでを考えてみると、未来が少し具体化してきませんか。 それと、就活を進める中で、ついブランドに引かれて一流企業にばかり目が行ってしまうこともあると思います。でも、それは決して本質ではありません。自分の人生設計に相応しい、自分が求める成長を遂げるために必要な“材料”は何か。それを忘れずにいれば、きっと自分らしく働ける場所にたどり着けると思います。 (取材・文/森川直樹、撮影/竹井俊晴)
自分らしいキャリア&ライフを確立したい。が、どうすればできるのか――? これから社会へ出た後、20代~30代でぶつかるであろうキャリア選択の課題について戦略コンサルティングファーム・BCGのコンサルタントを中心に、第一線で活躍中のプロフェッショナルたちにその解決策や思考法を聞く。より良い人生を送るために、仕事とどう向き合い、キャリアを切り開いていくべきか、本質思考で考えてみよう。 第2回は、若手コンサルタントが学生たちの質問に答えていく形で、就職活動のあり方や、20代の時期に挑むべき「成長」について、自由に語り合ってもらった。 ――就活を経て、実際にBCGでコンサルタントとして働くようになってから、どんな経験を積んでいるのですか? 千田: 私は2014年に入社した後、1カ月間の基礎的な研修を経て、すぐにプロジェクトに入りました。私の場合は「製造業のお客さまのプロジェクト」を希望したところ、願いがかない、1プロジェクト目はメーカーの収益基盤強化プロジェクトに入ることになりました。 BCGでは、プロジェクトアサインの際に、新入社員でも参加したいプロジェクトの希望が出せます。必ずしも毎回希望通りになるわけではないものの、個人の興味や成長、プロジェクトで求められる能力などが考慮された上で、アサインが決定します。 現在に至るまで6~7件のプロジェクトに従事してきましたが、製造業が多いものの幅広い業種のプロジェクトの経験をしていると思います。プロジェクト内容も、金融機関の店舗展開の戦略案件であったり、メーカーでの製品開発加速化支援であったりと、さまざまです。 サカイ: 自分が望んだわけではないプロジェクトに入ることもあるわけですよね? そういう場合でも、モチベーションが下がったりしないものですか? 千田: 私の場合は将来的には航空業界に貢献することが夢ですから、もちろん特に製造業に強い関心があります。 とはいえ、今は自分自身の知見を増やして成長するためにも、幅広い業種・案件の経験を積むべきだと考えているので、むしろ製造業以外のプロジェクトにアサインされるとワクワクしますね。また一つ、新しい経験ができるチャンスだ!と(笑)。 ですから、案件によってモチベーションが下がるなどということはまずないです。 むしろ毎回、期待されている結果にプラス・アルファの、自分ならではの付加価値を付けてやるぞ、というファイトがわいてきます。 日浦: 私は2015年4月に入社しましたが、入社直後の流れは千田と同様です。1カ月の研修の後、プロジェクトにアサインされ、実務を通じてコンサルタントの仕事を学んでいきました。 コンサルタントはプロジェクトベースで仕事をします。3カ月程度のものもあれば、もっと長期にわたるものもあり、解決すべき課題もプロジェクトの規模も毎回違います。また、一緒に働く仲間や先輩、リーダーも変わります。 こうした環境は、飛び抜けたスキルをまだ持っていない私にとっては、とてもありがたいことだと感じています。短期間のうちに多様な経験をして、数多くの優秀な先輩やお客さまと触れ合いながら、「これから自分は何を極めていきたいか」を模索することができるからです。 千田: 我々コンサルタントは、プロジェクトの期間内で成果を上げること、言ってみれば、短いスパンで次々に異なる課題と向き合うことが求められます。それによって自分の能力がストレッチされますし、必ずしも自分の得意分野ではない領域にも携わることになるので、知見の幅をどんどん広げていける。 スピード感をもって自身の成長を実感できるのが、コンサルタントの醍醐味の一つと言えるでしょうね。 ウカイ: 仕事はOJT中心なんですよね? とにかく現場に出て覚える方式なんでしょうか? 千田: そうですね。実際に仕事を現場で経験していくのと並行して、新入社員にはインストラクターと呼ばれる先輩社員がマン・ツー・マンで寄り添ってくれる仕組みになっています。 プロジェクトは数カ月単位で変わっていきますが、インストラクターはずっと同じ先輩が付いてくれるので、前のプロジェクトと比較しての自分の成長度合いや課題など、中長期的な視点も踏まえつつ、アドバイスやフィードバックがもらえるんです。 プロジェクトごとにメンバーが変わったとしても、このインストラクターのおかげで、その時点での経験を振り返り、積み重ねながら成長していくことができます。 日浦: 私なんて入社当初はExcelだってまともに使いこなせませんでした(苦笑)。 他にも社会人1年目の人間が直面するさまざまな問題や悩み、能力的に不足している部分など、インストラクターにはあらゆる相談に乗ってもらいましたし、もちろんExcelについてもみっちり教えてもらいました。 実は今度私も後輩社員のインストラクターになるのですが、私自身の成長にもつながる経験だと思って楽しみにしています。 ――お2人はご自身の将来について、今どのようなキャリアビジョンを描いていますか? 千田: まだまだ学ぶことは無限にありますが、いずれはコンサルタントとして一人前になってクライアント企業により大きな貢献がしたいと思っています。さらにその先でいえば、コンサルタント以外の立場で、プレーヤーとして企業や産業に携わっていくことも視野に入れています。 シラカワ: コンサルタントは、プレーヤー=当事者にはなりきれない、という気持ちがあったりするんでしょうか? 千田: コンサルタントといえば、かつては経営課題を解決するための戦略を描いて伝えるところまでが主な仕事でしたが、今は違います。 戦略を実行するために、時には企業内に深く入ってお客さまと一緒に完遂するところまでコミットしているので、コンサルタントという立場であっても、プレーヤー=当事者としての経験を十分に積むことができていると感じます。 その上で、必ずしもコンサルタントという立場だけが自分がプレーヤーとして最も機能する形であるとは限らない、と思っているんです。 今は人材流動性の高い時代ですし、友人やクライアントを見ても、一つの組織にずっといることがスタンダードではなくなっています。キャリアチェンジも、フラットに選択肢の一つとして考えているんですよ。 いずれにせよ、経験やスキルを身に付け、自分が最も価値が出せる場所を常に選択していきたいと思っています。 日浦: 私は実を言うと、まだ将来のビジョンが固まっていません。だからこそ、今から10年以内に「これだ」と言えるものを見つけ出そうと考えているんです。 BCGでの仕事の面白さは、プロジェクトが1つ終わるごとに、新しい自分を発見できること。意外と得意なことや苦手なこと、それまで考えもしなかったことを面白いと思えること、知らなかった自分の一面をどんどんキャッチアップして、強みを確立していきたいです。 近い将来、「この分野なら日浦だ」と言ってもらえるようになるために、今は成長あるのみですね。 ウカイ: 確かにコンサルタントの仕事は成長できそうだなと思います。でも、ちょっと聞きにくいですが……、やっぱりコンサルって激務なんですか? 日浦: 私も就活中は、そこが気になっていました(笑)。 でも、入社してみて実感したのは「確かに忙しい時は忙しいけれども、激務ではない」ですね。 千田: もちろんお客さまの存在があるし、プロジェクトのフェーズ次第で大変な時もあります。「メリハリがはっきりしているなあ」という感覚です。 1日単位ではなく、ロングレンジでワークライフバランスを見たら、むしろ恵まれている気がします。プロジェクトとプロジェクトの合間に長めの休みを取ることも普通に定着していますし。 日浦: そうですね。かつて、コンサルタントが戦略策定だけを求められていた時代には、短期集中型のプロジェクトで最大の価値貢献をするべく、昼夜を問わずがむしゃらに仕事にまい進するスタイルが求められていたのだと思います。 でも今は、お客さまへの価値貢献の形も変わってきました。瞬間最大風速ではなく、継続的に成果を出し続けることが、コンサルタントに求められるようになってきています。 私たちコンサルタントが継続的に力を発揮できるよう、BCG全体が会社として社員のタイムマネジメントに力を入れているので、ワークライフバランスはしっかり取れていると思いますね。 サカイ: コンサルタントは激務と競争の中で猛烈に仕事をこなす、というイメージでしたが、もっと長期的に成長を続けながら働ける環境なんですね。 ユアサ: 日浦さんは出産後も働きたいとおっしゃってましたよね。今は、その具体的なイメージってわいてるんでしょうか? 日浦: もちろん! 私が就活中に話を聞いたBCGの女性コンサルタントも、まさに仕事と育児の両立をしていましたし、今参加しているプロジェクトの女性リーダーも、ライフイベントに応じて仕事の量や進め方を制御しながらも結果をきちんと出していて、理想的なロールモデルが近くにいます。 スキル、経験、信頼を積み重ねてきたからこそ、仕事とプライベートの比重を変えたいと思ったときに、それを実現できる能力と環境が手に入れられる。その実例を数々見ていますから、私もその時のために今は成長するべきなんだ、と迷いなく仕事に集中できています。 ウカイ: お2人が一番成長を実感できた、失敗談とかハードだった局面とかがあれば教えてください。 日浦: 失敗って概念はあまりないです。もちろん小さなミスや行き届かないことはたくさんありますけど、ファクトとしての間違いであれば必ず正しい答えを出し直しますし、プロセスの話であれば「次はこうしよう」と考えて取り組むので、最終的に失敗したまま終わるものってないんですよね(笑)。 千田: そうそう。失敗って、つまりは自分がコミットしてないことに起こるものだから。自分の力の足りなさを実感して改善策を打てないまま終わるものが“失敗”なんです。でもコンサルタントの仕事はフルコミットで臨むものですから、取り返すまでやり続けるので、基本的に失敗なんてないんですよ(笑)。 個人的に成長したと感じるエピソードとして思い出すのは、あるメーカーのプロジェクトですね。 海外のエキスパートを誘致して、新商品開発チームを立ち上げていたのですが、ミーティングで私がファシリテーターを務めていたら、お客さまサイドで意見が分かれてしまったんです。 たまたま上司のプロジェクトリーダーも不在の時で、何が何でも私が議題をまとめなければならなかったのですが、ロジックだけではヒトを動かせない状況に、皆さんに「何とかお願いします!」と頭を下げて、最終的には目的完遂できたという経験をしたことがあります。お一人お一人の思いや状況に向き合う人間力を試された場でしたね。 日浦: 分かります。私もある企業の営業改革プロジェクトで、新たなプログラムの導入をする際に、営業所の皆さんの理解をなかなか得られないことがありました。 それでも諦めず、ヘコたれずに毎日通い続けていたら、最後には「また来たのか!」と冗談交じりに笑って迎えていただけるようになりました。人を巻き込み、動かすために、いかに自分の本気や誠意を伝えていくことが大事かを思い知ったプロジェクトでした。 千田: もちろんロジックや効率性は極めて重要で外せない要素ですが、最終的にお客さまと正しい方向に向かって進むために、時には「足と時間と感情で稼ぐ」というところも大いにあると思っています。戦略の実行段階では、皆さんが思っている以上に泥臭いことをやっていますよ。 日浦: 入社前は、きらびやかな世界かと思っていたんですけれどね(笑)。シラカワ: 意外です。僕はコンサルタントに対して、正直偏見があったんです。もっとガチガチにロジックばかりをぶつけてくるような人たちばかりだと(笑)。 お2人の話を伺う中で、人柄に触れ、結局本当に能力が高い人たちは楽しそうに仕事をするんだなってことが分かりました。うれしい誤算です。自分の将来をもう一度真剣に考えてみようと思います。 ユアサ: 私もお2人が、私のボンヤリした質問の意図を的確にくみ取って答えてくださるのに感激しました。お話の仕方もすごく分かりやすくて。コンサルタントは優秀な人というイメージだけはありましたが、こんなに短い時間の中で自分の実体験としてそれを感じることができて良い経験になりました。 千田: 私もインターンに参加した時、コンサルタントに同じことを感じたのを思い出しました(笑)。 コンサルタントはクライアントの真意をくみ取り、真剣に向き合うのが仕事なので、そう言っていただけるととても光栄です。 ――お2人は就活時から、成長するためにスキルや知見を得たいとお考えでした。思い描いていた通りの成長を今、実現されていますか? 千田: そういう意味では、思い描いていた以上の成長ができていると感じます。 働き始める前は、課題解決力やリーダーシップ、ロジカルシンキングなど、分かりやすいビジネススキルや能力、知識を身に付けることが成長だと思っていました。でも、戦略を実行し、イノベーションを起こすためには、人を巻き込み、動かすことが最も重要だと知った今、それだけでは成長は語れないと気付きました。 人の機微を見抜き、組織を読み解き、自身のスタンスをぶらすことなく、ここぞというときには異論もぶつけられる、そんな絶妙かつ深いコミュニケーション力や粘り強さが、ビジネスの現場では必要とされます。ロジックだけでヒトは動かない。仕事の経験を積み重ねる中で、人間の本質の部分を磨くことこそが、成長なのでしょうね。 日浦: 私も、学生時代にイメージしていた成長はぼんやりとしたもので、仕事のスキルに偏ったものを想定していました。実際働いてみて、私もまた、スキルだけではないもっと本質的なものが必要だと実感させられています。 クライアントに価値を提供したいと、心の底から本気で思えるようになること。主体的に考え、勇気を出して動くこと。言葉にすると簡単ですが、社会人になり、責任を負ってみて初めて、その重みが分かった気がするのです。 学生の皆さんも、仕事を始めてからきっと、自分が求めていた“成長”の奥深さに気付くと思います。そうして初めて、本当の意味での自分の成長戦略が描けるようになるはずです。 (取材・文/森川直樹、撮影/竹井俊晴)
自分らしいキャリア&ライフを確立したい。が、どうすればできるのか――? これから社会へ出た後、20代~30代でぶつかるであろうキャリア選択の課題について戦略コンサルティングファーム・BCGのコンサルタントを中心に、第一線で活躍中のプロフェッショナルたちにその解決策や思考法を聞く。より良い人生を送るために、仕事とどう向き合い、キャリアを切り開いていくべきか、本質思考で考えてみよう。 第1回は、2016年までBCG日本代表として同社の指揮を執った水越豊氏に、2020年以降のビジネスシーンで必要とされるキャリア構築のヒントについて聞いた。 2020年という節目の年を間近に控え、「これからどんな時代になるのか」と問われる機会が増えてきましたが、私の考えは随分前から全く変わっていません。「不確実性の時代ですよ」というのがその答えです。 実はこの言葉、今から40年も前にアメリカの経済学者だったジョン・ケネス・ガルブレイス氏が記した著書のタイトル。1970年代の終わりから80年代にかけて、世界的なベストセラーとなった本なのですが、それから半世紀近くが経過した今も、私は「不確実」な時代がずっと続いていると考えています。 例えば、今からちょうど10年前にアップルが最初のiPhoneを発売しましたが、その後スマートフォンが全世界に普及し、暮らしにもビジネスにも巨大な影響力を持つようになる、と予測できた人が当時どれだけいたでしょうか? 限りなくゼロに近かったはずです。こうした予測不能な事象は、技術革新が目まぐるしく進んでいる今、ますます加速していくでしょう。 また直近の話題でいえば、米国の新大統領にトランプ氏が選ばれることも、英国の国民投票がEU離脱を選択することも、多くの人は予想していませんでした。先が読めず、何が起こるか分からない時代は今なお続いていますし、むしろその不確実性は今後さらに増していくと見ています。 いきなりこんな話をされたら、これから社会人になろうとしている学生の皆さんは、不安を感じるかもしれません。「先が見えない時代に、どんな仕事をして将来のビジョンをどう描けばいいんだ?」と。 一つ言えるのは、「先行き不透明なのは皆さんだけではない」ということです。例えば10年後に栄えているのは、どの国や地域なのか。どんな産業が発展し、どういう職種が脚光を浴びるのか。これらもまた厳密には分かりません。 つまり、絶対確実なものなどないのですから、これまで以上に我々は“自分ブランド”というものを、自分の責任で磨いていくしかないのです。「この会社に入れたらもう安心」「こういう仕事ができたら給料も良いし、カッコいい」などというステレオタイプな発想から脱却しましょう。 では、自分ブランドを磨くにはどうすればいいか? 私がお勧めしたいのは「自分の力を高めてくれる場で働くこと」。どんな場が自分を高めてくれるのかといえば、素晴らしい人と共に働ける場です。より具体的な話にするために、我々ボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)を例にとってご紹介しましょう。 今、BCGでは最新の領域に活動の場を広げて、そこでの知見を深め、お客さまと共に新しい価値を生み出そうとしています。最新の領域とは、例えばAIでありロボティクスであり、デジタルやフィンテック、生命科学やエネルギー改革といった領域です。こうした新しいものに触れる機会を持つことで人は大いに成長しますし、不確実な時代を突き破るような新しい可能性も膨らんでいきます。 そして、未知の世界に触れて知識を得ること以上に、それぞれの業界の先端で活躍する素晴らしい人たちと出会い、共に働くことそのものが、刺激を受け成長を得る機会になるのです。 コンサルティングファームは、人こそが唯一の財産です。BCGのメンバーそれぞれが自分ブランドを高めるチャンスを得て、より大きなインパクトを生み出す。それがBCGの力となる。この好循環を創出すべく、果敢に新しいビジネスフィールドへ挑戦を続けているともいえます。 結局のところ、人を成長させるのは、やはり人。どんな上司がいて、どんな同僚がいるのか。お客さまである企業のどのような人々と向き合うのか。不確実な時代だけに、「何を仕事にするのか」よりも「誰と仕事をするのか」がより一層重要になってくるのです。 だからこそ、自分自身の姿勢も強く問われることを忘れないでください。自分ブランドを高めたい、という強い成長欲求を持つこと。そして、知的好奇心を貪欲に発揮し続けることが成長をかなえる条件になります。 何事にも関心を持ち、新しい学びを得たときに喜びを感じる。分からないことに出会ったときには、「なぜ? どうして?」という疑問を解決するため、徹底追求していく。そんな知的好奇心に満ちた日々は、大切なものに気付かせてくれるはずです。 一つは、自分が持つ“可能性”です。自分という人間が何を得意にしていて、どんなことをしたら人よりも成果を上げられるか、学生である皆さんの20数年という人生の中では、見えていないことがまだまだあるでしょう。それが当然だと思いますし、実際私自身を振り返ってもそうでした。 仕事を通じてさまざまなことにチャレンジをしてくことは、自分の本当の可能性や才能を見いだすことにつながります。「自分の可能性も分からないのに就職活動をしなければいけないなんて」とネガティブに考えず、「自分の中の未知の可能性と巡り合えるような働き方ができる環境はどこか?」をとことん追い求めてみてください。 そしてもう一つ。知的好奇心をもって仕事に取り組むことで、高いレベルの“問題解決能力”が養われていることを、やがて自覚すると思います。 コンサルタントに限らず、営業職でも、研究職でも、職種を問わず、知的好奇心を刺激される仕事であれば、課題を発見し、新たな知見に触れ、自分なりの解を導き出すという一連の作業に常日頃から明け暮れているはず。その試行錯誤の積み重ねによって、ビジネスプロフェッショナルの基礎スキルとなる問題解決能力はおのずと磨かれます。そのためにも、若いうちから知的好奇心をもって仕事に取り組む習慣を付けることを強くお勧めしたいです。 私は20代の時、新日本製鐵にいました。非常におおらかで、高い視座をもって人を育ててくれる会社にいたおかげで、大いに成長することができました。 新卒入社の頃は社会人としての基本動作や考え方から覚えていきましたが、仕事に習熟していくうちに自信も付き、いつしか「水越はマンエツだ」と言われるようになりました。「マンエツ」とは「僭越」が過ぎるという意味の皮肉です。「せんえつ」の10倍生意気だから「まんえつ」ということ(笑)。 それでも部署を移る際には盛大な送別会を開いてくれて、先輩諸氏の懐の深さに感激したものです。生意気だろうが何だろうが、言われたことだけこなすことはしない。自分なりに現状の問題を発見し、その解決の仕方を考え、主張していたことを認めてもらったのだと思いました。また、そう考えて仕事に臨んだことで成長できたのだと自負しています。BCGに来てからも、同様のおおらかさを感じました。 業種や規模を問わず、あらゆる企業が勝機をつかもうとしていますが、コンサルタントはそうした企業のさらに半歩先を行く洞察と提案、実行によって結果を出さねばなりません。 一昔前のコンサルタントは、戦略プランのプレゼン時だけクライアントが思いもつかないようなアイデアでサプライズすれば評価されることもありました。今はそうではなく、プロジェクトの結果がもたらすクライアントへのインパクトでサプライズを起こすことが強く求められます。ですから、コンサルタントというと「大変そうな仕事だ」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、それは否定しません。 が、それでも私が入社したころ30数名だった日本法人は、今や約580人から成る組織へと拡大しています。タフな仕事と分かっていながらもこれだけ多くの人材が集まるのはなぜか? その背景には、もちろん人材教育の体制整備や働き方の改善などに着手してきたこともあります。しかしそれ以上に、自らを高めようという志の持ち主たちがBCGという環境や仲間を自らの成長の場として選んだこと。これこそが組織拡大の最大の原動力と考えています。 20年以上コンサルタント一筋なので、「他のことがしたくなりませんか」などと聞かれることもありますが、飽きるヒマなどないくらいに、次々と新鮮な驚きや刺激的な人物に出会えます。共に働く仲間はいずれも優秀で、侃々諤々の議論も厭わず、同じように新しい驚きや刺激を喜んでいるから、互いの意見を尊重し合う包容力がある。お金や地位を求める人の集団だったら、こうはいきません。 不確実な時代はこれからも続きます。そんな中で確実なのは、自らを磨いた者だけが魅力的な人と出会い、そこでまた成長を手に入れ、自分の価値を向上していけるということです。 自分の可能性を今から決め打ちせず、隠れた才能を開花させることができる場をじっくりと選び取ってください。それができるのは、学生である今だけです。そのチャンスを活かさぬ手はありませんよ。 (取材・文/森川直樹、撮影/竹井俊晴)