国内リーディングカンパニーの経営者たちに聞く “伸びる会社”の条件 世界経済に甚大な影響を与えたコロナショック。ビジネス環境が劇的に変化する中で、これからも“伸びる”会社は何が違うのか。各社のアフターコロナにおけるビジョンを知り、企業理解を深めよう GEヘルスケア・ジャパンの母体であるGEは、発明家トーマス・エジソンを創始者とし、事業をスタートしています。「産業の未来を切り開くリーダーとして、イノベーションを推進していく」という理念のもと、創業から130年以上にわたり、照明や発電、医療、航空分野など多様な事業を展開。時代のニーズに迅速に対応するべく、主力事業も次々と変化させてきました。医療機器の開発や最新の医療サービスを提供するGEヘルスケア・ジャパンもその姿勢を受け継ぎ、時代の要請に対応するべく、変化し続けることを重視しています。 現在、コロナショックにより生活様式が一変し、あらゆる企業が方針転換を迫られていますが、時代のニーズを捉えて変化してきた私たちにとっては、この未曾有の事態も新たな変革の始まりと捉えています。 最近の動きでは、病院内における新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、CT in Box(コンテナ型の簡易CT室)をいち早く開発。緊急事態宣言発令直後の2020年5月、日本にも導入し、隔離された場所でコロナ患者さまの治療を完結できるよう、院内感染を防止するソリューションを生み出したのです。 このような医療の課題にタイムリーに対応できるのは、130年の歴史を通じて培ったノウハウ、最新のテクノロジーなどのイノベーションを課題解決のために社会実装している点が大きいでしょう。そしてこれらの背景には、GEヘルスケア・ジャパンの社員一人一人が発揮しているリーダーシップがあります。 GEグループにおけるリーダーシップとは、役職に関わらず、全ての社員がそれぞれの業務の中で発揮すべきものと定義しています。管理職よりもむしろ、現場の最前線で顧客と最も身近に接している社員こそがリーダーシップを発揮し、課題解決に導かなければなりません。社員全員のリーダーシップが、GE全体の先導力につながっているのです。 世界市場においても、GEヘルスケア・ジャパンはリーダーシップを求められています。例を挙げるなら、少子高齢化や労働人口の減少、過疎化など、課題先進国と言われる日本において、今私たちが取り組んでいるプレジジョン・ヘルス(医療の精密化・個別化)の促進があります。現在の治療では薬剤の必要性を厳密な意味で検討することが難しいこともあり、薬の大量処方や非効率なサービスの提供などから、社会保障費への圧迫、ひいては患者さまへの不利益が生じるケースなども散見されます。その改善に私たちの技術が使えますが、問題は、当社単独で全てを改善することは極めて厳しいということ。そこで必要となるのが、私たちとは異なる強みを持つ他企業とのパートナーシップです。直近の事例で言うと、アマゾン ウェブ サービスとの協業があります。私たちの持つヘルスケアのノウハウと、アマゾン ウェブ サービスの最新テクノロジーを掛け合わせ、GEのAI開発環境「Edisonプラットフォーム」を駆使した、効率的かつ精度の高い医療サービスを提供できる仕組みを構築。人員不足が叫ばれる医療現場の改善につなげています。 このように国内で成果を挙げることで他社の模範となり、世界をリードする存在としてあり続けることが私たちの目標です。実際にグローバルにおいても、日本のヘルスケア市場は戦略次第で今後も成長できる市場と位置付けられています。そこで18年より日本は単独地域としてグローバル本社直結組織となり、日本におけるビジネスのかじ取り全てを任されています。世界に先んじて直面する医療課題に対し最適な解決策を生み出し、世界にノウハウを還元していくためにも、社員のリーダーシップは不可欠です。 「成功よりも成長」を重視し、挑戦心が育まれる風土を醸成 世界をリードする存在として価値を発揮するためには、変化に強く、挑戦を楽しめる人材が必要です。そこで私たちはまず、社員が失敗を恐れずに挑戦できるよう、人事評価制度の変革に取り組みました。過去、GEグループには「9ブロック」と呼ばれる、レイティング(格付け)による人事評価制度がありました。世界から認められた制度でしたが、社員が失敗や他者からの評価を気にしてチャレンジを恐れる側面もあったため、16年に思い切って廃止したのです。その後、導入したのが、「PD(パフォーマンス・デベロップメント)」と呼ばれる新しい制度。良い仕事はすぐに評価し、失敗はその場でフィードバックをするようにしたタイムリーな評価制度です。失敗にも寛大であり、人との比較をなくすことで挑戦を促し、個人の成長を第一に考えるスタイルに変換したのです。 そんな私たちの環境を例えて言うなら、動物園ではなく、サバンナのようなフィールド。自走することが求められ、困難や緊張も伴いますが、その分高い成長が望めます。実際に、GEヘルスケア・ジャパンでは若い年次でも高いレベルの業務に携わることが珍しくありません。40代で売上規模10兆円以上のGEグループのCEOに抜てきされた社員など、卓越した人材の輩出につながっています。挑戦に臆せずリーダーシップを発揮できる人材が今後のGEヘルスケア・ジャパンの成功をけん引し、より良い未来の創造に貢献していくことは間違いないでしょう。 リーダーシップマインドを一人一人が持ち続けること。この信念が、時代を切り開き、成長し続ける上で重要な鍵となるはずです。 伸びる会社の条件とは? 1.過去の成功にとらわれず、変革を推し進められる 2.厳しい現実をポジティブに捉え、挑戦し続けられる 3.社員全員がリーダーシップを発揮できる
国内リーディングカンパニーの経営者たちに聞く “伸びる会社”の条件 世界経済に甚大な影響を与えたコロナショック。ビジネス環境が劇的に変化する中で、これからも“伸びる”会社は何が違うのか。各社のアフターコロナにおけるビジョンを知り、企業理解を深めよう コロナショックが広告業界に突き付けたものとは何だったのか。そしてこの領域でいかなるニューノーマルが築かれていくのか、というテーマについてはさまざまな視点から語る必要があります。しかし結論を先に言うならば「原点回帰」。クライアントである企業・団体が抱える課題を解決する、という本来の使命と向き合い、明確な成果を上げていくことが求められると考えます。 新型コロナウイルスは社会のあらゆる場面に影響を及ぼしました。エンターテインメントや旅行、飲食など日々の楽しみのための消費が激減し、人々の生活は〝断捨離化〞とも呼べる現象が広がっています。ビジネスにおいても、あらゆる局面でコスト削減が図られ、メディアを主たる収益源としてきた広告会社を圧迫しているのです。さらに、コロナ禍前には堅調な実績を上げていたプロモーション案件やウェブ・デジタル関連のプロジェクトも影響が避けられず、厳しい状況が続いています。しかし、社会全体が立ち直っていく段階に入れば、マーケティング分野における広告会社のプレゼンスは再び重要性を増していくでしょう。 ポイントは当たり前ですが、全てが以前の状態に戻るわけではない、ということ。ニューノーマル時代を見据え、われわれも真剣に考え、チャレンジする必要がある。だからこその「原点回帰」。一度断捨離を実行した多くの企業は、これから先、業績を立て直すべく今までと異なる多くの課題を解決していく必要があるでしょう。広告業界が目指すべき事柄も「かつてのような収益分野の依存を再び手に入れる」ことではなく、クライアントの多様化する課題に正面から向き合い、共に解決していくこと。われわれにはその姿勢と力とが備わっていると自負しています。 「ルールバスター」だからこその強みが今こそ発揮される 今でこそジェイアール東日本企画(以下、jeki)は国内広告会社の売り上げランキングで常に上位に位置する企業ですが、そもそもは後発組。先行する大手競合企業がマスメディアを中心に圧倒的地位を占めている中、彼らと競うためには数々の挑戦をしていく必要があったのです。 JR東日本のグループ会社である利点も武器の一つであり、ハウスエージェンシーとして交通スペースという強みを持ち、独自のビジネスモデルを築きました。人々が行き交う「列車・駅」という付加価値の高さや機能を〝移動者〞というヒトに着目することでマーケティングに活かしていく独自モデルも、ゼロから創出してきたと言っても過言ではありません。しかしjekiの強みはそればかりではなく、事実、営業収入に占める交通広告は今や全体の3割ほど。残る全ては「お客さまの課題解決を目指し貢献する」というテーマに真剣に向き合い、泥臭い姿勢で生み出してきました。 「課題解決」と言ってもその手法は多岐にわたります。例を挙げると、地域創生を目指す地方自治体や公共機関の案件では、独自のコンサル手法やデジタルソリューションを活用した取り組みを早期から徹底し、突出した成果を上げ続けています。また、最初のTV番組化から長年手掛けているポケットモンスター、近年では〝天気の子〞等、有力な映画・アニメ等のコンテンツに数多く参画し、独自のタイアップ企画で業界の注目を集めています。既存の発想やルールにとらわれない課題解決手段をその都度考え、試行錯誤の末に結果につなげることが後発組であるjekiが進むべき道。業界のルールバスターとして現在の地位を築いてきましたし、結果として従来分野にばかり依存しないウィングの広い独自の事業体を構築したのです。 そしてこれこそがニューノーマル時代において、命運を大きく分けると言えるでしょう。DXをはじめ多様な変革を目指す多くのクライアントからは、今まで以上に多くの難題が寄せられるはず。もはや広告会社のライバルは同業だけにとどまらず、コンサルティングファームやデジタル・IT系企業が競争相手であり、時には共創相手とも成り得ます。実際、大手の広告会社やコンサルティング企業などの間で、M&Aによるデジタル系プレーヤー、デザインファーム争奪戦も始まっています。しかし最も重要なのは、ニューノーマル時代に向かって試行錯誤を繰り返すお客さまの課題に、どれだけ愚直に取り組んでいけるか。規模や資本や専門性にモノを言わせるのでなく、自らの機動力や創造性で立ち向かえるかどうかです。誤解を恐れずに言えば、jekiは決して超一流のレストランでも、日本最大の高級店でもなく、B級グルメのお店。ただし、どこにもまねのできないオリジナル料理を自力で生み出し、他にはない多彩なメニューで、地道にお客さまの信頼を勝ち得てここまで来ました。今後もそのスタンスは変わりません。お客さまが欲するものを〝先読み〞し、いつでも新しいメニューを創り出すカルチャーが根付いています。 「広告業とはこういうもの」という旧来型の常識を捨て、ルールバスターの発想と愚直な姿勢の掛け合わせで風穴を開けてきた私たちには、ニューノーマルという新しい枠組みに向かい、社会の変化を楽しむほどの気概がある。またリーマンショックにおいて総合広告会社の中で最も実績を伸ばしてきたという自信もある。ですから、伸びる会社に入るという発想ではなく、自らニューノーマルを創り出したいと望む方と共に新たな時代を歩みたいですね。 伸びる会社の条件とは? 1.課題解決という本来の使命に、誠実に向き合える 2.過去に固執せず、独自のモデルを構築できる 3.変化をチャンスと捉え、楽しむ気概を持てる
国内リーディングカンパニーの経営者たちに聞く “伸びる会社”の条件 世界経済に甚大な影響を与えたコロナショック。ビジネス環境が劇的に変化する中で、これからも“伸びる”会社は何が違うのか。各社のアフターコロナにおけるビジョンを知り、企業理解を深めよう 新型コロナウイルスのまん延により、多くの企業でリモートワークが導入され、半強制的に働き方を変えざるを得なくなりました。この出来事によって、今後どのような企業が伸びるのか、明暗が浮き彫りになったと感じています。 まず、デジタル化が進んでいる企業では、こうした非常時であっても普段と変わらず効率的に仕事ができているということが分かりました。その中でも一部の企業では、このコロナの影響が不可逆的なものであり、もう元に戻らなくなることを前提に、早い段階から事業や働き方の変革に着手していました。ただ一方で、一時的にリモートワークを取り入れたものの、緊急事態宣言が解除された後、すぐにビフォーコロナのワークスタイルに戻った企業が一定数存在するのも事実です。その理由としては、経営層のデジタルリテラシー不足や、メンバーを身近でマネジメントできない不安によるところが大きいと私は考えています。 前者と後者、今後伸びる会社はどちらかというと、前者であることは明らかです。それを分かりやすく表しているのが、デロイト トーマツ グループが企業の経営層と社員向けに実施したリモートワークに関するアンケート。経営層はリモートワークを週1日程度に限定したいと考えているのに対し、社員からは週3〜4日程度のリモートワークを希望する声が多数あがったのです。このアンケート結果が意味するのは、企業の思惑とは異なり、個人ベースではフレキシブルに働くことへのニーズが高いということ。つまり、優秀な人材は次第に柔軟な働き方を許容する企業に集まり、そうした企業の成長力はさらに高まると言っていいでしょう。これはビジネスにおいても同様。変わりつつある社会のニーズを的確にキャッチし、多岐にわたるリスクをコントロールしながら、スピーディーに事業を変革していける企業がこの先も伸びていくはずです。それでは、ここで言う変革とはどういうものを指すのでしょうか。われわれデロイト トーマツ サイバー(以下、DTCY)が事業の主軸として注力している〝サイバー空間〞は大きなキーワードになるでしょう。 DTCYはデロイト トーマツ グループに属していた2社のサイバーセキュリティ部門の統合により設立された、サイバーセキュリティに特化したコンサルティングファームです。サイバー攻撃や情報流出など、サイバー空間におけるリスクを経営やDX戦略に直結する課題として捉え、新たなサービスやソリューションを提供しています。 デジタル化が加速するアフターコロナにおいては、私たちが普段生活しているフィジカル空間(現実空間)だけでなく、サイバー空間(仮想空間)をいかに活用できるかが重要な点だと考えます。しかしながら、前述のとおりデジタルリテラシーが低く、サイバー空間をうまく活用できていない企業が多いのが実状。だからこそ、顧客に合わせたコンサルティング、いわばサイバー空間をデザインしていくことが、われわれDTCYが残すべきインパクトだと思っています。そこで最近注力しているものの一つとしてご紹介したいのが、スマートシティやスマートワーク、スマートモビリティなど、フィジカル空間とサイバー空間を融合した〝スマートX〞です。皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。まだ実証実験の段階ですが、東京のある地域でスマートシティを構築するべく、デジタルインフラの整備、そしてサイバー空間を守り、活用していくプロセスの全てにおいて、DTCYが大きく関わっています。 会社は成長するためのプラットフォームに過ぎない 今後のビジョンは、3〜4年後に企業規模を5倍まで拡大すること。それは単純な水ぶくれではなく、付加価値と収益性の高いソリューションを提供していくことを目指しています。顧客がサイバー空間を駆使できるようになるためのトランスフォーメーションを、われわれが主導となって仕掛け、サイバー空間において不可欠な存在になっていきたいのです。そのビジョンを達成するために求めるのが、新しいことや楽しいことに挑戦したいという強い欲求を持っている人。なぜならば、サイバー空間というもの自体がこれから加速度的に成長してく段階にあり、それだけ新しいことにチャレンジしているということだからです。 一人一人がプロフェッショナルとして自分でやりたいことを決め、居場所をつくり、価値を発揮していく。デロイト トーマツ グループではおのおのがこうした働き方をしています。会社は自分を成長させるためのプラットフォームに過ぎません。そこで声を大にして伝えたいのは、DTCYは成長したい人にとって最高のフィールドであるということ。なぜならグローバルに広がるグループのリソースを活用でき、自由なチャレンジが可能だからです。サイバーセキュリティ人材は需要に対し著しく枯渇しており、市場価値が急上昇することは間違いありません。そのため、トレーニングの7〜8割はグローバル水準のプログラムを取り入れ、一人あたり数百万円もの教育費用を投資。グループ内でも人材育成は最も注力している部分の一つとなっています。加えてサイバーセキュリティ領域には国境がありません。ですから、世界のどこでも活躍できる市場価値の高いプロフェッショナルを目指したい。そう考える人にとって、DTCYはうってつけのフィールドであるはずです。 伸びる会社の条件とは? 1.市場変化を前向きに捉え、強い意志を持ち変化・成長する 2.社会のニーズをつかみ組織や事業を素早く変革できる 3.デジタルネイティブな人材が活躍している
EYのメンバーファームとして2020年10月に新設されたEYストラテジー・アンド・コンサルティング。彼らが掲げるパーパスBuilding a better working worldを実現するために打ち出した、“NextWave”戦略とは何か。同社代表の近藤聡氏と、パートナー4名のインタビューから紹介する。 グローバルで一丸となり“より良い社会の構築”に向けて本質的な価値を提供する EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社代表取締役社長近藤 聡氏 大手総合系コンサルティングファームにて、自動車・ハイテク業界を中心に、企業戦略、オペレーション改革、海外展開戦略策定・実行支援などクロスボーダーを含むプロジェクトを数多く手掛ける。2011年より、同ファームで日本代表を務める。19年1月、EY Japanに参画し、その成長戦略実行の責任者として活動 次世代を見据えて長期的な視野に立って動く このたび2020年10月1日付けで、EY Japanにおけるコンサルティング部門とトランザクション部門を統合し、EY ストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)として新たなスタートを切りました。同じくEY Japanを構成するEY新日本有限責任監査法人やEY税理士法人と共に、EYのメンバーファームとしてグローバルが持つネットワークやアセットを活用しながら、さらなる飛躍を目指します。 EYは、Big4と呼ばれる世界四大ファームの中で最初にパーパス・ステートメントを掲げました。それがBuilding a better working world(より良い社会の構築を目指して)です。これは単なる標語ではなく、「EYがなぜ存在するのか」という根源的な意義を対外的に示したものです。それはつまり、「われわれはより良い社会の構築に資さないことはしない」という宣言でもあります。 ただし、より良い社会はすぐにつくれるわけではありません。だからこそ、EYは長期的な視野に立って物事を実行します。"Create Long-Term Value as the world's most trusted, distinctive professional services organization"がEYのアンビション(なりたい姿)です。世界には、派手なインパクトや一時的な経済的メリットをもたらすことを良しとする風潮があるように感じますが、EYは常に「次世代に何を残せるのか」というLong-Term Value(長期的価値)の創出を考え、そのために必要なことは投資も含めてどんなことでも積極的に行います。つまりこれからEYに参画する方々は、「より良い社会の構築のために、約40年続く自分のビジネス人生を懸けて何を構築するか」がキャリアのテーマになるのだと思います。 そのような志や活動が評価され、EYは、グローバルにおけるプレゼンスが非常に高いです。一方で、日本における認知度や影響力はグローバルに比べるとまだまだでしょう。その理由は、日本での歴史が浅いことにあります。2017年に日本を統括する法人としてEY Japan合同会社が設立され、翌年にはそれまで別々の場所にあったメンバーファームのオフィスを全て東京ミッドタウン日比谷に集結させて、自分たちがEYの一員であることを改めて明確に打ち出しました。つまり日本での歴史はまだ3年ほどというわけです。だからこそ日本のメンバーたちは、「より良い社会の構築を目指して」というパーパスを自分ごと化しようとする熱意にあふれています。グローバルから与えられた他人ごとの概念で終わらせるのではなく、自分たちの力によって本気でその志を実現したいという情熱を持った人たちばかりが集まっています。これなら数年のうちにグローバルと同レベルのプレゼンスを獲得できるはずだと確信しています。 さらには、グローバルとの距離が非常に近いこともわれわれの強みです。パーパスに対するこだわりがEY全体に浸透しており、それにどう貢献しているのかが、最重要なKPIとなっています。そのためグローバル全体が一つのチームとして連携し、成果を出すことを求められており(Teaming)、それを実践することができます。国同士やサービス間の垣根も低く、国籍や文化による壁もなく、ダイバーシティ&インクルーシブネスが組織のDNAに根付いています。よってEYでは、戦略もグローバル共通のものしか存在しません。それが"NextWave"です。「Client」「People」「Technology」「Global」の四つを柱に、クライアントに対してチームでEYとしての総合的な価値を提供することを目指します。 コロナ禍によって世の中の価値のありさまは大きく変わりました。これからのファームは、知名度や組織の規模、オフィスのロケーションというような物理的な魅力ではなく、より本質的な価値を出せるか、所属メンバーとしてファームが掲げる理念やなりたい姿というようなソフトな側面に共鳴できるかどうかが、より重要になってくると思います。われわれはこれからもパーパスに基づき、社会に対して本質的なLong-Term Valueを提供することを追求していきます。 個人と組織の成長をどちらも体験できる 先ほど述べたように、日本のEYは歴史が浅く、早く成長してグローバルのプレゼンスに追い付くことが目標です。これから入社する方々には、その推進力の中核になってくれることを期待します。まだ日本では新しい組織だからこそ、EYSCでは若手コンサルタントが自分でプラクティスをつくり上げていくという貴重な経験を積むことができます。すでに出来上がった大きな組織では、その一部として動くことになってしまいがちですが、弊社なら、プロフェッショナルとして自身の能力をビルドアップして成長していくと同時に、自分が所属するプラクティスを強くしていくことも体験できます。グローバルプロジェクトに参画し、各国のメンバーが持つ知見を取り入れながら、世界に通用するプラクティス構築にチャレンジする機会も豊富にあります。個人としても組織としても成長を実感できる機会が得られるでしょう。そのためにも、若い人たちには愚直であってほしいと思います。「これはやりたくない」「これは向いていない」などと仕事を選別するのではなく、まずは何でもやってみて、その体験や周囲からの言葉を素直に吸収してください。その方が圧倒的に成長は早いですから。 どんな仕事を与えられても成果に結び付けようとする姿勢があれば、必ず一流のプロフェッショナルに成長していけるはずです。 長期的価値の創造を目指すEYのNextWave四つの柱 EYが掲げるNextWave戦略の四つの柱、Client(顧客)・People(人)・Technology(技術)・Global(グローバル)。それぞれどのような取り組みを実施しているのか、それらはこれから入社する若手のキャリアにどう影響するのか。4人のパートナーに話を聞いた。 Clientクライアントを中心に組織の枠を超えてチーミングし課題解決に挑む EYパルテノンマネージングディレクター/パートナーStrategy Execution Lead for Asia-Pacific小林暢子氏 複雑化するクライアント課題「顧客視点」でひもとく EYがNextWaveの重要な柱の一つとして「Client」を掲げたのは、EYとして「顧客視点で考える」姿勢を改めて全社で徹底するためです。その背景として、クライアントが抱える課題の複雑化が挙げられます。今や彼らが抱える問題は、単一の事業課題で捉えることは難しく、さまざまな問題が絡まって、複雑かつ広範囲に及びます。「この問題はこの専門家に」と、両者を単純に結び付けるのが難しくなる中、複雑な問題を解決する役割が私たちコンサルタントに強く求められています。一方で、コンサルティングファーム間の競争の激化も目立ちます。多様なサービスが展開され、ファーム間の差別化が以前にも増して難しくなっている今、私たちはより一層クライアントの立場に立ってサービスを提供しなくてはならないと考えています。 そこでEYは、クライアントに対して課題解決を提供するだけではなく、Long-Term Value(長期的価値)を提供することを重視しています。EYは、四つのサービスライン(監査、税務、コンサルティング、ストラテジー&トランザクション)から成り立っているのですが、それぞれに会計士や税理士を含めた多数の専門家が在籍しています。消費財、製造業、金融機関などクライアント業界ごとのセクターアプローチを取っており、それぞれに深い知見を持った専門家がいます。クライアントの課題を解決するためには、サービスラインの枠を超えて、ベストなメンバーでの「チーミング」が重要です。まずはクライアントがどのような悩みを抱えているかを傾聴し、その上で専門家同士の知見、経験を集約しながらソリューションを柔軟に組み立てるべきだと考えます。そうした顧客視点のコンサルティングサービスを提供すること、クライアントにLong-Term Value(長期的価値)を提供することは、クライアントの満足度を上げるだけでなく、他ファームとの差別化にもつながります。 新卒でコンサルティングファームに入社すると、若手のうちから企業の経営者と働き、経営課題に向き合う貴重な経験を積むことができます。高い視座に立ってビジネスを捉えることができるようになることは、コンサルティングファームならではの醍醐味でしょう。EYでは入社後、グローバルなプロジェクトを複数、短期間で経験することができ、キャリアの初期から企業を見る目を養うことができます。一流のコンサルタントになるために必要な条件は、個々人の「専門性」と、人間的な魅力、すなわち「人間力」が必要です。いきなり「専門性」を磨くことは難しいので、まずはクライアントに真摯に向き合い、「人間力」を磨くことに集中することをお勧めします。頭でっかちではない、地に足の着いたコンサルティングができるようになるためには、若手のうちから「顧客視点」を身に付ける必要があります。EYはそのベストな環境が提供できると強く信じています。 Peopleダイバーシティ&インクルーシブネスを経営の中核に EYは多様なキャリアのあり方を支援する EY Japanコンサルティングダイバーシティ&インクルーシブネス リーダーパートナー佐々木 惠美子氏 EYの多様な人材が、長期的価値を生む 「人を大切にする」カルチャーを育んできたEYは、新戦略NextWaveにおいても「People」を4本柱の一つに置き、多様なキャリア体験の支援に力を入れています。今、クライアントを取り巻く環境は大きく変化していると同時に、コンサルタントにはより最新で包括的なサービスが求められるようになりました。このハイレベルなニーズに応えるためには、今まで以上に多様なスキルやバックグラウンドを持った人材が不可欠です。 そうした人材をそろえるために大切なのは、EY自身が、真に魅力的な職場であることです。私たちはお客さまにLong-Team Value(長期的価値)を提供したいと考えていますが、それはメンバー自身がEYで働くことに長期的価値を感じて、初めて実現することです。優秀なメンバーに選ばれ、かつ今いるメンバーが誇りを持って働ける職場であるために、EYではメンバー一人一人の長期的なキャリア支援に取り組んでいます。具体的には、メンバーのキャリアを支援する「ファミリー」が存在し、パートナーは「ファミリーリーダー」として、所属メンバー全員のキャリアパスを踏まえた配置を行います。キャリアに関する不安は個別にカウンセラーに相談することも可能です。 また、多様化するEYのサービスにおいてメンバーがキャリア構築に悩むことがないよう、各種ガイドラインや学習ツールも整えました。学びのコンテンツと、丁寧なサポートの両方を活用し、優秀なコンサルタントに育っていただきたいと考えています。 さらにEYではパートナーが率先してインクルーシブなカルチャーの醸成に取り組んでいます。モノカルチャーの中ではイノベーションは生まれません。個人の違いが認められないために不安や不利益を感じてしまう環境では、パフォーマンスを発揮できないのは当然でしょう。マイノリティーだけでなく、異なる個性を認め合うことが大切だと考えます。アンコンシャスバイアスへの対処も含め、誰もが気持ち良く働ける職場であるよう、ダイバーシティ&インクルーシブネスを経営戦略の一つと位置付けて推進しています。 もちろん、新入社員の多様なキャリアをサポートする体制も整っています。特に、NextWaveが打ち出された今は、新入社員の方にとっては成長のチャンスです。目先のタスクに振り回されただけで終わってしまう1年よりも、パートナーが育成に責任を持ち、長期的な目線で仕事や課題を与えてくれる1年の方が成長できるのは言うまでもありません。 キャリアの初期に得られる学びは、その後の人生でずっと生きる大切なものです。期待のあまり、時にはチャレンジングな業務を任されることもあるかもしれません。でもその先には、理想的なキャリアが続いています。コンサルタントとしての成長を重視する方には、ぜひ挑戦していただきたいですね。 Technology課題解決の「手段」としての テクノロジーの素養は新時代のマストスキル EY Japan コンサルティングテクノロジーコンサルティング リーダーパートナー田畑紀和氏 データ・ドリブンな組織を編成目指すは「変革のリーダー」 EYでは2020年7月、NextWave戦略の一貫としてテクノロジー部門の組織拡大を行いました。クライアントの変革を実現するために、今やテクノロジーの知見は絶対に欠かせないものです。しかし単にテクノロジーを導入するだけでは、ビジネス価値は生まれません。テクノロジーはあくまで「手段」にすぎず、それが「目的」ではないからです。手段としてのテクノロジーを活用して、いかに価値を生み出し、変革を叶えるか。そうした役割が今、コンサルティングファームに強く求められています。そこでわれわれが目指すのは、もはや「コンサルティングのリーダー」ではありません。テクノロジーを通じてクライアントの変革を実現する「変革のリーダー」です。 従来のテクノロジーコンサルティング業界では、ウォーターフォール型の長期開発が基本的なスタイルでした。答えは要件を定義するクライアントの中にあり、コンサルティングファームはそれを実現する「御用聞き」のような存在でした。しかし今は、こうした常識が崩れつつあります。大規模な長期開発をしているうちに、経営環境や技術はあっという間に変化してしまいます。しかもデータやデジタルを使ってどんなビジネスをしたいのか、クライアントの中に明確な答えはありません。変化の激しい世界をどうやって乗り越えていくかをクライアントと共に考え、率いていくのがわれわれの新たな役割なのです。 こうしたテクノロジーの進化は、われわれコンサルタントのワークスタイルにも影響を及ぼしています。今までのコンサルタントは、「クライアントが一つの作業に何時間かけているか」を調べるのも重要な仕事でした。ところが今は、リモートワークの浸透が追い風となり、あらゆるアクティビティーがデータ化されるようになりました。こうした状況下では、今までのやり方は時代遅れと言わざるを得ません。変革そのものをデータに基づいて行うのが、これからのコンサルタントのあるべき姿です。そのためには、スピード感を持ってアジャイルアプローチで変革を進めなくてはなりません。コンサルティングファームは今、仕事のやり方を根本的に変えなくてはならない転換期を迎えているのです。そこでEYでは、変革に必要な5つの要素│サイバーセキュリティー、エマージングテクノロジー、データアナリティクス、テクノロジー・ソリューション・デリバリー、トランスフォーメーション│を一つに集めた組織をつくりました。他のコンサルティングファームでは、セキュリティー、デジタル、アナリティクスは別組織になっているケースが多いのですが、5つの要素がそろわなければ、変革は実現できません。もともとEYは組織間の壁が低い会社ですが、今回の組織改編により、さらにクライアントの変革を実現しやすい体制が整ったのです。 EYでは、キャリアの早期からテクノロジーに深く携わることができる環境が用意されています。繰り返しになりますが、これからの時代にコンサルタントを目指す方には、テクノロジーの素養は欠かせません。ITの領域は学ぶ時間も相応に必要ですから、若い頃から技術に触れておくといいですね。テクノロジーを知らなければ、適切なコンサルティングができないばかりか、クライアントと会話すらできません。早くから最新のテクノロジーに深く関わっていける会社かどうか、就活生は十分に知った上でファーストキャリアを選べるといいですね。 Global新常態でグローバル連携が加速世界中の同僚と働く機会が増えている wavespace Tokyo リーダーパートナーヘレン・ベントレー氏 世界各国の専門家集団と最先端プロジェクトを推進 他ファームとの差別化を推し進める上で、「Global」はEYにとって大変重要なコンセプトです。私たちはプロジェクトを実行する際、各国別ではなく、グローバルで一つのチームを組んで対応します。クライアントのデジタル領域の課題を解決するイノベーションハブ『EY wavespace』では、FinTechならニューヨーク、データ・アナリティクスならロンドンやマドリード、カスタマーエクスペリエンスならロンドンやサンフランシスコというように、各国に最新テクノロジーの専門家集団を組成。これらのテーマに関係するプロジェクトを進める際は、日本だけでなく、グローバルの知見を借りて進めていくのがEYの特徴です。 実際に、昨年『EY wavespace』のJapanチームが携わったプロジェクトをご紹介しましょう。EYがオフィシャル・プロフェッショナル・サービス・サプライヤーを務めた『ラグビーワールドカップ2019日本大会』では、EYシンガポールとのパートナーシップの下、VRの体験コンテンツを作成しました。また、EYイタリアとは、ワインブロックチェーン(ブロックチェーン技術を活用し、ワインなどの商品バリューチェーンを管理するシステム)を日本の酒造業界に導入するプロジェクトを協力して実施しました。さらに、先日はEYスペインと連携し、同チームが開発した人材育成のデジタルアプリケーションを日本企業に導入する取り組みを行っています。 このようにEYでは、グローバルなチームと共に最先端のプロジェクトに参画する機会が豊富にあるのです。また、グローバル規模で働くコンサルタントの活躍を後押しするため、外部のビジネススクール、と連携し、最新技術やイノベーションの専門知識を学べるオンラインMBAプログラム(『EY Tech MBA』)の提供もしています。コンサルタントとして働きながら正式なMBAの取得や、スキルアップも実現できるのです。 コロナ禍は世の中に大きなストレスをもたらしましたが、EYでは今まで以上に海外のメンバーと共に働くチャンスが増えたとも言えます。実際、Japanチームは、グローバルのプロジェクトにオンラインで参画する機会が増えました。将来的に渡航制限が解除されたら、リアルとバーチャル両方の環境を駆使して、今まで以上に他国のメンバーとの連携ができるようになるでしょう。 また、日本のチーム自体も大変ダイバーシティーに富んでいます。アメリカ、台湾、中国、インド、タイ、シンガポールといったさまざまな国の出身者やLGBTQの方が一緒に働いています。 もちろん新入社員であっても若いうちからグローバルなプロジェクトに参加できる環境があります。現在、私のチームに所属している新卒のメンバー2人は、ロンドンやニューヨーク、上海のチームとすでにプロジェクトを進めています。日本にいながらにして、年齢や立場に関係なく、これほど多様性のある職場で働ける会社はそう多くはないのではないでしょうか。同じコンサルティングファームでも、グローバル化の程度はさまざまです。これから就活をする皆さんは、自分が本当に希望する働き方ができるのか、真にグローバルな会社なのかを慎重に見極めて、社会への第一歩を選択するようにしてください。EYには間違いなく、トップクラスのグローバルな環境があることをお約束します。
コロナショックにより、これからのビジネスの在り方はどう変わっていくのか。デロイト トーマツ コンサルティング代表執行役社長の佐瀬真人氏と、同社の現場でTech×Digitalでビジネスを推し進める2名のパートナーに、DTCが描く「ニューノーマル」への道筋を聞く。 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社代表執行役社長 佐瀬 真人 氏 2000年4月にDTCに新卒入社。自動車業界を中心にコンサルタントとしてキャリアを積み、近年はデロイト アジアパシフィックやデロイト トーマツ グループのセクターリーダーを歴任。19年6月より現職 コロナ禍により増す「END to END」のニーズ 2018年、デロイト トーマツ グループは50周年を迎えました。その一員としてコンサルティングサービスを担うデロイト トーマツコンサルティング(DTC)は、コンサルティング業界の中でも極めてユニークなポジションを築くことができました。戦略特化のファーム、テクノロジーに強いファームなど、各社さまざまな特徴がある中で、DTCはあらゆる業種・業界のクライアントに、戦略策定から実行までを一貫して支援する総合コンサルティングファームとして地歩を固めています。総合ファームとしてあらゆる課題に対応できる理由としては、創業以来、徹底して「クライアントファースト」の姿勢を貫いてきたからだと思います。 新型コロナウイルスのインパクトは非常に大きなものでした。クライアントは目の前の問題に対応せざるを得ず、通常のコンサルティングテーマに取り組む状況ではありません。緊急事態宣言前後は当社も苦労しましたが、リモートによるクライアントとのコミュニケーションを強化し、6月以降ビジネスは好調に転じています。最近ではアフターコロナに向けたコンサルティングテーマが増加。特にコロナの影響が大きかった業界では、生き残りを目的にM&Aの動きも出てきています。事業ポートフォリオの再編に注目する企業も多いですね。中でも増えているのが、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)に関するもの。近年、企業はDXを大きな経営課題と認識していましたが、コロナ禍で不可逆な変化として受け入れざるを得なくなりました。例えば非接触型の営業をどう進めるか、リモートワークに適した社内プロセスをどう整えるか。コロナ禍を事業を変えるチャンスと捉える企業と、まだ様子を見ている企業では、今後大きな差がつくはずです。 企業、コンサルティングファームともに、これからのキーワードは3つ。まずは「アジャイルでのアプローチ」。これだけ不確実な状況であると、短期でトライアンドエラーを繰り返し、成果を導き出すアプローチが必要です。検討している間に世の中は変わりますから「スピーディーな意思決定」も同じく重要。そして成果が見えない変革に企業は投資をしないので「タンジブルな成果」も欠かせません。タンジブルな成果を前提に、アジャイルなアプローチを取りながら、スピーディーに意思決定、もしくは実行する。それが新しい企業の経営スタイルであり、コンサルティングファームの在り方になっていくでしょう。 他にコロナ禍による変化として、トップダウンでの変革が主流になったことも挙げられます。つまりコンサルタントは、最上流の戦略構想を描くところから、オペレーションに落とし込み、さらにテクノロジーを利用して実行していくところまで、「END to END」でクライアントを支援することが求められている。これはこれからのコンサルタントにとっての大きなやりがいでしょう。DTCの強みは、戦略からオペレーション、さらには働き方改革や人事制度の見直し、財務・経理、マーケティングの業務改革、デジタル化など、全ての経営課題に応えられる提案力がそろっていること。全社変革といった大きなニーズに応えられる「総合力」は、まさにこの先コンサルティングファームの競争力を左右する要素の一つになると考えています。 先行きが見えないからこそシェルパのような存在に コンサルティングファームの資産は言うまでもなく、人材です。社員がDTCで働くことに最大限の満足を得られるかが、今後の会社としての成長力を左右する、一番大きな要因でしょう。だからこそ、当社では「メンバーファースト経営」を掲げています。 それを推進するために、昨年から「タレントハピネス」という取り組みを始めました。これはメンバーがDTCで働くことや自分のキャリアを築くことに対してポジティブな状況をつくることを目的とした活動。年1回のサーベイではDTCで働くことに対して「非常に意義を感じている」という回答が多く得られています。コロナ禍で働き方は変わりましたが、テクノロジーを活用することで引き続きメンバーの心身の健康をサポートし、満足度を上げる仕組みをつくりたいですね。 また、具体的な人材育成において重視しているのは「パープル・ピープル」。これは青(ビジネス)と赤(テクノロジー)を兼ね備えた人材を意味します。従来コンサルティングにおいてはストラテジー&オペレーションが重視されていましたが、今後は戦略を立て、変革をする際にテクノロジーは切り離せません。だからこそ旧来のコンサルタントに求められていた思考力に加え、テクノロジーの知見があることが重要です。今後、われわれが目指すべきは「シェルパのような存在」だと思っています。シェルパとはヒマラヤ登山の案内人のこと。山の頂を目指す過程において、ある時はクライアントをけん引し、またある時は寄り添って共に歩く、そんな役割を果たしたい。先行きの見えない時代だからこそ、DTCの知見を結集し、未来を照らしながら、クライアントと一緒に頂上を目指す存在でありたいです。 デロイト トーマツ グループには「Shared Values」という共通の価値観がありますが、その一つ目が「Lead the Way」。「世の中や社会を変えていく先駆者たれ」というメッセージです。DTCがコンサルティングを行う対象は企業だけでなく、業界や日本の社会にまで及びます。NPO団体の支援の他、SDGsに基づくソーシャルインパクトの大きい活動にも力を入れ、より良い社会、より強い産業をつくることに貢献したいと思っています。 今、コンサルティングファームはかつてない変革を求められています。だからこそ、経営コンサル常に大きい。「日本を良くしたい」「業界を変えたい」「企業を強くしたい」。われわれはそういった思いで日々コンサルティングを行っています。同じ志を持つ方にとって、DTCでの仕事はきっと有意義なものになるはずです。ライフサイエンス×テクノロジー分野の執行役員に聞く「医療分野」のニューノーマル ヘルスケア領域で仕事をして約20年。今は医療業界全体が大きく変わっていくフェーズ デロイト トーマツ コンサルティング合同会社ライフサイエンス&ヘルスケア執行役員 根岸彰一氏 新型コロナウイルスによりデジタルシフトが加速 現在のライフサイエンス×テクノロジー分野には、二つの大きなトピックスがあります。 一つ目は、今までバラバラだったデータがつながるようになってきていること。これまで製薬や医療機器といった業界では、業務ごとに個別のアプリケーションを使用しており、データが一元化されていませんでした。しかしテクノロジーの進化により、膨大なデータを扱えるようになったことで変わりつつあります。 二つ目は「病気を治す」ことに対して、薬以外のアプローチが増えていること。例えばアプリです。日本ではすでに禁煙の補助をするアプリが医療機器として承認されています。 こうした流れを受け、最近では他業界からの新規参入も増えています。例えばテクノロジー業界や保険業界。データやアプリに関してテクノロジー企業が強みを発揮できるのは言わずもがなです。保険会社については病気や健康に関するデータを持っていることが大きいですね。データを有効活用すれば、病気を防いだり、治療後のケアに役立てたりできるかもしれない。そこに商機を感じる企業が増えているのです。 また、新型コロナウイルスにより、ライフサイエンス分野ではテクノロジーへのシフトが一気に進みました。例えばMRがドクターに会えなくなったことで、オンラインでのやり取りが必要になってきています。サイエンスに基づいたエビデンスをいかに見やすく整え、オンラインでドクターに見てもらうか。双方ともテクノロジーが得意とするところであり、MRの仕事の在り方は劇的に変わってきています。他業界からすると当たり前のことのように映るかもしれませんが、医療業界はこれまでなかなかデジタル化が進まなかったので、テクノロジーによって医療業界全体を変えていこうと考えているわれわれにとっては追い風といえる状況です。 また、臨床試験にも変化があります。被験者が医師と対面したり通院したりしなくても進められるやり方を検討し始めているのです。例えば血圧などの簡単なデータは家で計れますし、唾液などの検体も郵送できる。その上で遠隔診療を行えば、臨床試験の一部は自宅で実施できます。アメリカでは以前からすでにそのようなビジネスモデルがあり、「薬を配送する」といったサービスも現実味を帯びてきています。 今はまだデジタルやデータの本格的な活用は始まったばかり。薬事承認を得て医療機器として使えるアプリもまだ多くありません。そこでわれわれが注目しているのは、健康や病気に関するデータを集約し、個人の状態に合わせた薬の開発や病気の予防、治療後のケアに役立てること。いわゆるパーソナルヘルスケアの進展です。現状では、電子カルテを始めとした医療情報やIoT機器で収集されたパーソナルヘルスレコードは世の中に散在しています。製薬会社や医療機器メーカーも、商業化されたデータを購入する以外は自社が取得したデータしか保持していないのが現状です。 データを一元化するには、例えば医療機関から直接取り入れる、あるいは電子カルテのベンダー、サービスプロバイダーや病院と組んで情報を集める、といった方法が考えられます。しかし、これは一企業だけで推進できる規模の課題ではありません。場合によっては政府と協力し、国の事業として進める必要もあるでしょう。 これまでDTCは製薬企業や医療機器メーカーに対してコンサルティングをしてきましたが、今はその枠を超えて、「医療業界全体に対して何ができるのか」を追求しているところ。まだ始まったばかりですが、最近ではコンソーシアムのサポートも行っています。このような医療分野の現状において、DTCの強みの一つはグローバルの知見を持っていることでしょう。デロイト トーマツ グループにはグローバルで30万人以上の社員が在籍し、1万人以上ものライフサイエンスのコンサルタントがいます。新しいことへのチャレンジが盛んなアメリカや、テクノロジーが特異的に進んでいるイスラエルなど、世界各国の情報が即時に入ってくるし、コラボレーションも容易にできる。医療先進国の事例は、日本のクライアントにとって非常に有益ですから、こういったDTCの基盤は今後も生かしていきたいですね。 大きな目標を持った人たちと共に仕事ができるのが醍醐味 ライフサイエンス分野でコンサルタントとして活躍できる人は、自分の専門分野に限らず多様なことに興味を持ち、楽しんで仕事ができる人だと思います。今はテクノロジー、デバイス、アプリ……と、ライフサイエンスの領域がどんどん広がっています。製薬企業や医療機器メーカーもまた、事業の幅を広げようとしていますから、クライアントに先駆けて興味や視野をいかに広げられるか。好奇心旺盛に、自ら調べ、理解しようとする姿勢が重要です。 また、クライアントと同じ目線を持つことも大切です。もちろんビジネスではありますが、「どうにかしてこの患者さんを助けたい」「何とかしてこの病気をなくしたい」と、クライアントは常に患者さんのことを考えている。そんな優しく、大きな目標を持った人が多い業界だと感じています。だからこそ、コンサルタントにはクライアントをリードしながらも、しっかり寄り添う姿勢が求められます。相手が言っていることを、表層だけではなく、真意まで理解しなくてはなりません。 そして、そんな志を持ったクライアントや同僚と仕事ができることが、この分野で仕事をする醍醐味です。私は約20年間ライフサイエンスの領域に携わっていますが、ここ数年の変化はすさまじく、新型コロナウイルスの影響により、この動きはさらに加速するでしょう。今後は医療業界全体が大きく変わっていくフェーズですから、やりがいはより一層大きいと思っています。AR/VR領域のマネジャーに聞く「会社の在り方」のニューノーマル リモートワークの急速な普及でAR/VRの価値はより増していく デロイト トーマツ コンサルティング合同会社マネジャー 奥村大樹氏 AR/VRは社員の力を高めるためのテクノロジー AR(拡張現実)/VR(仮想現実)は、デジタルで生み出されたものを「体験」するためのテクノロジーです。私たちは現在、働き方改革の文脈で、「従業員エンゲージメントの向上」にその技術的特性を生かすことができないかを検討しています。 従業員エンゲージメントを高めるために、企業は社員が持つ力を常に発揮できる状態にすることが重要だと考えています。例えば効率的に仕事ができれば、作業は楽になり、早く帰宅することもできますよね。充実した職場環境があれば能力も発揮しやすくなります。生産性向上施策や従業員教育といった、従業員エンゲージメントを高める取り組みとしてのAR/VR利用は、2015年頃から少しずつ増えてきています。 では、実際にどのような事例があるのか。例えば製造業では、若手従業員のサポートにARグラスが利用されています。若手従業員がARグラスをかけて機械の前に立つと、グラスに付いたカメラを通じて遠隔地にいる熟練工は若手従業員の視野を共有できる。二人はあたかも同じ環境にいて、熟練工が横から指示を出しているかのように若手従業員は作業ができるというわけです。 高所での作業や工作機械での加工などリスクを抱える業務に従事する人に対しても、VRは使われています。作業に慣れるにつれて、恐怖心は薄れ、安全性への意識も薄れてしまうもの。そこでVRを使って事故をリアルに体験することで、安全性に対する啓発を図るのです。高所からの落下や、工場のプレス機などの巻き込み事故といった、命に関わる危険をリアルに近いかたちで体験する。リスクを認識することを通じて安全に対する意識を高める点で、非常に効果的です。 20年は新型コロナウイルスの影響で、働き方が大きく変わりました。改めて、この特殊な状況下で企業が継続していくために、何をする必要があるのか。アンケートを採ってみると、多くの企業で「従業員を第一に考える」という結果が出ました。 また、景気の減衰によって、一時的にIT投資を凍結するケースも見られる一方で、「働き方に関連するIT投資を継続する」と回答した企業は約3割に上ることも分かりました。「従業員が安心して働くことができる社内環境を提供していかなくてはいけない」と、改めて考える経営者が増えています。 これに対し、AR/VRは価値を大いに発揮します。コロナショックからの回復段階では、企業のリモートワーク体制は確立しているでしょう。しかし、リモートワークになったがために、孤独を感じてしまったり、オフィスに出勤しないことによって帰属意識が薄れてしまったりといった新たな課題が発生しています。 それに対応して、例えばVR空間上で他のメンバーと会って話をするといった、2Dのオンライン会議よりもリアルで自然なかたちでコミュニケーションが取れるサービスがつくられています。リアルアバターという自分自身を三次元キャプチャーしたリアルな分身が仮想空間に集い、身ぶり手ぶりも含め、同僚と会って話しているのと同じコミュニケーションができるのです。 さらに先の成長段階においては、AR/VRを単独のテクノロジーとして語る時期は終わり、テクノロジーそのものとしてはコモディティー化していくと思います。リモートワークが急速に普及したことによる反動としての「リアルなコミュニケーション」へのニーズや、AIやIoTなどの他のニューテクノロジーとの組み合わせによる新たな付加価値創造など、AR/VRの価値が再認識されるでしょう。AIアバターによる仮想空間上での従業員サポートや、IoTで収集したビッグデータを用いてリモートでも実機と同じ状況をARで具現化するなど、より多様なことができるようになると思います。 ただし、問題点があるのも事実。一つは通信スピード。高解像度でのリアルタイムなやり取りを実現するためには、通信スピードが追い付かない。これは5Gの登場により劇的に改善されるかもしれません。もう一つは、バッテリーの問題。特にARグラスに搭載できるバッテリーは小さく、長時間の連続利用ができません。 また、コスト面も課題です。AR/VRデバイスはPCよりも高いものですから。他に、新型コロナウイルスによってウエアラブル端末の共用利用への抵抗も生じています。 さらに多くの経営者にとっては、AR/VRのビジネスでの利活用はまだまだなじみが薄く、最初の一回目につなげることの難しさを感じています。ただ、一度体験すれば効果を実感していただけますし、特に先にお話した人命に関わるリスクの回避は、ROI(費用対効果)では語れないものです。 テクニカルの軸があれば自分のバリューは高まる コンサルタントはクライアントの課題解決を目的として従事しています。最善のソリューションを考えるにあたっては、AR/VRと他のテクノロジーを組み合わせることもしますし、反対にテクノロジー自体を採用しないこともあります。 コンサルタントにとって、AR/VRといったテクニカルな分野に精通している意義は、強力な課題解決のツールを使いこなし、クライアントにより高いバリューを提供できるということ。自分が興味を持っている最新のテクノロジーを用いて、ソリューションを提案し、クライアントと一丸となってゴールすることがこの仕事の大きな醍醐味。クライアントに価値が提供できるならば、ソリューションに制約は設けませんし、当社ではそれができる環境にあると思います。そんなクリエーティブマインドを持った方とDTCで一緒に新しいチャレンジをしていきたいですね。
国内リーディングカンパニーの経営者たちに聞く “ 伸びる会社”の条件 世界経済に甚大な影響を与えたコロナショック。ビジネス環境が劇的に変化する中で、これからも“伸びる”会社は何が違うのか。各社のアフターコロナにおけるビジョンを知り、企業理解を深めよう 山田コンサルティンググループは、設立以来、中堅・中小企業向け事業再生コンサルティングをメインにサービスを提供。経営者のパートナーとして、大量の数字やデータを駆使して客観的なコンサルティングを行う一方で、経営者・従業員・その家族に真にお役立ちするという情熱を持ち、寄り添い続けてきました。直近ではM&Aや海外進出支援、人事コンサルティングなど、多様なサービスを展開しています。 そんな中、今回のコロナショックが起こりました。企業は混乱の中、生き残りをかけて必死に格闘し続けています。我々はそんな企業を支えるため、コロナ禍における経営相談や急増する事業再生ニーズに応えるべく、変革を起こしている最中です。 伸びる会社とは、現在のような非常時であっても、時代やニーズに柔軟に対応・適合できる組織だと改めて実感しています。だからこそ、そんな組織を目指して取り組んでいる施策の一つが、マネジメントの強化です。緊急事態宣言発令以前より、当社でも全社的な在宅勤務が主となりましたが、従来と比較して、無駄な時間は削減され、生産性、パフォーマンスは向上している一方で、大きな課題も浮き彫りになりました。それは「目の前にいないヒトと向き合い、どう的確にマネジメントできるか」ということ。『人が育つ組織の形成』は、これからの時代において、これまで以上に重要となるでしょう。なぜなら、オンラインでの関係性は、やはり直接コミュニケーションに比べて、言葉以外の情報量や、時としてスピード感が圧倒的に劣る場合が多いからです。特に入社初期のメンバーは、できない自分と向き合うことが多く、この時間が非常に孤独でつらい。そうした中で迅速なサポートが十分にできなかった場合、会社との距離は広がってしまいます。いくら上司や幹部が今後の方針や目指すビジョンを発信したとしても「1対N(不特定多数)」の図式による一辺倒のマネジメントでは、組織は成り立たないでしょう。目の前にいないからこそ、一方通行ではなく、お互いが今まで以上に、互いの考えや思いに耳を傾ける必要があります。 具体的には、現在私は全社員と面談をしています。根源的なアプローチのようで驚かれるかもしれませんが、1日数時間以上をかけて取り組む価値がある、原点回帰だと考えています。面談の際には、直属の上司から事前にメンバーの長所や課題、育成方針などをヒアリング。その上で本人と対話します。今現場では何が起こっているのか、メンバーがどのような考えで業務に取り組んでいるのかを把握できる貴重な時間です。また、私への質疑応答も行っています。「自分の仕事の価値はどこにあるのか」「会社が期待していることは何か」など、さまざまな質問に答えることで、メンバーの会社への理解も深まっています。面談内容はマネジメントラインにも共有し、ギャップを埋めることも大切にしています。 まさにこれが「1対N」ではなく、「1対1」の関係性であり、オンライン環境下でも、立場や役割の違いを超えて会社と社員をつなぐマネジメントだと思います。 社員育成のための環境構築と環境を活用する主体性が不可欠 並行して、教育体制も強化しています。なぜなら、我々のお客さまである企業は今、成長のための経営方針ではなく、想定外の事態を打破するシナリオのもとで、必死にもがいているからです。非常時だからこそ、今まで以上にお客さまの期待に応えられるだけのスキルや知識、能力に磨きをかけなければなりません。 従来、現場でのOJTを主として社員育成をしてきましたが、現在、育成責任者を各部門で決定し、体系化した研修制度を整備中。外部講師に加え、コンサルタントが講師となり、設立以来個々人が培ってきたノウハウや知識を言語化した実践的なエッセンスを組み込んでいます。人材育成においても、基本に立ち返り、現状の型から見直し、今の状況に合った新たな型を構築しています。 ただ、誤解してほしくないのは、研修や育成環境のみで会社を判断すべきでない、ということです。会社は社員の成長のために、環境は整えられます。しかし、環境をどう活用するのか、活用した先のキャリアや成長は、全て自分次第。伸びる会社の条件の一つに、社員の主体性は不可欠です。特に現在のように多くの会社がリモートワークへ移行する中で、主体性の有無は個人の成長の差を大きく広げます。主体的な人材は、通勤時間などを有効活用し、新たな手法を探りながら生産性向上を図り、自己研さんの時間を増やすでしょう。働き方の変化に対応できず、従来通りの意識で働く人材は、近い将来選別されていくかもしれません。 新しい時代を生き抜き、伸びていく方法を確立するには、会社は基本に立ち返ること、そして社員一人一人が主体的に業務に取り組むことから再始動する。それが私の今の考えです。おそらくこの苦境を乗り越えるには数年を要するでしょう。この期間を乗り越えた組織だけが、本当の意味で成長し、伸びていく権利を手に入れるはずです。それまでは、会社や組織の基本を再定義し、企業のコアである社員の力を十分に蓄えることが重要と言えるでしょう。 ウイルスがもたらしたオンラインという距離にひるむことなく、一人一人との関係性を自分たちで構築し、当事者意識を持って、自己実現を目指す。現場も、マネジメント層も、経営層も。私はこれこそが「伸びる会社」の条件だと考えます。 伸びる会社の条件とは? 1.目の前にいない相手とも「1対1」の関係性を構築できる組織 2.リモート環境下でも“人が育つ”組織を形成できる 3.全てのメンバーが主体的に行動し、成長できる