就職マーケットニュース 新卒採用市場の最新動向や旬のトピックを紹介。今採用意欲が高まっている業界・職種、社会的注目を集めている新たな採用手法や就職支援サービス、学生の就職動向など、多岐にわたるテーマに迫る。外的環境を理解し、自分らしい就活スタイルの確立に役立てよう。 ※本記事は、Webマガジン『エンジニアtype』からの転載記事です。(>>元の記事を読む)2017年9月、京都オフィス開設の計画を発表したLINE。2018年春のオープンに向け、今まさに立ち上げ準備を進めている。 国内の開発拠点としては、東京、福岡に続いて3つ目となる京都オフィスのメンバーは、全員エンジニアを予定している。そのため、よりクリエーティビティーを刺激する“エンジニアファースト”なオフィスにするべく、工夫をこらしているという。 京都という場所を選択した背景にも、LINEならではのこだわりがある。単なる拠点展開にとどまらない、さまざまな思惑を秘めた京都オフィス立ち上げ背景について、同オフィス開発室長に就任した和田充史氏と、サービス開発分野全体を統括する上級執行役員の池邉智洋氏に話を聞いた。そもそも、なぜ京都なのか? まず第一の理由が、京都のグローバル性だと池邉氏は言う。 「LINEは、そもそもグローバルなメンバーによって動き出した企業ですし、今ではその事業展開もワールドワイドになりました。技術部門を筆頭に、多国籍なメンバーが活躍をしてもいます。 そう考えれば国際的に知名度の高い京都を拠点に選ぶことにも意味があるんです。もともと京都を含む関西地方には、技術的にスキルの高い人材は豊富ですし、拠点を持つことで彼らとの交流の場を設け、ひいては採用にもつなげていきたいと思っています。 また、現状約10名を予定している立ち上げメンバーは、東京や福岡で開発に携わっていたエンジニアから選出したのですが、結果として半数が外国籍(英国、台湾、ドイツなど)になりました。働き慣れた環境から移動するとなれば、生活上もさまざまな変化が発生するわけですが、『KYOTOならば喜んで行きたい』という外国人エンジニアが少なくありませんでした。 今後もLINEに参画し、活躍するエンジニアが各国から集まってくることは容易に想像できます。日本のカルチャーを象徴するKYOTOで働くことを、彼らはきっと特別な価値として受けとめてくれると私は考えています」(池邉氏) 一大商圏でもある関西エリアに拠点を構える場合、大阪を選ぶ企業も多い。しかし、京都と大阪は至近距離のロケーション。また、駅を出るとすぐにビジネスエリアが広がっている利便性、また優秀な人材を輩出する大学が密集している点など、京都に拠点を置くメリットは多いと池邉氏。 「新卒採用も強化していく方針ですから、京都に拠点を持つことで、京都を中心にした優秀な学生とのタッチポイントを増やしていく狙いもあります。 また、京都に開発拠点を持つ会社はまだまだ多くはないので、学生にとっても貴重な就業体験の機会を提供していければと思っています。既に他のオフィスで実施しているような就業型の中長期インターンシップも行う予定なので、LINEの開発の現場をたっぷり体験できると思います」(池邉氏) 一方、京都オフィス立ち上げプロジェクトを一任され、同オフィスの開発室長にも就任した和田氏はこう説明する。 「私は2014年からLINE Fukuokaに勤務していますが、福岡はもともとバックオフィス系業務を主体とするオフィスとしてスタートし、そこに後から開発部門を立ち上げ、現在の100名規模の組織にまで成長させてきました。 ところが今回の京都オフィスは違います。立ち上げ時に開発チームのみしかいない拠点を作るのは、LINEとしても初の試み。関西エリアを意識しつつも、同時に世界へ向けて開かれた全く新しい拠点としてスタートします。ですからオフィス空間のあり方や、用意するインフラについてもこだわりを持って準備しているところです」(和田氏)和田氏が京都オフィスの空間作りでこだわったポイントは2つ。一つは「コミュニケーションが生まれる場」にすることだ。 「LINEというメッセンジャーアプリに示されるように、我々はコミュニケーションを軸に価値を提供する集団ですから、作り手同士のコミュニケーションは最も重視しています。エンジニアが集う新オフィスを開設する以上、この点を第一に考えて内装やレイアウト、設備の検討を進めてきました」(和田氏) オンライン・コミュニケーション・ツール『LINE』の会社であるからこそ、オフラインでのやりとりにしかないアドバンテージを重要視している。それがLINEという集団の大きな特徴でもあるのだと和田氏。生身のコミュニケーションを通じて熱量の高い議論をしてきたからこそ、これほどにユーザーのハートをつかむサービスを生み出すことができたという自負がある。 では、もう一つのこだわりとは何か? それは、エンジニアのクリエーティビティーを刺激する仕掛け作りだという。 「近い将来、多様な開発プロジェクトが京都で展開されるようになると思います。けれども立ち上げ時には、あえて全員同じプロジェクトに参加する形にしました。共通のミッションを追い、1つのチームとしての認識を高めるため、立ち上げメンバーたちはまずは全員で同じプロジェクトに取り組みます。あとは、自分の手でこのオフィスをより創造的な空間に仕上げていくための“あそび”も用意しています」(和田氏) 京都の立ち上げメンバーがまず初動として参画するのは、AIアシスタント『Clova』プロジェクトだ。2017年にはスマートスピーカー『Clova WAVE』や『Clova Friends』が相次いで発売されており、同社の中でも最も先進的な取り組みを実施しているプロジェクトになる。京都のメンバーはオフィスの立ち上げ時には、このClovaのスキル領域(機能)の開発を他のオフィスとも連携して担うという。 オフィス内の設備の中には、さまざまなものを電子制御できるようインフラだけを整え、後からエンジニアが作り込めるように「あえての余白」も残す予定だ。メンバー自身が創意工夫をこらし、機能的で楽しく、働きやすい空間を作り出すことで、仕事における創造性も増進していければという狙いもある。 「例えば音声で室内の照明を変化させたり、ドアの開閉を行ったり、といったオフィスになるかもしれません。どうなるのかはいずれ判明しますから、楽しみに待っていてください(笑)」(和田氏)ところで、立ち上げリーダーの重責を和田氏に託した背景には何があったのか、池邉氏に聞いてみた。「一言でいえば『おかわり』ですよ(笑)」と笑いながら即答する池邉氏に、意味が分からず問い直すとこう説明してくれた。 「要するに、福岡での和田の実績を買って、今度は京都でも皆を導いてくれ、ということになったんです。東京主体であらゆる事業をコントロールしていたLINEが、LINE Fukuokaを正式に設立したのは2013年11月。特に技術部門の組織構築を任せられる人物を探し求めていた時に出会ったのが和田でした。 私たちが人材に常に求めている“自立自走”という資質を彼は持っていた。だから彼に『よし、任せてみよう』と思えたし、任せた結果、ほんの数年でLINE Fukuokaに非常に良い開発チームを作ってくれました。少数のスターがリードする組織ではなく、チームとして機能することを我々は重視しています。このチーム力こそがLINEを形作ってきたと思っていますから」(池邉氏) 「おかわり」の一言に込められた最上級の賞賛。それを耳にして照れ笑いを浮かべた和田氏も、こんなふうに応える。 「当時の私は、東京での起業に失敗して、故郷の福岡に戻ったところだったんです。『自分の会社でやりきれなかったことをやり尽くすつもりですけど、いいですよね?』と聞いたら、池邉も出澤(剛氏、LINE代表取締役社長)も『いいよ』と。私なんかに重責を担わせてくれるというのだから驚きました。LINEという会社は普通じゃないなと(笑)。 ですから、今回の京都でのチャレンジについても、指名を受けて率直にうれしかったですし、エンジニアのみで拠点を立ち上げるという初の試みと、京都オフィスに託されたミッションに楽しみながら取り組んでいます」(和田氏) 冒頭で、京都オフィス開設の背景には、社内の多様な人材の活用と採用強化の意図があると池邉氏は語った。が、LINEはさらに大きなテーマも見据えている。エンジニアの働き方改革をリードするムーブメントとしての役割も、京都オフィスのミッションとして掲げているという。「日本ではエンジニアが地方で働く場合、どうしても賃金や待遇面で東京との差が歴然とある。やりがいのある仕事に、納得のいく条件で携わりたい思えば、東京でしかかなえられないケースが大半でしょう。今の時代、U・Iターンを望むエンジニアも決して少なくはないにも関わらず、です。 でもLINEの拠点であれば、何も東京に出て行く必要はない。どこにいようと携われる開発案件も給与テーブルも変わりはありません。そういう環境を用意し、実行することができる、ということをすでにLINE Fukuokaが実証しています。京都オフィスでももちろんそうですし、こうした地方拠点の開設によって、この国のエンジニアの働き方を変えていけたらという思いがあります。 そもそも優秀な人材を東京だけに依存して獲得するなんてナンセンスです。U・Iターンを望む社員が出てきたときも、転職ではなく『異動すれば?』といえる環境でありたいと思っています」(池邉氏) 「グローバルなスケールで開発者同士が連携することなど、すでに当たり前になっているのに、池邉が指摘したように、日本国内では労働環境の地域差などもあって遅れてきたと思います。ですから、収入や待遇が東京と変わらない中で働けることは非常に意義あることだと思います。 ただし、課題もあります。例えばエンジニア同士のオフラインのコミュニティーや勉強会の開催などは、やはり地方よりも東京の方が圧倒的に充実しています。成長意欲の高いエンジニアは、社内での仕事だけでなく、社外での活動を通じて技術をより向上させたり、有効な人脈を形成したりしていますから、今後私たちが目指すべきテーマの一つとしては、そうした学びの機会の東京一極集中も解消していくことです。 そうした思いから、京都オフィスにはイベントスペースも併設しました。どんどんエンジニア向けのイベントを開いたり、またイベントを企画している社内外のエンジニアさんに場所などを提供していき、海外の人材も含め、多くのエンジニアが京都というエリアに注目し、足を運ぶようなムーブメントをLINEが起こしていく。それが成功すれば、一企業の地方拠点開設、という枠を超えて大きな成果につなげていくこともできると思っています」(和田氏) オフィス開設前ではあるが、すでに2017年の秋から『LINE Developer Meetup in Kyoto』というエンジニア交流イベントを京都市内で次々に開催している。京都は世界的にも特別な都市。だからこそ可能になることがある。LINEが新たに設けるタッチポイントは、想像を超える大きな変化を広い範囲で起こしていくかもしれない。 取材・文/森川直樹 撮影/小林 正(スポック) 企業情報 ■LINEの企業情報
2018年卒採用はひと山越えて、2019年卒(現大学3年生)向けにインターンシップの説明会、選考が始まっている。そうした中で最近注目されるのは、「男子学生向け身だしなみセミナー」だ。6月29日に千葉工業大学は、男性化粧品メーカーのマンダム社と共同で、3年生の男子学生向けに「就活身だしなみセミナー」なるものを開催した。 千葉工大が「就活身だしなみセミナー」を開催するのは、今年3月に続いて2回目。3月といえば、就職活動が本格的にスタートした時期だ。就職課に身だしなみの相談に来る学生が多いことから、セミナーを開催したところ盛況だった。そこで今回は、インターンシップに行く前の学生に向けたセミナーとなったのである。 女子学生向けの身だしなみセミナーは珍しくない。が、男子学生向けのセミナーとは、実際いかなるものか。JR総武線津田沼駅近くにある千葉工大キャンパスを訪問した。会場ではマンダムの担当者2人が同社の製品を実際に使いながら講義を実施した。学生が最も気にするのは髪型である。「どんな髪型にすればいいのかわからない」という学生が多い。講師の片岡東氏によれば、就活では「短髪が大前提」とのこと。前髪や襟足が長いと「遊んでいそう」「責任感がなさそう」といったイメージを与えてしまう。 また、面接では顔の表情も重要だが、前髪が長すぎると目が隠れて表情がよくわからず、マイナス評価になってしまう。 それでは短髪ならば、どんなスタイルでもいいのか。若者の間ではここ数年、上の方は長めにして裾を極端に刈り上げる、「ツーブロック」というヘアースタイルが流行している。ただ、短髪ではあるが、ツーブロックはネガティブな印象を与えるという。 なぜなら、「学生気分が抜けない」「遊んでいそう」「芸能人気取り」などの印象を、面接官に与えてしまうから。どうしてもツーブロックにしたい場合は、刈り上げ部分を小さくしたほうがいい。 ワックスなどで”凝った”ヘアスタイルを作り込むのもあまりよくないという。マンダムでは自然な感じで髪をまとめられる整髪剤を勧めている。面接でお辞儀をするたびに前髪が乱れるのを防ぐため、ヘアスプレーで前髪を固定するのもいい。また男子学生は女子学生に比べ、スキンケアへの関心が低い。しかし、ニキビ肌やくすみのある肌は、不規則・不摂生な生活が連想され、面接ではマイナス材料になる。講師の奥啓輔氏は「実は女子よりも、男子のほうが肌が荒れやすいので、男子こそスキンケアが必要」という。男子は日常的に化粧をしないので、外気や紫外線の影響を受けやすい。紫外線はシミ、シワ、炎症の原因となる。女子と比べて皮脂分泌量も多い。とりわけ、額から鼻にかけてのTゾーンは皮脂が過剰なため、テカテカしている人も目立つ。 一方で、あごの周辺は乾燥しているので、ヒゲソリのダメージを受け、カサカサになってしまう。ベタベタとカサカサが同居した状況を放置しておくと、さまざまなトラブルを引き起こすとされる。 人間の肌は約28日間かけて生まれ変わる。肌荒れの学生が次の日の面接のため、肌を整えようとしてもすでに手遅れなので、できるだけ日々のスキンケアが欠かせないだろう。 スキンケアの基本は、毎日の洗顔だが、洗顔にもコツがある。まずは人肌程度(30~35度)のぬるま湯で洗う。温度が高いと皮脂を除去しすぎて、肌が荒れてしまうことがある。夏は暑いからといって、冷たい水で洗顔することもあるが、水温が低いと洗浄力が落ちる。 ソープは泡を立ててから使用するべきだが、泡を立てないでソープを顔に塗るような洗い方をしている学生も少なくない。これでは洗顔の効果が小さい。洗顔した後はすすぎが重要だ。実は、多くの人がすすぎ不足によって肌荒れを招いており、洗顔の意味がない。 日中に就活で動き回っているときは、洗顔できないので、フェイシャルペーパーを常備して使おう。面接前にTゾーンを拭いておけば、テカテカ感が消えて印象が良くなるだろう。 夏の日焼けも禁物。マンダムでは男子も日頃から、日焼け止めを使用することを勧めている。日焼け止めというとベタベタしたイメージがあるが、男性用はサラサラした製品もある。 中でも男子の意識が低いのが「体臭」だ。オフィスでは体臭が大きな問題になっていて、”スメルハラスメント”、略して”スメハラ”という言葉もあるほど。だが男子学生は、あまり体臭に気をつかわないことが多い。2016年11月にマンダムがビジネスパーソン向けに実施した調査では、男性新入社員の身だしなみでいちばん気になるのは、実は服装や髪型ではなく体臭だった。新入社員に対する評価基準は、採用試験での評価基準とほぼ同じ、と見ていいだろう。 日本人は欧米人に比べると、体臭が弱い印象があるが、現実にはそんなことはない。マンダムはこれまで12年間、体臭の研究をしており、日本人男性の3%は「非常に強いワキ臭」があるという。非常に強いワキ臭とは、その人が去った後、においが残るというレベル。33%には「強いワキ臭」がある。強いワキ臭とは、すれ違っただけでにおいがする、というレベルだ。体臭はワキだけでなく、頭皮や胸・腹部からも発生する。 これは皮脂や汗そのものがくさいのではなく、皮脂や汗が雑菌と接触することで嫌なにおいが発生する。そこで体臭を予防するには、皮脂や汗を洗浄するとともに汗を抑え、さらに皮膚についている細菌を殺菌しなくてはならない。 さまざまなデオドラント剤があるが、朝は脇に直接塗り込むタイプがいい。このタイプは消臭の持続力が高いからだ。昼間の就活中は、洗浄・殺菌・制汗の3機能を持つ、ボディペーパーが便利。ボディペーパーで体を拭けば、体臭を抑えるだけでなく、面接前に気分をリフレッシュさせることもできる。 暑い中、オフィス街をスーツで動き回れば、スーツが汗まみれになる。そんなときには、ウエア用のデオドラントスプレーを使う。においを消すだけでなく、クールダウン効果もある。 参加した学生からは、「日本人の体臭が強いとは知らなかった」「今日のセミナーで聞いたことをインターンシップ選考に生かしたい」、といった声が挙がっていた。 面接時の身だしなみは重要。加えてそれと同じくらい、証明写真撮影の身だしなみも重要だ。男性用化粧品「uno」を展開する資生堂では、サイト上で髪型やスキンケア方法などを提案している。 サイト上ばかりではない。実際、同社の総合美容施設「SHISEIDO THE GINZA」(銀座)では、「就活用証明写真プラン」を用意している。 普通のフォトスタジオでは写真の補正はしても、就活生向けメーキャップやヘアスタイリングまで手掛けるところは少ない。撮影枚数はほんの数枚というところだろう。SHISEIDO THE GINZAでは、ヘア&メーキャップアーティストが就活生の顔立ちに合わせた、ヘアスタイリングとメーキャップを行う。資生堂が広告撮影などで培ってきた撮影技術で証明写真を撮影してくれるのだ。 アーティストも立ち会い、ヘアやメーキャップを微調整している様子は、モデルや芸能人を撮影しているかのよう。最近は男子学生も、この就活用証明写真プランを利用している。 就活情報サイト「マイナビ学生の窓口」が2016年9月、企業の採用担当者を対象に実施した調査によると、就職選考で「身だしなみがかなり重要」と答えた採用担当者が25%だった。「まあまあ重要」との回答の63.3%と合わせると、約9割の採用担当者が身だしなみを重要視している。「男は外見でなく、中身で勝負」といっていたのはもはや昔話。今では外見も重要であることがよくわかる。 インターンシップ選考も、就活本番の選考も、蒸し暑い時期に行われる。ぜひとも身だしなみには気をつけて、外見でマイナス評価をされないように気をつけていただきたい。 (取材・文/田宮 寛之 [東洋経済 記者])
2018年卒学生の就職活動は一段落し、すでに2019年卒学生のインターンシップが始まっている。インターンシップとはいえ、事実上の就活スタートだ。これから何をすればいいのか、不安に思っている就活生は少なくない。 そこで、大手企業からの内定を獲得、すでに就活を終了した2018年卒の就活「勝ち組」の学生に向けて、匿名を条件に集まってもらった。いったい何が他者と勝敗を分けたのか。 (取材協力:ディスコ)出席してもらった参加学生(進路先業界) A:青山学院大学 文系・女子(大手金融) B:お茶の水女子大学 文系・女子(大手電機) C:東京大学 文系・男子(総合商社) D:東京外国語大学 文系・男子(総合商社) E:早稲田大学 文系・男子(大手保険) ――今年は昨年よりも早期化が進んだと聞きます。実際にいつごろから就活を始めたのですか。 A:大学3年生の6月、インターンシップ用の就職サイトがオープンすると同時に、エントリーを開始。有名企業ばかりにエントリーしたが、選考に落ちてしまったので、選考なしで参加できる企業2社でインターンシップをした。不動産会社と生保会社の1日型インターンシップだったものの、参加したことで「私は不動産には向かない」とはっきりわかったため、参加した意義はあった。 私は大学の授業を重視していたので、秋のインターンには参加せず、冬は金融3社の5日型に参加した。とてもハードな内容だったが、業界研究と就職情報収集の両方に役立った。 B:もともと公務員志望だったので、大学2年生の2月から公務員予備校に通っていた。しかし、3年生になってから「このままでいいのか」と思い、6月からインターンシップ先を探して、夏休みには1日型に3社、5日型に1社行った。 ある官庁でインターンシップをしたとき、「官庁では歯車のひとつになってしまう。つまらない」と直感的に感じ、民間企業に進む決意をした。冬には人材ビジネス会社でインターンシップをした。 C:大学3年生の前半はクラブ活動に専念していた。しかし、夏休み明けに「自分は出遅れている」と感じて、就活をスタート。総合コンサルティング会社は早めに内定を出してくれると思ったので、外資系3社で秋のインターンシップに参加、そのうちの1社からは12月に内定をもらった。 コンサルティング会社以外では、11月~翌年1月にかけて、不動産やメーカーなど、3社のインターンシップに行った。D:就職を意識したのは、イギリス留学中だった2016年4月。人材会社ディスコが主催する、ロンドン・キャリア・フォーラムに参加したのがきっかけだ。このフォーラムは、私より1学年上の2017年卒の日本人留学生を対象にしていたが、帰国すれば就活をするのだと思って、私もフォーラムへ行ってみた。 そこで、「ちゃんと準備しないと大変だ」と危機感を持ち、6月末に帰国してから、就職サイトを通じてインターンシップのエントリーを開始した。 「総合商社や大手コンサルは格好いいなあ」と思ってエントリーしたのだが、全部落ちてしまい、結局受かったのは、やや規模の小さい日系コンサルティング会社と一応受けた金融だった。結局、夏休みは5日型に2社、1日型に4社参加した。 秋は夏のインターンシップ先の決め方がミーハーだったことを反省、知名度の低いメーカーを中心に7社行った。そして、冬は再度、総合商社にチャレンジすると同時に、メーカーにも参加した。夏から合わせると全部で約20社に参加したことになる。 E:大学3年生の5月からインターンシップの合同企業説明会に参加していた。夏休みは4社のインターンシップに参加し、その中で業界を絞っていった。秋には5日型を1社、1日型を2社やった。秋のインターンシップは授業と重なるので、毎日大学に行かなくても済むように工夫して履修した。 年が明けてからは、無名企業のインターンシップにも行き、2月からは合同企業説明会に出席していた。経団連ルールでは3月から説明会の開始とはいえ、実際には多くの説明会が開催されていたと思う。 インターンシップ先を見つけるために活用したのは、フェイスブックやツイッター。就職サイトのインターンシップサイトは活用しなかった。 ――インターンシップは就活の一部のように見えますが、インターンシップ参加は有利になりましたか。 C:私は就職先の企業のインターンシップに落ちたが、本番の選考で受かっている。必ずしもインターンシップが有利になるとは、言い切れないと思う。A:就職先の金融機関のインターンシップ後、社員2人との面談に3回呼ばれた。面談ということだったが、あれはリクルーター面接だったと思う。そして、6月になると、面談に呼ばれた学生の選考が他の学生よりも早く始まった。 別の金融機関では、インターンシップ後の5月中、人事部との面談が3回あった。この金融機関の場合、インターンシップに参加した学生は、面接が1回免除される特典があった。 E:有利に働いた人もいると思う。私は、インターンシップ参加者限定のリクルーター面接には落ちてしまったが、6月から始まる通常ルートの選考で受かった。 ただ、インターンシップをしておくと、その企業に対する情報量がものすごく増えるので、通常ルートの選考で他の学生よりも圧倒的に強かったと思う。 D:インターンシップ参加者をかなり優遇する企業があり、中には面接の回数が半分になるケースもある。しかし、何より重要なのは、インターンシップの選考のため、ES(エントリーシート)を書いたり、面接を受けたりといった経験を積むことだろう。この経験が6月の選考で生きてくる。 B:冬のインターンシップに参加した人材ビジネス会社は私のことを覚えていてくれて、6月の選考では面接1回だけで内定が決まった。しかし、私は就職先の電機メーカーのインターンシップには参加していないし、会社説明会にも1回しか出席していない。インターンシップに参加しなくてもチャンスはある。私の場合、電機メーカーにOG訪問はしたので、それは評価されたと思う。 ――他のみなさんはOB・OG訪問をしましたか。 A:私の所属ゼミは20年ぐらいの歴史があるので、まずはゼミの先輩を訪問した。また私の大学では「就職アドバイザー登録」という制度があり、後輩の訪問を受け付けますというOB・OGが、キャリアセンターに、氏名・勤務先・メールアドレスを登録している。 登録しているOB・OG約50人にメールを出した。年が離れたOB・OGよりも、3歳ぐらい年上の先輩に、会社と就活について話を伺ったのが有意義だった。質問は5つぐらい用意し、そこから深掘りして聞くようにした。 業務内容の初歩的なことを聞いていたのでは、OB・OG訪問が実りあるものにはならない。会社状況や業務内容を把握したうえで質問すれば、レベルの高い話を聞くことができる。全部で10人のOB・OGを訪問した。D:私もまずは、クラブ活動やゼミのOB・OGを訪問した。抽象的な話にならないようにするには、会社についてだけでなく、仕事の内容についても知っておくべきだと思う。OB・OGの名前を検索することで、どんな仕事をしているのか、わかることもある。企業のプレスリリースに名前が載っていることもある。こんなときにはプレスリリースをとっかかりに話をすればいい。 私の大学は少人数なので、OB・OG訪問の相手を探すのが大変だったが、いざOB・OGに会うと、歓迎してくれて、そこからさらに違うOB・OGを紹介してくれることもあった。 C:私は全部で32人のOB・OGを訪問した。まずゼミの名簿を活用して、OB・OG4人を訪問し、そこからゼミに関係なく、OB・OGを紹介していただいた。 あいさつや服装をきちんとして、本気度が高いことを見せるようにした。また、メールの返信を早くすることや、日程を幅広く設定することで好印象を持たれるようにした。 B:私の大学はOGの数が少ないうえ、就職先は教員、金融、公務員が多い。こうした業界を志望していなかったので、大学のOG名簿はほとんど使用せず、「VISITS OB」や「Matcher」など、OB・OG訪問支援サイトを利用して企業の人に会っていた。 E:私はOB・OG訪問をしなかった。就活中にサークル活動も継続していたので時間がなかったし、サークルの先輩は私が希望する業界に就職していなかった。 ――筆記試験対策はどのようにしていましたか。 A:2~3月は毎日SPI3の勉強をしていた。使用した問題集は、『史上最強SPI&テストセンター超実践問題集』(ナツメ社)。問題が難しめに作られているので、学生の間では、「何回もやって問題に慣れておけば本番で大丈夫」との評判がある。『これが本当のSPI3だ』(SPIノートの会)は、問題の解き方を知るにはいいが、実際に問題練習をするには物足りないレベルだ。 B:私は公務員試験の勉強をしていたが、公務員試験の中の「数的処理」がSPI3に似ていたので、特に民間企業の筆記試験対策はしていない。ただ、いきなりSPI3に臨むのは大変だと思ったので、ネットでSPI3の問題を見ておいた。 C:実際に問題を解くことが重要だと思ったので、テストセンターでSPI3を受験して問題に触れた。そして友人約20人とLINEで問題を共有した。何回かSPI3を受けているうちに、見たことがない問題がなくなった。 ――これから就活を始める学生にアドバイスをお願いします。 D:新卒採用でも転職サイトの活用を勧める。私は「Vorkers」などの転職サイトに登録して見ていた。OB・OG訪問の目的は、働く人の本音を聞くことだと思う。しかし、”本音の本音”を聞くのは難しい。ところが、転職サイトは、働く人のリアルな意見を聞くことができるのでお勧めだ。 A:金融の場合、セミナーがものすごく多くて、スタンプラリーといわれるほどだ。私の就職先は10回もあった。企業は出席状況で学生の本気度を見ているのだろうが、回数稼ぎだけを目的に参加するのではもったいないと思う。 セミナーごとにテーマが異なるので、しっかり聞いて、ESやOB・OG訪問に活かしてほしい。また、メモを取るだけでなく、同時に自分の感想も書き込むようにしていた。C:私が就活で心掛けたのは、企業に媚びないことと、自分自身の勝負の仕方を考えること。私は面接で自分の意見をはっきり言ったし、黒いスーツも着なかったし、髪型もパーマで前髪を垂らしていた。いわゆるリクルートスタイルをする必要はない。 クラブ活動で自分をPRする方法もあったと思うが、自分の強みを考えて、論理的な思考や話し方で勝負した。 B:就活というと、就活サイトで効率的に行うのがよい、とされる傾向がある。が、効率が悪くてもいいから多くの企業人に会い、そのときに感じたフィーリングを大事にしてほしい。効率を追い求めないほうがいい。 E:飾らずにありのままでいることが重要。これは面接のときだけでなく、企業選びでもいえることだ。人気業界や人気企業が自分に合っているのか、じっくり考えてほしい。私が就職先を決定したのは、この会社でインターンシップを数回行い、社員の雰囲気などが自分に合っていると思ったからだ。 (取材・文/田宮 寛之 [東洋経済 記者])
就職情報サイトのキャリタスを展開するディスコによると、6月1日時点の内定率は63.4%。前月5月1日時点の調査では、37.5%という数字だったので、この間に多くの学生が新たに「内定」を得ている。複数内定も含めればかなりの数になっていると思われる。就職活動で3月広報解禁・6月選考開始というスケジュールは今年2年目。だがスケジュール相場はかなり固定化しつつある。 3月1日の募集告知後、3月中に会社説明会とエントリーの募集、4~5月に選考と内々定出しをする企業が主流となってきている。しかし、経団連加盟企業は6月1日以降に選考を開始しているという体裁にしたいので、面接という名目で学生を呼び出し、「内々定」を出すパターンを取っていた。 そして目立ってきたのが、この6月1日、面接ではなく「内々定式」を行うケースだ。学生のSNSなどへの書き込みには、「今日は内々定式がありました」といった表現が並んだ。企業は内々定を得た学生を集めて、内定式や入社式に近いセレモニーを開催。そうした名称を使っていなくても、内定者同士や企業の先輩たちとの懇親会を行い、一堂に会する機会をつくっていたのである。 そもそも内々定とはなにか。経団連が定めた「採用選考に関する指針」や政府が経済界や業界団体に向けて出している要請文書には、「正式な内定日は、卒業・修了年度の 10 月1日以降」としている。そのためこの日まで正式な内定を出すことはできない。しかし、就活はかなり早くから進んでおり、10月1日まで内定を出さないでおくというのは、実質的にかなり難しい。そこで、内々定という、事実上の内定を企業が学生に出している。 実際に「6月1日に内々定式を行った」と打ち明けるのは、あるエンターテインメント企業の人事担当者。5月末に学生に内々定を出し、当日は担当役員が出席する「内々定授与式」や、内定者の交流会、人事主催の懇親会などを1日かけて行ったという。「6月1日は一斉に面接や内々定が出されるタイミング。他社の最終面接などとバッティングするが、わが社への入社の本気度を確認するために開催した」(同社の人事担当者)。6月1日に他社の最終面接や内々定式といった会合に向かわせないように、学生を会社に引き留めておく機会をつくったわけだ。 採用コンサルタントの谷出正直氏は、「売り手市場である限り、内々定式が今後も続くと思われる。大手は6月1日の夕方に、中堅・中小企業は6月中旬以降に、行っていく可能性がある」と語る。囲い込みの策のひとつとして、来年以降も拡大すると予想する。 内々定式のメリットは物理的事情だけではない。大きいのは学生へのメッセージだ。学生を大事にしているという企業の姿勢を見せることができ、「わざわざ式典を開催してくれた」という気持ちを抱かせ、心理的に内定を辞退しにくくする効果をもたらす。「選考を通じて信頼関係がつくれていれば問題はないが、見せ方ややり方で多少の印象が変わるので、企業としては押さえておきたいセレモニーだ」(谷出氏)。 また、「内々定式があるから参加できますか?」と、やわらかい形で内定承諾を求めることができ、同時に他社への就活の終了を迫る”就活終われハラスメント(オワハラ)”を避けることもできるという。内々定式で同期となる人たちと顔合わせをしてもらい、お互いをフォローし合う環境をつくることで、内定辞退の防止につながる。 採用スケジュールが固定化される中、内定者フォローの一環として内々定式を活用する動きが今後も広がると思われる。ただ、一方で、「5月までに内々定を出し、6月1日は内々定のセレモニーの日」というような形になり、就活の早期化を助長する懸念もある。 10月1日が正式な内定日となっているのは、高校生の選考開始日が3年生の9月からというのもあるが、1990年代まであった就職協定のなごりという側面が強い。当時は大学4年生の10月まで内定が出せなかったが、それ以前に内定を出す企業が増えてしまったため、形骸化した。内々定式の浸透は6月1日の選考活動解禁日を形骸化させていく可能性がある。 建前と裏腹に既成事実化する内々定式。単に内定出し手続きが二段階化してしまうだけでなく、就活スケジュールそのものが、すでに形だけのものになっているのかもしれない。 (取材・文/宇都宮 徹 [東洋経済 記者])
就職マーケットニュース 新卒採用市場の最新動向や旬のトピックを紹介。今採用意欲が高まっている業界・職種、社会的注目を集めている新たな採用手法や就職支援サービス、学生の就職動向など、多岐にわたるテーマに迫る。外的環境を理解し、自分らしい就活スタイルの確立に役立てよう。 ヤフー株式会社は、2016年10月3日より新卒一括採用を廃止し、通年採用の実施に踏み切った。 新卒、既卒、第二新卒など、経歴に関わらず30歳以下であれば応募できる「ポテンシャル採用」を新設。エンジニアやデザイナー、営業職など全ての職種を対象に、年間で300名程度を採用予定とした同社の発表は、各種メディアで報道され、話題を集めた。 しかし実際、“通年採用”とは学生にとってどんなメリットがあるのだろうか? ニュースを目にしたことはあっても、自分事として捉え、具体的に活用の仕方をイメージできている学生は少ないだろう。 2017年4月、ヤフーはポテンシャル採用における初の選考通過者となる新卒入社組をすでに迎え入れており、2018年4月以降の新卒入社者は、全員がポテンシャル採用枠となる。 いよいよ本格稼働フェーズへと移行する同社の通年採用。その背景と実態を探ると、就職活動の本質が見えてきた。 なぜ、皆一律に同時期から就職活動を始めねばならないのか? 日本固有の新卒一括採用システムに疑念を抱いたことのある学生も少なくないはずだ。 通年採用は、そんな旧来の価値観に一石を投じる施策であることは間違いない。ここ数年、ファーストリテイリング、ソフトバンクなど、通年採用に切り替える企業は増えつつあるとはいえ、全体で見ればまだ少数派。今後、拡大が見込まれるものの、今はまさに過渡期だ。 こうした中、ヤフーが通年採用へのシフトを決断した理由を、同社クリエイター人財戦略室の金谷俊樹氏はこう語る。 「大学院生は研究で忙しい時期と就活シーズンが重なってしまったり、留学生は帰国する頃には企業のエントリーがもう締め切られていたり。タイミングが合わず、思うように就職活動ができない学生が年々増えてきています。通年採用によって、こうした個々のニーズに応える体制を整えたいと考えたことが一番大きな理由なんですよ。学生の皆さんには、安心して勉強に励んでほしい。そう強く思っています」 実際、2017年4月入社および10月入社予定の新卒者たちは、院生や海外留学生たちが多くを占めている。また、第二新卒の応募者も増えているという。 「短い就活期間の中で一生働きたいと思える会社を選ぶのは難しいことです。自分に本当に合う仕事や会社とはどんなものか、働いてみて初めて分かることもあるでしょう。第二新卒応募者の大半は、就活時には当社を受けていなかった方です。当時は気付けなかったけれど、働き始めて改めて当社の仕事の面白さを見いだしてくれた方もいるのではないでしょうか」(金谷氏) 同社が目指す、優秀な“人財”を採りこぼすことのない柔軟な採用体制は、すでに一定の成果を上げ始めているといえそうだ。 一方で、通常の就活スケジュールに則って動く大半の学生たちにとって、通年採用は異文化でしかない。通年採用を実施している企業とは、つまり“いつ受けてもいい会社”でもある。となれば、エントリー期限のある、今しか受けられない企業を優先する流れになってしまう。通年採用実施企業が割を食う形にならないのだろうか? 「確かにその懸念はあります。だからこそ、私たちは自社の仕事内容や働く人、風土などをもっと理解していただけるよう、努力をしていきたいと考えています。具体的には、採用HPを刷新して情報量を増やしたほか、昨年から『linotice(リノティス)』というブログメディアの運営もスタートし、年間を通して継続的に当社の情報を発信することに積極的に取り組んでいます。また、当社のテクノロジーの高さや、保有する膨大な量のビッグデータを活用したビジネスの広がりに触れていただく機会を増やすため、サービス開発体験インターンシップの拡充も図っています」(金谷氏) エントリー解禁のタイミングで情報公開を強化する企業群に対して、短期集中の情報戦では伝えきれぬ自社のスケール感を、年間を通して打ち出していく戦略だ。 同社が目指すのは、「情報技術を使って人々や社会の“課題”を解決し、日本をアップデート」(金谷氏)すること。そのビジョンをより具体的に体感してもらえる場として、インターンシップには特に力を入れているという。 「当社の場合、サービス認知度の高さに比べて、扱っている技術領域やビジネス構造が見えにくい部分があると思っています。インターンシップで実務を通して技術に触れてもらうことで、学生の方に自分が学んできた技術がどう当社のサービスと結び付くのかを、具体的に理解してもらえる。また、客観的に自分の技術の汎用性を知る良い機会にもなると思います」(金谷氏) ヤフーをはじめ、通年採用実施企業の多くがインターンシップを積極的に開催している。就業体験を機に、インターンシップ開催企業で働くイメージが湧いた場合、通年採用ならばいつでも門戸が開かれているため、スムーズに選考に進めるというメリットもある。 就活シーズンの限られた時間の中で、複数の企業を比較検討する。それは、相対評価による取捨選択を招き、少なからずミスリードが生まれるリスクがある。通年採用は、絶対評価で第一志望を選び取るという、就職先選びの本来の形に添うものだ。 「通年採用は、『行きたい』と思った時にいつでも応募ができる、シンプルなシステムです。入学してすぐに社会人になった後の目標を具体化したい人もいるだろうし、学業に専念して学生生活を全うした後に自分の知見を活かせる場所を選びたい人もいる。そうした学生の方の多様なライフスタイルに向き合える体制だと思っています」(金谷氏) 社会や組織の歯車になることを忌み嫌いながら、就活は周囲と同調して「時期が来たから」という理由だけで始めるなんてナンセンスだ。一括採用実施企業の採用スケジュールに合わせて意思決定するのではなく、「こんな大学生活を送りたい」「こんな社会人になりたい」という自分の都合で、意志を込めて自分で就活スタート時期を決め、スケジューリングするのが本質ではないだろうか。 自分の人生は、自分でコントロールし、舵を取るのが筋だ。就職という大きな人生の決断こそ、主体的であるべきだろう。生き方の選択は、もうすでに始まっている。 (取材・文・撮影/福井千尋[編集部])
就職マーケットニュース 新卒採用市場の最新動向や旬のトピックを紹介。今採用意欲が高まっている業界・職種、社会的注目を集めている新たな採用手法や就職支援サービス、学生の就職動向など、多岐にわたるテーマに迫る。外的環境を理解し、自分らしい就活スタイルの確立に役立てよう。 大手監査法人各社で新卒採用意欲が高まっている。中でも、PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)は、2019年度卒採用人数を前年の倍に引き上げる方針だという。 なぜ今、監査法人が採用に積極的なのか? その背景には、日本のビジネス環境の変化が大きく影響している。就活生にとって、新たなキャリアの選択肢となり得る、監査法人が持つ意外なビジネス領域の広がりを読み解いてみたい。 「監査法人の新卒採用対象というと、公認会計士の有資格者または資格取得を目指す人材のみをイメージされがちですが、大きな誤解です」 そう語るのは、PwCあらたでパートナーを務める岸泰弘氏だ。その真意を汲み取るには、まず『Big4』と呼ばれる四大会計事務所の業務領域を理解する必要がある。 Big4とは、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)、デロイト トウシュ トーマツ(Deloitte)、アーンスト・アンド・ヤング(EY)、KPMGのこと。会計・監査・税務・コンサルティングなどのサービスを提供する総合プロフェッショナルファームだ。 本拠地を置く欧米では、監査とコンサルティングはファームの一機能として集約されているが、日本では法令に従ってコンサルティングと監査は別法人として存在している。 「したがって日本においては、PwCあらた有限責任監査法人、PwCコンサルティング合同会社、PwCアドバイザリー合同会社、そしてPwC税理士法人等の複数の法人が存在します。そのため、監査法人は会計監査だけを行っていると思われがちですが、監査はPwCあらたが手掛けるビジネスの一角でしかありません。“守りのコンサルティング”ともいうべきアドバイザリー業務が重要な事業の柱となりつつあります」(岸氏) PwCコンサルティングが提供するのは、主に売上構築や事業拡大を目的としたビジネス戦略を策定する、いわば“攻めのコンサルティング”。一方、PwCあらたが仕掛けるのは、業務プロセスやコンプライアンス管理に係る組織体制など、企業のビジネス周辺に潜むリスクを洗い出し、未然に防ぐ“守りのコンサルティング”だ。 「多くの企業で業務のあらゆるプロセスがIT化されています。当然、会計監査を行う上でも、顧客企業が導入している会計システムや、そこにつながる業務システムが正しく活用されているかどうかをレビューする必要がある。こうした監査業務を通じて得たリスクマネジメントの知見を、コンサルティングサービスとして提供しているのです」(岸氏) この“守りのコンサルティング”を展開しているのが、岸氏が率いるシステム・プロセス・アシュアランス部門(以下、SPA)だ。 企業経営をする上で、利益最大化を実現するためには、「新たな利益を生み出すこと」と「利益を失うリスクを減らすこと」は常にワンセットで考える必要がある。欧米ではすでにこのスタイルが根付いているが、ビジネス環境のグローバル化やITの導入・活用が進んだことを背景に、日本の企業経営も欧米型へシフトしているという。 「大規模システム開発時のコスト・納期・品質の担保、自然災害やテロ攻撃など有事の際のBCP(事業継続計画)立案、情報漏えいやサイバー攻撃を防ぐセキュリティ対策など、IT化に伴い、企業の外部・内部に潜むリスクとその対策は多様化しています。これらのリスクを未然に防ぐため、外部に知見を求める企業が増えており、当法人のSPA部門で請け負う案件も拡大しています」(岸氏) 例えば、大手金融機関の巨大ITプロジェクトの進捗を第三者としてモニタリングし、遅延リスクを調査する案件。設計済みのBCPをチェックし、有効化するためのアドバイスを提供する案件。企業が抱えるリスク・アセスメントを洗い出した上で、導入済みのサイバーセキュリティー対策が適正かを評価する案件など、SPA部門が取り扱う領域は多岐にわたる。 「日本経済全体は拡大しているとは言いがたいですが、リスクマネジメント分野のマーケットは確実に伸びています。だからこそ今、SPA部門の組織拡大に着手しており、新卒採用にも力を入れているのです」(岸氏) SPA部門では、これまで即戦力重視で中途採用者を主軸に組織作りを進めてきた。経理、営業など、企業経営のあらゆる業務プロセスに習熟した人、ITに通じたエンジニア出身者など、さまざまな専門領域を持つ人材が集う組織へと成長した今、中長期的な発展を目指し、新卒入社者の受け入れを強化している。 「一昨年から実施しているインターンでは、架空の企業の新規ビジネスに対するリスクを特定し、その対応策を提案するプログラムを提供しています。この企画が非常に好評で、参加をきっかけにリスクマネジメントの仕事の面白さに気付き、志望してくれる学生の方も増えつつあります。業務プロセスの深い理解とIT知識という2軸の専門性を磨くことで、ビジネスを俯瞰し、全体把握できる汎用性の高いスキルを得ることができるのが、この仕事の醍醐味だと思っています」(岸氏) 監査法人が持つ特性を、「インディペンデントであること」と岸氏は語る。 どこにも依存しない、独立した存在であるからこそ、企業が有するあらゆるビジネスプロセスを第三者として評価・保証し、結果、企業に“社会的信頼”という大きな価値を提供することができる。 「いまや社会的信頼なくして企業のビジネス成功はあり得ません。企業の経営基盤を支え、より良い社会を創るために、ITガバナンスとビジネスプロセスの知見をベースに、できることはすべて提供していくのがPwCあらたの姿勢です」(岸氏) 監査法人は今、監査という枠を超え、さまざまなチャレンジを仕掛けるプロフェッショナル集団へと進化している。 “守りのコンサルティング”の重要性がますます問われていくこれからの時代、社会貢献性の高い仕事を志望する学生たちにとって、新たなキャリアを築ける、最高にエキサイティングなフィールドがまた一つ登場したといえそうだ。(取材・文/浦野孝嗣 福井千尋[編集部]、撮影/大島哲二)=関連リンク= ■ビジネスパーソンの3種の神器「IT・会計・英語」が磨かれる、企業の“リスクマネジメント”というフィールド