デロイトアナリティクス(Deloitte Analytics)は、全世界で約20,000人、国内では約300人の専門家が従事する、アナリティクスを活用したコンサルティングサービス。アナリティクスとは、統計とソフトウエアベースのアルゴリズムを駆使し、データに潜むパターンや相関関係などを解き明かす手法。デロイトではアナリティクス専門家の知見と、監査・コンサルティングによる業界知識により、実態に即した分析・実行可能なプラン策定を可能にしている
─今回はデロイト トーマツ グループの3社にお集まりいただきました。まずは皆さんの役割について教えてください。
大平:
デロイト トーマツ コンサルティング(以下、DTC)は、その名の通りコンサルティングサービスを提供している組織です。私はパートナーとして、デロイトアナリティクスに関する案件を担当しています。
前田:
私はデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー(以下、DTFA)に属していまして、そこの企画担当をしています。同時にグループ全体のイノベーションに関する企画にも携わっています。
神津:
私は監査法人トーマツに所属しており、同法人にチームアップされているデロイトアナリティクスの専門家チームを率いています。同時にデロイトアナリティクスの研究開発部門のリーダーも務めています。
─デロイトアナリティクスを通じて、クライアントにどのような価値が提供できるのでしょうか?
大平:
まず前提として、デロイトアナリティクスはデロイト トーマツ グループ横串での取り組みです。その中でDTCは、戦略、組織、業務プロセスまで含めた、アナリティクスに関する上流のアドバイザリーコンサルティングを行なっています。
そもそもデータを使って何をしたいのか、データをつかさどる組織をどのように設計するのか、セキュリティーをどうやって担保していくのか。海外の事例も参照しながら、データガバナンスの枠組みを決めていきます。
前田:
DTFAでは、M&Aや企業再編でデロイトアナリティクスを活用しています。
例えば店舗の統廃合において、今まではどちらの店舗の売上が高いか、客入りがいいかといった店舗が所有するデータから判断をしていました。そこに多様なデータを加えて分析することで新たな視点での判断ができるようになっています。
また企業の買収価額も、あらゆる尺度のデータを可視化することにより、導き出せるのではと思っています。
神津:
グループを横断したデロイトアナリティクスの事例として、保険会社の取り組みがあります。従来、保険会社がデータ活用をする主な目的は、保険の解約予兆を知ることでしたが、今は新たなビジネスをつくり出そうとしています。そこでわれわれは、データ活用の仕方から新規事業の戦略策定までを、グループ一体となって支援しています。
既存のデータを使ってのビジネスはお客さま自身がすでに取り組み始めていますので、データがないところからどのように新規事業を立ち上げ、どうデータを使っていくのがいいのか。例えば介護の世界には、まだ十分なデータが蓄積されていません。そうした状況の中で介護のクオリティーを上げるために、どのようなデータをどう生かせるのか、お客さまと一緒に議論を重ねながら、新しい業務領域を切り開いています。
─デロイトアナリティクスを用いたプロジェクトだからこそ得られる醍醐味は何でしょう?
大平:
DTCが提供するサービスは従来アドバイザリーが中心でしたが、近年は実装を伴うシステム導入案件が増えています。あるプロジェクトでは、クライアントが一対一で行っていたロールプレイング研修を自動化し、AIを用いて採点する仕組みを構築しました。こうした先進的なプロジェクトができるのは大きなやりがいです。
神津:
少し前までの日本企業は、データの取り扱いを「試す」段階にあり、われわれの関わり方は「クライアントから提供されたデータの分析」が中心でした。しかし今はデータを扱う環境をクライアント自らがつくり、テストを重ねて改善する段階。それに伴い、クライアント企業に入って直接的なサポートをする機会が増えました。
また、コンサルタント、会計士、M&A専門家、税理士、弁護士といったプロフェッショナルサービスをワンストップで提供している当グループの特徴を生かし、クライアントの全てのニーズに対応できるシステムを実装できるのは何よりの醍醐味です。
前田:
以前は蓄積されているデータが決まっていたので、ロジックを軸に分析をしていました。ところが今はデータの種類が増えたことで多面的な分析ができるようになっています。さまざまなデータを登録し、そのデータを使うという循環ができたことで、新しい発見が生まれやすくなっていると感じますね。
─アナリティクスの重要性が増す中、コンサルタントに必要な能力はどう変わるでしょう?
神津:
最近はAIの民主化と言われるように、分析技術の進化によって、データサイエンティストにしかできなかった分析を誰もができるようになりつつあります。
クライアントに寄り添う「人間力」が重要なのはこれまでと変わりませんが、分析技術をどういった課題にアプライできるかを自ら考え、提案し、実行できる「設計構想力」がこれからのコンサルタントには求められるでしょう。
大平:
当グループには“Purple People”という概念があります。青がビジネス、赤がテクノロジー。コンサルタントはこの二つの能力をバランスよく持ち合わせた“Purple”でいなければならないという考え方です。
前田:
ビジネスとテクノロジーを両立しなければお客さまに価値提供はできません。今や当グループの全ての人がハイブリッドになっていく必要があります。クライアント企業がデータガバナンスを実行するなどしている中で、当然ながらわれわれはクライアントの知見を超えたアドバイスができなければならない。どう分析したらいいか、データからどういったビジネスが考えられるのか。答えられなければ、これからはコンサルテーションができないのです。
─ビジネスとテクノロジーの能力をバランスよく併せ持つ必要があるのですね。
大平:
そうですね。ただ個人的には、赤寄りの紫でも、青寄りの紫でもいいと思っています。デロイトアナリティクス全体として綺麗なパープルになっていればいいのであって、個人の強みをどこに置くかは自由。青100%にも、赤100%にもならないことが重要です。
─どのような人がデロイトアナリティクスのプロジェクトで活躍しているのでしょうか?
大平:
コンサルティングに関していうと青の要素、つまりビジネススキルが強い人が活躍している傾向にあります。クライアントの課題を把握し、そこからアナリティクスのビジネスにどのように落とし込むかを考えられる人ですね。
神津:
活躍しているのは、必ずしも大学で機械学習を勉強していたような人だけではありません。入社時点で知識がなくても、貪欲に勉強し、期待以上のアウトプットを出そうとしている人が非常に伸びています。技術の進歩スピードが速い今の時代に活躍できるのは「学び続けられる能力」がある人だと思います。
前田:
一方で、テクノロジーにフォーカスする人も必要です。新しい分析結果を得るためにどういう尺度でデータを使うのか、他の分析手法と合わせて見つけ出していける人。極端な言い方をすれば商売にならない研究も含めてしていける人がいることで、新しい発見は生まれます。データをより深く分析し続けながら、人とは違う視点で物事を見出せる人の価値は非常に高い。テクノロジーに強みのある人は、その強みを持ち続けることも大切です。
─これからデロイト トーマツ グループに入社する若手人材には、どのようなチャンスがありますか?
大平:
他ファームとの大きな違いは、総合コンサルティングファームとしての幅の広さです。さまざまなことにチャレンジできる素地が備わっており、若い人には無限の可能性がある環境と言えます。
前田:
ビジネスファンクション間の壁が低いのは魅力ですよね。所属関係なく協業できる風土があり、前例のないチャレンジがしやすい。グループ内の共通基盤であるデロイトアナリティクスを通じて、クライアントに新たな価値提供ができるのは、大きな利点です。
神津:
グローバルを含めると、当グループには約28万人が在籍しています。社内SNSで情報を求めると、その日のうちに何十通も返信が来るほど、交流も盛んです。
さまざまなバックグラウンドを持つ人がプロフェッショナリズムを持って働いている。自ら学び、発信するチャンスに溢れた環境なのは間違いありません。
取材・文/一本麻衣 撮影/竹井俊晴