――皆さんが考える、「女性が長く活躍できる職場」とは?
桑原ひとみさん(以下、桑原)
「性別による区別をしない会社」であることは大前提ですね。「女性だから」という理由で責任ある仕事を任せてもらえないような会社では、やりがいのある仕事は続けていけません。
私は今の会社に新卒で入社して15年経ちますが、「女だから」と言われたことは一度もありません。育休から復帰した後にマネージャーに昇格し、責任も裁量も大きくなりました。常にチャレンジさせてくれる会社だからこそ、長く働き続けることができています。
小野 有紀枝さん(以下、小野)
私が大切だと思うのは、「成果」で評価してくれる会社かどうかです。
実際、今の会社はフレックスタイム制なので、会社から求められている仕事の成果さえ出せば、時間の使い方は自由。家で仕事をすることもありますが、個人的には「オフィスにいないと仕事ができない」という環境より、ずっと子育てと仕事を両立しやすい。働き方も自分でアレンジできています。
木戸 早奈英さん(以下、木戸)
本来、ライフの中にワークはあるものですしね。
私にとって、理想のキャリアを実現していくために必要な条件は「裁量が大きい仕事」をさせてもらえる環境があることです。アクセンチュアはスキルをしっかり身に付けていれば、若いうちからある程度の裁量を持った仕事を任せてもらえます。
子どもがいる、いないで任される仕事に違いはありません。最初のうちはハードな時もあるかもしれないけれど、成長を重ねて周囲からの信頼を勝ち得ていくうちに、やがて自分らしい働き方が実現できるようになっていくと思います。
桑原
それに、コンサルタントはプロジェクト単位で動くので、長期休暇も取りやすいですよね。
集中して働いてプロジェクトが終わったら、1カ月くらいお休みをもらって、海外旅行に行ったり、何か勉強する時間に当てたり、メリハリをつけて働けます。
木戸
そうですね、そういったオンオフの切り替えがしやすいのもコンサルティング会社の特徴ですね。
小野
外資系の企業についても、全く同じことが言えますよ。日系の企業から転職した私にとっては、外資系企業のフレキシブルさが当初は新鮮でした。
「ライフの中にワークがある」という発想が根強く、ライフステージの変化にも柔軟に対応してくれる環境です。
――やりがいを持って働き続けるためには、自らの仕事に対するスタンスも重要ですよね。
木戸
目の前の仕事の一つ一つにしっかり取り組むことが大切ですね。そして、その過程の中で成長し、ポジションが上がれば、できることの幅も必ず広がっていくと思います。
桑原
その通りですね。「ポジションが上がること」を恐れないことは意識すべきポイントです。
私は時短勤務で子育てと仕事を両立しながら管理職になりましたが、ポジションが変わった途端に見えていた景色ががらりと変わりました。
今まではお客さまの役に立つことが最大の喜びでしたが、今はそれだけではなく、チームメンバーの成長を実感できることがうれしいですし、組織に何か課題があればそれを変えていけることもやりがいにつながります。
小野
やりがいもキャリアビジョンも、その時に置かれている環境によって変化するものですよね。
私も新卒の頃は「起業したい」と考えていましたけど、今はまた目標が変わりました。「絶対にこうならなきゃだめだ」と自分のキャリアをがちがちに決めてしまって息苦しくなるよりは、日々の仕事を楽しみ、成果にこだわり、周囲の人の信頼を勝ち取っていくことで、その時々で自分にとって最良の選択ができるように準備しておくといいですね。
――改めて、皆さんにとって「仕事」とは何なのでしょうか。
桑原
「自分の一部」です。多くの人から必要とされる喜びを感じますし、そもそも、自分が仕事をしていない人生を想像できません。
あと、子どもにも「ママ頑張ってるよ」って姿を見せたい。働く私の姿から、きっと何か感じ取ってくれるものがあるはずだから。
木戸
私にとって仕事は、「周囲に価値を還元していく手段」。仕事を通じて、より多くの人々の役に立つことで、自分自身が社会の一部であることを感じられます。
小野
よく分かります。仕事があるから自分の成長を実感できるし、目標もできる。
一方で、私もかつては結婚や出産に際して、「仕事か家庭か、どちらか選ばなければいけないのかなぁ」と悩んでいた時期がありました。責任ある仕事を任せてもらっても、育児で職場を離れてしまっては会社に迷惑がかかるのでは、と思い込んでいたのです。
でも、当時の上司が「その時が来たら仕事の責任は上司に任せていい。あなたは自分の人生の責任を負うために、目指すキャリアを第一に考えなさい」と言ってくれました。そこで、自分にキャップをしていたのは自分自身だったと気付くことができたのです。
――いざ仕事から離れるとなると不安を感じるものですよね。
桑原
私も初めて産休に入った時は、同期に取り残されたような焦りを感じました。けれど、復帰してみると何とか乗り越えられます。
同僚の理解に支えられ、管理職業務や社内のダイバーシティー推進の取り組みも任せてもらっています。自分のキャリアが一つのロールモデルとなり、後輩たちの選択肢が広がれば良いなと思っています。
木戸
一緒に働く上司や同僚に自分の本音を伝えておくことって、意外と大切ですよね。何でも会社側がやってくれるのを待つのではなくて、自分にとって働きやすい環境は自分で創り、勝ち取っていくものですよね。
子どもがいると夜遅くまでは働けませんから、私はそういう現状を知ってもらうために、自分に可能なワークスタイルを積極的に発信していました。すると、チームメンバーも理解してくれて、今はとても働きやすいです。
私もチームを管理する立ち場として、全員のライフを含めた状況を把握した上で、チームとして効率的に『最大限の価値を発揮できる仕事』をするにはどうしたらいいのか考えています。
小野
自ら道を示せば、チーム力も上がり、より多くの人に貢献できるということですね。
――自ら道を切り開いてきた皆さんですが、そこまで仕事を頑張り続けることができた原動力とは一体何なのでしょうか?
小野
チームの存在です。良い関係性を築けているからこそ、「このメンバーで絶対に目標を達成したい」という思いがある。
ワクワクしながら課題に取り組んで、無事に目標達成をして皆でハイタッチして喜び合う瞬間は、本当にうれしい! その感覚をまた味わいたいという気持ちが常にありますね。
木戸
私は「無理難題」を解決することが昔から大好きなんです。だから、目の前の仕事そのものが原動力になっているのかも。
好きなことを仕事にできているからこそ、飽きることもないし、苦しい状況に直面しても周りの仲間と協力し、切磋琢磨しながら乗り越えられます。
桑原
私もコンサルティングの仕事が好きです。クライアントからの要求も高く大変ですが、高い志を持つ仲間やクライアントと共に、プロジェクトをやり切った時の達成感や一体感。新人の頃からマネージャーになった今でも、一番私を突き動かすものです。
小野
「何をするのか」も大事ですけど、「誰とするのか」ということもモチベーションを保つ上で重要ですよね。
――これまでに、子育てが仕事のパフォーマンスに影響を与えることはありましたか?
木戸
時間に制約がある分、限られた時間の中で仕事をやり遂げるために効率は格段に上がったと思います。また、産休育休で職場を離れてみたからこそ、仕事ができることの喜びもひとしおです。
小野
私も職場復帰してみて初めて、「働いている方が私らしいな」って実感しました。家族との時間も大切だけれど、仕事で自分の成長を感じることも私の人生には欠かせないことだと確信したんです。
桑原
子育てと仕事、両方あるからこそうまくいくことも多いですよね。「子どもの考えをくみ取り、分かりやすい言葉で伝える」という子育てで身に付いたことが、仕事でメンバーとのコミュニケーションに活きたり。仕事で子供と離れている時間が長いからこそ、一緒にいる時間を大切にできます。
両立するために試行錯誤することで、どちらか一方しかない時には得られない成長があります。
――両立生活について皆さんが今のような考え方、働き方ができるようになったきっかけは何かあったのでしょうか?
木戸
私の場合は社内に良きメンターとなってくれる人がたくさんいたことが大きかったと思います。
当社では、キャリアカウンセラーが1人付くのですが、カウンセラー以外にも多くの人に気軽に相談できる風土があります。また、グローバルメンバーと仕事をする機会も多く、世界中の仲間から刺激をもらえたり、さまざまな角度からアドバイスを聞けたりすることも良かったと思います。
小野
不安や焦りが生まれる時は、自分自身、やるべきことが見えていないからだと思うんです。私の場合も木戸さん同様、頼れる上司が導いてくれました。
例えば、週に1度、メンターとなる上司と1対1で話せる制度があるのですが、そういったものも積極的に活用していました。話をすることで自分の考えを一緒に整理してもらい、目指す方向がクリアになれば、そこからは全力で走れます。
桑原
私も育休から復職した時の不安を乗り越えられたのは、「取り組むべき課題」を上司が明確に示してくれたからでした。
また、当社にもカウンセラー制度といって、社員1人に管理職1人が付き、長期的なキャリア相談などができる環境があります。そういうものはどんどん活用すべきですね。
――最後に、今後就職活動を控えている女子学生に向けて、メッセージをお願いします。
木戸
自分が社会人になりたての頃もそうだったのですが、周囲からの評価を気にして「人に頼っちゃいけない」と思い込んでいました。でも、自分が上司の立場になってみると、積極的に相談してくれるとその人の悩みがストレートに分かるし、最良の道を示してあげられる。
完璧なロールモデルが側にいる必要はないけれど、頼れるメンターは複数見つけておくといいでしょうね。
桑原
上手に頼ることは若いうちに覚えた方がいいことの一つ。一人一人の成長が会社の成長に直結しますから、それをサポートしたくない先輩や上司はいませんからね。
木戸
ええ。その上で「今、自分が何をしたいのか」をその時々で大切にし、働き方や仕事内容も含め、自分の人生を自分で決めていけばいいと思うんです。
小野
まさにそうですね。キーワードは、最終的には「自分で決める」ということだと思います。
入社後、仮に希望していたものとは違う仕事を任かされても、自分の意思さえあれば、やりたいことに近づけていくことだってできます。その仕事をどう成功させるか方法までは決められていませんから、どう取り組むか次第で可能性は広がっていきますよ。
桑原
思い切りチャレンジして失敗したときでも先輩たちが見守り、フォローしてもらえるのも、若い時期の特権。自分のパフォーマンスを最大限に引き出せる環境に身を置いて、いいスタートダッシュを切ってほしいですね。