2023/11/01 更新
デロイト トーマツ グループ

デロイト トーマツ グループの事例に学ぶ

テクノロジーでつくる
コンサルティング新常識

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デロイト トーマツ グループは、2030年までに現在の売り上げの3倍である1兆円を目指す。成長戦略の核となるのが、デロイト トーマツ コンサルティングが担うコンサルティング領域だ。成長促進に向けた打ち手の一つがテクノロジーに強みを持つデロイト トーマツ アクトとの協働。両社の連携はどのような価値を創出するのか。両社トップの佐瀬真人氏と信國 泰氏に聞いた。

取材・文/瀬戸友子 撮影/桑原美樹
  • デロイト トーマツ アクト
    代表取締役社長
    信國 泰

    大手コンサルティングファームで25年以上にわたり、全社的な組織再編・業務改革や経営管理改革・サプライチェーン改革や営業改革などの幅広い案件にIT実装も含めEND to ENDで従事。現在は、デロイト トーマツ コンサルティングの執行役員・経営会議メンバーも務める

  • デロイト トーマツ コンサルティング
    代表執行役社長
    佐瀬真人

    2000年4月にデロイト トーマツ コンサルティングに新卒入社。自動車業界を中心に事業戦略立案、マーケティング戦略立案、技術戦略立案、組織・プロセス 設計に関するコンサルティングに従事。近年はデロイト アジアパシフィックやデロイト トーマツ グループのセクターリーダーを歴任。19年6月より現職

施策を提言する「アドバイザー」から
END to ENDで伴走する「ビジネスパートナー」へ

  • 佐瀬真人氏
    佐瀬真人
  • 信國 泰氏
    信國 泰

デロイト トーマツ コンサルティング(以下、DTC)、デロイト トーマツ アクト(以下、DTakt)の連携を強化しているとのことですが、その狙いは何でしょうか。

佐瀬:デロイト トーマツ グループでは「2030年5月期に売上高1兆円」という目標を発表しています。これは現在の3倍近い売上規模を目指すということで、われわれ自身、これまで以上に価値を発揮していかなくてはなりません。もともとDTCはクライアントの経営課題に対して解決策を提言するところに強みを持っていましたが、10年くらい前からアドバイスするだけでは十分ではないと肌で感じるようになってきました。企業が新規ビジネスを創出するにしても既存事業を変革するにしても、デジタルテクノロジーの活用が欠かせなくなっている中、クライアントの期待を超えるサービスを提供していくには、われわれ自身がコンサルティングとテクノロジーの両方を持たなければならないと考えています。
DTCとDTaktの連携もこういった背景から。DX戦略実現支援を担うDTaktは、いわばテクノロジーのスペシャリスト集団。DTaktのエンジニアが持つテクノロジーの専門性を生かすことで、全てのコンサルティングサービスにおいて付加価値を生み出していくことが狙いです。

信國:実際のプロジェクトでも、解決策を提案して変革を実行していった先には、テクノロジーを実装するフェーズが必ずやってきますからね。昔は実際の作り込みの部分を外部の企業に委託することが多かったのですが、分業体制にしてしまうと、途中で食い違いが生じることもしばしばあります。それだけに、近年では、クライアントからも「できれば最後までデロイト トーマツ グループに任せたい」と言われることが増えてきました。クライアント企業の一員になったつもりで自分事として課題に取り組み、プロジェクトの成否を共に分かち合う。それくらい踏み込んでコミットしてほしいというニーズが非常に高まってきているのです。

連携を強化することによって、クライアントに対してどのような価値提供ができるようになるのでしょうか。

佐瀬:一つは圧倒的なスピードです。以前のように戦略を立て、構想を描いて、そこからシステムを構築してというスピード感では、もはやクライアントは競争を勝ち抜けない。構想をスピーディーに実行し、チャレンジしながら実装していくアジャイルなアプローチがコンサルタントにも求められており、それには第三者的なアドバイザーという立場では対応しきれません。DTCのコンサルタントだけでなく、クライアントの課題をよく理解しているDTaktのエンジニアが、テクノロジーの実装からその後のオペレーションまで一気通貫で担当し、伴走しながら共に成果を求めることで、プロジェクト全体のスピード感が上がりました。

信國:伴走するという言葉どおり、これは単にシステムを作れるようになりましたという話に留まりません。成果を出すためには、システム稼働後もデータを見て、さらなる打ち手を考えなければならない。クライアント企業の一員になったかのように、日々蓄積されていくデータにわれわれ自身がアクセスして、そこから得られたインサイトをもとに次の打ち手を提言するようなケースも増えています。

佐瀬:構想を具現化し、一緒にその仕組みを運用して事業の成果につなげ、新たな構想に反映していく。「END to END」で、クライアントの変革の全てを支援できるようになったことで、「アドバイザー」から共に事業を営む「ビジネスパートナー」へと、お客さまからの信頼も高まっています。

多様な能力を持つ人材の力を結集し
ビジネスにもテクノロジーにも強いチームをつくる

グループ売り上げ1兆円に向けて、どんなことに取り組んでいきますか。

佐瀬:デロイト トーマツ グループの最大の強みは、幅広い領域のエキスパートがそろっていることです。コンサルティングだけでなく、監査・保証業務や税務、法務、M&Aなどのファイナンシャルアドバイザリー、そしてサイバーリスクや環境リスクに関わるリスクアドバイザリーなど、あらゆるプロフェッショナルサービスをカバーしています。よくAIによる代替可能性の高い職業として士業が挙げられますが、裏返せば、テクノロジーを取り入れれば、大幅な業務の効率化が図れるということ。その分、従来のサービスをより安くより早く提供できるようになり、付加価値の高い仕事にエキスパートの力を注ぐことができます。つまり、グループ内にテクノロジーを活用する力を持つということは、各領域のプロフェッショナルサービスをアップグレードすることにつながるのです。
そのために、今グループ内で生成AIの技術を蓄積しているところ。DTakt以外にもクラウドの専業会社を立ち上げており、テクノロジーの活用がグループ全体の成長の鍵を握ると考えています。

信國:生成AIをはじめ、ソリューションの幅はどんどん広がっています。それだけに今後はこれまでカバーしきれていなかった領域にもサービスを拡大していきたい。より深く特定の業界に切り込んだサービスの開発や、日本経済をけん引する力を秘めた中堅企業のサポートにも力を入れていきます。

多様な思考・視点・能力の集合体で
成長を加速させる

成長戦略を踏まえて、両社が求める人物像を教えてください。

佐瀬:ビジネス(ブルー)とテクノロジー(レッド)の両方の能力を持ち合わせた「パープルピープル」であってほしいと言っています。伝統的にコンサルティングファームにはブルーの能力に優れた人が多い傾向にありましたが、DTaktをはじめレッドのスキルに強みを持つ人もグループ内に増えています。ブルーとレッドの両方の素養を持つことは、これからのビジネスパーソンとして必須になるはずです。

信國:ただし、金太郎あめのようにどこを切っても同じような人たちの集団であるべきではないとも思っています。両方を兼ね備えているといってもそのバランスはさまざまですし、高度で専門的な技術の知見を持つ人や、発想力豊かなデザイン思考に優れた人など、一芸に秀でた人たちもグループの中で多数活躍しています。多様な人々が集まり、それぞれの能力を発揮する中で、チームとしてパープルを実現しているのです。

佐瀬:こうした尖った人たちの力を生かせる土壌があるから、多様な人材がデロイトの門をたたいて来てくれているとも言えます。日々協働する中でお互いに刺激を与え合い、能力の幅を広げていけるようになっています。

若手にとっては成長できる環境が整っているということですね。

信國:自分とは異なる思考、異なるものの見方を持つ人たちと触れ合う日々は、とても刺激的です。しかもグローバルファームであるため、海外のメンバーと触れ合う機会も多い。先日も中国のメンバーから先進的なデジタルマーケティングの事例を話してもらう場があり、皆すっかり聞き入っていました。
成長という点では、入社してからもグループの中でさまざまな方向にキャリアを広げていけるのも大きな魅力の一つだと思います。例えばDTaktにエンジニアとして入社した人が、ビジネスに興味を持ちコンサルタントに転身したり、逆にDTCのコンサルタントがエンジニアリングの知識の必要性を痛感してDTaktに移ったりと、相互にオープンなキャリアパスが開けています。一人一人の希望に応じて、柔軟に多様なキャリアを積んでいくことが可能です。

佐瀬:扱っている案件も幅広く、ほとんど全ての業界をカバーしていますし、今世の中に存在するテーマで扱っていないものはないくらい、さまざまな領域に触れることができます。既に自分なりの夢を持って入ってくる人も、まずはいろいろな世界を見ながら取り組むべきテーマを見つけていきたいという人も、やりたいことに巡り合えるチャンスが多いのではないかと思います。
デロイト トーマツ グループでは、クライアントの変革に伴走し、その実現を通じて社会にインパクトを残すような大きな仕事を経験することができます。これからの時代に求められるビジネスパーソンとしての必須スキルを圧倒的なスピードで身に付けていくことができるでしょう。

売上高1兆円に向けた五つの変革

1.全コンサルタントの生成AIスキル獲得を促進

全社レベルで柔軟にチームを立ち上げながら、全てのコンサルタントの生成AIの専門知識・活用ノウハウの習得を促進。あらゆる業界・企業の幅広い業務で生成AIの利活用をサポート

2.国内外にあるデリバリーセンターを活用

国内外30超にデリバリーセンター(開発拠点)を構えることにより、時間や物理的な制約を超えてクライアントを支援できる体制を構築。システム導入/運用・保守を伴うクライアントの変革を実現

3.他社連携で付加価値を最大化

さまざまなテクノロジー・ナレッジ・リソースを持つ企業とアライアンス提携。提携企業各社の強みを最大限生かした付加価値の高い「END to END」のソリューション/サービスを提供

4.グローバルネットワークを活用

150を超える国・地域にメンバーファームや関係法人を持つデロイト トーマツ グループのグローバルネットワークを生かし、総収益ランキング上位にランクインする世界中の企業にサービスを提供

5.社会貢献活動への取り組み

サッカークラブのFC今治やレーサー佐藤琢磨さんのスポンサー、神山まるごと高専のスカラーシップパートナー関与など、スポーツ・教育・地方創生など、多方面での社会貢献活動により企業価値を向上

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