EYのメンバーファームとして2020年10月に新設されたEYストラテジー・アンド・コンサルティング。彼らが掲げるパーパスBuilding a better working worldを実現するために打ち出した、“NextWave”戦略とは何か。同社代表の近藤聡氏と、パートナー4名のインタビューから紹介する。
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
代表取締役社長
近藤 聡氏
大手総合系コンサルティングファームにて、自動車・ハイテク業界を中心に、企業戦略、オペレーション改革、海外展開戦略策定・実行支援などクロスボーダーを含むプロジェクトを数多く手掛ける。2011年より、同ファームで日本代表を務める。19年1月、EY Japanに参画し、その成長戦略実行の責任者として活動
このたび2020年10月1日付けで、EY Japanにおけるコンサルティング部門とトランザクション部門を統合し、EY ストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)として新たなスタートを切りました。同じくEY Japanを構成するEY新日本有限責任監査法人やEY税理士法人と共に、EYのメンバーファームとしてグローバルが持つネットワークやアセットを活用しながら、さらなる飛躍を目指します。
EYは、Big4と呼ばれる世界四大ファームの中で最初にパーパス・ステートメントを掲げました。それがBuilding a better working world(より良い社会の構築を目指して)です。これは単なる標語ではなく、「EYがなぜ存在するのか」という根源的な意義を対外的に示したものです。それはつまり、「われわれはより良い社会の構築に資さないことはしない」という宣言でもあります。
ただし、より良い社会はすぐにつくれるわけではありません。だからこそ、EYは長期的な視野に立って物事を実行します。"Create Long-Term Value as the world's most trusted, distinctive professional services organization"がEYのアンビション(なりたい姿)です。世界には、派手なインパクトや一時的な経済的メリットをもたらすことを良しとする風潮があるように感じますが、EYは常に「次世代に何を残せるのか」というLong-Term Value(長期的価値)の創出を考え、そのために必要なことは投資も含めてどんなことでも積極的に行います。つまりこれからEYに参画する方々は、「より良い社会の構築のために、約40年続く自分のビジネス人生を懸けて何を構築するか」がキャリアのテーマになるのだと思います。
そのような志や活動が評価され、EYは、グローバルにおけるプレゼンスが非常に高いです。一方で、日本における認知度や影響力はグローバルに比べるとまだまだでしょう。その理由は、日本での歴史が浅いことにあります。2017年に日本を統括する法人としてEY Japan合同会社が設立され、翌年にはそれまで別々の場所にあったメンバーファームのオフィスを全て東京ミッドタウン日比谷に集結させて、自分たちがEYの一員であることを改めて明確に打ち出しました。つまり日本での歴史はまだ3年ほどというわけです。だからこそ日本のメンバーたちは、「より良い社会の構築を目指して」というパーパスを自分ごと化しようとする熱意にあふれています。グローバルから与えられた他人ごとの概念で終わらせるのではなく、自分たちの力によって本気でその志を実現したいという情熱を持った人たちばかりが集まっています。これなら数年のうちにグローバルと同レベルのプレゼンスを獲得できるはずだと確信しています。
さらには、グローバルとの距離が非常に近いこともわれわれの強みです。パーパスに対するこだわりがEY全体に浸透しており、それにどう貢献しているのかが、最重要なKPIとなっています。そのためグローバル全体が一つのチームとして連携し、成果を出すことを求められており(Teaming)、それを実践することができます。国同士やサービス間の垣根も低く、国籍や文化による壁もなく、ダイバーシティ&インクルーシブネスが組織のDNAに根付いています。よってEYでは、戦略もグローバル共通のものしか存在しません。それが"NextWave"です。「Client」「People」「Technology」「Global」の四つを柱に、クライアントに対してチームでEYとしての総合的な価値を提供することを目指します。
コロナ禍によって世の中の価値のありさまは大きく変わりました。これからのファームは、知名度や組織の規模、オフィスのロケーションというような物理的な魅力ではなく、より本質的な価値を出せるか、所属メンバーとしてファームが掲げる理念やなりたい姿というようなソフトな側面に共鳴できるかどうかが、より重要になってくると思います。われわれはこれからもパーパスに基づき、社会に対して本質的なLong-Term Valueを提供することを追求していきます。
先ほど述べたように、日本のEYは歴史が浅く、早く成長してグローバルのプレゼンスに追い付くことが目標です。これから入社する方々には、その推進力の中核になってくれることを期待します。まだ日本では新しい組織だからこそ、EYSCでは若手コンサルタントが自分でプラクティスをつくり上げていくという貴重な経験を積むことができます。すでに出来上がった大きな組織では、その一部として動くことになってしまいがちですが、弊社なら、プロフェッショナルとして自身の能力をビルドアップして成長していくと同時に、自分が所属するプラクティスを強くしていくことも体験できます。グローバルプロジェクトに参画し、各国のメンバーが持つ知見を取り入れながら、世界に通用するプラクティス構築にチャレンジする機会も豊富にあります。個人としても組織としても成長を実感できる機会が得られるでしょう。そのためにも、若い人たちには愚直であってほしいと思います。「これはやりたくない」「これは向いていない」などと仕事を選別するのではなく、まずは何でもやってみて、その体験や周囲からの言葉を素直に吸収してください。その方が圧倒的に成長は早いですから。
どんな仕事を与えられても成果に結び付けようとする姿勢があれば、必ず一流のプロフェッショナルに成長していけるはずです。
EYパルテノン
マネージングディレクター/パートナー
Strategy Execution Lead for Asia-Pacific
小林暢子氏
EYがNextWaveの重要な柱の一つとして「Client」を掲げたのは、EYとして「顧客視点で考える」姿勢を改めて全社で徹底するためです。その背景として、クライアントが抱える課題の複雑化が挙げられます。今や彼らが抱える問題は、単一の事業課題で捉えることは難しく、さまざまな問題が絡まって、複雑かつ広範囲に及びます。「この問題はこの専門家に」と、両者を単純に結び付けるのが難しくなる中、複雑な問題を解決する役割が私たちコンサルタントに強く求められています。一方で、コンサルティングファーム間の競争の激化も目立ちます。多様なサービスが展開され、ファーム間の差別化が以前にも増して難しくなっている今、私たちはより一層クライアントの立場に立ってサービスを提供しなくてはならないと考えています。
そこでEYは、クライアントに対して課題解決を提供するだけではなく、Long-Term Value(長期的価値)を提供することを重視しています。EYは、四つのサービスライン(監査、税務、コンサルティング、ストラテジー&トランザクション)から成り立っているのですが、それぞれに会計士や税理士を含めた多数の専門家が在籍しています。消費財、製造業、金融機関などクライアント業界ごとのセクターアプローチを取っており、それぞれに深い知見を持った専門家がいます。クライアントの課題を解決するためには、サービスラインの枠を超えて、ベストなメンバーでの「チーミング」が重要です。まずはクライアントがどのような悩みを抱えているかを傾聴し、その上で専門家同士の知見、経験を集約しながらソリューションを柔軟に組み立てるべきだと考えます。そうした顧客視点のコンサルティングサービスを提供すること、クライアントにLong-Term Value(長期的価値)を提供することは、クライアントの満足度を上げるだけでなく、他ファームとの差別化にもつながります。
新卒でコンサルティングファームに入社すると、若手のうちから企業の経営者と働き、経営課題に向き合う貴重な経験を積むことができます。高い視座に立ってビジネスを捉えることができるようになることは、コンサルティングファームならではの醍醐味でしょう。EYでは入社後、グローバルなプロジェクトを複数、短期間で経験することができ、キャリアの初期から企業を見る目を養うことができます。一流のコンサルタントになるために必要な条件は、個々人の「専門性」と、人間的な魅力、すなわち「人間力」が必要です。いきなり「専門性」を磨くことは難しいので、まずはクライアントに真摯に向き合い、「人間力」を磨くことに集中することをお勧めします。頭でっかちではない、地に足の着いたコンサルティングができるようになるためには、若手のうちから「顧客視点」を身に付ける必要があります。EYはそのベストな環境が提供できると強く信じています。
EY Japanコンサルティング
ダイバーシティ&インクルーシブネス リーダー
パートナー
佐々木 惠美子氏
「人を大切にする」カルチャーを育んできたEYは、新戦略NextWaveにおいても「People」を4本柱の一つに置き、多様なキャリア体験の支援に力を入れています。今、クライアントを取り巻く環境は大きく変化していると同時に、コンサルタントにはより最新で包括的なサービスが求められるようになりました。このハイレベルなニーズに応えるためには、今まで以上に多様なスキルやバックグラウンドを持った人材が不可欠です。
そうした人材をそろえるために大切なのは、EY自身が、真に魅力的な職場であることです。私たちはお客さまにLong-Team Value(長期的価値)を提供したいと考えていますが、それはメンバー自身がEYで働くことに長期的価値を感じて、初めて実現することです。優秀なメンバーに選ばれ、かつ今いるメンバーが誇りを持って働ける職場であるために、EYではメンバー一人一人の長期的なキャリア支援に取り組んでいます。具体的には、メンバーのキャリアを支援する「ファミリー」が存在し、パートナーは「ファミリーリーダー」として、所属メンバー全員のキャリアパスを踏まえた配置を行います。キャリアに関する不安は個別にカウンセラーに相談することも可能です。
また、多様化するEYのサービスにおいてメンバーがキャリア構築に悩むことがないよう、各種ガイドラインや学習ツールも整えました。学びのコンテンツと、丁寧なサポートの両方を活用し、優秀なコンサルタントに育っていただきたいと考えています。
さらにEYではパートナーが率先してインクルーシブなカルチャーの醸成に取り組んでいます。モノカルチャーの中ではイノベーションは生まれません。個人の違いが認められないために不安や不利益を感じてしまう環境では、パフォーマンスを発揮できないのは当然でしょう。マイノリティーだけでなく、異なる個性を認め合うことが大切だと考えます。アンコンシャスバイアスへの対処も含め、誰もが気持ち良く働ける職場であるよう、ダイバーシティ&インクルーシブネスを経営戦略の一つと位置付けて推進しています。
もちろん、新入社員の多様なキャリアをサポートする体制も整っています。特に、NextWaveが打ち出された今は、新入社員の方にとっては成長のチャンスです。目先のタスクに振り回されただけで終わってしまう1年よりも、パートナーが育成に責任を持ち、長期的な目線で仕事や課題を与えてくれる1年の方が成長できるのは言うまでもありません。
キャリアの初期に得られる学びは、その後の人生でずっと生きる大切なものです。期待のあまり、時にはチャレンジングな業務を任されることもあるかもしれません。でもその先には、理想的なキャリアが続いています。コンサルタントとしての成長を重視する方には、ぜひ挑戦していただきたいですね。
EY Japan コンサルティング
テクノロジーコンサルティング リーダー
パートナー
田畑紀和氏
EYでは2020年7月、NextWave戦略の一貫としてテクノロジー部門の組織拡大を行いました。クライアントの変革を実現するために、今やテクノロジーの知見は絶対に欠かせないものです。しかし単にテクノロジーを導入するだけでは、ビジネス価値は生まれません。テクノロジーはあくまで「手段」にすぎず、それが「目的」ではないからです。手段としてのテクノロジーを活用して、いかに価値を生み出し、変革を叶えるか。そうした役割が今、コンサルティングファームに強く求められています。そこでわれわれが目指すのは、もはや「コンサルティングのリーダー」ではありません。テクノロジーを通じてクライアントの変革を実現する「変革のリーダー」です。
従来のテクノロジーコンサルティング業界では、ウォーターフォール型の長期開発が基本的なスタイルでした。答えは要件を定義するクライアントの中にあり、コンサルティングファームはそれを実現する「御用聞き」のような存在でした。しかし今は、こうした常識が崩れつつあります。大規模な長期開発をしているうちに、経営環境や技術はあっという間に変化してしまいます。しかもデータやデジタルを使ってどんなビジネスをしたいのか、クライアントの中に明確な答えはありません。変化の激しい世界をどうやって乗り越えていくかをクライアントと共に考え、率いていくのがわれわれの新たな役割なのです。
こうしたテクノロジーの進化は、われわれコンサルタントのワークスタイルにも影響を及ぼしています。今までのコンサルタントは、「クライアントが一つの作業に何時間かけているか」を調べるのも重要な仕事でした。ところが今は、リモートワークの浸透が追い風となり、あらゆるアクティビティーがデータ化されるようになりました。こうした状況下では、今までのやり方は時代遅れと言わざるを得ません。変革そのものをデータに基づいて行うのが、これからのコンサルタントのあるべき姿です。そのためには、スピード感を持ってアジャイルアプローチで変革を進めなくてはなりません。コンサルティングファームは今、仕事のやり方を根本的に変えなくてはならない転換期を迎えているのです。そこでEYでは、変革に必要な5つの要素│サイバーセキュリティー、エマージングテクノロジー、データアナリティクス、テクノロジー・ソリューション・デリバリー、トランスフォーメーション│を一つに集めた組織をつくりました。他のコンサルティングファームでは、セキュリティー、デジタル、アナリティクスは別組織になっているケースが多いのですが、5つの要素がそろわなければ、変革は実現できません。もともとEYは組織間の壁が低い会社ですが、今回の組織改編により、さらにクライアントの変革を実現しやすい体制が整ったのです。
EYでは、キャリアの早期からテクノロジーに深く携わることができる環境が用意されています。繰り返しになりますが、これからの時代にコンサルタントを目指す方には、テクノロジーの素養は欠かせません。ITの領域は学ぶ時間も相応に必要ですから、若い頃から技術に触れておくといいですね。テクノロジーを知らなければ、適切なコンサルティングができないばかりか、クライアントと会話すらできません。早くから最新のテクノロジーに深く関わっていける会社かどうか、就活生は十分に知った上でファーストキャリアを選べるといいですね。
wavespace Tokyo リーダー
パートナー
ヘレン・ベントレー氏
他ファームとの差別化を推し進める上で、「Global」はEYにとって大変重要なコンセプトです。私たちはプロジェクトを実行する際、各国別ではなく、グローバルで一つのチームを組んで対応します。クライアントのデジタル領域の課題を解決するイノベーションハブ『EY wavespace』では、FinTechならニューヨーク、データ・アナリティクスならロンドンやマドリード、カスタマーエクスペリエンスならロンドンやサンフランシスコというように、各国に最新テクノロジーの専門家集団を組成。これらのテーマに関係するプロジェクトを進める際は、日本だけでなく、グローバルの知見を借りて進めていくのがEYの特徴です。
実際に、昨年『EY wavespace』のJapanチームが携わったプロジェクトをご紹介しましょう。EYがオフィシャル・プロフェッショナル・サービス・サプライヤーを務めた『ラグビーワールドカップ2019日本大会』では、EYシンガポールとのパートナーシップの下、VRの体験コンテンツを作成しました。また、EYイタリアとは、ワインブロックチェーン(ブロックチェーン技術を活用し、ワインなどの商品バリューチェーンを管理するシステム)を日本の酒造業界に導入するプロジェクトを協力して実施しました。さらに、先日はEYスペインと連携し、同チームが開発した人材育成のデジタルアプリケーションを日本企業に導入する取り組みを行っています。
このようにEYでは、グローバルなチームと共に最先端のプロジェクトに参画する機会が豊富にあるのです。また、グローバル規模で働くコンサルタントの活躍を後押しするため、外部のビジネススクール、と連携し、最新技術やイノベーションの専門知識を学べるオンラインMBAプログラム(『EY Tech MBA』)の提供もしています。コンサルタントとして働きながら正式なMBAの取得や、スキルアップも実現できるのです。
コロナ禍は世の中に大きなストレスをもたらしましたが、EYでは今まで以上に海外のメンバーと共に働くチャンスが増えたとも言えます。実際、Japanチームは、グローバルのプロジェクトにオンラインで参画する機会が増えました。将来的に渡航制限が解除されたら、リアルとバーチャル両方の環境を駆使して、今まで以上に他国のメンバーとの連携ができるようになるでしょう。
また、日本のチーム自体も大変ダイバーシティーに富んでいます。アメリカ、台湾、中国、インド、タイ、シンガポールといったさまざまな国の出身者やLGBTQの方が一緒に働いています。
もちろん新入社員であっても若いうちからグローバルなプロジェクトに参加できる環境があります。現在、私のチームに所属している新卒のメンバー2人は、ロンドンやニューヨーク、上海のチームとすでにプロジェクトを進めています。日本にいながらにして、年齢や立場に関係なく、これほど多様性のある職場で働ける会社はそう多くはないのではないでしょうか。同じコンサルティングファームでも、グローバル化の程度はさまざまです。これから就活をする皆さんは、自分が本当に希望する働き方ができるのか、真にグローバルな会社なのかを慎重に見極めて、社会への第一歩を選択するようにしてください。EYには間違いなく、トップクラスのグローバルな環境があることをお約束します。