IT業界に就職し、ビジネスパーソンとして確かなスキルを身に付けたい。でも、一口にIT業界といっても、会社の特徴や業務内容はさまざま。どの会社でどんな成長機会を得られるのか、実はよく理解できていない人も多いのでは?
そこで今回、国内最大手のSIerであるNTTデータ、世界175か国以上でIT事業を展開するIBM、国内トップシェアを誇るインターネット広告事業や、新しい未来のテレビ『ABEMA』を運営するサイバーエージェントから、三人の20代社員を集めて座談会を実施。
三人はそれぞれの会社でどんな仕事を経験し、成長を遂げてきたのか?IT業界で働く魅力と、企業ごとに得られるものはどう違うのか、比較しながら見ていこう。
――三人は就職活動をどのように進めて、入社する会社を決めたのですか?
十文字(NTTデータ):大学では法律を学んでいて、三年生の6月に就活を始めました。人材、医療、不動産、海運、素材などさまざまな業界を見て回りましたが、どれも魅力的で絞れなかったので、「いろいろな業界に携われる仕事をしたい」という考えからIT業界を見始めました。すると、AIや5G、ビッグデータなどの技術を駆使して未来にあらゆる可能性をつくっていける業界なんだと知り、とてもワクワクしましたね。
その中でもSIerは、インフラからアプリまでさまざまな側面からクライアントに関われる点が魅力的でした。NTTデータに入社したのは、数多くの実績と幅広い顧客基盤を活かして若手が挑戦できる環境に惹かれたからです。グローバル展開に積極的な姿勢も決め手になりました。
松月(サイバーエージェント):私はもともと大学院への進学を決めていたのですが、学部三年生の頃に体験的に就活をしていました。地元の愛知県では、理系学生の多くは自動車メーカー系の企業に入社する風潮があったので、自分が本当に進むべき道はどれなのか、しっかり考えたかったんです。
最終的に会社選びの軸は二つに絞りました。一つ目は、これまで学んできたプログラミングやAIのスキルを活用できること。二つ目は、人の成長やキャリアに関わる仕事ができることです。大学のキャリアセンターや塾講師のアルバイトにやりがいを感じていたので、就職後もエンジニアリングのほかに、採用や育成などに携わりたいと考えていました。
サイバーエージェントに入社を決めたのは、まさにこの二つが実現できそうだと思ったから。弊社にはエンジニアリングだけでなく、採用活動や育成、組織づくりなどにも積極的に関わっているエンジニア社員が多いです。多様な人が活躍している様子をインターンで目の当たりにして、ここなら自分も個性を発揮して働けそうだと思いました。
川村(IBM):私は修士一年の時にIBMのサマーインターンに参加し、それがきっかけでIBMに入社しました。一番の決め手は、キャリアパスの描きやすさです。理系の女性は少数派なので、学生生活の中では疎外感を抱くこともありましたが、インターン中はそのようなことが一切ありませんでした。女性管理職やワーキングマザーの方がたくさん働いている会社なら、将来のキャリアパスを自然に描けそうだと感じたんです。
インターン中、通院のために一時的に仕事を抜けなければならなかった時も、社員の皆さんは快く送り出してくれました。一人ひとりのメンバーを尊重する社風や、ライフステージが変化しても働き続けられるようにサポートしてくれる制度は、非常に魅力的でしたね。
――就活の進め方、企業の選び方は三者三様ですね。皆さんは今、どのような仕事をしているのでしょうか?
川村(IBM):病院のクライアントに電子カルテを導入するプロジェクトを推進しています。IBMはプライムベンダーとして参画しており、私はプロジェクト全体のリーダーであるプロジェクトマネジャーの下で、アプリケーションリーダーを務めています。
コロナの影響で現在はリモート勤務ですが、基本的には客先常駐なので、お客さまが用意してくださったプロジェクトルームで作業をします。お客さまと直にコミュニケーションができるのは、入社時には想像していなかった魅力でした。ちょっとした会話から悩みを聞き出し、本質的な課題解決に貢献できた時はとてもうれしかったですね。
十文字(NTTデータ):私の現在の業務内容は、金融機関のクライアントが海外拠点にシステムを導入する際のサポートです。クライアント企業に常駐し、システムの要件定義からユーザーテスト、導入、運用サポートまでを一貫して推進しています。
クライアントはソウル、フィリピン、ベトナム、インドなどさまざまな国に拠点があり、やり取りは大半が英語なので、コミュニケーションはかなり大変です。メールをこまめに返事してくれる国もあればそうでない国もあり、語学力に加えて相手国の文化に対する理解も求められる仕事だと感じます。
松月(サイバーエージェント):私がお二人と違うのは、自社で展開されるサービス向けの技術開発を行っている点ですね。『ABEMA』や『アメブロ』、マッチングアプリ『タップル』などを展開するメディア事業部の機械学習エンジニアとして、画像認識AIを活用してサービスの発展に貢献しています。
私が担当している業務の一例を挙げると「画像の自動監視システム」の開発・運用があります。アメブロやタップルなどのサービスでは、ユーザーが画像を投稿するような機能があるのですが、その画像がサービスにとって適切であるかは非常に重要です。そこで機械学習技術を用いてサービスに投稿される画像が適切であるか?
を自動判別するシステムを開発・運用することで、サービスの健全化に貢献しています。このように一つのシステムを応用して、複数のサービスで活躍できるのは、この仕事の醍醐味の一つだと感じています。
――各社いろいろな仕事のスタイルがありますね。では、入社後に最も自分の成長を感じたのはいつでしょうか?
松月(サイバーエージェント):最初に成長を実感できたことは、入社してすぐに「類似画像検索システム」の全体設計を担当できたことですね。この業務では技術選定から課題解決まで一任してもらえたこともあり、エンジニアとしての能力は飛躍的に伸びたと感じています。
また画像認識の技術以外に、システムを運用するためのインフラやサーバーサイド技術に加え、サービスの要件整理やタスク管理など、自分にとって新しいスキルを吸収することばかりでした。一年目からこれだけ幅広い業務を体験できたことは、大きな経験だったと感じています。
二つ目の転機は「今」ですね。一年目の頃はエンジニアの仕事で手一杯でしたが、今は機械学習エンジニアやデータサイエンティストの新卒採用のサポートなど、もともとやってみたかった採用周りの仕事も一部任せてもらえるようになりました。仕事量は増えましたが、「最近松月君っていろんなことやってるよね」と言われるとうれしいです(笑)。入社時に思い描いていた方法で、自分の価値を高められていると感じています。
十文字(NTTデータ):特に印象に残っているターニングポイントは、今担当している業務をやらせてもらえた二年目の時です。お客さまの近くで働きたい、グローバル案件に携わりたいという気持ちがあったので、思いきって手を挙げました。私は他の二人と違って文系出身なので、もともとITに詳しかったわけではありません。しかし、クライアントからはITのプロフェッショナルだと見なされているので、日々新しいことを学び続けなければならず、毎日が挑戦です。
十文字(NTTデータ):IT知識に関しては、お客さまと関わっていく中でさまざまな疑問や問題点が生じるので、それらを解決する中で積み上げていくしかありません。そうやって日々の学びを続けるうちに、最近はお客さまから感謝の言葉をいただく機会も増えてきました。台湾のクライアントから現地のお菓子をいただいたのは良い思い出です(笑)
川村(IBM):私も入社二年目が最大の転機でした。初めてアプリケーションリーダーを任されたことによって、トラブルは自分たちの目線だけで解釈するのではなく、クライアントやベンダーにとってどう見えているのかに注意して対応しなければならないという貴重な学びを得られたと思います。
例えば、数時間の対応で解決できる程度の不具合であっても、それによってお客さまのお客さまである患者様をお待たせしてしまい、フロアが混雑してしまうといった深刻な問題につながってしまうケースがあります。
一年目の頃はクライアントに対策を求められても、「あと何時間でバグを直せます」という程度の回答しかできませんでした。でも、今は他のシステムを活用した対応方法をお伝えするなど、お客さまへの影響を考慮した上でベストな回答ができるようになったと思います。
――早いうちからクライアントと関わったり、現場に立ったりすることで、皆さんが急速に成長を遂げてきたのが伝わってきました。扱う案件や仕事内容は三社それぞれ異なりますが、成長機会という点では共通項も多そうですね。
松月(サイバーエージェント):そう思います。どの会社で働いたとしても、仕事で刺激を得られるのは間違いないですよね。
サイバーエージェントは、社員のうち、20代・30代が全体の80%以上を占めています。入社数年でテックリードを任されたり、プロダクトを牽引したり、多くの若手が裁量を持って働いています。そういった先輩方の姿を見て、日々良い影響を受けています。
十文字(NTTデータ):確かに刺激はありますね。それに、さまざまな挑戦ができる機会も豊富です。NTTデータについて言えば、自分のやりたいことが見つかればそれを突き詰めていけますし、人材育成の制度も活用できる。着実にキャリアアップしていける環境は、入社前の予想通りでした。
川村(IBM):若いうちからリーダーとしての振る舞いも身に付けられると思います。私の場合は、プロジェクトマネジャーが身近にいるので、プロジェクトを円滑に回す方法をこれ以上ない環境で学べていると感じます。
また、最近会社の制度を利用して受講した量子コンピューターの研修は大変勉強になりました。グローバルでの最先端の情報を常に摂取できるのは、外資系企業ならではだと思います。
――最後に、皆さんが考えるIT業界で働く魅力は何だと思いますか? 学生向けに教えてください。
十文字(NTTデータ):ITの世界の魅力は「新しい未来を築いていけること」です。そして、これから生まれる新しい技術をどう活用して社会を変えていくのかを考えるとすごくワクワクしますよね。
就活生の皆さんにも、そういうワクワクする気持ちを忘れないでほしいなと思います。どんな話を聞いた時にそういう気持ちになるのかを意識すると、自分に合う会社と出会えるのではないでしょうか。私の場合はそれが、SIerという業態であり、NTTデータという会社だったので。
川村(IBM):IT分野は技術の進化が早いので追いつくのは大変ですが、その分私たち若手が主役になれる機会が多い世界。「自分が良い社会をつくるんだ」という気持ちで、就活に臨むと楽しめると思います。特にIBMのような外資系では、グローバル単位で「社会を変えていく」仕事を実感できますよ。
私はインターンを通じてすぐに就職先を決めましたが、複数ある選択肢の中でどれを選ぶべきか迷っている人も多いと思います。今は大変だと思いますが、乗り越えた先で一緒に良い社会をつくっていきたいですね!
松月(サイバーエージェント):IT業界にはさまざまな会社があり、仕事内容も働き方も人によって大きく異なりますが、共通点があるとすれば、一つは川村さんの言う通り若手が中心になるチャンスが豊富なこと。もう一つは、社会の変化に敏感になれることだと思います。世の中に新しい風が吹いたときに、柔軟かつスピーディーな対応ができる社会人になれると思いますね。後者が特に、私がいるWebサービスの世界では、その傾向が顕著だと感じています。
就活生の皆さんは、どの会社に入るべきか分からなくて苦しい時期を過ごしているかもしれませんが、選択肢の多さは自分に合った会社を見つけられる可能性の大きさでもあります。しっかり自己分析と業界分析をして、人生で一度きりの就活をぜひ楽しんでください!