JERA2021/4/01 更新
世界を相手に交渉の日々。
頼りになるのは現場で得た
確かな知見と想像力
JERA
2015年に東京電力と中部電力が出資する発電会社として設立され、19年に完全統合。燃料調達から発電、電力・ガスの販売まで一連のバリューチェーンを確立。国内最大発電量と世界最大級の燃料取扱量、発電技術を誇る
バリューチェーン事業開発第二ユニット
東京都市大学(旧武蔵工業大学)大学院電気電子工学専攻。放電工学を学び、プラズマを工業的に活用するための研究に没頭。2011年、JERAとして統合される前の東京電力に新卒入社。19年から同社主任
学生時代、工業や電気を学び、就職先もその分野を選んでいると「ザ・理系」という印象を持たれがちなのですが、実は数学や物理は苦手科目で(笑)。ただ、その苦手意識よりも理系領域への興味が勝り、ここまで進んできたといった方が近いと思いますね。
就職先としてJERA(旧東京電力)を選んだ理由は三つあります。一つは、大学で学んだ知識を活かせる専門職だったこと。二つ目は社会インフラを支える事業に関心があったこと。三つ目はいつか海外で働いてみたいという憧れが満たせる環境だったことです。現在10年目ですが、幸いにして全ての希望がかなっています。
例えば、入社1年目に配属されたのは火力発電所の心臓部と呼ばれる中央操作室でした。給電指令に合った電力を発電するよう、計器を確認し、実際にバーを上げ下げしながら世の中へ電気を届ける仕事を経験。3年目からは発電機や遮断器といった発電に使われる電気設備の保全業務に従事。どちらも発電における安全思想と高度な技術が集積された現場で、基盤となる知見を得ました。6年目には所長から「オーストラリアへ行ってみないか」と話があり、海外案件にも挑戦。現地に駐在しながら、LNG(液化天然ガス)基地の建設に携わったことを機に、現在手掛けている基地開発業務へシフトしていきました。思い描いていた「技術×社会インフラ×グローバル」な仕事にチャレンジできる日々は毎日刺激に満ちあふれていました。
世界のエネルギー問題を
解決できる喜び
現在はベトナムのLNG輸入基地開発に携わっています。ベトナムは今、目覚ましい経済成長と並行して、今後10年で消費電力量が2倍以上に増加すると見込まれています。一方で、これまで発電に使用していた国内資源に限界がきており、早ければ21年以降に停電が発生する地域も出てくると予測されているのです。そのため、LNG輸入設備の建設は喫緊の課題。ただ、国としてLNGの取り扱いは未経験なのでノウハウがない。そこで当社の出番というわけです。JERAは1969年に世界で初めてLNGを発電用の燃料として使用した会社で、基地建設や運営にもたけていますから。
私の役割は、基地を技術的視点から全体設計していくこと。難しいのは、まだ図面しかない状況の中でさまざまな議論や判断を現地の企業と連携し、進めていかなければならないことです。例えば、配管一つにしてもそうです。安全面を考えたときに「バルブを一つ増やそう」と提案しても、納期や費用の面で現地からNOを出されることは日常茶飯事。安全と利益、どちらも重要だからこそ難しい交渉ですが、どんな場面でも頼りになるのは積み重ねてきた知見です。特に、発電所時代の経験は図面から現場をイメージする力になっています。
また、危険物を取り扱う安全最優先の世界なので、想像力と事実をもって粘り強く伝え続けるしかありません。時には1年単位の交渉になることもありますが、理解していただき、案件が前に進んだ時は大きな手応えを感じますね。海外を相手に交渉と聞くと、女性は不利なのではと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。むしろ、技術の現場だからこそ、事実や根拠が何よりも大事。性別に関係なく活躍できるフィールドです。
ベトナムの案件が完工すれば、きっと大きな社会貢献につながりますし、そのノウハウを別のLNG未開発国へ展開するための良い事例になると確信しています。
実際、エネルギー資源の枯渇は世界的な課題。世界が直面するエネルギー問題に技術を通じて解決できる人材になっていきたいです。
2020年にD&I推進室を創設
4年で女性管理職比率を約7%に
現在、女性社員比率7.1%と決して高くない同社だが、20年よりD&I部門を立ち上げ、女性社員比率の引き上げを本格化させる方針だ。その第一歩として、女性活躍数値目標(女性管理職を3%から女性社員比率[現在7.1%]へ)を社内外へ公開。現在の研修に加え、女性管理職の育成制度も導入を決定した