「国と現場をつなぎ、社会を動かす」
アビームコンサルティング公共経営コンサルタントはなぜ変革を実現できるのか
公共領域のコンサルティングで、広く信頼を集めているアビームコンサルティング(以下、アビーム)。
同社の公共ビジネスユニットは、中央省庁や地方自治体、独立行政法人や第三セクターなどの公的機関、大学や教育委員会などの文教分野や医療分野に対するコンサルティングを提供している。
長引く経済の低迷や、都市と地方の人口格差、少子高齢化の進行、災害の激甚化など、日本の公共領域は、さまざまな課題への対応を迫られている。
国や地方自治体、教育現場や地域住民など公共領域の課題は関係者が多く、複雑な事情が入り交じるのが特徴だ。そんな中、アビームは高い専門性と推進力で、各分野の課題解決を支援してきた。
なぜアビームでは難易度の高い公共領域のコンサルティングを机上の空論で終わらせることなく、戦略の策定から現場での実行・運用まで、国と現場をつなぎ着実に変革を進められるのだろうか。
この記事では、中央省庁、地方自治体、文教分野で活躍する織田 美穂氏、今中 淳氏、西 美幸氏が紹介するプロジェクト事例から、同社の公共ビジネスユニットで働くコンサルタントの役割や仕事に懸ける思いをお伝えしよう。
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公共ビジネスユニット
執行役員 プリンシパル織田 美穂氏(写真右)外資系コンサルティングファームを経て、2005年アビームコンサルティングに入社。中央省庁・司法機関・独立行政法人・教育機関といった官公庁分野における幅広いプロジェクトのプロジェクトマネージャー・統括責任者を歴任
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公共ビジネスユニット
執行役員 プリンシパル今中 淳氏(写真中央)2003年新卒入社。地方自治体、中央省庁、独立行政法人、ヘルスケアに対する業務改革や戦略策定などのプロジェクトマネージャーを担当。2014年より大阪オフィスにビジネスの拠点を移し、西日本の公共組織を中心にコンサルティングサービスを展開
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公共ビジネスユニット
ダイレクター西 美幸氏(写真左)2006年新卒入社。中央省庁の業務改革を経て、現在は教育・研究機関における経営改革、業務改革、事業構想策定、組織改編、校務改善などを中心に多様なプロジェクトを実施
中央省庁
生物多様性保全の国際目標の達成に向けた取り組みを支援
国際的な潮流を読みつつ、長期的な視点で国として進むべき方向性を固める。社会環境が目まぐるしく変化する時代、さらに難易度を増す国家運営を担う中央省庁へのコンサルティングを、織田 美穂氏に聞いた。
現場を知っているから政策を具体化できる
2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする「30by30」目標。2021年のG7サミットで合意され、2022年12月のCOP15にて、昆明・モントリオール生物多様性枠組として採択された、生物多様性保全に関する取り決めです。
生物多様性保全は、脱炭素、エネルギーと同様に、日本のみならず地球全体の持続可能性に関わるテーマであり、日本でも環境省を中心に目標達成に向けての取り組みが行われており、アビームは早い段階から推進を支援してきました。
現在は、状況把握のため、日本全国の生物多様性の保全に資する地域を地図化し、エリアごとの保全の促進を準備しています。
国としての目標を掲げても、それを実現するには現場の理解が欠かせません。土地の所有者・管理者である地方自治体や民間企業に、政策の重要性を分かってもらい、いかに「やろう」と思ってもらえるかが鍵になります。
そのために、どのエリアについて何をすれば生物多様性の保全につながるのか、保全状況や保全計画をどのような形で国に提示すればよいのか、できるかぎり負荷を掛けずに取り組んでもらえる仕組みを作ろうとしています。
日本全国の状況が見えるようになれば、国も目標達成への進捗が把握でき、早く効果的に追加の施策を打ち出すことができるようになりますし、地方自治体や民間企業も具体的に生物多様性保全への対策を打つことができるでしょう。まさに国と現場がつながることで、生物多様性の劣化を食い止め改善に向かわせる、“ネイチャーポジティブ”の実現に資することができると思います。
また、このような国際的な枠組みに関わるプロジェクトでは、国も世界の潮流を見ながら検討を始めるので、政策準備段階からお声掛けいただくことも少なくありません。
客観的な視点から、海外の動向を踏まえて日本の状況をリサーチしたり、有識者の意見をまとめて政策を実現するための方法を提案したりしています。
アビームの強みは、やはり現場を知っていることだと思います。
公共ビジネスユニットとして、中央省庁に加えて地方自治体や文教分野での実績が豊富にあり、全国津々浦々のさまざまな事例を部署内で情報共有しているからこそ、どうすれば現場に動いてもらえるかを深く理解しており、政策の具体化を推進していくことができるのです。
これはクライアントからも高く評価されている点だと自負しています。実際、公共領域でのコンペの勝率は9割以上に達しています。
クライアントからそれだけの信頼が得られているのも、アビームは目先のトレンドに流されることなく、常に「社会課題の解決」という本質にこだわり、やるべきことを地道に続けてきたからにほかなりません。
今なお、日本は、少子高齢化・地球温暖化・災害の激甚化・感染症の発生・人材育成等、多岐にわたる課題先進国でもあります。どうすればより良い社会づくりに貢献できるか。それだけを追求し、毎回確かな成果をあげ続けることが、評価につながっているのだと思います。
地方自治体
SDGs未来都市計画の実現を目指す
全国約1700の地方自治体では、取り巻く環境も抱える課題もそれぞれに異なる。地域特性を生かした将来像をどう描くのか。地方自治体へのコンサルティングについて、今中 淳氏が語る。
地域特性を踏まえて最適解を探っていく
取り組まなくてはいけない課題は山積みなのに、人口減少は加速しているというのが、多くの地方自治体の現状です。
今より人が少なくなっても、同じレベルあるいはそれ以上の公共サービスを提供していくためには、業務プロセスやデジタルの変革を進めていかなくてはなりません。
アビームでは、自治体に向けて、デジタル化や業務改革、総合計画をはじめとした各種計画の策定など、戦略策定から実行支援までさまざまなコンサルティングを行っています。
一方、国のプロジェクトとして自治体業務の標準化にも取り組むなど、国と自治体とをつなぐ役割も担っています。
一口に自治体といっても、政令指定都市のような大規模自治体から過疎化に悩む町村まで、それぞれに事情が異なるため、全国の自治体におけるコンサルティング経験をもとにした幅広い現場の知見が求められます。
このように国と自治体の双方の案件に携わることにより、国に対しては地方の目線に立った助言・支援ができ、また、自治体に対しては国の方針を踏まえた計画立案や最新情報の提供を通じて、変革を後押しすることができます。
例えば、国がSDGsへの優れた取り組みを行う都市を「SDGs未来都市」として選定していますが、アビームは内閣府とともに選定にあたっての考え方の整理や評価の支援などを行っています。
自治体に対しては、行政運営の基本指針となる総合計画の策定の支援と並行して、SDGs未来都市計画を策定しています。
私自身、学生時代から地方自治に関心があり、現在は大阪を拠点として西日本を中心に、地域に根ざしたコンサルティングに力を入れています。
この分野のコンサルティングを推進する上で特に難しいのは、同じ地域の中にも大きな組織から住民一人一人まで、さまざまな立場の方がいるということです。
全員が100%満足する解決策はありませんので、何が最適解なのかを探っていくことは非常に悩ましく難しいところです。
また、皆さんそれぞれに思いを持っており、正論だけで物事が解決しないこともあるため、人を動かすにはパッションも重要だと思います。
そのため、地域の皆さんとコンサルタントが信頼関係を築けると、長いお付き合いになることも少なくありません。
私が若手の頃から十数年にわたってお仕事をご一緒しているある自治体では、先方のご担当者も係長、課長へと昇格されて、お互いにより視座の高い話ができるようになりました。
クライアントとともに成長していけることが、大きなやりがいにもつながっています。
文教
学びの深化に向けたデジタル教科書活用の実証研究を推進
教育の質向上や現場の負担軽減などを目的に、教育のデジタル化が推進される中、着実な成果をあげるために何が必要なのか。文教分野のコンサルティングを手掛ける、ダイレクターの西 美幸氏が紹介する。
目的は新しいツールの導入ではなく、子どもの学びの質を上げること
公共ビジネスユニットに所属して17年。文教分野の案件を数多く経験してきました。今、取り組んでいるのは、デジタル教科書の効果的な活用に向けた実証事業です。
2024年度の本格導入を前に、より効果的な教材の活用法や教師の指導方法を検討しています。諸外国の事例を見ると、デジタル教材を活用して教育の質を上げている国がたくさんあり、日本でも普及と効果的な活用を後押ししていければと思っています。
ところが、正式な教科書として学校現場に配られることはすでに決まっているものの、肝心の学校現場は、なかなか対応が追いついていません。
やはり紙の教科書に慣れている先生方のほうが多いですし、現場では他にもやらなくてはいけないことがたくさんあって、デジタル教科書をはじめとしたICTツールの活用はどうしても後回しになってしまうことが多いのです。
有識者の方々から専門的な知見を踏まえた活用方法に関する提言が出ているものの、そのまま現場に落とし込むのはハードルが高く、そこをつないでいくのが私たちの役割。
国の想定する方法を現場に落とし込むだけでなく、実際の学校現場での取り組みの状況を踏まえ、国に対しては現場の声をできるかぎり率直に伝えたり、取り組みが進んでいるところよりも遅れているところを意識してどういった支援が必要なのかを議論したりしています。
学校現場に対しては、まずは最低限これだけやれば現場でスタートできるなど、学校現場の態勢や進捗度合いに応じてパターン化したものを用意して、取り組みやすい形を提案するような工夫もしています。
国や自治体、専門家や各学校現場の方々など、それぞれの立場で意見が異なり、板挟みになることも少なくありません。そこで、判断に迷ったときには、プロジェクトの目的に立ち返るようにしています。
特にデジタル教科書と言われると、いかにそのツールを使わせるかに関心が向きがちですが、大切なのは子どもたちの学びの質をどれだけ向上できるかということ。それを忘れないようにしています。
このほかにも、国の研究力向上に向けて、研究者が自分の研究に十分な時間を割けるよう、研究に関わる諸手続きなどのデジタル化を進め、研究者の負担軽減を図る取り組みや、大学統合の支援なども手掛けてきました。
公共分野の仕事は、プロジェクトを終えて完了するのではなく、その後何年も経て成果や効果が見えることも多くあります。短期的な成果だけでなく、中長期で取り組みの成果をどれだけ考えられるかが、公共分野のコンサルティングの真価だと思います。
だからこそ、できるだけ長くお客さまに伴走しながら、成果や手段を自分の中でもしっかりと検証し、次に生かしていきたいです。
志を持つ人には、活躍の場は多様に広がる
各種事例から分かるように、国家レベルの省庁横断の取り組みから、地域に根ざした現場レベルの改革まで、アビームが手掛ける案件は非常に幅広い。
扱うテーマも、事業戦略策定や業務改革、DXなど多岐にわたっている。豊富な実績に裏打ちされた総合力が、国と現場をつなぎ、着実に変革を実現するアビームの強さにつながっているのだ。
「公共ビジネスユニットでは、お客さまのどんなご要望に対しても提案できる体制が整っています。なぜそれができるのかといえば、強いメンバーがいるからです。
国の方針や地域の特性、教育現場や医療現場の事情などに通じた専門家がそろっているので、テーマに応じて組み合わせて、最高のチームをつくることができるのです」(織田氏)
もともとアビームには、クライアントの課題に対して必要なサービスを柔軟につくっていこうというカルチャーが根付いている。チーム編成も、プロジェクトの目的にあわせて最適なメンバーをアサインするのが日常だ。
それは、若手のメンバーも例外ではなく、コンサルタント一人一人の専門性や興味関心を重視したアサインを行うという。
「この仕事を続けていく上で、志を持っていることは重要です。知識ベースで考えていては、できることの積み上げだけになってしまう。
今の状況をなんとかすべきだという思いがあれば、新たな発想も生まれてくるし、もっと知識を身に付けようという原動力にもなります。
メンバーがそれぞれの思いをもとに自分の専門性を磨き、そのバリエーションが増えるほど、チームとしてもさらに強くなれます」(今中氏)
志があることで、目の前の課題に真摯に向き合うことができる。現在もさまざまな案件が動いており、実際のプロジェクトを通じて、自分なりのテーマを追求したり、専門性を磨いたりしながら、クライアントの課題解決に貢献できる環境が整っている。
「長期のプロジェクトでもフェーズごとにメンバーを組み替えたり、1人が複数のプロジェクトに同時期に参画したりと、さまざまな案件を経験できるようにしています。これによって、若いうちから多くの事例を経験し、より多くのノウハウを携え、専門性を早く身に付けることができるようにしています。
やはり実践を積み重ねることで学んでいくことは多いですから、組織としても、一人一人の育成を考えて柔軟にアサインしています」(西氏)
プロジェクトで培ったノウハウは、社内のナレッジ基盤で共有されるため、経験が少ない若手メンバーであっても、さまざまなプロジェクトの成果や知見を吸収することができる。また、個別にカウンセラーがついてキャリアの相談ができ、本人の希望を踏まえたアサインやローテーションが行われる風土もアビームの特徴。
今後に向けては、「いろいろな専門性を持つメンバーにどんどんジョインしてもらって、どんなことにも対応できる組織力をさらに強めていきたい」と織田氏は言う。アビームの強さの源泉は人にほかならない。
日本が直面する課題は、高度で複雑なものばかりだが、「だからこそこの仕事には希望がある」と今中氏は言う。
「日本の社会課題の話をするとつい悲観的になりがちですが、これまで日本が長年つくりあげてきた仕組みを変えるターニングポイントを迎えているとも言えます。
公共領域のコンサルタントを目指す方々には、自分たちの手でこれからの日本の新しい仕組みをつくっていくのだという気概を持って、チャレンジしてほしいと思います」(今中氏)