2022/11/01 更新

デロイト トーマツ
コンサルティング合同会社

DTC&森本 千賀子が考える

“本当に”女性が長く働ける会社の選び方

  • デロイト トーマツ コンサルティング
  • 企業理解
  • 経営層

先進国の中で、日本のジェンダーギャップ指数は最低レベル。育児休業の取得推進、復職後の業務負荷の軽減など、女性活躍推進に乗り出す企業は多いが、果たしてそれだけで十分なのだろうか。かねてよりダイバーシティ・エクイティー&インクルージョン(DE&I)に注力してきたデロイト トーマツ コンサルティングのパートナー・山本奈々氏と、人材業界で約30年のキャリアを持つ森本 千賀子氏の対談から、本当に女性が働きやすい企業の見極め方を探る。

  • デロイト トーマツ コンサルティング
    執行役員 パートナー
    山本奈々

    2005年DTCに新卒入社。組織・人事関連のコンサルティングに幅広く従事する。21年12月よりDTCのDE&I推進チームのリーダーを兼任。現在、2人の子どもの子育て中。

  • morich
    代表取締役 兼 All Rounder Agent
    森本 千賀子

    1993年現リクルートに新卒入社。転職エージェントとして活躍後、2017年に独立しmorichを設立。エグゼクティブ層の採用支援を中心に企業の多様な課題解決をサポートしている。

柔軟な働き方が必要なのは女性だけではない
一人一人が100%活躍できる場があることが重要

着実に進む女性活躍
次の課題はDE&Iのカルチャー化

日本企業のDE&Iや女性活躍推進は、今どのような状況でしょうか?

山本

私は現在デロイト トーマツ コンサルティング(以下、DTC)のDE&I推進担当ですが、長期間にわたって組織人事のコンサルティングを通じて企業の女性活躍推進に携わってきました。企業からの相談件数は増えており、「女性活躍」に対する意識の高まりを感じます。DTCにおいても、最初は短時間勤務制度を整備するなど、マイナスをゼロにするような対応から始まりましたが、最近はそこから一歩踏み込んで、ゼロをプラスに発展させる取り組みがメインです。育児や介護だけに限らず、多様な働き方を認める方向に社会は進みつつあります。

森本

制度や環境がある程度整った今、結婚を理由に会社を辞める人はほとんどいない。その点ではとても進化したと感じます。コロナ禍を経て、自由な働き方ができるインフラが整ってきたという背景もありますね。

山本:

ただ、本当の意味で多様な働き方を実現するのはまだまだ難しいのが現状です。特に世代が上の方に多いですが、DE&I推進の重要性は感じつつも、当事者としての実感が伴わず腹落ちしないこともあるようですね。また、なぜDE&Iを推進すべきかを説明しても納得してもらえず、「DE&Iを推進したいけど、経営層を説得し切れない」といった声を耳にすることがあります。

森本:

おっしゃる通り、制度としては整いつつありますが、カルチャーにまではなっていないですよね。男性が育休を取る、出産した女性が復職後にキャリアアップにつながるような挑戦をするなど、みんなが自分のやりたいことにトライできるマインドセットに変えていくことが課題だと感じます。

エンプロイアビリティーを
高める期間は絶対に必要

DTCでは、DE&I推進に対してどのような取り組みをしていますか?

山本:

さまざまな制約を持つ人をサポートする制度はすでにあるので、今はエクイティー(公平)の概念の浸透、カルチャーチェンジの取り組みを進めようとしているところです。加えて、育児や介護に限定されていたワーキングプログラムの制限を失くすなど、一人一人が100%活躍できる場を整えることに注力しています。

森本:

副業や趣味など、仕事以外の時間を充実させる人も増えていますから、制度を使える対象を見直すことも必要ですよね。

山本:

価値観が多様化しているので、「働き方の柔軟性が必要なのは女性だけではない」ことはポイントだと思います。

とはいえ、コンサルタントは忙しいイメージなのですが、働きやすさの点ではどうでしょうか?

山本:

忙しくないと言ったらうそになりますが、私たちは時間にしばられて働いているわけではありません。コミットすべきは成果なので、極端な話、成果が出せれば1日4時間勤務でもいい。ある時期はしっかり働いて、別の時期は仕事をセーブするなど、短期的にも長期的にも働くペースを自分で組み立てられる。それが、DTCの働き方の柔軟性にもつながっています。

森本:

むしろコンサルタントや営業は女性にお勧めの職種だと思います。仕事のペースを自分でコントロールしやすいですからね。ただし、「働く」ことにしっかりウエートを置く時期は絶対に必要です。エンプロイアビリティー(企業から必要とされる力)があって初めて自身が選択肢を持つことができ、意志を持って選択できる。アクセルを踏み込む時期が不可欠であることは忘れないでほしいですね。

山本:

仮に経験が浅くとも、コンサルタントはチームで働くことができる仕事です。一人で成果を出そうと頑張る必要はなく、周囲の仲間と支え合うことができる。その環境を生かして自分を成長させ、価値を出すことができるのがコンサルタントという仕事の魅力だと思います。働き方の自由度も高いですしね。

森本:

仕事は自己完結しなければいけないと思い込んでいる人が多いですが、組織のバックアップがありますよね。特に今は「共創」が重視される時代。組織外も含めて、イノベーティブなものを共につくり上げていこうという考え方が必要です。

長く働ける企業を見極めるポイントは
多様な働き方や価値観を受け入れる器があるか

女性が長く働ける
「柔軟性がある会社」の見抜き方

「長く働きたい」と考える女性が、企業選びをするときに重視するとよいポイントはどこでしょうか?

山本:

「柔軟性がある会社」であることだと思います。世の中の環境も価値観もどんどん変わりますから、それに応じて会社も変化できることが大切です。私は組織・人事のコンサルタントとしてさまざまな人事制度をつくってきましたが、重要なのは制度を運用すること、そして変化に応じてアップデートしていくことです。どんなに良い制度をつくっても、きちんと運用されなければ意味はない。また、社員のありたい姿をかなえるためにどうしたらいいか、状況に応じて考え、変化させていく柔軟性が必要です。制度の有無は企業選びの一つの目安になりますが、仕組みがないからダメなわけでも、あればいいわけでもないのです。

企業の柔軟性を見極める方法はありますか?

森本:

一つは経営層の女性比率。前述の通り、当事者でなければ分からないことはあるので、子育て経験のある女性が経営ボードにいると心強いですね。また、DE&Iの部署があるとより良いです。「企業としてDE&Iを推進する」という意思表示でもありますから。

山本:

その際、DE&Iの部署には男性がいた方がよいでしょう。DE&Iは女性の問題にされがちで、担当者が全員女性ということも多い。ですが、本来はみんなに関わる話なので部署にも多様性が必要です。DTCも私と男性のパートナーの二人でDE&I推進のリーダーを担っています。

森本:

あとは、アフターコロナの働き方への考えを聞いてみるのもいいと思います。コロナ禍をきっかけに働き方をシフトしようとしているのか、一時的な対応としてリモートワークを取り入れているのか。両者のスタンスは全く別物ですから。

山本:

女性の働き方にこだわるのではなく、「多様な価値観や働き方を受け入れる土壌があるか」という観点を持つといいですよね。そういう企業の方が単に女性活躍を推進している企業よりも働きやすいと思います。

森本:

こうしてお話をして改めて思いましたが、DTC自身がベストプラクティスになっているからこそ、説得力のあるコンサルティングができるのでしょうね。私の友人にもDTCで働いている人がいますが、自分らしさを受け入れてもらえる柔軟性のある環境は心地良いに違いないと思います。育児にフォーカスする時期があったとしても、状況やマインドが変わったら再び仕事に打ち込むことができる。育休復帰後に女性のキャリアが停滞してしまうのは多くの企業が抱える課題ですが、DTCには戦線離脱をせずにいられる環境があるのだろうなと感じました。

山本:

私自身、自分のやりたいことや働き方の制約を受け止めてくれる環境があったから、10年以上勤められているのだと思います。常に状態が変化する以上、全員の希望を100%かなえることのできる仕組みを会社が整備するのは現実的に不可能です。だからこそ自分の変化を会社が受け入れてくれると思えることが重要です。私がDTCのDE&Iに取り組んでいるのも、多くの人の意見を聞き、反映させ、会社をより良く変えていきたいから。DTCは「変えていこう」という意思がある会社です。「どうしたらみんながハッピーに働けるか」を常に考えている会社だから希望を持てるのだと思います。

DE&I担当者として山本さんが今後取り組みたいことは何ですか?

山本:

いくつかありますが、一つ挙げるとしたら「女性活躍=キラキラした女性だけのもの」のイメージをなくすことです。普通の人が普通に働いて、普通に管理職になればいい。「すごい」と見られがちですが、私だって普通。家では子どもを追い駆けてバタバタしていますし(笑)。皆さんも「自分には無理だ」と思わず、自分らしく働いてほしいなと思います。

具体例で見るDTCの女性活躍推進

フレキシブルワーキングプログラム

育児や介護と仕事の両立を希望するメンバーが利用できる制度。休職や時短勤務、短日勤務、業務内容や目標の調整など、一人一人の状況に合わせて選択ができる。多様な働き方の実現をサポートするため、女性に限らず利用可能な制度だ。

産前講座・産後ケア教室

家族が増えた後に起きる心身や生活の変化を学べる「産前講座」、出産後の心身を回復させるとともに、復職後のキャリアアップへの意欲向上を後押しする「産後ケア教室」を開催している。

妊娠・育児時のサポート制度

育児のエキスパートであるコンシェルジュが常駐し、育児にまつわるあらゆる相談に対応。社内には妊娠中・産後のメンバーが休憩できるスペースも完備している。また、残業時などに利用したシッター料金(半額)や病児保育の会費は会社が負担する。

介護・家事代行サービス

各種サービスが割引価格で利用できる。DTCで働くメンバーはもちろん、家族(第二親等まで)にも割引が適応される。

DTCが体現するDE&I最前線

デロイト トーマツ コンサルティング(以下、DTC)は、人材の多様性を認め、公平性を重視した組織づくりを行うダイバーシティ・エクイティー&インクルージョン(DE&I)の先進企業。DE&Iの推進によって、同社コンサルタントの働き方の多様化も進んでいる。では、一体どんなキャリアを築くことができるのか。DTCで働く3名の女性コンサルタントの事例を紹介しよう。

執行役員

藤井麻野

書籍出版、スポーツ選手、リカレント……
自分の「挑戦したい」に貪欲になれる

新卒でDTCに入社して15年、これまでさまざまな仕事を経験してきました。コンサルタントとして顧客の経営戦略に携わり、2017年に約1年の育休を取得。復職後は、顧客の課題解決を通じて得た知見をまとめた書籍を出版したり、戦略コンサルティング部隊の新チームである『モニターデロイト』を立ち上げたり、新しい挑戦を繰り返してきました。そんな経験が評価され、今は経営企画で全社のコーポレートコミュニケーションの責任者を担っています。

DTCでは、一人一人に適した仕事内容とワークスタイルを掛け合わせ、自律的にキャリアを描ける環境がある。母親だからといってキャリアが制限されることはありませんし、男性の育休取得はもはや当たり前です。スポーツのアマチュア選手として活動している人、大学で学び直し中の人など、多様な働き方が実現されています。

もし、希望の仕事がDTCが提供するコンサルティングのサービスメニューにないのであれば、新しくつくっていけばいい。コンサルティングファームとしてサービス領域の拡大を続けるDTCだからこそ、メンバーからの提案は推奨しています。自分で、自分らしいキャリアをつくっていく実感が得られますよ。

マネジャー

李 銀飛

入社5年でマネジャーに昇進
属性ではなく力量で評価される

私の国籍は韓国で、DTCの海外採用枠で2017年に新卒入社しました。アジアの中でも強い影響力を持つ日本から、東アジア全体に貢献する仕事がしたいと思っていたので、それがかなえられる環境に魅力を感じています。

入社後は、エネルギー分野に携わっています。3年目にアサインされたプロジェクトでは、再生可能エネルギー企業とビジネスモデルを組み立て、実証実験まで計画しました。ビジネスモデルが確立されていない、難しい案件でしたが、責任を持って顧客へ提言する機会に恵まれたことで、自身が成長できたのを感じています。また、顧客の経営層と相談しながら、ビジネス化していく一連の流れを経験できました。顧客に真摯に向き合った分、さらに裁量が増える。20代のうちからそんな体験ができて、恵まれた環境だと思います。

今年で入社5年、先日マネジャーに昇進しました。DTCは、その人自身の力量を評価してもらえるカルチャーです。実際、私は自分の属性を意識することはなく「私らしさ」を生かして仕事ができている。自分で考え抜き、伝えれば、周囲は耳を傾けてくれる。早い段階でその実感を得たことで、仕事がより面白くなりました。

シニアマネジャー

梶木 香

コンサルタント=女性が働きやすい職種
ライフを犠牲にしないワークスタイル

コンサルタントと聞くと「忙しそう」というイメージが先行しがちですが、私は女性が働きやすい職種だと感じています。課題解決のために「何をどうやるか」を考える仕事なので、顧客への価値提供さえできれば、働き方は自ら調整する余地がある。忙しい時期もありますが、プロジェクトには波があり、「この1週間を越えれば落ち着く」など先が見える分メリハリがある。DTCではプロジェクトへのアサイン時に希望を考慮してもらうことができますし、決してライフを犠牲にするような働き方ではありません。

私は育休復帰後、DTC特有の「ワーキングプログラム」という制度を利用しています。これは「勤務時間」と「業務目標」の二軸で働き方を調整できる制度。私の場合、復帰直後は9~17時のいわゆる時短勤務、業務目標は出産前の7割程度に設定していました。最近は育児との両立にも慣れたので、勤務時間や目標値を以前と同じくらいに戻しています。子どもの成長に応じて段階的にワークスタイルを変えていきました。加えて、DTCにはフラットにコミュニケーションが取れる風土があります。希望の働き方を上司と相談しながら実現できるのでありがたいですね。

取材・文/天野夏海 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)、鈴木 迅

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