Tech領域で仕掛ける「Newチャレンジ」を一挙公開!
日本の未来を変える、最新ビジネストレンド
近年、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉が注目を集めている。人工知能やIoTなど、先端技術の活用によってビジネストレンドは一変し、世の中には新たな価値が数多く誕生。テクノロジー領域の進化を担う企業の成長は目覚しい。そんな、“日本の未来を変える”現場で働く技術分野のプロフェッショナルたちは、何を見据え、どんな挑戦に挑んでいるのか。各社のミッションを聞いた。
デジタルやAIなど、技術領域に直結するバズワードが浸透している昨今ですが、私としては皆さんに、もっと広く世の中全体で進行している変化に着目してほしいと思っています。それは「フラット化」というもの。表現はさまざまあって、「リキッド化」「フリクションレス」等の単語が用いられたりもしますが、これらが指し示す本質は同じ。ヒエラルキー、つまり縦型の階層をベースに形づくられていた世の中が、過去10年くらいの間に急速にフラットな構造へと移り変わり、リキッド(液状)化して溶け合い、フリクション(摩擦)もなくつながっていく。そんな大きな変化が社会・経済・ビジネスに訪れているということです。
例えばビジネスの領域がヒエラルキー型であった時代、物事は入念に練られた計画をもとにしながら進められました。縦型構造の組織の中で、人はそれぞれに役割を与えられ、その役目さえ果たせば仕事として成立していたわけです。しかし、フラット化する世の中では、物事が横へ横へと無限に広がっていきます。先のことを見極めることも難しくなるため、遠大な計画を立てても意味がありません。どのようなビジネスであろうと、短期間で区切りをつけながら、その都度調整を加えていくような働き方が主流になっています。言い換えれば、世界全体が「アジャイル(素早く機敏に)」に動き始めているということ。ITを学ぶ者にとって「アジャイル」は、先進的なシステム開発手法の名前として定着している言葉かもしれませんが、フラット化する世の中では、ビジネスにおけるすべてにアジャイルな姿勢が問われるのです。
アクセンチュアではエンジニアとコンサルタントがタッグを組んでプロジェクトを進める働き方が主流です。また、私が受け持つテクノロジーアーキテクチャ グループ内で結成した専門家集団COE(Center of Excellence ‒ 各領域の知見や専門家を集約し迅速かつ効率的に高品質なサービスを提供)が、最適な技術やノウハウを用いて、プロジェクトの遂行を支えています。つまり社内にあるリソースを、部署を越えて結集し、リキッド状につながり合いながら、アジャイルに事を進める体制がつくられているのです。
COEではクラウド、DevOps、RPA等々、テクノロジー志向の学生の皆さんにとって興味深いはずのものを多数扱っています。しかし、私が強調したいのは、これらの領域で突出した専門性を持つ者たちも、他のエンジニアやコンサルタントとフラットな立場で有機的につながり合っているということ。だからこそ、最大の価値が発揮できると考えています。近年のアクセンチュアが他のコンサルティングファームとは一線を画す成果を上げている要因は、以上のような働き方を全員で実行しているからだと言っても過言ではないでしょう。
直近の事例としては、ふくおかフィナンシャルグループへの「ブロックチェーン・ハブ」の提供や、第一生命の「健康増進サービス」始動に向けての企画・設計・開発、運用・保守までのサポートなど、デジタルマーケティング領域の知見を活かしたプロジェクト支援にチーム一丸となって取り組んできました。ともに、金融機関をクライアントとしているわけですが、そこには理由があります。フラット化の影響を最も受けやすいのが、“データに基づくビジネス”だからです。金融事業はまさにデータが基盤ですから、そこにデジタル・エコシステムを構築して、単に金融商品(モノ)を売るのではなく、お金に紐付く新しい価値(コト)をエンドユーザーに提供するチャレンジを実行しています。もちろん金融ばかりでなく、製造業や流通業など多様な業種の企業と多彩な取り組みを実施しています。さらにいえば、既存の業界の垣根を越えるようなプロジェクトも多数動いているところです。今や業界という壁を超えたフラット化も進んでいますから、複数の企業と連携した案件も少なくありません。
アクセンチュアは、社内・社外を問わずフラット化する時代に最適なつながりを構築する集団として企業に認知され、実績につなげています。ですから、テクノロジー領域に携わるメンバーの育成においては、最新のサイエンスの部分を徹底的に学び取ってもらうと同時に、SlackやMicrosoft Teamsなど有機的なつながりに有効なコミュニケーションツールを積極的に活用したり、あえて離れた拠点とリモートでつながりながら案件を進めていくようなトレーニングも行うようにしています。最先端の技術を駆使しながら、フラット化の時代をリードできるだけの「つながる力」を備えた個人とチームだけが、未来を形成していく。そう信じています。
取材・文/森川直樹 撮影/吉永和久