2020/11/24 更新 デロイト トーマツ コンサルティング

Tech×Digital によって加速する変化 DTCが描く「ニューノーマル」への道筋

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コロナショックにより、これからのビジネスの在り方はどう変わっていくのか。デロイト トーマツ コンサルティング代表執行役社長の佐瀬真人氏と、同社の現場でTech×Digitalでビジネスを推し進める2名のパートナーに、DTCが描く「ニューノーマル」への道筋を聞く。

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社代表執行役社長 佐瀬真人氏デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
代表執行役社長 佐瀬 真人 氏

2000年4月にDTCに新卒入社。自動車業界を中心にコンサルタントとしてキャリアを積み、近年はデロイト アジアパシフィックやデロイト トーマツ グループのセクターリーダーを歴任。19年6月より現職

コロナ禍により増す
「END to END」のニーズ

2018年、デロイト トーマツ グループは50周年を迎えました。その一員としてコンサルティングサービスを担うデロイト トーマツコンサルティング(DTC)は、コンサルティング業界の中でも極めてユニークなポジションを築くことができました。戦略特化のファーム、テクノロジーに強いファームなど、各社さまざまな特徴がある中で、DTCはあらゆる業種・業界のクライアントに、戦略策定から実行までを一貫して支援する総合コンサルティングファームとして地歩を固めています。総合ファームとしてあらゆる課題に対応できる理由としては、創業以来、徹底して「クライアントファースト」の姿勢を貫いてきたからだと思います。

新型コロナウイルスのインパクトは非常に大きなものでした。クライアントは目の前の問題に対応せざるを得ず、通常のコンサルティングテーマに取り組む状況ではありません。緊急事態宣言前後は当社も苦労しましたが、リモートによるクライアントとのコミュニケーションを強化し、6月以降ビジネスは好調に転じています。最近ではアフターコロナに向けたコンサルティングテーマが増加。特にコロナの影響が大きかった業界では、生き残りを目的にM&Aの動きも出てきています。事業ポートフォリオの再編に注目する企業も多いですね。中でも増えているのが、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)に関するもの。近年、企業はDXを大きな経営課題と認識していましたが、コロナ禍で不可逆な変化として受け入れざるを得なくなりました。例えば非接触型の営業をどう進めるか、リモートワークに適した社内プロセスをどう整えるか。コロナ禍を事業を変えるチャンスと捉える企業と、まだ様子を見ている企業では、今後大きな差がつくはずです。

企業、コンサルティングファームともに、これからのキーワードは3つ。まずは「アジャイルでのアプローチ」。これだけ不確実な状況であると、短期でトライアンドエラーを繰り返し、成果を導き出すアプローチが必要です。検討している間に世の中は変わりますから「スピーディーな意思決定」も同じく重要。そして成果が見えない変革に企業は投資をしないので「タンジブルな成果」も欠かせません。タンジブルな成果を前提に、アジャイルなアプローチを取りながら、スピーディーに意思決定、もしくは実行する。それが新しい企業の経営スタイルであり、コンサルティングファームの在り方になっていくでしょう。

他にコロナ禍による変化として、トップダウンでの変革が主流になったことも挙げられます。つまりコンサルタントは、最上流の戦略構想を描くところから、オペレーションに落とし込み、さらにテクノロジーを利用して実行していくところまで、「END to END」でクライアントを支援することが求められている。これはこれからのコンサルタントにとっての大きなやりがいでしょう。DTCの強みは、戦略からオペレーション、さらには働き方改革や人事制度の見直し、財務・経理、マーケティングの業務改革、デジタル化など、全ての経営課題に応えられる提案力がそろっていること。全社変革といった大きなニーズに応えられる「総合力」は、まさにこの先コンサルティングファームの競争力を左右する要素の一つになると考えています。

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社代表執行役社長 佐瀬真人氏

先行きが見えないからこそ
シェルパのような存在に

コンサルティングファームの資産は言うまでもなく、人材です。社員がDTCで働くことに最大限の満足を得られるかが、今後の会社としての成長力を左右する、一番大きな要因でしょう。だからこそ、当社では「メンバーファースト経営」を掲げています。

それを推進するために、昨年から「タレントハピネス」という取り組みを始めました。これはメンバーがDTCで働くことや自分のキャリアを築くことに対してポジティブな状況をつくることを目的とした活動。年1回のサーベイではDTCで働くことに対して「非常に意義を感じている」という回答が多く得られています。コロナ禍で働き方は変わりましたが、テクノロジーを活用することで引き続きメンバーの心身の健康をサポートし、満足度を上げる仕組みをつくりたいですね。

また、具体的な人材育成において重視しているのは「パープル・ピープル」。これは青(ビジネス)と赤(テクノロジー)を兼ね備えた人材を意味します。従来コンサルティングにおいてはストラテジー&オペレーションが重視されていましたが、今後は戦略を立て、変革をする際にテクノロジーは切り離せません。だからこそ旧来のコンサルタントに求められていた思考力に加え、テクノロジーの知見があることが重要です。今後、われわれが目指すべきは「シェルパのような存在」だと思っています。シェルパとはヒマラヤ登山の案内人のこと。山の頂を目指す過程において、ある時はクライアントをけん引し、またある時は寄り添って共に歩く、そんな役割を果たしたい。先行きの見えない時代だからこそ、DTCの知見を結集し、未来を照らしながら、クライアントと一緒に頂上を目指す存在でありたいです。

デロイト トーマツ グループには「Shared Values」という共通の価値観がありますが、その一つ目が「Lead the Way」。「世の中や社会を変えていく先駆者たれ」というメッセージです。DTCがコンサルティングを行う対象は企業だけでなく、業界や日本の社会にまで及びます。NPO団体の支援の他、SDGsに基づくソーシャルインパクトの大きい活動にも力を入れ、より良い社会、より強い産業をつくることに貢献したいと思っています。

今、コンサルティングファームはかつてない変革を求められています。だからこそ、経営コンサル常に大きい。「日本を良くしたい」「業界を変えたい」「企業を強くしたい」。われわれはそういった思いで日々コンサルティングを行っています。同じ志を持つ方にとって、DTCでの仕事はきっと有意義なものになるはずです。

ライフサイエンス×テクノロジー分野の執行役員に聞く
「医療分野」のニューノーマル

ヘルスケア領域で仕事をして約20年。今は医療業界全体が大きく変わっていくフェーズ

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社ライフサイエンス&ヘルスケア
執行役員 根岸彰一氏デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
ライフサイエンス&ヘルスケア
執行役員 根岸彰一氏

新型コロナウイルスにより
デジタルシフトが加速

現在のライフサイエンス×テクノロジー分野には、二つの大きなトピックスがあります。

一つ目は、今までバラバラだったデータがつながるようになってきていること。これまで製薬や医療機器といった業界では、業務ごとに個別のアプリケーションを使用しており、データが一元化されていませんでした。しかしテクノロジーの進化により、膨大なデータを扱えるようになったことで変わりつつあります。

二つ目は「病気を治す」ことに対して、薬以外のアプローチが増えていること。例えばアプリです。日本ではすでに禁煙の補助をするアプリが医療機器として承認されています。

こうした流れを受け、最近では他業界からの新規参入も増えています。例えばテクノロジー業界や保険業界。データやアプリに関してテクノロジー企業が強みを発揮できるのは言わずもがなです。保険会社については病気や健康に関するデータを持っていることが大きいですね。データを有効活用すれば、病気を防いだり、治療後のケアに役立てたりできるかもしれない。そこに商機を感じる企業が増えているのです。

また、新型コロナウイルスにより、ライフサイエンス分野ではテクノロジーへのシフトが一気に進みました。例えばMRがドクターに会えなくなったことで、オンラインでのやり取りが必要になってきています。サイエンスに基づいたエビデンスをいかに見やすく整え、オンラインでドクターに見てもらうか。双方ともテクノロジーが得意とするところであり、MRの仕事の在り方は劇的に変わってきています。他業界からすると当たり前のことのように映るかもしれませんが、医療業界はこれまでなかなかデジタル化が進まなかったので、テクノロジーによって医療業界全体を変えていこうと考えているわれわれにとっては追い風といえる状況です。

また、臨床試験にも変化があります。被験者が医師と対面したり通院したりしなくても進められるやり方を検討し始めているのです。例えば血圧などの簡単なデータは家で計れますし、唾液などの検体も郵送できる。その上で遠隔診療を行えば、臨床試験の一部は自宅で実施できます。アメリカでは以前からすでにそのようなビジネスモデルがあり、「薬を配送する」といったサービスも現実味を帯びてきています。

今はまだデジタルやデータの本格的な活用は始まったばかり。薬事承認を得て医療機器として使えるアプリもまだ多くありません。そこでわれわれが注目しているのは、健康や病気に関するデータを集約し、個人の状態に合わせた薬の開発や病気の予防、治療後のケアに役立てること。いわゆるパーソナルヘルスケアの進展です。現状では、電子カルテを始めとした医療情報やIoT機器で収集されたパーソナルヘルスレコードは世の中に散在しています。製薬会社や医療機器メーカーも、商業化されたデータを購入する以外は自社が取得したデータしか保持していないのが現状です。

データを一元化するには、例えば医療機関から直接取り入れる、あるいは電子カルテのベンダー、サービスプロバイダーや病院と組んで情報を集める、といった方法が考えられます。しかし、これは一企業だけで推進できる規模の課題ではありません。場合によっては政府と協力し、国の事業として進める必要もあるでしょう。

これまでDTCは製薬企業や医療機器メーカーに対してコンサルティングをしてきましたが、今はその枠を超えて、「医療業界全体に対して何ができるのか」を追求しているところ。まだ始まったばかりですが、最近ではコンソーシアムのサポートも行っています。このような医療分野の現状において、DTCの強みの一つはグローバルの知見を持っていることでしょう。デロイト トーマツ グループにはグローバルで30万人以上の社員が在籍し、1万人以上ものライフサイエンスのコンサルタントがいます。新しいことへのチャレンジが盛んなアメリカや、テクノロジーが特異的に進んでいるイスラエルなど、世界各国の情報が即時に入ってくるし、コラボレーションも容易にできる。医療先進国の事例は、日本のクライアントにとって非常に有益ですから、こういったDTCの基盤は今後も生かしていきたいですね。

大きな目標を持った人たちと共に仕事ができるのが醍醐味

ライフサイエンス分野でコンサルタントとして活躍できる人は、自分の専門分野に限らず多様なことに興味を持ち、楽しんで仕事ができる人だと思います。今はテクノロジー、デバイス、アプリ……と、ライフサイエンスの領域がどんどん広がっています。製薬企業や医療機器メーカーもまた、事業の幅を広げようとしていますから、クライアントに先駆けて興味や視野をいかに広げられるか。好奇心旺盛に、自ら調べ、理解しようとする姿勢が重要です。

また、クライアントと同じ目線を持つことも大切です。もちろんビジネスではありますが、「どうにかしてこの患者さんを助けたい」「何とかしてこの病気をなくしたい」と、クライアントは常に患者さんのことを考えている。そんな優しく、大きな目標を持った人が多い業界だと感じています。だからこそ、コンサルタントにはクライアントをリードしながらも、しっかり寄り添う姿勢が求められます。相手が言っていることを、表層だけではなく、真意まで理解しなくてはなりません。

そして、そんな志を持ったクライアントや同僚と仕事ができることが、この分野で仕事をする醍醐味です。私は約20年間ライフサイエンスの領域に携わっていますが、ここ数年の変化はすさまじく、新型コロナウイルスの影響により、この動きはさらに加速するでしょう。今後は医療業界全体が大きく変わっていくフェーズですから、やりがいはより一層大きいと思っています。

AR/VR領域のマネジャーに聞く
「会社の在り方」のニューノーマル

リモートワークの急速な普及でAR/VRの価値はより増していく

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社マネジャー 奥村大樹氏デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
マネジャー 奥村大樹氏

AR/VRは社員の力を高めるためのテクノロジー

AR(拡張現実)/VR(仮想現実)は、デジタルで生み出されたものを「体験」するためのテクノロジーです。私たちは現在、働き方改革の文脈で、「従業員エンゲージメントの向上」にその技術的特性を生かすことができないかを検討しています。

従業員エンゲージメントを高めるために、企業は社員が持つ力を常に発揮できる状態にすることが重要だと考えています。例えば効率的に仕事ができれば、作業は楽になり、早く帰宅することもできますよね。充実した職場環境があれば能力も発揮しやすくなります。生産性向上施策や従業員教育といった、従業員エンゲージメントを高める取り組みとしてのAR/VR利用は、2015年頃から少しずつ増えてきています。

では、実際にどのような事例があるのか。例えば製造業では、若手従業員のサポートにARグラスが利用されています。若手従業員がARグラスをかけて機械の前に立つと、グラスに付いたカメラを通じて遠隔地にいる熟練工は若手従業員の視野を共有できる。二人はあたかも同じ環境にいて、熟練工が横から指示を出しているかのように若手従業員は作業ができるというわけです。

高所での作業や工作機械での加工などリスクを抱える業務に従事する人に対しても、VRは使われています。作業に慣れるにつれて、恐怖心は薄れ、安全性への意識も薄れてしまうもの。そこでVRを使って事故をリアルに体験することで、安全性に対する啓発を図るのです。高所からの落下や、工場のプレス機などの巻き込み事故といった、命に関わる危険をリアルに近いかたちで体験する。リスクを認識することを通じて安全に対する意識を高める点で、非常に効果的です。

20年は新型コロナウイルスの影響で、働き方が大きく変わりました。改めて、この特殊な状況下で企業が継続していくために、何をする必要があるのか。アンケートを採ってみると、多くの企業で「従業員を第一に考える」という結果が出ました。

また、景気の減衰によって、一時的にIT投資を凍結するケースも見られる一方で、「働き方に関連するIT投資を継続する」と回答した企業は約3割に上ることも分かりました。「従業員が安心して働くことができる社内環境を提供していかなくてはいけない」と、改めて考える経営者が増えています。

これに対し、AR/VRは価値を大いに発揮します。コロナショックからの回復段階では、企業のリモートワーク体制は確立しているでしょう。しかし、リモートワークになったがために、孤独を感じてしまったり、オフィスに出勤しないことによって帰属意識が薄れてしまったりといった新たな課題が発生しています。

それに対応して、例えばVR空間上で他のメンバーと会って話をするといった、2Dのオンライン会議よりもリアルで自然なかたちでコミュニケーションが取れるサービスがつくられています。リアルアバターという自分自身を三次元キャプチャーしたリアルな分身が仮想空間に集い、身ぶり手ぶりも含め、同僚と会って話しているのと同じコミュニケーションができるのです。

さらに先の成長段階においては、AR/VRを単独のテクノロジーとして語る時期は終わり、テクノロジーそのものとしてはコモディティー化していくと思います。リモートワークが急速に普及したことによる反動としての「リアルなコミュニケーション」へのニーズや、AIやIoTなどの他のニューテクノロジーとの組み合わせによる新たな付加価値創造など、AR/VRの価値が再認識されるでしょう。AIアバターによる仮想空間上での従業員サポートや、IoTで収集したビッグデータを用いてリモートでも実機と同じ状況をARで具現化するなど、より多様なことができるようになると思います。

ただし、問題点があるのも事実。一つは通信スピード。高解像度でのリアルタイムなやり取りを実現するためには、通信スピードが追い付かない。これは5Gの登場により劇的に改善されるかもしれません。もう一つは、バッテリーの問題。特にARグラスに搭載できるバッテリーは小さく、長時間の連続利用ができません。

また、コスト面も課題です。AR/VRデバイスはPCよりも高いものですから。他に、新型コロナウイルスによってウエアラブル端末の共用利用への抵抗も生じています。

さらに多くの経営者にとっては、AR/VRのビジネスでの利活用はまだまだなじみが薄く、最初の一回目につなげることの難しさを感じています。ただ、一度体験すれば効果を実感していただけますし、特に先にお話した人命に関わるリスクの回避は、ROI(費用対効果)では語れないものです。

テクニカルの軸があれば自分のバリューは高まる

コンサルタントはクライアントの課題解決を目的として従事しています。最善のソリューションを考えるにあたっては、AR/VRと他のテクノロジーを組み合わせることもしますし、反対にテクノロジー自体を採用しないこともあります。

コンサルタントにとって、AR/VRといったテクニカルな分野に精通している意義は、強力な課題解決のツールを使いこなし、クライアントにより高いバリューを提供できるということ。自分が興味を持っている最新のテクノロジーを用いて、ソリューションを提案し、クライアントと一丸となってゴールすることがこの仕事の大きな醍醐味。クライアントに価値が提供できるならば、ソリューションに制約は設けませんし、当社ではそれができる環境にあると思います。そんなクリエーティブマインドを持った方とDTCで一緒に新しいチャレンジをしていきたいですね。

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