機械と人間の協働とは
アクセンチュアが描く、今後のAIビジネスの道筋AIによって世界経済には今、大きな革命が起きている。ビジネス界が大きくAIに軸足を移す中で、先端テクノロジーに強みを持つアクセンチュアはどのような道筋を描いているのだろうか。
──お二人はこれまで、どのような仕事を主に手掛けてきましたか?
堺 メインの業務として、カスタム開発を担う業界横断のグループで、AIの専門家集団をリードしています。担当業界は非常に幅広く、多様なお客さまの難度の高い課題に向き合う日々です。
また、さまざまな部署から約150名が参加するAIの社内勉強会や、グローバルを含む社内全体で実施するAIハッカソンの日本開催時のリードも担当しています。
高橋 私は現在入社2年目で、テクノロジーコンサルタントとして堺の下でプロジェクトを遂行しています。お客さまの課題と要件を定義し、AIを使った提案を行い、実務レベルまで落とし込んだサービスを提供すべく業務を行っています。また、PoCでのプロトタイプ開発など、エンジニアとしての仕事も担当しています。
──高橋さんはいつからAIに興味があったのでしょうか?
高橋 大学時代から、ディープラーニングをビジネスに生かすことに興味がありました。アクセンチュアは技術を持っているだけでなく、実際のビジネスにまで落とし込んだ事例が数多くある点が志望理由の一つになりましたね。この分野は社会的なニーズが多く、さらに私自身も関心があるので楽しく仕事ができています。
堺 高橋からは研修の時点で、AIに関する理解度の高さや素養を感じていました。何より、彼の熱意と向上心がチームで活躍できている理由です。コンサルティング業界で働く上で向学心は不可欠。特に技術分野では、学び続けなければ取り残されてしまう。お客さまの課題解決を通じて知識や経験を得るだけでなく、能動的に学び続ける姿勢が重要です。
高橋の場合は独自にAIと自己能力診断ツールを用いた分析システムを構築し、チームメンバーを分析するなど、仕事以外でも趣味としてテクノロジーに楽しんで取り組めているのが強みですね。
──お二人が手掛けたAIビジネスの具体例を教えてください。
堺 さまざまなお客さまの課題をAIで解決してきました。例えば、サービス解約用の電話番号にかかってきた内容を分析し、解約者数を大幅に引き下げることに成功した事例があります。お客さまにとって利用者からの解約の連絡は、サービスを継続してもらうための提案ができる最後のチャンス。効果的なアプローチができれば、解約を防ぐ防波堤にもなります。言い回しやプランの説明の仕方一つで解約件数は大きく変わるので、A/Bテストを実施するなど、顧客セグメント毎の効果的な提案を解析しました。
高橋 人手による機器の型番チェックの手間が業務課題となっていた企業に、AIを使った業務改善を行った例もあります。機器に記載されている型番をAI OCR(画像から文字を抽出する技術)で読み取るのですが、機器が屋外に設置されている場合、汚れや経年劣化でラベル上の全ての文字が読み取れないことも多々あります。OCR技術は昔よりもずっと発達していますが、それでも実際の画像から一言一句を正確に読み取るのは難しいため、類似文字列を検索する技術を併用することで、型番特定精度が向上するよう工夫しました。
このように、AIエンジンはさまざまな技術と組み合わせて開発する必要があり、コーディングスキルだけでなく、問題を解決するためのアイデアが求められます。
──AI関連の案件を手掛ける醍醐味は何だと思いますか?
堺 ビジネスにおいて大きな広がりと可能性を日々感じることができるのは、AIに携わっているからこそだと思います。人間の作業をAIで置き換えるといった利便性が注目されがちですが、本質的なビジネス課題の解決や新サービス・新ソリューションの立ち上げにつながることも多いのです。
例えば、先ほどの事例以外にも、ドローンと画像解析処理を組み合わせて工場プラントのメンテナンスに活用する、大量のトランザクションの中での不正検知を行うなどの応用が可能です。まだまだ多くのサービスや業界に成長の余地があることを感じています。
高橋 お客さまが喜んでいる実感があるところです。あるお客さまが開発したチャットボットに名前を付けて、愛着を持って接してくださったのは印象的でした。
また、新たな可能性を発見できるのも、AIを含む先端テクノロジーの魅力。当社では社内の問い合わせに回答する社員向けAIコンシェルジュ『Randy-san』を導入し、24時間のチャット対応を実現したことでバックオフィスの業務負担が削減されました。他にも聴覚障がいを持つ社員とデザインシンキングを行い、リアルタイムで発話内容を字幕化するだけでなく、発言を促すための音声合成も可能なコミュニケーションツールを開発しています。
──若手テクノロジーコンサルタントの高橋さんは、今後どのような成長をしていきたいですか?
高橋 アクセンチュアにはさまざまなテクノロジーの専門家や、AI領域だとデータサイエンティスト・AIエンジニアとして最先端を走っている人が数多くいます。でも、我々の扱う“ビジネス現場でのAI活用”の領域はまだまだ黎明期です。これからいろいろなロールモデルが出てくる中で、自分なりの成功体験を生み出して、後輩の見本になりたいですね。お客さまに対しても社内に対しても能動的に提案を行っていくことで、少数精鋭のAI専門チームで、社内外から求められるコンサルタントへと成長したいです。
堺 アクセンチュアには自分が興味のある分野を極める環境だけでなく、得た知見を発表する機会も多くあります。個々人の学びはハッカソンや勉強会などの大小の情報共有の場を経て、それぞれのコンサルタントやエンジニアの強みとなっていきます。高橋をはじめ、業務外でもいろいろな取り組みを積極的に行う若手が増えており、勉強会が乱立し過ぎてしまったために整理が必要な程です。
先進技術に率先してトライできる『アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京』という場も、若手の成長速度を上げています。最先端テクノロジーやトレンドの知見を広げ、ベンチャー企業とのコラボレーションも生まれていますね。
AIはお客さまからのニーズが高い分野ですから、これからも仲間を増やして、新たなビジネスを広げていきたいと思っています。大規模なビジネススキームで成功体験を積み、コンサルタントやエンジニアとして成長するチャンスがあるのは大きな魅力。若手のうちから面白い案件と多く出会える可能性は高いと思いますね。