大学を卒業した私は、国内大手総合商社に入社し、その後MITに留学。コンサルタントへとキャリアチェンジし、今に至ります。この経歴だけを見ると、私が順調に成長してきたかのような印象を抱くかもしれませんね。でも、実際は違います。
商社に入社した理由は大学の研究室からの紹介。強い意志があって就職先を選んだわけではなく、入社後も先輩に言われるがまま仕事に忙殺される日々。しかし、20代後半を迎え、「さすがにまずい」と思い、ビジネススクールへの留学を決意したのです。私がビジネスパーソンとして成長をリアルに実感できるようになったのはここからでした。
日本に戻ると、大規模なビジネスに参加させてもらうチャンスをもらったのです。具体的には、発電所建設などに投資を行い、自らが事業主体となって推進する仕事です。
商社の仕事も商取引の仲介から、自らリスクを取り投資する方向へ転換していた頃。事業をゼロから築き上げるというものでしたから、巨額の投資や融資が必要でしたし、無数の契約を結ぶプロセスも伴いました。そのため、ウォール街などで活躍する超一流の弁護士事務所や投資銀行のプロフェッショナルが主な仕事相手となったのです。
当時、世界レベルのビジネスプロフェッショナルの仕事を目の当たりにした私は、大変衝撃を受けました。そして、自分ももっとプロとして誇れる仕事がしたいと思うようになりました。
そこで、コンサルタントへのキャリアチェンジを考えたのです。では、私が目指したプロフェッショナルの仕事とは何か? それは「余人を持って代えがたい価値を、お客さまに提供すること」です。
クライアントが求める価値を提供するために、膨大な知識や高度なスキルが必要なら、それを自己責任で学び、獲得し、価値の創造につなげる。私自身、そういうコンサルタントを目指してきましたし、2014年からはアクセンチュアの戦略コンサルティング本部の一員として体現することを常に意識しています。
また、コンサルタントはよく「成長できる仕事だ」と言われますが、皆さんは成長することの意味とは何だと思いますか? そして、成長することの目的を何だと考えるでしょうか。人それぞれ答えは違うでしょう。偉くなるため、お金をたくさんもらうため・・・・・・。
私が考えるビジネスパーソンとしての成長は少し違います。成長とは、自分のためのものではありません。自分の仕事を必要としてくれるクライアントのためにできることを増やすことです。少なくとも、私が出会ってきた一流のビジネスパーソンたちは、こういった意識を持って働いていたように感じます。
少しでもそういった成長が面白そうだと感じるなら、理屈や経験の有無などは後回しにして、そういう仕事ができる世界に飛び込んでほしいと思っています。クライアントの成果を創出することは簡単ではありませんが、アクセンチュアではトレーニングや実際の仕事を通してなど、さまざまな形で惜しみなく支援します。
「今は変化の時代だ」と言われるようになってから、かなりの年月が過ぎました。それどころか、デジタル化の進展により旧来の常識や構造があっという間に姿を変えています。
例えば、ヘルスケア領域で言うと、今消費者に求められているのは「製薬」や「医療機器」といった従来の枠組みを超えて「健康に長生きすること」の価値の提供であり、この文脈で産業の枠組みさえ劇的に変わっています。
そんな中で、私たちコンサルタントも、従来の常識を超えた発想を提供しなければ、クライアントに価値をもたらすことができなくなっています。
そこでアクセンチュアの戦略コンサルティング本部では、「We Shape」という理念を掲げています。翻訳すると、「我々はクライアントの未来を形づくるプロ」であるということ。彼らの目から次々とウロコを落としていくぐらいの提案ができれば、私たちはプロフェッショナル・ジョブをしているとは言えないのです。
デジタル化が進み、極めて短い時間軸の中でビジネスの様相が大きく変化する中、難しいかじ取りを迫られているクライアントの経営陣をインスパイアし、全く新しい価値を共に形づくる存在になる。「We Shape」を体現できる人は、これからの世の中を強く生き抜くことができる人材だと言えるでしょう。
アクセンチュアでは、社内でもそのようなリーダーシップを求めています。「部下をインスパイアできなければリーダーの資格はない」という鉄則のもとに、新しい形のチームワークを形成しようとしています。そして、デジタル時代の現在、今までコンサルタントに求められてきた左脳的思考だけでは十分ではなく、右脳的思考も必要です。
アクセンチュアにはまさに右脳的思考を持ちデジタル領域に突出した強みを持つ人材がいます。さらにテクノロジー、オペレーションなど、あらゆる領域で第一級の実績と先進性を発揮するプロフェッショナルがそろう集団ですから、その圧倒的多様性とリソースを駆使して、クライアントをインスパイアし、社会において新しい価値を形づくることができると信じています。
また、働き方にも大きな変化が起こっている今、会社というくくりの中で成長する、いわゆる「就社」という就職観は消えつつあります。代わりに、最適なタイミングで最適な仕事を最適な場所で取り組むような、個人が主体となる働き方が一般化してきています。
そんな中でのんびり構えていると、あっという間に時代に取り残されてしまう。だからこそ、就職する皆さんには、いち早く行動し、学び、結果を出せるプロフェッショナル・ジョブに、若いうちから挑んでほしいと思います。
(取材・文/森川直樹、撮影/竹井俊晴)