「働く」を誤解していた
先輩たちが「失敗」から学んだこと
AIの登場により、私たちは瞬時に「正解」を得られるようになった。一方で、仕事には、効率やタイパだけではたどり着けない学びもある。
一足先に社会人になった先輩たちは、どんな失敗や経験を経て“仕事の本質”を知っていったのか。等身大のエピソードを通じて、「検索して得た正解」をなぞるだけでは見えてこない、働くことのリアルをひも解いていく。
研究室は「事実を正確に示す」が正解だった
必要なのは利益や価値を生むビジネス視点
仕事でどんな失敗した?
日本製紙は紙づくりにとどまらず、木質資源の可能性を広げる新規事業に挑戦しています。私は、学生時代に学んだ微生物研究の知識を評価していただき、木からバイオエタノールという燃料を作る新規事業立ち上げメンバーに任命されました。配属以来、バイオエタノール製造に関する技術開発を担っています。
学生時代は、研究の成果を全てアウトプットしてアピールすることが正解でした。しかし、この「正解」が一変したのは、入社1年目の冬に初めて特許出願資料を作成したとき。私は学生時代と同じ感覚で、技術の優位性や実験データを網羅した、いわば論文のような書類を作って提出しました。しかし上司から返ってきたのは、「優れた点を全て開示したら重要な戦略を他社にさらすことになる。どこを特許として公開し、どこを自社の秘密として守るかという視点が抜けている」という言葉でした。事実を正確に示すことが求められる研究と、自社の権利を守りながら競争優位を築くビジネス。学生時代との視点の違いにハッとしました。求められている正解を導き出せばよかった学生時代の思考のままでは、利益を守る視点やビジネスの奥深さには気付けなかったのです。自分では良い成果を出せたと思っていただけに、考えの浅さを痛感すると同時に、企業の研究開発職の本当の役割を学んだ大切な原体験です。
仕事への取り組み方はどう変わった?
この失敗を機に、仕事への向き合い方が一変しました。ちょうど同じ時期にメンターから教わった「二つ上の立場で考える」という教えと重なったこともあり、与えられた作業をこなすだけだった意識から、一段も、二段も高い視点で仕事を捉えられるようになったのです。以前なら他社技術の情報を「面白いから詳しく知りたい」と興味本位で捉えていましたが、今は「本当に事業の利益や価値につながるのか」という視点のもと議論しています。さらに、部分的な最適化だけでなく、製造コストやCO₂排出量といった多角的な視点で全体最適を考えられるようにもなりました。ビジネスの深みに触れ、挑む楽しさを実感しています。
今後どんな仕事に挑戦したい?
現在進めている技術実証を確実に成功させ、バイオエタノール事業の商用化を実現させたいです。自分が関わったバイオ燃料によって、飛行機が空を飛ぶ。そんな未来をかなえることが、今の私の大きな夢になりました。近い将来、宮城県の岩沼工場で、より大きなスケールでの試験や分析に携わり、商用化に向けて結果を出すフェーズに入ります。自分が関わった仕事で誰かの役に立ちたいという思いは以前からありましたが、会社の戦略という視点を持てた今、挑むべきゴールはこれまで以上に明確になりました。この熱量を糧に、試行錯誤を惜しまず課題に向き合い、大きなゴールに向かって最後まで泥くさく挑戦し続けたいです。

日本製紙には、若手に大きな裁量と挑戦の機会を与える環境があります。私自身も、入社1年目から新規事業の立ち上げ部門に配属され、海外大使館向けのプレゼンテーションを任せてもらうなど、若手のうちから視座を高められる機会に恵まれました。経営幹部と若手社員が直接意見を交わせる勉強会もあるほか、現場では先輩方が強力にバックアップしてくれるため、失敗を恐れずに課題に挑むことができます。この恵まれた環境で成長を続け、将来は事業を力強くけん引する存在を目指したいと思っています。


