A.T. カーニー2021/9/17 更新

“コンサル多様化”が進む今
学生は「どんな人材になりたいか」を深く思考せよ

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A.T. カーニーに聞く 最新・コンサル就職トレンド
「力が付く」コンサルタントの条件とは?

20代からビジネスの基礎力を伸ばせると、「コンサル就職」の人気が高まっている。
では、入社後の成長を左右する働き方とはどんなものか。
30代にしてA.T. カーニーのトップに就任した関灘茂氏に話を聞いた。

A.T. カーニー
マネージング ディレクター ジャパン (日本代表)
シニアパートナー
関灘 茂

兵庫県神戸市出身。神戸大学経営学部卒。欧州経営大学院でMAP修了。A.T. カーニー入社後は、消費財・小売、メディア・サービス、金融・不動産分野を中心に、新規事業創造、既存事業変革など、100以上のプロジェクトを推進。主要ビジネス誌への寄稿や主要セミナー、大学での講演多数。2020年1月、同社最年少で日本代表に就任

各ファームの戦略が多様化
人材採用にも変化が

近年のコンサルティング業界の大きな変化と言えば、各社のビジョンや人材採用・育成方針の多様化が進んでいることでしょう。その背景には、あらゆる業界でコンサルティングの需要がますます高まっていることが挙げられます。現在、多くの日本企業では、従来のように自社のリソースで対応することが難しいシーンが増えている。そこで、これまでは外部の力を借りてこなかった企業でも、コンサルティングファームを活用するケースが出てきているというわけです。

これは何も直近のコロナ禍の影響という単純な話ではありません。もちろん新型コロナウイルスの世界的な蔓延が経済に与えたインパクトは決して小さいものではなかったでしょう。中でも外食や観光関連など特定の産業は、多大なダメージを受けました。さらには産業を問わず、働き方の変化に伴う人や組織の課題など、コロナ禍ならではの新たなイシューが持ち上がっていることは確かです。

しかし、「失われた20年」とも「30年」とも言われるように、日本においてはコロナ禍以前から、変革の必要性が叫ばれてきました。特に近年では、ビジネスのグローバル化やテクノロジーの進化、クリエーティブの重要性の高まりなど、非常に大きな変化の波が押し寄せています。その中で、既存事業の存続が危ぶまれる状況に陥ったり、逆にさらなる成長のポテンシャルを見い出したり、全く新しい事業創造の可能性が広がるなど、プラス・マイナスの両面で変革と創造の必要に迫られているのです。しかもこの変化のサイクルは、極めて短くなっています。ゆるやかな変化であれば、自社で人材を採用し、じっくりと育成していくこともできますが、それでは今の変化のスピードにとても追いつかない。激しくて速い変化の波を受け、多くの企業では、ビジョンの策定から戦略立案、オペレーションの設定、実行まで、あらゆる段階において外部の戦力を活用しようという意欲が高まっているのです。

こうしたニーズに対応して、コンサルティングファーム各社もより特徴を打ち出して、多様なサービスを提供するようになってきました。例えば、上流工程だけでなく、規模を拡大し、実行部分まで含めてサポートしようという動きも出てきています。

そして業務の内容が変われば、必要な人材も当然変わります。今はそれぞれのファームが戦略の多様化に合わせてあらゆる能力、専門性を持った幅広い人材を採用しようとしている。その中で、これまではコンサルティングファームを視野に入れていなかった学生が志望することも増えている、というのがコンサル就職人気の背景です。

就活においてはもちろん各社で採用方針は異なりますが、いわゆる地頭の良さや論理的思考力、コミュニケーション能力、やりぬく力などは、コンサルタントに必要な基本的な能力。優先順位や目指すレベルの違いこそあれ、おそらくどのファームでもそれほど大きな違いはないでしょう。ただ、学生の皆さんには、入社前にそれらのスキルにとらわれ過ぎないでほしい。それよりも、自分がどんな会社やフィールドで活躍したいのか、ビジネスパーソンとしてどうなっていきたいかを考えてほしいと思います。コンサルティングの在り方が多様化している今だからこそ、自身に合った環境を見つけることがより重要となっています。

中長期の視点で
創造と変革のリーダーを育成

こうした中でA.T. カーニーは、中・上流工程のサポートに特化し、少数精鋭の体制を貫いています。「日本を変える、世界が変わる」を掲げ、本気でその実現を目指しています。このビジョンについては、「そもそも日本は変わらないといけないのか」という原点にまでさかのぼって、社内でも徹底して議論を進めてきました。しかし現状を見つめ直すほどに、改めてこの国の変化の必要を強く実感したのです。

これはあくまでも一例ですが、世界時価総額企業ランキングを見ると、上位50社のうち、平成元年には日本企業が32社を占めていたのに対して、平成31年にはたった1社のみ。失われた30年の間に、グローバルにおける日本企業の存在感は確かに低下しているのです。もちろん企業の評価は、経済的な価値だけで決められるものではありません。しかし、事業活動を通じて何らかの価値を創造し、それが世の中に求められ、より良い社会に貢献するから企業は存続できるのです。そこで企業を評価する一つのものさしとして時価総額が重視されているのであれば、私たちは次の30年をかけて、ここにランクインする企業を増やしていくことを目指すべきだと思います。

それを担うのは、やはり人材です。本気で成し遂げようとする経営者を見つけて応援するのはもちろん、その実行を担うメンバーも必要です。そこでA.T. カーニーでは、これからの30年の間に、「創造と変革のリーダー」を、どんどん世の中に送り出していきたいと考えています。すでに当社から日本を代表するような企業に転職し、経営トップの腹心として企業変革に取り組んでいる人材の例も出てきています。

そうなると人材育成も、より中長期の視点で考えていかなくてはなりません。これまでコンサルティング業界では、数年のうちに力を付けて卒業していく人も多かったと思いますが、3年程度の経験では、次世代を担う「創造と変革のリーダー」になるのは難しいのが現実でしょう。むしろもっと長いタームで、キャリアを考えていくことが重要だとわれわれは考えています。10年、20年という単位でA.T. カーニーに在籍してもらい、さまざまな経験を積みながら着実に力を付けていく。やがて日本のリーディングカンパニーの舵取りや、日本を代表するようなメガベンチャーの立ち上げに取り組む。A.T. カーニーではそんな人材を多数輩出していきたいと考えています。

自分自身を深く知ることが
成長を加速させる

A.T. カーニーでは、採用段階で能力面よりもむしろ価値観が一致するかどうかを重視しています。具体的には、「Our Values(われわれの価値観)」として掲げる五つの要素があります。
第一に「Curiosity」、あらゆることに知的好奇心を発揮することです。例えば当社には、コーヒー好きが高じて、仕事でもないのに豆の原産地まで出向くような社員がいる。興味のあるものには好奇心が抑えきれないのです。

「Boldness」は大胆さです。われわれが重きを置いているビジョンや構想、戦略を描く仕事においては、経営者がAだと考えるところに、Bの選択肢はないのか戦略のオプションを考えたり、計算できる予測に対して、自分たちでつくれる未来の可能性を大胆に描いたりすることが時に必要になります。それには、何か人とは違うことをやってやろうというくらいの気概を持っている方がいい。自分なりのオリジナルを貫く姿勢が大切です。

「Generosity」は寛大さです。一人一人は強くて尖った個であっても、私たちはチームで仕事をしています。寛大さを持ってお互いの個性を認め合い、協力してより良いものをつくっていかなくてはなりません。

それに加えて「Solidarity」、連帯性も必要です。自分一人で成すことには限界があります。クライアントに最善の提案をしようと思えば、社内に限定することなく、優れた人たちを巻き込んで連帯する方がより良いものができるはずです。

五つの中でも最も大切だと思うのが「Passion」、情熱を持つことです。われわれのような少数精鋭の組織ではなおさらのこと、言われたことをきちんとやるだけの人はあまり必要ありません。自分の内側から溢れ出てくる情熱に突き動かされて、自律的に行動できる人が必要なのです。実際に社内を見渡すと、宇宙ビジネスを切り開きたい、街づくりを通じて日本を再興したい、日本の金融を変えたいなど、自らのパッションに忠実な人が集まっています。自分が情熱を注げるテーマに取り組むからこそ、成長も加速するのです。

そしてパッションを燃やすためには、自分自身を深く理解することが欠かせません。自分は何者で、何をやりたいのか。人生の何に意味を感じ、どう生きていきたいのか。自分自身の探求を深めていくことで、自分の個性を発見し、オリジナルのキャリア形成につながっていくのです。

自分を起点として
日本と世界を変えていく

「自分を知る」機会を増やすために、当社ではさまざまな仕組みを設けています。例えばメンバーからはプロジェクトの希望や、逆に非希望を出してもらうようにする。そしてプロジェクトごとのフィードバックを、きめ細かく行うことも当社ならではです。その時にはパフォーマンスに関わることだけでなく、一人一人の興味や適性についても対話を重ねています。

自分が関わったプロジェクト以外にも、広く世の中を知ったり、各領域の最前線に立つ専門家からビジョンやパッションを聞いたりするために、パートナーやプリンシパルによるディスカッションの場も設けています。

他にも、先輩社員がバディーとなって、日常的な相談に乗ってくれたり、社内に限定せずアルムナイなどを含めたメンター制度を設けたりするなど、さまざまな人たちと関わりながら、自身の中長期なキャリア形成を考えてもらっています。

このように、「自分を知る」ためのさまざまな仕組みを当社が用意している根幹には「Well-being」という考え方があります。自分自身が心身ともに充足した状態にあってこそ、クライアントのためにチャレンジができ、さらにより良い社会を実現しようという意欲が湧いてくるもの。「日本を変える、世界が変わる」の第一歩は、自分自身の思いから始まるのです。

成長を加速させる方程式

1.

「すごい」と思える同志

「すごい」と思える人が多い環境で、良い刺激を受けよう。高い志を持ち、目標に向かって走り続けている人が身近に多くいると、自分自身の目線も引き上げられ、成長が加速する

2.

守破離のプロセス

「すごい」と思う人を真似て基本を身に付ける「守」、良いものを取り入れて発展させる「破」、自分のオリジナルを生み出していく「離」という学びの基本プロセスを大切にしよう

3.

生き方を深く知る

自分はどう生きていきたいのか、自らを深く知ると良い。志が高いほど、実現のハードルは上がる。自分は何としてもこれを成し遂げたいという確信とパッションは、前に進むための原動力となる

「自分はこう生きたい」熱い思いが
世界を変える第一歩になる

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