2023/11/01 更新
日本郵船

分析をはじめとした“頭脳”の役割をAIが担う今
人間の“心”にひもづく発想力や協働力が武器に

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執行役員
鈴木康修
1990年入社。NYK GROUP EUROPE LTD. (ロンドン)、NYK GROUP SOUTH ASIA PTE. LTD.(シンガポール)、物流・コンテナ航路統轄グループ長などを経て、2021年より執行役員。現在は総務、歴史博物館・氷川丸、秘書・渉外、人事各グループを担当

ビジネスの未来を語る上で欠かせないテーマとなったAIの進化。海運業を起点として「海・陸・空」にまたがる国際的な物流事業を展開する日本郵船でも、AIの活用が進んでいます。その一例が自律運航船の開発。実用化を視野に入れ、AI技術を駆使したカメラなどを本船に搭載し、船がさらに安全に航行できる未来を実現しようとしています。海運会社として国内で圧倒的な事業規模を誇る日本郵船は、AI分析に欠かせない膨大な量のデータをもとに、こうした業界内での新たな試みをリードしているのです。

また、ビジネスシーンにおけるAI活用が広がる中で、度々議論になるのが「人間はAIに仕事を奪われるのか」という話題。AIの台頭と同様に、蒸気機関などの動力技術、化学工業や鉄鋼などの重工業技術、単純作業の自動化などコンピューターによるデジタル技術など、社会を変える技術革新は、これまで幾度もありました。そして、その度人間は、「新たな産業」と「人にしかできない仕事」を生み出してきたのです。そのため、一部の仕事がAIに代替されることはあっても、全てが奪われることはありません。今後当社では、単純作業や標準的な分析・提案業務はAIが担っていくことでしょう。一方で、人間はこれまで以上に戦略的な思考や、高度なコミュニケーション力を必要とする業務を担うと予想されます。

技術の進化とともに、機械は人の“肉体”による労働を肩代わりし、今ではAIが“頭脳”の役割も果たすほどになりました。しかし、“心”だけは人間だけが持つものであり、残された最後の価値となるはずです。“心”に代表される仕事として挙げられるのは、発想、構想、協働、共感など。新たなビジネスを生む発想力や多くの人と協働するコミュニケーション力、そして困難な状況から立ち直るレジリエンシー(再起力)、こうした力が今後はより一層求められていくと考えます。AIにはない“心”で価値を生み出し、1+1を3にも4にもできるのは、人間だからこそと言えるでしょう。

自身の軸となる強みを持ち
自律的な選択と行動でキャリアを切り開く力が重要

変化の多い時代に適応し、持続的に成長していくため、2023年に当社は「両利きの経営」を掲げる中期経営計画を発表しました。具体的には、ITを活用したオペレーション革新で既存中核事業を深化させると同時に、脱炭素に向けた次世代燃料船の開発や、社内インキュベーションプログラムなどによる新規事業アイデア創出を通じて、新規成長事業の開拓に取り組んでいきます。この先数年間は、既存事業をしっかりと回し、そこから生み出される利益によって総合物流企業の枠を超えた新事業に挑戦するフェーズと言えるでしょう。

そこで重要となるのは、高い専門性を武器に勝負できる人材やグループ全体をけん引するビジネスリーダー。こうした人材に近づくために必要なのが、自身の軸となる強みを持ち、主体的にキャリアを切り開く力です。当社では、自律的なキャリア形成を支援するため、全社横断でキャリア開発の体制を刷新しました。

これまでも、1年次、2年次という節目で、同じ年次の社員を集めて合同研修を実施していましたが、今後はさらに、個人が必要なタイミングで主体的に受講できる研修を増やしていきます。また、社員の伸ばしたい軸に合わせ「強みを伸ばす研修にはどのようなものがあるか」「どの部署だとどのような強みを伸ばせるか」を明示するガイダンスを徹底。併せて「My Career Story」と呼ばれる、理想の姿への道筋を整理するロードマップを上司と一緒に作成し、受講したい研修や経験したい部署を年に2回申請できるようにしました。その他、社内公募するポジションの増枠やリベラルアーツに関する研修の拡張、リスキリング機会の提供などを推進。社員一人一人が、なりたい姿に近づくための道筋を正しく理解していけるよう、会社全体でサポートしていきます。

これから社会に出る学生の皆さんには、“心”を育む経験をしてほしいと思います。例えば海外留学や課外活動を通して多くの人と出会い、さまざまな価値観に触れてみてください。そこで新しく芽生えた考えや視点は、社会人になってから社内メンバーとの協働やお客さまとの対話で必ず活きるはず。世界各地に在籍する3万5000人超の仲間や文化・価値観の異なる海外企業と共にビジネスを動かしていく当社では、なおさらでしょう。人間にしか分からない「感情が揺り動かされる経験」をたくさんしてきた人材は、変化の時代を生きるビジネスパーソンとして大いに活躍できるに違いありません。

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