2023/11/01 更新
デロイト トーマツ サイバー(DTCY)

社会への付加価値が求められる時代
思考回数を重ねて培う課題解決力が強みに

  • デロイト トーマツ サイバー(DTCY)
  • ビジネス
  • 経営層
執行役員 CTO 兼 サイバーセキュリティ先端研究所
所長
神薗雅紀
大手ITメーカーを経て、セキュリティー専門会社にてサイバーセキュリティに関する製品開発や国家プロジェクトの研究員およびプロジェクトマネジャーを担当。2015年より現研究所に所属し、研究開発やサイバー攻撃の分析に従事。19年に活動が評価され、総務大臣奨励賞を受賞

昨今、AIの登場により人が行っていた作業を自動化する流れが加速しています。AIが私たちにもたらす効率化や自動化の功績はもちろん素晴らしいですが、それ以上に注目すべきは、AIを使いこなすことで自分の専門性が弱い領域や獲得したい領域を補い、自分の専門領域と掛け合わせることができ、誰もが新たな価値を生み出しやすくなる点です。例えば、画像を自動で作成する生成AIに代表されるように、自分に絵心がなくてもAIを使いこなせば、誰もが高い水準で画像を生成できるようになります。ポイントは「理解し、使いこなす」ことです。スマートフォン一つを例に取ってみても、使いこなせる人とそうでない人では利便性に大きな差が生まれます。知らないことが減り、できることが増えるAI時代は、クリエーティブに付加価値を与えられる人や企業が求められる時代とも言えるでしょう。

そのようなAI時代において重要なのは、思考のプロセスを重ね、課題解決に導く力です。特に日本は今後人口減少が予想されるため、マンパワーを補うだけではなくAIを使いこなして新たな付加価値を生み出す創意工夫が必須です。失敗を恐れずチャレンジを重ね、試行錯誤して答えを生み出す経験が工夫を凝らす際に欠かせません。私が携わる研究開発やサイバーテロ対策の分野においても複数のAIを活用したシステム開発に取り組んでいますが、壁にぶつかったときに突破口となるのは、過去に実施した思考プロセスの再現です。社会課題が高度化する今日、トライアンドエラーを重ねながら価値を生む課題解決力は必要不可欠なのです。

自ら課題を見つけて解決を図るプロセス
地道に取り組むことでいつか必ず社会の役に立つ

サイバーセキュリティを専門とする当社では、あらゆる公共系のプロジェクトで社会課題の解決に取り組んでいます。一例としては、国の注力事業である地域DX。群馬県前橋市のスマートシティ化実現に向け、自治体などと連携しながら、市内の多様なサービスをスムーズに利用できるような体制を整えています。その他、衛星の開発など、最新テクノロジーを駆使した案件に従事していますが、近年緊急度が高いのはサイバー攻撃への対策です。AIにより高度化された国際テロレベルのサイバー攻撃に対抗すべく、「守り」のためのシステム開発にもAIを利用し、攻撃対象になり得る脆弱性の発見につなげています。先述した衛星については、サイバー攻撃などにより国営放送がテロ集団に乗っ取られた事件が他国で起きている背景から、AIで攻撃を検知する研究に今後活用する予定です。他には、複数のAIを組み合わせたデータガバナンスの研究に注力しています。データガバナンスとは、企業が安全かつ迅速にデータ活用を行えるような仕組みを構築すること。複数のAIを連携させる場合、システムにおける安全性の担保やデータガバナンスへの対応が極めて重要です。そのため、AIのアルゴリズムを使った数学的なアプローチにより、リスク検出と統計的な評価を行う研究をしています。ここでご紹介したプロジェクトの大半は、社会課題の解決を目的に、デロイト トーマツ サイバーが主体となって企画・推進している案件の一例です。デロイト トーマツ グループにはプロフェッショナルファームとして多種多様な業界にパイプを持つ強みがあります。お客さまと検証や開発に取り組むことも多く、新しい技術や発想、方法論をマーケットにリーチしやすい点が特色。当社の場合はサイバーセキュリティ領域における高い専門性を活かし、先端技術を社会実装につなげていけるのです。そのような環境が整う当社では、若手社員にも、挑戦したい研究テーマを挙げてもらうことを大切にしています。やりたい研究に挑戦し、形にして社会に還元していける、当社ならではのやりがいあふれる環境。社歴や年齢は関係なく意見を出し合い、先輩が後輩から学ぶことも当たり前です。AIに関して世の中にはさまざまな研究手法があふれていますが、研究で終わってしまっているものが多く見られます。重視すべきは研究の目的に立ち返り、「自分はこれをやりたい」という強い思いを持つことです。目的を達成するためには思考の回数が何よりも大事。だからこそ学生の皆さんには、研究室やゼミなどで学ぶ研究アプローチに真摯に取り組んでほしいと思っています。課題に面した際に何が必要か、どのように解決するのか。一つ一つのプロセスをノウハウとして蓄積していってください。学生の皆さんの努力が、今後の未来をつくる種になる。意欲と挑戦心あふれる方と一緒に研究開発ができる日を楽しみにしています。