2023/9/27 更新
三菱UFJ信託銀行

AIで膨大なデータの分析・予測が省力で可能に
価値のある情報を精査する思考力が必要

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取締役常務執行役員
CDTO CIO
木村智広
京都大学法学部卒業。1990年4月、三菱信託銀行入社。システム企画部統括マネージャーなどを経て、2017年執行役員 人事部長 兼 三菱UFJフィナンシャル・グループ 執行役員 人事部部長に就任。20年取締役常務執行役員CHRO CDTOに就任。22年より現職

AI技術が進歩する昨今、金融業界でもあらゆるシーンでAIの導入が進んでいます。アナログ業務が多いイメージを持っている方もいらっしゃると思いますが、実はフルデジタルへの移行に大きな期待を持っています。例えば、ウェブ上でサービスが完結するネットバンクやネット証券などは、 AIの導入でサービスの利便性は飛躍的に高まるでしょう。

われわれ三菱UFJ信託銀行は、法人・個人のお客さまと直接対話しながら、企業年金の管理・運用業務や不動産の仲介、株主総会サポート、個人資産の次世代承継など、オーダーメイドの信託業務を行っています。そのため、AIはお客さまとしっかり向き合う時間をつくるための「省力化ツール」という側面と、お客さまへ高度なコンサルティングを行うための「分析・予測ツール」という側面があると考えています。特に生成系AIは、お客さまのビジネスやマーケットなどを調べるツール、資料を整理して企画書にまとめるツールとして役立てています。社員がお客さまを深く理解し、より踏み込んだコミュニケーションを取り、最適な提案をすることが最終的な目的だからです。

そこで必要となるのは、自ら収集した情報を精査する思考力です。お客さまは大企業や企業オーナーなどの富裕層がメイン。下調べが足りなかったり、フェイク情報が混じっていたりすればすぐに見抜かれてしまい、信頼を得ることはできません。お客さまに価値のある提案をする力が求められます。もちろん、若いうちからあらゆる分野に精通することは難しいでしょう。「これが好き」という軸でどこまでも掘り下げられる分野を見つけ、専門性を高め、そして情報を精査する思考力を養ってください。そのためにはAIの活用で捻出できた時間で、さまざまな経験をしながら自らの感性を磨き、いちビジネスパーソンとして成長していくことが重要です。

仕事の意義を本質から理解するため
積極的に周囲に問いかけていく行動力を身に付けて

当社では、業務効率化とお客さまに提供するサービスの品質向上を両立させるために、今後もAIの活用を推進していく方針です。例えば、お客さまの情報や過去の成約データなどをもとに、最適な金融商品を予測。提案方法についても、対面でお伝えする、まずはメールで当社のホームページに誘導する……などAIによる予測を参考にしています。また、データ分析に適したプログラミング言語であるPythonと生成系AIを組み合わせ、アンケートやグラフなどお客さまのニーズに合わせた資料の自動生成も実施。その他にも、株式を上場しているお客さまに対して、敵対的行動を取る株主(アクティビスト)に狙われるリスク分析とその後の動向を定期的に分析するコンサルティングサービスにも乗り出しています。「省力化ツール」としての活用と並行して、マーケティング、コンサルティング、マーケット予測、事務自動化と、あらゆる分野で価値を発揮しているのです。

当社のAIへの取り組みは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)全体にも波及しています。例えば2022年には、当社からの提案で、MUFG全体のデータサイエンティストコンペティションを2回にわたって開催。「Pythonを使って機械学習モデルを作り予測精度を競う」というテーマを掲げ、グループ内15社・総勢766名が参加する一大イベントに成長させました。このような“他流試合”に当社はとても積極的で、MUFG横断の新規事業創出プログラム『Spark X』も開催。当社や当社グループ会社の社員が提案した新規事業案が特別賞を受賞、事業化を具体的に進めています。

お客さまに対してもMUFG全体に対しても、さまざまなアウトプットを行っている当社では、日々の仕事の価値はどこにあるのか見極めようと思考する力が必要です。今自分の目の前にある仕事は、プロジェクト全体のどこに位置するもので、なぜ必要とされているのか。考えてみて分からなければ、遠慮せずに先輩や上司に聞いてください。相手の表情をうかがい、モジモジしてしまう。そんな時間は、あまりにもったいない。一刻も早く「そういうことか!」と理解し、行動につなげることが自分を成長させます。

ですから、学生時代には、できるだけ多くの人と対話をすることをお勧めします。家族や友人はもちろん、教授、ゼミの仲間……たくさんの人とコミュニケーションを取り、言われたことを額面通りに受け取るのではなく、背景にある目的を見極める習慣をつける。このような努力を重ねた人であれば、 AI時代においても当社で力を発揮してもらえると思います。

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