セイコーエプソン
プリンティング、マニュファクチャリング、ビジュアル、ライフスタイルの分野で数々のイノベーションを創造。印刷領域にとどまらず、独自のコア技術の活用や共創により社会課題の解決に貢献している
ユーザーとの関わりを経て
お客さまファーストの本質を得た
群馬大学大学院にて機械知能システム理工学科を専攻し、2015年に修了。同年4月にセイコーエプソンに入社後、設計職として複合機設計を担う。新製品開発チームでは特許技術を生み出すなど活躍。異動により現在は人事業務に従事している
入社後は、設計職としてプリンターの開発業務を担当しながら、お客さま先で設置も行う役割を担っていました。経営理念の一部に『お客さまのために』とあるように、技術力で課題を解決していこうと思っていたのを覚えています。仕事に慣れ始めたころ、古民家を再利用したオフィスへのビジネスプリンターの設置に携わりました。今振り返れば、これが私の考えのターニングポイントだったと思います。
事前にお客さまのニーズに応えられるよう機能をカスタマイズした製品の導入準備を完了させ、自信をもってお客さま先へ向かいました。しかし、現地に着いてみるとオフィスの床の強度が足りず、プリンターの重量に耐えられないというアクシデントが発生したのです。一緒に担当していた先輩社員や、急きょヘルプを頼んだ他の設計職の方々が即座に対応してくれたおかげで解決できましたが、一歩間違えればお客さまのビジネスに多大な損害を与えかねない事象でした。エンドユーザーの利用環境のことまで考慮せず、製品さえ良ければ満足していただけると考えていたことが問題の根本にありました。この経験をきっかけに、「最先端技術を搭載した製品の提供」というプロダクトアウトの発想ではなく、「利用シーンを考えたサービスの提供」というマーケットインの考え方が重要なのだと気付いたのです。
一手、二手先を考えることが
理想の実現には不可欠
数年後、私は新製品開発プロジェクトに配属されました。印刷後に紙を整える手間をなくす機能を開発し、エンドユーザーの業務効率化とストレスを軽減しただけでなく、特許を取得することもできました。こうしたユーザーの感じている不便さに着目できたのは、マーケットインの視点が身に付いていたからでしょう。技術的観点からのアプローチとフォローの観点からのアプローチの双方がそろって、初めて本質的なお客さまニーズを満たせるのです。
『お客さまのために』という考え方は、当社では当たり前のように根づき徹底されているのですが、職種の枠を超えたローテーション制度や若手でもやりたいことに挑戦できる環境が、価値観の浸透に一役買っていると思います。お客さまに直接触れ、各部門の業務を把握することで、全員が課題を共通のものとして認識できる。同じベクトルで同じゴールに向かって進むからこそ、『お客さまのために』という考えがしっかりと受け継がれていくのです。
より成長し、違う役割でも当社の考えを体現していきたいと考えた私は、人事に異動しました。今は各部門がお客さまという立場ですので、各部門の課題とニーズを把握し、会社と部門の成長につながる方法を人材の側面から模索しています。部門が成長することは、サービスの質の向上につながるため、回り回ってエンドユーザーに貢献することと同義だと感じています。
採用担当として多くの就活生と話して感じるのは、就職活動こそ長期的な視点で一手、二手先を考えてほしいということ。生活と仕事の両軸で理想を描き、会社で得られることやリスクを整理し、理想の将来像や軸とズレがないかを見極めることが大切です。とはいえ、理想を見付けることは一筋縄ではいかないと思います。そんなときは、多くの社員に会い、その価値観に触れてください。きっと将来のイメージがどんどん具現化していくことでしょう。