クボタ流のESG経営で、社会課題の解決へ
世界の食料・水資源・都市環境を技術と情熱で支える
1981年久保田鉄工株式会社(90年に株式会社クボタに社名変更)へ入社。2008年に人事部長へ就任し、13年に執行役員として電装機器事業部長などを経て、17年に常務執行役員に就任。21年 1月、専務執行役員に就任し人事・総務本部長、コンプライアンス本部長、K-ESG推進を担当し、現在に至る
【Decision】
グローバルでのニーズの変化に
向き合い、柔軟かつ迅速に対応
クボタといえば農機。学生の皆さんの多くはそんなイメージを持っているかもしれません。しかしそれだけではなく、クボタは建設機械・産業用エンジンなどの機械事業、パイプや水処理施設などの水環境事業など、人々の生活の土台となるエッセンシャルビジネスを手掛ける企業なのです。
それを示すように、コロナ禍による影響は限定的であり、むしろ2021年12月期は売上高も利益も過去最高の値を予想しています。その要因は国内外の多様なニーズにフレキシブルに応えてきたこと。今やクボタでは海外事業の売上が約7割を占めています。確かに昨年は、中国、北米、ヨーロッパなど世界各地の工場が一時的に操業停止に追い込まれる危機もありました。しかし一方で、北米では巣ごもり需要に伴いガーデニングや芝刈りに用いる小型トラクタ、小型建設機械のニーズが拡大。変化に迅速に応え、事業成長の一助となりました。
こうした動きを可能にした背景は、短期・利益中心の経営ではなく、中長期的に財務と非財務のバランスをとる「ESG経営」にシフトしており、コロナ禍を機にさらに注力したことです。クボタが提唱するのは、社名を冠した「K-ESG経営」。ESGの3軸である環境、社会、ガバナンスを再定義し、コア事業である食料・水・環境の各事業を伸ばしながら、社会課題の解決を目指しています。
具体的には三つの取り組みに分かれます。第一に、食料の生産性・安全性を高めるソリューション。自動運転農機やICTを活用した営農支援サービスシステムを通じて、作業効率と作物の品質を向上させるスマート農業です。二つ目は、水資源・廃棄物の循環を促進するソリューション。IoT活用で上下水道の水質管理や水害対策、給水管理に役立ちます。最後に、都市環境と生活環境を向上させるソリューションです。
さらに、クボタ独自の技術の代表例といえば資源回収ソリューションが挙げられます。リンや金属の回収技術をベースに、さまざまな廃棄物を回収・選別し、電力や肥料・有価金属の再生産へと循環させるのです。90年代から取り組み、瀬戸内海の豊島にあった大量の不法投棄廃棄物の処理もクボタが手掛けました。こうした大きな社会課題において、われわれの技術で14年かけて美しい水環境を取り戻したのは、胸を張れる仕事だったと思います。
先進的な育成環境を整備
挑戦心を受け継ぐ人財を求む
クボタはこの地球上に存在する社会課題に対し、常に真摯に取り組んできました。今後もニーズの変化に応え、新たな価値を生み出す挑戦を続けていきます。そのために、130年超の歴史の中、脈々と続くチャレンジ精神を受け継いでくれるような、自らを高め挑戦し続けていく人財を求めています。また、誠実かつ粘り強く取り組む姿勢、多様性を受け入れて仕事を進めるチームワークの精神も必要不可欠。そうした人財には、いくらでもチャンスがある会社です。クボタの組織体制は、いわば3階建ての構造です。3階でゼロから一(事業の卵)を生み出すイノベーションに挑戦。2階では研究開発により卵をインキュベートし、1階ではそれを事業部門がコアビジネスに育てていきます。現在3階を担当するイノベーションセンターが、ベンチャー企業や大学機関とのコラボレーションを推進しています。東京本社オフィスもABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)化して柔軟に働ける環境を整備。さらに、海外事業所で活躍する機会も、若手社員にどんどん与えています。
クボタは長い歴史の中で、常に新しい取り組みを続けてきました。思い返せば、私が新入社員だった頃から、すでにその気風はありました。当時、農業機械のアメリカ進出に挑戦したものの、長年赤字が続き、「国内の農機事業が好調なのに、なぜ続けるのか」という厳しい意見もありました。それでも先輩たちは歩みを止めなかった。彼らの挑戦によって、今日のクボタが作られたのです。130年以上、チャレンジ精神あふれるカルチャーを受け継いできたクボタは、向上心とプライドを持って何かをなし遂げようとする人にとっては、うってつけの会社といえるでしょう。