超AI時代に企業はどう備えるか
経営者たちの課題と挑戦Society5.0の実現を目指す「AI戦略」を国が発表した。 産業分野におけるAI化の促進や、AI人材の育成がさらに加速していく見込みだ。 そんな中で、企業を取り巻くビジネス環境はどのように変化し、それに対してどのような打ち手が必要となるのか。 経営層が持つ課題意識や、今後のビジョンを知り、各社の企業理解を深めよう。
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)志向が本格化する中、企業の事業フィールドはフィジカル空間から、サイバー空間へと広がり続けています。この数年、新たなビジネスを創造しようとしている企業を中心に、両者の間を流れる膨大なデータをいかに守り、活用するかが、新たな経営課題として注目を集めるようになっているのをご存じでしょうか。
デロイト トーマツ サイバー(以下、DTCY)は、デロイト トーマツ グループに属していた2社のサイバーセキュリティ部門を統合してできた、全く新しいタイプのコンサルティングファームです。システム上の問題として矮小化されがちなサイバーセキュリティの課題を、経営に直結した課題として再定義し、Strategy(戦略)、Secure(予防)、Vigilant(発見)、Resilient(事後対応)の観点から、クライアントが抱える課題を解決するための活動を展開しています。
もはやサイバーセキュリティは、クライアントの経営やDX戦略と切っても切れない関係になっているだけに、必ずしも防御策にとどまるものではなくなりつつあります。しかし「セキュリティ」という言葉から連想されるのは、どうしても「守り」を固めるというイメージであるため、いまだ「外部からの攻撃や情報流出などのリスクへの備えとして、仕方なくやるもの」という認識を持つ企業は少なくありません。
しかし今日、DXによるビジネス改革に熱心な企業は、サイバー空間を守る取り組みを「コスト」ではなく、ビジネスの成長に寄与する「投資」として捉え始めています。私たちが実現したいのは、こうした先進的なクライアントの意識を受け止め、新たなサービスやソリューションを提供することにあります。
つまりDTCYには、AIやアナリティクス、ITを駆使し、攻守両面からのサービス提供を通じて、クライアントのセキュリティレベルを向上させることが求められているのです。それゆえにDTCYは、可能な限りクライアントのDX構想や企画段階から関わります。もし、そうでなければ真に守るべきデータも、攻めるために必要な取り組みもわからず、現実に即さない、見当外れな提案をしてしまうことになりかねないからです。
スマートフォンやIoT、ロボティクスの進化によってフィジカル空間とサイバー空間を隔てる垣根はどんどん低くなっています。これからますます多くの機器がネット接続され、われわれの生活の中に溶け込んでいくことになるでしょう。それは家庭内だけにとどまらず、移動手段やオフィス、街全体におよんでいきます。生活全般がスマート化していく中で求められるのは、フィジカル空間とサイバー空間をシームレスにつなぐセキュリティ体制の確立です。こうした取り組みが、企業から、街全体、国全体、そして世界へと広がっていく過程において、サイバーセキュリティ環境の整備が、新たな社会インフラの整備とほぼ同義になるのは間違いないでしょう。
現在、DTCYには、クライアントに対してアドバイザリーサービスを提供するコンサルタントのほか、テクノロジーに長けたITエンジニア、最新のサイバーセキュリティを熟知した研究者など、総勢150名を超える多様なタイプの専門家たちが在籍しています。そして、膨大な量の内部・外部データにAI技術や高度なデータアナリティクスを接続していく『スマートサイバー』などの取り組みを加速させています。
これから日本のサイバーセキュリティ市場において圧倒的なシェアを獲得するため、現在、3年以内に250名体制を確立する計画が進行中です。めまぐるしく移り変わるテクノロジーの変遷と課題の複雑化に加え、サイバー空間でのビジネスが重要性を増す中、この領域で活躍できる人材を一言で表すなら、それは、自らルールを作り、仕組みをデザインできる人。既存の枠組みを壊して再構築できる人材です。
もはやサイバーセキュリティを必要としない産業はありえませんし、あらゆる社会生活がネットを前提として動いている以上、無関係でいられる人も存在しません。2018年に発表されMcAfeeとCSISのレポートによると、サイバー犯罪が1年で世界経済にもたらす損失は6000億ドル(約64兆円)に及ぶと予想されており、世界のGDPの0.8%に相当するそうです。サイバーセキュリティ分野は、世界中の経営者が最も注視している分野でありながら、ニーズを支える人材が圧倒的に不足している世界でもあります。
社会人として圧倒的な成長の実感をつかみたいのであれば、これから伸びる産業に身を置くのが近道であるのはいうまでもありません。サイバーセキュリティはまさにこの条件に合致する世界だといえるでしょう。