2020/11/1 更新 コンサル

【ボストン コンサルティング グループ】業界構造が急変する今、真の“経営パートナー”が求められる

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人事に聞きたい「会社」と「働く人」のこと コンサル業界の採用はどう変わる?
コロナショックをきっかけにあらゆる企業が経営方針や、働き方の見直しを行っている。こうした変化が、コンサルティングファームに与える影響とは?業界のリーディングカンパニーで働く人事責任者8人に、各社のコンサルタントに求められる役割の変化や、今後の人材採用の方針について聞いた。

マネージングディレクター& パートナー
荻原英吾氏

Profie

A.T. カーニー、日清食品ホールディンングス経営企画部長、日清シンガポール社長/アジア総代表を経て、ボストン コンサルティング グループに参画。
消費財・流通・運輸グループ、グローバル化戦略のコアメンバー。マーケティング・営業戦略、海外進出戦略、新規事業、DX、M&Aなどのプロジェクトを手掛ける


本質を捉える力と右脳的な発想力で
企業を変革に導く人材を積極採用

コロナショックによって、企業を取り巻く状況は大きく変わりました。これだけ環境が激変すると、コロナ以前に策定した経営計画や経営戦略の多くは無意味になり、あらゆる企業がこれから先のプランを一から立て直す必要に迫られています。
さらに、業界構造の変化も加速しています。例えば、飲食業界における外食需要の減少は、コロナ禍を象徴する変化です。もちろん感染が収束すれば、以前のように外食を楽しむ日常が戻ってくる可能性はあります。ただ現時点では、外食しなくなったことで家族と過ごす時間が増えたり、お金が節約できたりといったメリットを感じる生活者が多いのも事実です。このためコロナ収束後も、「今まで外食に使っていた時間とお金を他のことに使いたい」と考える人が増えるかもしれません。
こうした変化が続けば、それに応じた均衡点が生まれ、新たな業界構造が形成されます。すでに、中食や内食の需要に応えるネットスーパーや『UberEats』などのデリバリーが急拡大しました。これまでなら5年や10年かかっていた変化のスピードが、今年に入って一気に加速しています。この変化を踏まえて、新たな戦略をどのようにつくっていくか。それをわれわれのようなコンサルティングファームに支援してほしいという企業からのニーズは非常に高まっています。これはコンサルタントにとってチャレンジングな環境です。コロナ以前は、業務の効率化やコスト削減といった継続的な改善を目的としたプロジェクトもありましたが、今クライアントが求めているのは抜本的な変革です。
よって経営戦略やコア事業の戦略に関わる本質的な課題に取り組むことが、よりコンサルタントの役割として求められています。ボストン コンサルティング グループ(以下:BCG)でも、ビジネスモデルや事業ドメインを見直すプロジェクトが増えています。
例えば、ある教育業界のクライアントは、これまでグローバルに紙媒体の学習コンテンツを提供してきました。しかし外出自粛期間にオンライン授業が普及したことで、子どもたちもデジタルコンテンツで学ぶことが当たり前になったため、ビジネスモデルのデジタル化を進めることになりました。子どもの学び方が変われば、家庭内での親との関わり方も変化するため、親子関係をサポートするための新たな事業開発も進めています。
こうしてビジネスモデルを再構築したり、事業ドメインを再定義したりすることは、企業の存在意義そのものに関わる重大なアジェンダです。それくらい本質的な課題解決をコンサルタントは期待されています。
コロナショックによる変化に対応できるかどうかで、企業の業界内における5年後の立ち位置が大きく変わります。新たな業界構造の中で、勝ち組と負け組のどちらになっているか。それを決める重要な局面に関われることは、すべてのコンサルタントにとって非常にエキサイティングな経験になるのではないでしょうか。

正しい問いを立てられるファームがクライアントから選ばれる

変化するのはクライアント側の業界だけではありません。コンサルティング業界の構造も、今後は変化していくと考えています。これからのコンサルティングファームは、「共に変化を乗り越える経営者のパートナーとなれるか」を問われることになります。経営戦略や事業戦略など、企業の中心的課題に取り組むには、クライアントのCEOとともに正しい問いを立て、それを解決するというプロセスが必要になります。つまり、答えを提供する前に「今解くべき本質的な問いは何か」を正しく設定することが求められるということ。そしてこの力こそ、BCGの強みでもあります。
しかし残念ながら一部には、正しい問いを立てず、答えありきの問題解決しかしないファームもあります。例えば「うちのファームはコスト削減に強いです」と言って、どの企業にも似たようなコスト削減プロジェクトを売り込むようなケースです。
それがたまたま企業のニーズとマッチすれば、こうしたファームが選ばれることもあり得ます。しかし企業がコンサルタントに求めるものが変わった今、本質的な課題につながる正しい問いを立てる能力がないファームは、いずれ選ばれなくなるでしょう。
一方で、直近でもBCGのプロジェクト数は増えており、今年に入ってからは昨年の同時期に比べて二桁以上の成長を遂げています。同じコンサルティング業界の中で、クライアントに選ばれるファームと選ばれないファームの二極化がすでに起こりつつあると言えます。

発想力や創造力などの右脳的な能力も求められる

クライアントのニーズが変わったのですから、コンサルタント個人に求められる能力も当然変わります。
これまでコンサルタントに求められるものといえば、ロジカルシンキングや分析力などの左脳的な能力が筆頭に挙げられました。もちろんこれらも引き続き必要です。ただし、それ以上に重要となるのが、発想力や創造力などの右脳的な能力です。
変化の激しい非連続な世界では、突如として新しいものが生まれたり、業界が劇的な進化を遂げたりします。もしかしたら10年後には、自動運転の配送トラックが高速道路を走ったり、自宅のベランダにドローンが宅配物を届けたりするのが当たり前になっているかもしれない。これまでSFの世界でしかあり得なかったことが、現実になる可能性があるのです。
よって、未来を見通すには、SF的とも思えるような新しい発想が必要となります。それはロジカルな思考を積み上げていくだけでは見えない世界であり、従来の常識や価値観にとらわれず自由に発想する力や、さまざまなインプットから新しい世界観を構築する創造力が求められます。
最近は、アンラーニングの重要性が高まっています。これは一度学んだ知識や既存の価値観を意図的に捨て、新たに学び直すこと。特にコロナ以降は変化のスピードが加速し、わずか1カ月前の常識や価値観でさえ古くなることだってあり得ます。これだけ目まぐるしい変化に対応しながら先を見通すには、状況に応じて前提条件を置き換えながら、柔軟に発想する力が必須です。それは例えるなら、新しいものを作っては壊し、また新しいものを作っては壊す作業をものすごい速さで繰り返すようなもの。これほどのスピードでアンラーニングを求められた時代は、過去になかったのではないでしょうか。

ユニークな経験を積むことが発想力や創造力を養う

前述の通り、コンサルティング業界全体では企業からのニーズが高まり、プロジェクト数も増えているため、採用を積極化するファームも多いでしょう。その中でもBCGは、新卒・中途を問わず、活躍できる人材の採用をさらに強化していきます。
とはいえ、採用の基準を下げるわけではありません。先ほど挙げた発想力や創造力、柔軟性なども重視しながら、採用を進めることになります。
そのためBCGの一部の採用選考では、発想力や創造力を測るためのクリエイティビティテストを導入しています。ロジカルシンキングをはじめとする従来型のコンサルティングスキルは、すでにコモディティー化し始めています。コンサルタント経験者が事業会社に転職し経営に携わる事例が増え、コンサルタントが使う思考法やフレームワークを紹介する本も数多く出版されているため、今は企業の中にも論理的思考や分析力を備えた人が当たり前のように存在するからです。
よってコンサルタントがクライアントの役に立つには、プラスαの付加価値を提供しなくてはいけない。それが幅広いインプットに基づいたクリエイティビティであり、入社後にプロジェクトを経験しながら身に付ける専門性です。これからコンサルタントになる人には、ぜひこれらを意識的に磨いてほしいと思います。
発想力や創造力を養うには、その人ならではの固有の経験を積むことが近道になります。よく学生から「コンサルタントになるにはどんな勉強をすればいいか」と聞かれるのですが、知識を詰め込むより、今のうちに他の人があまりやっていないようなユニークな体験をすることをお勧めしています。
例えばインドへ行って、ガンジス川の水を飲んでいる人や、そこで洗濯して1日数十円を稼いでいる人を見て、日本での生活しか知らなかった自分の価値観はガラリと変わった。そんな体験が知見や視座を広げることになり、新しい発想につながります。今はコロナの影響でリアルな体験がしにくくなっていますが、その代わり世界中の人にオンラインで簡単にアクセスできるようになったのですから、例えばユニークな体験を持つ人に積極的にコンタクトを取り、その知見を取り入れてみるのも一つの方法です。

アフターコロナの世界は若手にチャンスが訪れる

BCGで一緒に働くなら、多様性を受け入れる力のある人が望ましい。今は一人のコンサルタントだけで答えを導き出せる時代ではなく、性別や国籍、バックグラウンドが異なる多様な人たちが集まり、それぞれの視点から意見やアイデアを出し合いながら議論するプロセスが不可欠です。自分と違う考えを取り入れ、それをかみ砕いて新たな発想につなげる柔軟性を備えた人なら、ダイバーシティーから新しいものを生み出していけるでしょう。
加えて、物事を変える推進力を持っていることも大事です。変化が必要だと分かっていても、今までのやり方を変えることに抵抗を感じるクライアントは少なくありません。そんな場面で相手を動かすには、「私と一緒に変えていきましょう!」と説得できるだけの熱量や、「この人の言うことなら聞いてみよう」と思ってもらえるだけの人間的な魅力が必要になります。
コロナショックによる混乱で、将来に不安を感じている学生もいるかもしれません。でも視点を変えれば、これは若い人たちにとってチャンスでもあります。アフターコロナには業界構造も生活者の価値観も変わり、コロナ以前とは異なる新しい世界が訪れます。
そうなると、ビジネスでも過去の成功体験は通用しなくなる。よって、経験のみを武器にしてきた人材の価値は一気に下がるでしょう。反対に、過去の成功体験や古い常識にとらわれることなく新しい発想ができる若い人にチャンスがあります。
これから社会に出る皆さんには、大きな可能性と活躍の場が広がっています。ぜひ前向きな気持ちでコンサルティングの世界、そしてBCGに飛び込んできてくれることを期待しています。

一緒に働きたいのはどんな人?

1.物事の本質を捉えられる

企業経営に正解のない時代。課題解決をするためには、物事の本質を正しく把握し、適切な問いを立てる力が欠かせません

2.クリエイティブに発想する

これからの新しい時代に対応するには、過去の常識にとらわれない、非継続的でクリエイティブな発想力・創造力が求められます

3.人を動かし変化を推進する

論理的な説明やデータを示すだけでは人は動きません。「この人と一緒なら変われそうだ」と相手に思わせる熱量や人間性が必要です

ボストン コンサルティング グループ

1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設され、世界90拠点以上のネットワークで戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組む。日本では経営戦略コンサルティングファームNo.1の地位を築き、各産業を代表する企業と共に変革を推進。“日本発”でコンテンツや技術を世界に展開するグローバル案件も多数あり、世界の経済・社会に大きなインパクトをもたらしている

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