ビジネスプロフェッショナルに聞く
変革期のコンサルティングファームで働く醍醐味
ここ数年、急速に進む技術革新の影響を受け、コンサルティングファームの使命や、手掛けるビジネス領域は大きく変化している。各社がこれまでのビジネスのあり方、コンサルタントの働き方などを見直す“大変革期”を迎える中、次世代コンサルタントにはどんな成長が求められるのか?各社のビジネスプロフェッショナルに聞いた。
ローランド・ベルガーに私が入社したのは今から15年以上前。当時の東京オフィスには30名程度のメンバーしかいなかったのですが、並み居る米国系グローバルファームとは一線を画し、戦略の実行局面にコミットしながら、お客さまとの間に長期的なリレーションシップを築く姿勢で、一気に成長をしてきました。他方、近年は国際的に進展しつつある新しい流れ、変革へ向かう大きな波を先取りする格好で、新たにトライしています。とりわけこの1〜2年は、長島(代表取締役社長) が自ら先陣を切る形で、他ファームとはまったく異なるアプローチを重ねています。それが『ジャパン・ストラテジー2・0』です。コアとなるテーマは、変革を望む企業のスピードを劇的に上げていくことです。
当社が長年にわたり信頼関係を築いてきたお客さまの多くは、実績ある大企業です。しかし、これからの社会では規模の大小に寄らずスピードが命。巨象をまるでチーターのように機敏に動ける組織に変貌させ、イノベーションを加速させることが、われわれのミッションだと考えているのです。その実現のために核となるアクションは4つ。未来構想プロジェクト、新規事業の量産、アクセラレーション(高速化)、スピードBPRです。
第一の未来構想プロジェクトでは、2035年の社会や産業界、企業が『最も幸せになっている状態』を思い描きます。デジタルによる変革がすべてのビジネス、世の中を変えようとしている今『先が見えない時代』とも言われています。しかし、より幸せな未来をきちんと想像・構想し、羅針盤ともいえる指標を中長期的展望で持たなければ、お客さまもわれわれも動き出しようがありません。妄想レベルでも構わないという条件設定で愚直に考え抜いています。
2つ目は新規事業を創出しようというものですが、重要なのは量産する姿勢を持つこと。『変革達成のためにはトライ&エラーを覚悟する』ことが重要だと強調しつつ、われわれはすでに具体的なアクションを起こしています。現状でも10社を越える先鋭的なベンチャー企業との連携を実現し、変革実行のためのエコシステムを築いています。その中の一社がアスタミューゼ。知的情報プラットホーム事業で世界をリードする同社には、『知』に関わるあらゆる情報が集積されています。特許情報、ベンチャーキャピタルなどによる最新の投資情報、大学で行われている先端的な研究情報などを有効活用することができるのです。どんな研究や特許案件がホットなのかを知ることで、例えば日本の大企業がオープンイノベーションのパートナーを選択する際にも、一役買っています。
3つ目は、アクセラレーション、つまり高速化です。机上で新しいビジネスを考えていても新規事業の量産にはつながりません。デジタルトランスフォーメーションを多くの企業が目指すようになって以来、PoC(実証実験) の重要性を叫ぶ声が高まっているわけですが、この局面でも当社は具体性をもって動き出しています。言うなれば、『高速PoC』。先鋭企業とのパートナーシップを活用しながら、スタートアップ・ベンチャー並みのスピードでPoCをドライブしているんです。
最後がスピードBPRですが、以前から行われてきた業務改善とは異なります。RPAやIoTをはじめとする実効性の高いデジタル技術類を積極的に投入することで、業務オペレーションを劇的に高速化します。これも、先鋭企業との連携を開始しています。例えば、コアコンセプト・テクノロジー社は、メーカーの製造プロセスで基盤とも言える金型の製造期間を45日から15時間にまで短縮するノウハウを備えています。新規事業プランを進める中で、試作品の製造が必要になった際、これをウェブ上で部品レベルにまで落とし込んで設計できるプラットホームも活用できています。
以上のように、ローランド・ベルガーでは単に『こうあるべき』を説くだけではなく、エコシステムを設け、『あるべき姿』を構築するプロセス自体のスピード、そして、それを実装するスピードを上げていく点で、すでに成果を出しています。ほんの数年で、なぜここまで進展できたのかといえば『われわれ戦略コンサル自体が超高速で変わらなければ』という危機意識が、どこよりも強かったからだと自負しています。
とはいえ、当初は私自身も懐疑的でした。先鋭企業との連携話の多くは、長島が率先して持ち込んだものでしたが、「どういう会社か? 精査し確認しないと、安直に連携すべきではないのでは?」などと意見したものです。もちろん、大切なパートナーとなった各企業は、小規模だったり、歴史が短かったりするところでも、いずれも強みを維持しているわけですが、なにより私の意識を変えてくれた要因は各社が「あれ?」という驚きを見せてくれたことにあります。「この会社のこの強みを活用できたら、一緒にこんなことまで実現できるのか」という意味での驚きです。今、多くの大企業がベンチャーとの連携によるオープンイノベーションで変革を達成しようとしていますが、難航している実情があります。「自分たちとは別の世界に、自分たちにはできない力を持った存在がいる」ということを、腹の底から納得できていないから、うまくいかないのだと、今なら私も言い切れます。言い換えれば、私をはじめ当社にいる者たち自身がオープンイノベーションのために格闘し、もがいてきたからこそ、その重要性と難しさを理解している。よって今、どこよりも具体性を持ち、お客さまの変革に貢献できているのです。
新しいチャレンジでありながら、いかにも当社らしい戦略性・実行性を持って、変革の時代ならではのダイナミズムをわれわれは感じているところです。ですから、今後は「あれ?」という感覚をワクワクしながら形にしていける人に参画してほしい。未来を築いていく輪の中でしか時代のダイナミズムは味わえませんが、変革の未来という時代において、ローランド・ベルガーには間違いなくそれがあると断言できますから。