ビジネスプロフェッショナルが解説
「真の企業力」を見抜く方法
会社の良しあしは「知名度」だけでは測れない。これから先も長く発展し続ける会社、急成長を遂げる可能性を秘めた伸びしろのある会社は、どうすれば見極められるのだろうか。企業経営、組織開発・採用のプロフェッショナルたちが、各社の事例を用いて「真の企業力」を見抜く方法を解説。インターンシップで確認すべきポイントも紹介する。

バイスプレジデント 執行役員
市場における優位性を強化した製品展開で
日本の人々の暮らしを豊かにする
私たちの日常に不可欠な洗濯洗剤や食器用洗剤、シャンプー。これらの製品を通じて、P&Gジャパン(以下P&G)は日本の人々の暮らしを豊かにし続けてきました。これら全ての製品において、P&Gが重視するのが”競争優位性戦略”です。この戦略は、五つの市場(製品機能、パッケージ、コミュニケーション、店頭展開、消費者への価値提供)における優位性を強化した製品展開によって、市場の活性化を目指すものです。
その成功例の一つに、2014年に発売した『アリエールジェルボール』があります。計量いらずの手軽さと確かな洗浄力を兼ね備えた機能性により欧米で成功を収めていたものの、日本市場は未開拓でした。そこでP&Gはまず、日本の消費者の潜在的なニーズを徹底的に調査。その結果、時短という言葉の裏に隠された、計量や詰め替えの手間を解消したい消費者ニーズにたどり着いたのです。この市場予測は見事に的中。発売から約10年がたった現在も、売上が継続的に伸びており、競争優位性戦略が実を結んだ事例となりました。
P&Gが目指すのは、こうした成功例から生まれた製品を通じて、消費者生活をより良くすることです。しかし、優れた製品も消費者の元に届かなければ意味がありません。つまり、消費者との接点をつくる店頭展開が重要な鍵を握るのです。P&Gでは、実店舗とEコマースの双方を店頭と位置付け、店頭展開の新たな取り組みとして、24年からリテールデータサイエンスを開始しました。これは、小売業者さまからお預かりした購買データや在庫のデータなどを分析し、購買行動への理解を深め、消費者の買い物体験の向上を目指す取り組みです。労働人口の減少や物流における輸送能力の低下などの課題に直面する日本の小売業界では、店頭オペレーションの効率化が喫緊の課題。また、欲しい製品に効率的に出会いたい消費者ニーズも高まっています。さまざまなデータと長年蓄積してきたショッパーインサイトを組み合わせ、消費者が欲しい製品に出会える優れた店頭展開を行うことで、消費者のお買い物体験を向上。そうして、消費者の暮らしを豊かにすると同時に、市場成長を促進することができるのです。
では、これらの取り組みを支える原動力は何か。それは間違いなく人材です。P&Gでは人材こそが資産だと考え、人材育成に取り組んできました。その中で醸成された文化が、「失敗から学び、経験を共有する」という考え方です。先ほどジェルボールを成功事例として紹介しましたが、必ずしも全ての試みが成功するとは限りません。仮に失敗しても、学びを得て、成功につなげればいい。このサイクルを生み出すために必要な知識を習得できる体系的なスキームが、P&Gにはあります。実践を想定した学びを続けることができれば、企業の成長を導ける人材へと成長できるでしょう。
企業の仕事を体感できるインターンシップを通じて
市場や消費者に対する企業姿勢を見極めよう
企業の成長可能性は、イノベーションへの姿勢に表れます。市場の拡大、消費者のより良い暮らしの実現に向けて、どれだけ真摯に新しい価値を生み出そうとしているか。その企業姿勢こそ、成長可能性の証しです。イノベーションとは、世の中にないものを生み出すことだけではありません。既存の成功モデルを新たな分野で活かすこともまた、重要なイノベーションのかたちなのです。ジェルボールは、まさにこの考えを体現した製品。欧米の人気製品をそのまま展開することなく、日本の消費者に向き合い、消費者が抱えるお困りごとやニーズを確かに見極めたからこそ生まれた一例と言えます。
学生の皆さんが、こうした企業のイノベーションへの姿勢を見極めるには、ぜひインターンシップの場を活用してみてください。インターンシップは、市場や消費者に対する企業の姿勢を体感できる絶好の機会です。このチャンスを活かすには、主体的な姿勢で臨むことが重要です。企業の製品やサービスに対して常に改善点を探る視点を持ち、現状に満足しない姿勢で取り組んでみる。すると、その企業の成長可能性があるかどうかを、自然と見極められるようになるでしょう。
制作担当/佐藤諒
「企業力」を見抜くには・・・

イノベーションを実行しているかに注目