2019/11/1 更新 NEC(日本電気)

先端テクノロジーを生かして社会に新しい価値を創造する

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超AI時代に企業はどう備えるか
経営者たちの課題と挑戦
Society5.0の実現を目指す「AI戦略」を国が発表した。 産業分野におけるAI化の促進や、AI人材の育成がさらに加速していく見込みだ。 そんな中で、企業を取り巻くビジネス環境はどのように変化し、それに対してどのような打ち手が必要となるのか。 経営層が持つ課題意識や、今後のビジョンを知り、各社の企業理解を深めよう。

NEC (日本電気)

取締役 執行役員常務
CHRO
(チーフヒューマンリソーシズオフィサー)
松倉 肇氏
1961年12月12日生まれ、兵庫県出身。1985年4月、日本電気株式会社(NEC)に入社。全社の経営企画、マ ーケティング、事業開発などの業務を経て、2008年、 経営企画部長に就任し、リーマンショック後の経営構造改革を推進する。14年スタフサービスを集約し、新 設したNECマネジメントパートナー代表取締役社長に就任。全社の業務プロセス改革を担当。17年、取締役 執行役員常務兼CSO(チーフストラテジーオフィサー) となり、新中期計画策定を主導。18年にはCHRO(チ ーフヒューマンリソーシズオフィサー)を兼任しながら、人事改革やカルチャー変革に取り組む。19年4月から現職

かつてNECの代名詞といえば、パソコンや携帯電話。私たちはこれまで、ICT(情報通信技術)を駆使した革新的な製品を生み出すことで、世の中に新しい価値を提供してきました。しかしながら、グローバルなビジネスモデルの急激な変化の中でコスト競争力を失いました。

ですが、私たちNECの強みはテクノロジー領域です。世界に目を向ければ、先進国での少子高齢化に対して、新興国では都市化と人口爆発が急速に進み、水も食糧もエネルギーも足りなくなるのは間違いありません。安心して暮らせる、より効率的な社会インフラを構築していくことが求められている今、安価な製品を大量に生産することを、誰もNECに期待していませんでした。

では、このような時代に、私たちに何ができるのか。リーマンショックや東日本大震災など経営環境が大 きく変わる中で、10年ほど前から経営陣の間で抜本的改革に向けた議論を重ね、一つの解にたどり着きました。それは、ただ物を提供するだけではない、「社会価値創造型企業」という企業コンセプトです。私たちの持つテクノロジーを生かして、お客さまやパートナーとコラボレーションしながら、安全・安心・効率・公平な社会をつくっていこうというものです。2015年からは、『Orchestrating a brighter world』をブランドメッセージとして掲げ、改革を加速しています。

社会価値創造型企業が生み出すサービスの一例を挙げるならば、空港で導入されている、人工知能搭載の顔認証システムを使った新しい顧客体験があります。空港を利用する際に切り離せない、煩わしい各種手続きによるストレスは誰もが感じているはずです。しかし、チェックをおろそかにするとセキュリティー面での不安が残る。その課題を解消したのがNECの技術力です。

チェックイン端末で顔写真を登録すると、手荷物預け、保安検査、搭乗ゲートもウォークスルーで通過できるようになり、空港で感じるストレスをリセットしてくれるのです。 これらAIをはじめとするテクノロジーの進化は、社会のインフラを高度化するエンジンになります。さらには、これまでになかった全く新しいサービスやビジネス、顧客体験を生む可能性を秘めています。 このように、私たちは未来の社会に必要なもの、必要となるものをいち早くデザインし、独自のテクノロジーで解決へ導かねばなりません。それがNECの使命だと考えています。経営陣がNECの歴史を棚卸しした結果たどり着いた「社会価値創造型企業」というコンセプトしかり、企業コンセプトを刷新するという、一見するとNECらしくないと思われるような挑戦にも取り組む必要がある。まずはトップ層から考え方を改め、現場へ伝播させていく。これがNECがやるべき課題であり挑戦なのです。

デジタルネイティブに裁量を 鍵となるのは、社員の「自律性」



とはいえ、舵をとりなおしただけでは表面的な変化に過ぎません。社員が自らのキャリアを考え、自律的に行動できるように組織の内側から変えていく必要があります。18年にはカルチャー変革本部を新設し、人事と企業文化の改革に着手しました。

評価制度を見直すべく、まず経営陣に成果主義型の評価報酬制度を導入し、年齢や入社歴ではなく個人の成果や行動にフォーカスする仕組みにシフトしていきます。働き方については、社員一人一人がいきいきと働けるようオフィス改革を実行し、通常フロア以外で「BASE」というコワーキングスペースを設置しました。また、三カ月に一度全社員対象にパルスサーベイを行い、その結果を企業変革に生かしています。 このように、会社そのものの土壌を変え、従業員が自由に動き回れる文化を生み出していくことが変革への第一歩だと考えています。

行政でも流通や金融でも、会社全体が新しい挑戦を続ける今、デジタルネイティブとして育ってきた若い人たちには、特に大きな期待をかけています。事実、顔認証システムを初めて採用したアトランタ空港の案件で、コアとなる技術部分を担当しているのは若手の女性社員です。入社10年未満ですが、国内外を飛び回って技術仕様を決めてくるなど、入社年次を感じさせない奮闘ぶりです。 社会のデジタルシフトにより、お客さまをはじめ、外部の機関とも積極的に共創しながらオープンイノベーションを追求していく形に変わりつつあるため、デジタルネイティブな若手にも挑戦する機会は十分に提供することができています。

そこで変革を支える鍵となるのは、いうまでもなく現場の社員です。彼らの自律性を醸成できるフィールドを作る私たちがいて、自身を律することを体現する社員がいる。NECのテクノロジーは引き続き国内外をリードしていくでしょう。私たちの技術で新たな課題解決に臨み、新しい仕組みで社会価値を創造していく。そんな大きなやりがいを実感できる会社でありたいと願っています。

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