コンサルティング業界では一般的な「固定報酬型」を前職で経験した遠藤氏。そのビジネスモデルのメリット/デメリットを説明してくれた。
「この業界で固定報酬型が主流なのは、それなりのメリットがあると考えられてきたからです。最初から報酬が決まっているからこそ、コンサルタントは顧客の顔色を伺うことなく、客観的な立場でサービスを提供できるのだと。しかし実際は、固定報酬型が必ずしも成果につながるわけではありません。なぜならコンサルティングファームもサービス会社の一つなので、案件を受注しなければ経営が成り立たないからです。
例えばクライアントから『現在のエリア別の組織からサービス別の組織に変えたい』とご相談を頂いた時、コンサルタントの客観的な視点で見て『必ずしも今の組織を変更する必要はない』と判断したとします。でも、それを言ってしまったらプロジェクトは立ち上がらず、コンサルティングファーム側も案件を受注できない。だから自分たちの売上のために、組織変更を前提として本来は実施する必要のないプロジェクトを立ち上げる。こんなケースが少なくないのが現状です」
これはつまり、「固定報酬型コンサルティングが本当に価値あるサービスを顧客に提供できるわけではない」ということ。むしろ場合によっては、クライアント企業にマイナスの影響を与えかねない。さらに、本当に社会的価値の高い事業を行なっている企業にコンサルティングサービスが行き渡っていないという問題意識もあった。
「弊社代表の佐谷が前職の不動産ファンドに勤務していた時、自社物件の商業施設に入っていた大手スーパーが不景気のあおりを受けて売上が悪化し、テナントからの撤退を検討したことがあったそうです。ところが、商業施設内のテナントから撤退すれば巨額の違約金をファンド側に支払わなくてはいけない。そこでやむを得ず、代わりに周辺地域の店舗をいくつか畳むことで何とか経営を持ちこたえたのですが、そのスーパーは世間から叩かれてしまいました。
『自分たちが儲からないからといって撤退されたら、地域の食のインフラが失われてしまう』と非難されたのです。その一方で、不動産ファンドは何も損をしません。スーパーがテナントを継続すれば賃料が入るし、撤退すれば違約金が入る。いずれにしてファンド側は儲かります。その時に佐谷は、『自分たちのファンドビジネスと、地域の食のインフラを支えている食品スーパー、一体どちらが社会的に見て高い価値を出しているのだろうか』と疑問を感じた。そして、本当に価値ある事業を行なっている企業がきちんと利益を出せる体制や仕組みを作るために、品質の高いコンサルティングサービスを提供すべきだと考えたのです」
こうした問題意識から創業したプロレド・パートナーズは、当初から一貫して「成果報酬型」を採用している。これは、コンサルタントが出した成果の分だけ報酬をもらうビジネスモデルだ。成果が出なければ自分たちの報酬もゼロになるので、コンサルタントはクライアントと同じ立場で「何をすれば本当に成果を出せるのか」を考える必要がある。
先ほどのケースなら、「組織改革をしても成果が出ない」と判断すれば、「メリットがないので組織は変えない方がいい」と本当のことをクライアントにアドバイスできる。そして、より顧客企業の売上や利益に直結する課題にフォーカスし、本当にクライアントに価値をもたらすプロジェクトを立ち上げることが可能となるのだ。
コンサルティング業界において“完全成果報酬型”は新しいモデルですが、そもそも世の中では必然的な流れだと感じています。テレビCM(固定料金)からWEB広告のクリック課金へ、人材募集の広告掲載(固定料金)から採用実績ベースの成果報酬型へ、自動車を購入する時代からカーシェアの時代へと“結果が出ただけ”“使った分だけ”の料金体系に移行しています。
今までコンサルティングサービスは“成果が計りづらい”=“固定報酬”しか仕方がないという構造でしたが、今後IoT時代が到来すれば、マーケティング効果やブランド価値、更には顧客満足度といった今まで曖昧にしか把握できなかったものがリアルタイムで数値化されます。そうすれば一気にコンサルティングも必然的に“完全成果報酬型”へと舵を切ることになるわけです。
「成果報酬型には、最終的な成果が出るまで自分たちがいくら報酬をもらえるか分からないというリスクもあります。だからこそ、相当の覚悟と信念を持っていなければ実行できないビジネスモデルであり、大手ファームでさえも実現が難しいアプローチです。それを弊社は、業界に先駆けて9年前からトライしてきた。その結果、今では経験値が積み上がり、『このケースなら、どれくらいの成果を出せるか』という見通しの精度も高まって、弊社の売上は急速に伸びている。いち早く成果報酬型のモデルを確立したことで、他のファームにはない優位性を獲得できたのです」
プロレド・パートナーズのビジネスモデルが顧客企業にも歓迎されていることは、新規クライアントの受注率の高さにも表れている。固定報酬型のファームは、売上の大半を既存顧客で回しているのが現状だ。だが、プロレド・パートナーズは圧倒的に新規受注が多い。それが会社の売上全体を急成長させている要因でもある。
「我々が提案する成果報酬型コンサルティングは、はっきり言ってお客さまには断る理由がないんです。『この課題について、いつまでにどれくらいの成果を出すか』を明確に提示して、約束した成果が出なければ報酬は頂きませんというのですから、お客さまサイドのリスクはゼロ。だから新規の顧客でも『それならやってみよう』と思ってくださるのです」
特に受注が多いのが、企業再生案件だ。同社は国内外の大手再生ファンドのほとんどと取引があり、コンペでの受注率も極めて高い。その理由は、企業再生の実行段階までやり遂げ、期待された成果を必ず出すからだ。
「企業再生では、まずは赤字の改善が急務です。しかし大手戦略ファームが担うのは、財務データを分析して改善策を提案書にまとめるところまでで、実行フェーズには関わりません。でも、破綻しかけている会社の現場に実行段階を丸投げしても、成果を出すのは難しい。一方、我々は現場に入り込んで周囲の人たちを巻き込み、物事を実際に動かしながら、必ず“何年何月までにP/L上で何億円の利益を創出する“という結果にコミットします。再生ファンド側の危機感やスピード感を共有し、期待された成果を出せるところに、我々の大きなアドバンテージがあります」
将来的には企業の課題レベルに応じて、“成果報酬型コンサルティング(内科療法)”だけでなく、実際に投資を伴う“企業再生ファンド(外科手術)”事業も立ち上げ、企業ドクターとして解決策(処方箋)の幅をさらに広げていきたいと考えています。
こうした企業再生案件を手掛けることは、コンサルタントにとっても大きな醍醐味があると遠藤氏は話す。
「企業再生案件は、常に待ったなしの状況です。成果を出せなければ会社が存続できないのですから、再生主体となる企業側も本気度が違う。誰もが会社を変えたいという強い思いを持ち、これまで手をつけてこなかった領域も含めて会社を一から変革するプロセスを支援できるのは、我々にとっても非常にやりがいがあります。そして自ら現場に飛び込み、『どうすれば周囲の人たちが動いてくれるのか』を必死に考えることで、コンサルタント自身の人間力も磨かれる。
コンサルタントといえば正論とロジックだけが武器になると思われがちですが、実際に現場を動かすには、『あなたが言うことならやってあげるよ』と周囲の人たちに言ってもらえるだけの人間的な魅力や人との深い関わり方が必要です。これは提案書をまとめるだけのコンサルティングをしていたら決して身に付かない力であり、将来自分で起業したり、会社の経営に携わりたいと考える人には必須の能力。ですから、若手のうちから弊社で経験を積めば、どんな場面でも即戦力として結果を出せる人材になれます」
その言葉通り、同社では若手コンサルタントの育成にも力を入れる。新人の頃から案件を任せつつ、一人一人に指導役のマネジャーがついて手厚い指導やサポートを行う。個人主義の色合いが強いコンサルティング業界にあって、チームワークを重視しているのもプロレド・パートナーズの大きな特徴だ。
「我々が大事にしている価値観に“Compassion”があります。直訳すれば『思いやり』ですが、その言語の成り立ちはCompassion(=相手とpassionを共有する)です。要するに『クライアントや組織の仲間と一体感を持って、社会に貢献していこう』というマインドを持って欲しいということ。皆で一丸となって力を合わせ、どのコンサルティングファームよりも高い価値をお客様に届けたい。そんな我々の思いに共感してくれる人は、ぜひ弊社に参画してもらいたいと思います」
取材・文/塚田有香 撮影/桑原美樹