2018/3/6 更新 BCG流 キャリア&ライフデザイン論

プロアクティブにキャリアを創るために――本質思考と、覚悟と、やり抜く強さを持て【BCGパートナー/丹羽恵久氏】

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 自分らしいキャリア&ライフを確立したい。が、どうすればできるのか――?
 これから社会へ出た後、20代~30代でぶつかるであろうキャリア選択の課題について経営コンサルティングファーム・BCGのコンサルタントを中心に、第一線で活躍中のプロフェッショナルたちにその解決策や思考法を聞く。より良い人生を送るために、仕事とどう向き合い、キャリアを切り開いていくべきか、本質思考で考えてみよう。

 最終回となる今回のテーマは、オリンピックイヤー後のキャリア形成。少子高齢社会の本格到来による人手不足の常態化や、働き方改革、グローバル化やイノベーション追求の加速など、働く環境が猛スピードで変わる中、2020年の東京オリンピック開催までは好景気が続くと予測されている日本。ではその2020年の向こう側には何が待っているのだろうか? 現在新卒採用の責任者を務め、本連載を俯瞰してきたパートナーの丹羽恵久氏に話を聞いた。

【File.7】オリンピックイヤー後のビジネスパーソンに求められる要件とは?

ボストン コンサルティング グループ
パートナー&マネージング・ディレクター
丹羽恵久 氏

慶應義塾大学経済学部を卒業後、国際協力銀行、欧州系コンサルティングファームを経て、2004年にBCG入社。BCGパブリックセクターグループの日本リーダーや、ハイテク・メディア・通信グループのコアメンバーを務めるほか、組織・人材グループのコアメンバーとして人材採用や育成にも携わる。通信・メディア・エンターテインメントなどの業界の企業及び中央官庁・自治体・NPOに対して、デジタルサービス開発、アライアンス戦略、成長戦略、組織変革、経営人材育成などのプロジェクトを手掛けている

――約1年続いたこの連載企画も今回が最終回になります。丹羽さんは、これまでのインタビューで交わされる会話に耳を傾けてこらましたが、振り返ってみていかがでしょう?

 BCGの採用に携わる立場としても、省庁や先進企業の変革を見つめている人間としても、非常に興味深くインタビューの数々を傾聴しました。この連載企画では「これからの『働く』」がテーマでしたが、激動の時代における働き方やキャリア形成の在り方について、私自身もいろいろと考えさせられました。

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 全編を通じて感じたのは、皆それぞれの考え方を持って働き、転職なども経験しながら、自分ならではのキャリアを作り上げていた点です。

 例えば第2回に登場した学生の皆さんが、今どんなことを考え、何を知りたがっているのか、新鮮な思いで受け止めましたし、彼らと向き合うことで、私の知らなかった一面を見せてくれた当社の千田や日浦の話もまた、とても興味深かったです。

 また、第5回は経産省の菊池さんとクロスフィールズの小沼さん、そして元外務省のキャリアを持つ当社の石田による座談会でした。社会貢献をテーマにしながらさまざまな話題が登場しましたが、結局のところ「どこで働くか」ということよりも、「どう生きていくか」「どんなふうに社会と向き合うのか」を考えることが大切であるという意見には共感すると同時に、今この時代ならではのキャリア観の変化を強く感じました。

 第1回で当社の水越が発信した「これからは不確実性の時代。だから自分のキャリアや自分のブランドは、自ら考え、作り出し、磨いていかねばならない」という視点を、実はすでに多くの方が無意識のうちに備え、「自分ブランドの磨き方」を模索し始めているのではないでしょうか。

「ソフト」「ハード」「ハイブリッド」の3つで考えるスキルセット

――オリンピック開催が近づくにつれ、開催後に起こる社会や経済の変化についても、少しずつささやかかれるようになっています。今から2年後、就職やキャリア形成をめぐる環境にも変化がやってくるとお考えですか?

 2020年だから何かが突然変わる、ということはないと思います。しかし今現在、既に世の中全体で旧来のキャリア観は変化し始めてきており、この変化が一層顕著になるのが、2020年以降ではないかと感じています。

 連載の第3回にはPKSHA Technologyの上野山さんと当社の上山が、第4回にはBCGデジタルベンチャーズの平井と山敷が登場し、各自が歩んできたキャリアヒストリーや、今後についての考え方を語ってくれました。

 先端テクノロジー領域に携わる彼らの対話を聞いていると、キャリア形成のピークを、従来よりもずっと早いタイミングで意識していることが分かります。四者四様に異なる発想や認識はあるにせよ、少なくともこれまでの日本のビジネスパーソンに根付いていたものとは明らかに違うキャリア観を持っています。

 終身雇用を前提にしていた時代は、40~50代に自分のキャリアのピークが訪れるようなビジョンを描くのが当たり前でした。しかし、今の時代は全く異なるスピード感で動いています。

――キャリアを構築していくための道のりである成長曲線。それを上り坂に例えるならば、坂道の勾配が以前よりも急になっている、ということでしょうか?

 そうですね。近年の欧米の実情を見れば分かりやすいでしょう。例えば、大学の学部卒でいわゆるシリコンバレーのテック企業に入社して、いきなり責任あるポジションを任され、高額な年収を受け取ったり、大学在学中に設立したベンチャーで画期的なアプリ等を開発して大成功しているようなケースがいくつも生まれています。彼らは社会人になってすぐに、あるいはまだ学生のうちから、キャリア形成の上り坂を一気に駆け上がっています。

 一方、これまでの日本はどうだったでしょう? 大学3~4年生になってから初めて社会に出て行くことを意識し始め、「ヨーイ、ドン!」で始まる一括採用のプロセスを経て会社に入った後、少しずつ経験を積みながら、皆が同じ足並みでゆっくりと成長をしてきました。

 もともと日本は、学校教育と社会人教育が分断された構造です。学生時代は学業に専念し、仕事やキャリアについては社会に出た後に学べば良い、という考え方をしていました。終身雇用を謳う企業は、学生たちをポテンシャル採用し、就職後に10年、20年という長い時間をかけて一から育てることが当たり前だったのです。

 しかし、日本の社会も変化の時機を迎えています。企業の体力は昔ほど堅牢ではなくなっており、テクノロジーの進化によってビジネスが目まぐるしく変化していく中で、これまでのような悠長な人材育成では国際的競争力も失ってしまう。新卒入社社員にも即戦力としての活躍がより期待されてくるでしょう。また、かつてはスーパージェネラリストが優秀な社員とされていましたが、その価値観も変わりつつあります。これからは、強みとなる専門性を備えたエキスパートこそが高く評価されていく環境になっていくはずです。

 そうなれば当然、学歴で判断するようなポテンシャル採用ではなく、真に活躍できる人材を見極めて採用する必要が出てきます。特に、インターンシップの在り方などは大きく変容する可能性があります。

――今後、就職の形が大きく変化していくことが予測される中、これから就職活動を始める学生たちには、何が必要になってくると思いますか?

 学生のうちから、自分の強みを認識することが重要だと考えます。これからの時代、プロフェッショナルなビジネスパーソンであるために必要な要件を、私は「ソフト」「ハード」「ハイブリッド」の3つの側面で捉えています。この中のどれを自分の強みとして磨いていくか、整理してみてほしいのです。

「ソフト」、つまり内面的な部分で言えば、アダプティブ・ケイパビリティー(環境適応能力)を高めていくことが重要になるでしょう。つまり、物事を柔軟に考え、臨機応変に問題解決をしていく能力や心構えです。

 一方、「ハード」とはモノを創る力や知識のこと。例えば、今やどんなビジネスにおいてもデジタル領域の知見が必要とされる時代です。その領域に関する技術的なスキル、もしくは一定の知識を蓄えることは必要になってくると思います。

 そしてハイブリッドとは、文字通り、このソフトとハードとをつないでいく資質や能力のこと。英語をはじめとする言語能力などは典型例で、英語のテストの点数の高低などではなく、言語を通して「正しくコミュニケーションできるか」が大事です。連載の第6回でユニ・チャームの横関さんや当社の滝澤が示していたような、異文化との向き合い方もその一例と言えます。

 以上の3つの側面から、自己の強みを把握し、高めていく学生が、キャリア構築において大きなアドバンテージを持つようになると私は考えています。また企業側も、これらの力量を正しく評価し、質の高い採用活動を実現できる企業が、競争力を高めていけると思います。

 オリンピックを間近に控え、メディアなどでは「オリンピック開催後には今の好景気も一旦終息するだろう」という論調が目立っています。世界各国の過去の事例を見ても、自国開催のオリンピック終了後に不況が訪れている例が多いからです。

 私自身はそうした単純な発想に疑問も持っていますが、もし仮に不景気がやって来れば、企業の採用方針もガラリと変わります。「本当に活躍してくれる人材だけを見極めよう」と採用を絞る姿勢が強まる。こうした局面になればなおさら、ソフト、ハード、ハイブリッドの能力をきちんと示せることは重要になってくるはずです。

キャリア&ライフデザインは曖昧でいい。どう曖昧かを認識せよ

――ソフト、ハード、ハイブリッドを高めていくために、学生のうちにできることはどんなことでしょうか?

 特別なことではありません。例えば、昨今では多くの若者が留学を経験したり、NPO活動に参画しています。このような場で異文化や多様な価値観と向き合う体験をすることによって、ソフトやハイブリッドの側面を鍛えていくことは可能です。また、本を読むことでさまざまな知識を得ることもお勧めします。

 ただし、そうした機会に恵まれても、学びへと昇華されていないケースも散見されます。ただ「留学しただけ」「本を読んだだけ」では、学びにはなっていません。重要なのは、本質的なモノの見方、論理的思考力があるか否かです。正しい解釈や知見を得るためには、多面的に物事を見て、その上で自分はこう思う、なぜならば……と言えるレベルになること。これがまず大前提です。まずは、自分自身のベースとなる“考える力”を養うことが何より重要だと思います。

――先ほど、インターンシップの在り方も変わっていくだろう、というお話がありました。具体的にはどのような変化が訪れるとお考えでしょうか?

 近年は人手不足の実情もあって、学生側は志望企業に入りやすい状況が生まれているはずなのですが、企業と接触する機会を春の説明会からつくり始めるのではなく、それより前の時期に実施されるインターンシップにも参加する傾向が、ここ数年でむしろ強まっています。

 この現象が意味しているのは、「企業に採用してもらう」という従来の学生側のスタンスが、「自分にとって相応しい企業をしっかり見極める」というものへと移行しつつあるということです。「説明会と面接だけで自分の働く場を決めたくない」と思うからこそ、インターンシップや各種の就職関連イベントに足を向ける学生が増えているのだと私は捉えています。

 同じような心理変化は企業にも起きています。「1人でも多くの人材を確保したい」という量的な発想の企業もありますが、「『誰でもいいから採用したい』のではなく、真に有望な人材と出会いたい。そのためにも自分たちのビジネスやそれを支える理念や価値観をしっかりと発信して、共感してくれる学生と向き合いたい」と考える企業が圧倒的に多い。そして、このような思いがあるからこそ、良質なインターンシップを実施して参加者を募るところが増えているのです。

 おそらくこうした就職する側と採用する側の変化は、今後ますます加速すると考えていますが、学生側の目線で考える時、懸念していることも私にはあります。それは「とりあえずインターンシップに数多く参加してみる」という発想では駄目だ、ということです。

 先程も申し上げたように、インターンシップを開催する企業側は、真に価値観を共有できる学生と出会うことを目指しています。私たちBCGも、まさにそういうスタンスでいます。闇雲にたくさん参加するのではなく、「自分がイメージするキャリアビジョンに適した場はどこなのか」をしっかり見極めるための貴重な機会としていかなければいけません。

 さらに今後は、学生自身が「本来持っている自分のポテンシャルを企業側へ伝える場」へと進化していくと見ています。これまで以上に、学生側には自分が持つ能力や伸びしろを発信する力、企業側にはそれを正しく見定める力が必要になるでしょう。

――最後に、変化の激しい時代に、自分らしくキャリアを築いていくために必要なこととは何だとお考えでしょうか?

 冒頭でも水越のコメントに触れましたが、これからは「自分のキャリアに自分で責任を持たなければいけない時代」です。受け身にならず、一人一人がプロアクティブにキャリアを創ることが何よりも大事であると考えます。

 この連載企画のタイトルでもある「キャリア&ライフデザイン」というものを、学生のうちから明確にイメージし、ビジョンを持つことは容易ではないでしょう。私自身、学生時代にそんな立派なものを持ってはいませんでした。

 しかし、これからキャリアをスタートする人たちにとっては非常に重要なものになるはずです。自分なりのキャリアイメージや人生設計というものに取り組みつつ、そのために必要なものは何かを考え、同時に今の自分に不足しているものも見つけ出し、「それをどこで、どんな人たちに囲まれながら、どうやって手に入れるのか」を考えなければいけません。

 最初はモヤモヤした曖昧な中身でも構わないのです。ただし、「“何”がやりたいかはあるが、“どうやれば”できるかは分からない」なのか、「“何”がやりたいかはまだ分からないけれど、絶対に見つけたい」なのか、曖昧さの中身を明確に認識することは必要です。自分の立ち位置を正確に把握できれば、次第に次のステップが見えてくるはずです。

 そのためには、自分に足りないものを素直に認める姿勢とそれを補う努力や工夫、そして腹をくくり、責任を持って自分の選択したキャリアと人生を全うする。そうした“強さ”がこれからの学生には不可欠だと思います。私としても、そのような学生と出会える場を今後ますます模索していきますし、巡り会えた方々と共に、このBCGを通じて成長していきたいと望んでいます。

取材・文/森川直樹、撮影/竹井俊晴

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