ビジネスパーソンの転換点を深掘り
キャリアの成長 Before/After
効率や最短ルートの追求だけが「いい仕事」なのか? ビジネスパーソンとしての成長は、試行錯誤を必要とする困難や挑戦を乗り越えた先にあるはずだ。
本特集では、各企業の第一線で活躍する社員のキャリアにおける成長のBefore/Afterを深掘り。彼らが壁を乗り越え、飛躍を遂げたリアルな姿から、効率だけでは語れない仕事の奥深さと、確かな成長イメージを学ぶ。

(元 コンシューマービジネス連携タスクフォース)


より良いプロジェクトをつくる
大規模プロジェクトでスピード感を求められる日々
自分らしさを発揮できないもどかしさを感じた
日本総合研究所(以下、日本総研)はSMBCグループのIT中核企業として、三井住友銀行アプリをはじめとしたグループのシステム開発・運用を行っている会社です。私は「システムの中身が分かるプロジェクトマネジャー(PM)になりたい」という目標があったため、プログラミングを行うエンジニアとしてキャリアをスタートしました。
そんな私の転換点は、入社4年目にPMとして担当した三井住友銀行アプリの大規模リニューアル案件。この経験が、私の仕事への向き合い方を大きく変えました。
このプロジェクトは、グループ企業や日本総研の他部署の関係者を含めると総勢100人を超える規模。金融インフラのため、リリース後にトラブルを起こすシステムをつくってはいけないという緊張感はもちろんありますが、それと同時にポイントやカードなど多機能を搭載するアプリをつくる上で圧倒的なスピードが求められました。2週間という短いサイクルの中で、課題があればすぐに代替案を出して、次につなげる。プロジェクト内で最も年次が若くPM経験も浅かった私は、「誰に何を相談すればいいのか」「隣のチームと比較して、自チームの進捗が順調か」という判断ができませんでした。エンジニアとしての現場経験をどうプロジェクトマネジメントに役立てるか以前に、目の前のタスクを処理することに追われていたのです。機能ごとに分割されたチーム間の連携、銀行員との前提知識の違い、UI/UXデザインの統一など、PMとしての技量を問われる場面が数多く発生しました。それぞれが専門性を追求しながらも、一つのアプリを完成させるために共通認識を持たなければならない環境の中、周りの先輩を見てみると「全員が同じゴールに向かう」という理想の状態から、逆算して行動していることに気付きました。例えば、チーム全体の目線がブレないよう他部署向けのルールを一から策定したり、自分の業務と一見関係のない分野の打ち合わせに参加したり。自分とは異なる視点を持つ相手の立場に立ち、理解しやすい言葉で対話を試みていたのです。そのような先輩の行動を観察し、まねをしながら、各現場での判断の背景にある意図を理解しようと心がけました。実際に手を動かしながら学ぶうちに、プロジェクトに潜む問題の兆候を感じ取れるようになり、先を見通す感覚が身に付いていきました。それまでの現場経験が、ようやく活かせるようになったのです。例えば、スケジュール遅延に対しては、打ち合わせでより現実的な改善案を提示する。個々のタスクに関する議論では、効率化につながる具体的な提案を積極的に行う。そうした場面で、以前とは明らかに違う手応えを感じられるようになりました。プロジェクト全体のあるべき姿を描き、そこから逆算して問題解決の方法を見つけ出す。この一連のプロセスこそが、私が理想としていた「システムの中身がわかるPM」への道筋だと実感できた貴重な経験でした。
日本総研には、自身の業務に関係なくても、知見や過去の事例を積極的に共有し合う雰囲気があります。今後は私もその意思を後輩たちにつなぎ、その先に、会社や社会に貢献できるプロジェクトをつくっていくことを目標にしています。