2024/1/15 更新 地主株式会社

ポーター賞受賞で注目を集める『JINUSHIビジネス』が事業を成長させる理由

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従来の不動産ビジネスとは一線を画す『JINUSHIビジネス』を手掛ける地主株式会社。業界内ではビジネスモデルの独自性と収益性の高さは指折りの存在だったが、2023年度ポーター賞の受賞を契機にその存在は広く知られるようになった。創業から22年を経た22年に社名を「日本商業開発」から「地主」へ改めると同時に、創業者から代表の座を引き継いだ西羅曜旦氏は、次の20年を視野にビジネスモデルに磨きを掛けようと意気込む。代表就任から丸2年を迎える24年3月を前に、地主株式会社のいまとこれからについて聞いた。

地主株式会社 代表取締役社長
西羅 曜旦 氏

1974年奈良県生まれ。98年甲南大学法学部卒業。98年兼松都市開発株式会社入社。2000年日本商業開発株式会社(現・地主株式会社)入社。16年地主アセットマネジメント株式会社代表取締役社長。22年3月より現職。

提供しているのは、土地ではなく優れた不動産金融商品であるという自負

私たちは土地のみに投資するビジネスを手掛けています。東証プライム市場の業種区分では「不動産業」に分類されていますから、私たちを不動産業と認識されるのは決して間違いではありません。しかし過去20年以上にわたってこのビジネスを営んできた当事者としては少し違う考えを持っています。

なぜなら土地の売買や賃借は、われわれのビジネスモデルを成立させるための構成要素に過ぎないからです。

実際、そんなお話をすると「不動産業でないなら一体何の商売をしているのだ?」と、よく聞き返されます。もっともな質問です。そんな問い掛けに対して私は普段こんなふうにお答えするようにしています。

「テナントさんからいただく借地料を長期安定の不動産金融商品として投資家に提供している会社です」と。

一般に不動産業は、保有する土地や建物を貸したり売ったり管理することで収益を得るものです。しかし私たちは違います。私たちは売却益を狙い高騰しそうな土地を買うこともなければ、購入した土地に建物を建てることすらしないからです。

では何をしているのか?

簡単にいうと、テナントさんと長期の定期賃貸借契約を結び、底地というJINUSHIビジネス商品を組成した上で、グループ会社が運用する国内唯一の底地特化型の私募リートである「地主リート」などに土地を売却し、投資家の資金を運用しています。

「地主リート」は、投資家から集めた資金で不動産(底地)を取得し、そこから得た借地料収入を投資家に配当する

建物の建設や維持管理は、その土地で長く商売を営むことを前提としたテナントさん自身が行います。当社は建設費や人件費、光熱費の高騰など、維持管理にまつわる想定外のリスクを抑えることができるほか、追加投資も一切必要ありません。

私たちは「地主」に徹することで、投資家の皆さんに、安定的なキャッシュフローが長期にわたって見込める不動産金融商品を提供しているのです。

私たちはこのビジネスを『JINUSHIビジネス』と名付けました。

しかし当初、このビジネスモデルに対する評価は散々なものでした。「ビジネスとして成り立つはずがない」とまで言われたものです。

なぜなら、それまでの不動産業界の常識では、貸すことを前提に土地を所有することは前例がなく、底地のマーケットも無かったのです。土地は更地の状態でこそ高い価値があると考えられていて、その土地を貸出して第三者に建物を建ててもらうといったことは、むしろ土地の価値を棄損する行為だと考えられていたのです。

もちろん土地の価値は、その上に建つ建物やお借りいただくテナントさんによって左右される面があるのは否めません。しかし、魅力的な立地の土地を優良なテナントさんにお貸しすれば、長期にわたり安定した収益を生み出せます。万が一テナントさんが撤退したとしても、定期借地権契約に基づきお貸しした土地を更地にして返還していただければ、転用性が高い土地を選んでいるため、新たなテナントさんに貸すことも可能です。

つまりJINUSHIビジネスは、不動産業界の常識に対する挑戦であり、その挑戦こそが従来の不動産業とは一線を画す独自のビジネスモデルを生み出す原動力になりました。

このJINUSHIビジネスの自然災害やマーケットボラティリティに強い商品性は、リーマンショックで光が当たり、東日本大震災やチャイナショック、コロナ禍による経済的混乱のさなかで評価を高めてきました。

ポーター賞の受賞でつかんだ業界のイノベーターという称号

みなさんは「ポーター賞」をご存じでしょうか。アメリカの著名な経済学者であるマイケル・ポーター氏の名を冠したこの賞は、優れた戦略と独自性のあるビジネスモデルによって高収益を実現した企業に贈られる賞として、広くビジネス界で知られています。

これまでさまざまな業界の優良企業が受賞され、このたび当社もその中に名を連ねることができました。

受賞の知らせを受けたときは、喜びのあまり思わずガッツポーズしたほどです。これでようやく異端児ではなく、イノベーターとして認めていただけたのだと思わずにはいられませんでした。

もちろんポーター賞の受賞によって、私たちのビジネスが変わることはありません。先ほどもお話しした通り、JINUSHIビジネスは世の中の流行廃りとは一線を画した長期安定型のビジネスだからです。

しかし社会情勢やビジネス環境はダイナミックに変化します。未来の不確実性が高まるなか、市場における価格変動が小さく、長く安定した収益が見込めるJINUSHIビジネスの存在意義はますます高まるばかりです。

注目しているのは投資家の皆さんだけではありません。JINUSHIビジネスは、出店場所を求めるテナントさんからも熱い視線を集めています。長く地域に親しまれるサービスを提供するにはビジネスの基盤となる土地の確保が欠かせないからです。

事実、アップサイドやキャピタルゲインを狙わない安定地主である私たちの存在を知って、お付き合いしたいとおっしゃっていただけるテナントさんの数は年々増えています。

苦しい時期を経験しても、諦めることなく今日まで歩みを進めてこられたのは、正しいことを続けていれば必ず道は開けると信じてきたからです。いまその時の努力がようやく実を結ぼうとしています。

投資家の皆さんにとっても、テナントさんの皆さんにとってもビジネスパートナーとして選ばれる存在であり続けること。それが「地主リートの成長とともに日本の大地主になる」ことを目指す私たちの願いです。

正しい目的のために正しいやり方を貫く信念と志があるか

私たちはこれからも確信を持ってJINUSHIビジネスに邁進していくつもりですが、過去20年あまりの歴史の上にあぐらをかき続けるつもりはありません。

18年には少子高齢化による人口減少を見越してアメリカに拠点を新設し、海外でのチャレンジを始め、22年からはテナントさんと結ぶ定期借地権契約書に、電気自動車の充電設備や太陽光パネルの設置、駐車場や屋上の緑化などのESG条項の追加をお願いするなど、常に進化することを考えて実行しています。

すべては「地主リートの成長とともに日本の大地主になる」という目標から逆算し、その名にふさわしい存在になるために必要と思われる選択を重ねた結果です。

2023年7月、大阪から新丸の内ビルに本社機能を移転。東京を起点にさらなる業務拡大を狙う

2022年2月に発表した中期経営計画書には「26年度に純利益70億円、地主リートの資産規模3,000億円を目指す」とありますが、私自身、その数字は通過点に過ぎないと考えています。2倍、3倍の規模を目指せるだけのポテンシャルがあると確信しているからです。

いま私たちが求めているのは、まさにこれからの20年の成長を支え、私たちの会社を名実ともに「日本の大地主」に押し上げてくれる人材です。

実は今年、ポーター賞の受賞以外にもうれしいことがありました。新卒採用で入社した社員の皆が稼ぎ、活躍しだしたのです。

もちろん期待していなかったわけではありませんが、この活躍に創業期を知る者としては感慨もひとしおでした。これまでの歩みが花開こうとしている。そう感じずにはいられませんでした。

私たちの会社には年功序列という言葉がありません。会社に貢献した社員は入社年次にかかわらず適正に評価されます。

私たちが皆さんに提供するのは、公正な評価と業界水準を超える報酬、それに見合うやりがいのある仕事です。そしてその先には将来の経営幹部としてのキャリアが続いています。

私たちが求めるのは、正しい目的のために正しいやり方を貫く信念と志を持った人材です。特別な能力はいりません。嘘をつかず、開き直らず、愚直なまでに真っ直ぐ課題と向き合うことは強く求めます。

これをチャンスと捉えるかはあなた次第。狭き門にあえて挑もうという野心的な方にお会いできることを楽しみにしています。

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