超AI時代に企業はどう備えるか
経営者たちの課題と挑戦Society5.0の実現を目指す「AI戦略」を国が発表した。 産業分野におけるAI化の促進や、AI人材の育成がさらに加速していく見込みだ。 そんな中で、企業を取り巻くビジネス環境はどのように変化し、それに対してどのような打ち手が必要となるのか。 経営層が持つ課題意識や、今後のビジョンを知り、各社の企業理解を深めよう。
われわれコニカミノルタが、かつて3000億円規模を誇ったカメラ・フォト事業から撤退したのは2007年。100年以上の歴史を持つ創業事業を手放してまで私たちが取り組んだのは、モノ売りビジネスからの転換でした。光学技術や映像技術を生かした産業向けサービス提供ビジネスへのシフトチェンジという決断から10年あまり。今われわれは、再び大きな変化の時を迎えようとしています。
この10年というもの、コニカミノルタは、複合機ビジネスを軸として、オフィス向けITサービス事業や、産業印刷事業、産業用光学事業、バイオヘルスケア事業といった新領域の開拓に注力してきました。この過程で私たちは、デジタルテクノロジーの急速な発展を目の当たりにしてきたのです。今後、デジタルテクノロジーを抜きにして、クライアントの抱えている課題を解決していくことが難しくなることが明確な世の中になっていくでしょう。しかし、コニカミノルタには、ITサービス開発を専門とするITエンジニアがほとんどいない状態だったのです。
そこで私たちは、国内外の有力テックカンパニーから優秀なITエンジニアを集め始めることにしました。理由は、IT、AI、IoT、データサイエンス、ロボティクスといったデジタルテクノロジーを、われわれコニカミノルタの新たなコアテクノロジーにするためです。
そして、次なる自己変革の口火を切るために私たちが選んだのは、画像IoT技術を生かしたサービス提供ビジネス。新たな挑戦に向けて、社内にITエンジニアやシステムアーキテクト、データサイエンティストなどからなる専門チームを組織し、開発に乗り出しました。
16年、その成果の一つが生まれます。現在、介護事業所向けに提供している、高齢入居者の見守りサービス「ケアサポートソリューション」です。ケアサポートソリューションは、独自開発した行動分析アルゴリズムと各種センサー、スマートフォンを組み合わせ、介護士さんたちの負担を軽くし、高齢者の安全に寄与するサービスです。将来的には集めたデータを深層学習で解析して病気や事故の予兆をお知らせできるようなサービスに育てる計画が今まさに進んでいます。
また、18年秋から欧米8カ国と日本で順次発売を開始している『Workplace HUB(WPH)』があります。これは、社内IT人材がおらず、ワークフロー改革が進まない中小企業向けに専用プラットホームを提供し、複合機、PC、スマートフォン、クラウドを接続。ファイル管理やネットワークインフラの運用、事務処理の自動化といった、ニーズの高いアプリケーションを容易に開発、利用、共有することを可能にしたものです。
コニカミノルタは、プロダクトアウト型のハードウェアメーカーから、情報技術を駆使する「課題提起型のデジタルカンパニー」へと進化しようとしているのです。
今コニカミノルタは、得意とする画像技術や光学技術とデジタルテクノロジーを掛け合わせたサービスによって、パートナー企業の皆さんやクライアントと手を携え、これまでとは全く異なる、新たな関係性の構築に取り組んでいます。
今後、私たちが目指すのは、最先端の技術を使って少子高齢化や働き方の多様性がもたらす、社会課題や事業課題をソフトとハードの力で解決していくこと。これを実現するには、クライアントのもとに足を運び課題を見つけ、解決に導けるエンジニアや、創業から145年以上にわたって磨き続けている、既存事業に蓄えられた技術、ノウハウを新たな領域で展開しようという意欲に燃える、プロデューサー的な人材が必要になってくるのです。
私たちコニカミノルタは、すでに世界150の国々で、中小企業を中心に200万ものクライアントを抱えている会社です。私たちは業務の効率化や、働き方に課題を抱えているクライアントの悩みに寄り添い、ITの力を活用して、迅速にお応えすることにこそ、コニカミノルタの未来があると確信しています。
いつの日か、世界中のオフィスから、紙とトナーを必要とする複写機が消える時代がやってくるかもしれません。しかしながら、先ほど例に挙げたWPHのようなソリューションがその突破口となり得るかもしれません。そして仮にそれが現実になったとしても、私たちは自らのビジネスモデルを変えたことを後悔することはないでしょう。なぜならば、他社にビジネスをディスラプト(破壊)されるくらいなら、自らの手でディスラプトするのがコニカミノルタのDNAだからです。
私たちは常に新しいビジネスモデルを模索し続け、これまでもこれからも必要とあれば自らが変わることを厭いません。「世界を舞台にクライアントのデジタルトランスフォーメーションを支援したい」、「困難な社会問題を自らの技術と手腕で解決に導きたい」。コニカミノルタは、そんな強い思いを持った方と一緒に変化を楽しみたいと思っています。