ビジネスプロフェッショナルが解説
「真の企業力」を見抜く方法
会社の良しあしは「知名度」だけでは測れない。これから先も長く発展し続ける会社、急成長を遂げる可能性を秘めた伸びしろのある会社は、どうすれば見極められるのだろうか。企業経営、組織開発・採用のプロフェッショナルたちが、各社の事例を用いて「真の企業力」を見抜く方法を解説。インターンシップで確認すべきポイントも紹介する。

課長代理
社会に必要な価値を生み出し続けられる
発想力と実行力を持つ人材の育成に注力
日本の輸出入の99.6%を担う海上輸送は、経済活動になくてはならない生命線。食料やエネルギーなど、私たちの暮らしを支える資源を輸送するため、現在も多くの船が世界中の海を航行しています。私たち日本郵船は、世界最大級を誇る800隻以上の船舶を運航しており、物流インフラとして重要な役割を果たす海運業界において確かな地位を築いてきました。さらに、海運だけでなく、陸上や航空などあらゆる輸送網を組み合わせることで、世界中をつなぐ総合物流企業として成長を続けています。私たちの活躍のフィールドはまさに地球規模といっても過言ではありません。
日本郵船は2025年で創業140周年を迎えますが、現在に至るまで世界情勢の変化に適応し、数多くの困難を乗り越えてきました。そして現在も、脱炭素化やAIの急速な進化といった社会の大きな変化に対応すべく、さらなる進化を続けています。23年に発表した中期経営計画では、既存中核事業の深化と新規成長事業の創出を基軸戦略として策定。業界内での競争力を高めるとともに、新たな技術やサービスの開発に積極的に取り組んでいます。
代表的な新規事業の一つが、世界初となるアンモニア燃料船の開発。企業が持続可能な成長を続けていくため、海運業界においても温室効果ガスの排出量削減は早急に取り組むべき課題です。こうした背景を踏まえ私たちは、新設部署である次世代燃料ビジネスグループを中心に、温室効果ガスの削減目標を達成する上で有効な次世代エネルギーを模索してきたのです。数ある可能性の中で着目したのが、燃焼時にCO2を排出しないアンモニア。世界的に前例のない取り組みだったため決して平たんな道のりではありませんでしたが、幾度の困難を乗り越えて24年ついに、世界初の商用利用を前提としたアンモニア燃料船が竣工しました。
また、既存事業の枠を超えて、宇宙事業への挑戦にも取り組んでいます。陸上でのロケット打ち上げは多くの制約があり、打ち上げたいタイミングや方向を調整できないという課題があります。そうした課題の打開策となるのが、船を活用した洋上でのロケット打ち上げ。洋上で打ち上げることができれば、国土から遠ざかることによって安全性を担保できるためさまざまな制約がなくなり、好きな時に好きな方向にロケットを打ち上げることができるのです。『NYKデジタルアカデミー』という起業家育成と新規事業創出を目的とした社内研修プログラムから生まれたこのプロジェクトは、現在、JAXAとの共同研究で実用化に向けた開発が進められています。
その他にも、AI技術を駆使した無人運航船プロジェクトや電子通貨を用いた船員向け金融プラットフォームの構築など、日本郵船が多くの革新的なビジネスに挑めるのは、強固な事業基盤があるからこそ。世界46カ国650拠点に広がる物流ネットワークや140年という歴史の中で培ってきた海運業のノウハウと先進技術を組み合わせることで、社会に新たな価値を生み出し続けているのです。
多様な経験と挑戦の場を通じて
自律的に強みを磨けるキャリア形成を支援
激動の時代において、企業の持続的成長に欠かせないのは変化し続けることです。そして、その変革を支えるのは、いつの時代も「人」にほかなりません。私たちは今、柔軟な発想をもとに変革を強力にリードできる人材を育成するため、自律的なキャリア形成を促し、自分にとって必要な自己研さんを実行できる組織体制を整えています。
日本郵船の教育制度を語る上で外せないのがジョブローテーション制度です。運航管理や船隊整備、資金調達や契約法務といったさまざまな職種の経験を通じて、自身の軸となる強みを複数習得し、厚みのあるキャリアを築くことができます。23年からは、若手社員を対象に公募を行い、海外拠点を中心としたチャレンジングなポジションへ配置する『グローバルチャレンジプログラム』を導入。国内本社と海外のグループ子会社間での人材交流を加速させることで、若手のうちからグローバルな視点を養える環境をつくっています。そして、冒頭でお話しした次世代燃料ビジネスグループやNYKデジタルアカデミーなど、新たなビジネス創出に関わる機会も増えています。こうした多様な挑戦の機会を設けることで、社員一人一人が持つ個性と可能性を最大限に引き出し、企業としての競争力を高めているのです。
ここまでお伝えしたことを踏まえて、学生の皆さんには、企業選びの際に注目してほしいポイントがあります。それは、「社会が求める価値を生み出し続けようとする姿勢」と「社員の挑戦を促す制度や風土」です。しかし、この2点はインターネットから得られる情報だけでは深く理解するのが難しいかもしれません。だからこそ、企業の価値観に直接触れることができ、現場社員と直接話せるインターンシップを活用することをお勧めします。その際、企業がどれほどひたむきに変革を進め、社員がどのような挑戦に取り組んでいるのかを肌で感じてみてください。インターンシップでこうした点に着目すれば、自分に合った職場か判断しやすくなるでしょう。
制作担当/柳沼優里

陸上職事務系・陸上職技術系・海上職の職種ごとにインターンシップを開催。社員との対話を通じて、実際の仕事や雰囲気について理解を深めるプログラム
インターンシップMUST DOリスト
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自己分析を通して
譲れない条件を明確にする自分にとって最適な企業を判断するためには、自己理解を深めることが重要。インターンシップへ参加する前に、まずは学生時代を振り返りましょう。得意・不得意や気分が上がる瞬間など自分の価値観を整理することで、働く上で大切にしたいポイントが明確になります。
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2
理想の働き方から逆算して
質問内容を考える「若手のうちから裁量の大きな仕事を任せてもらえるのか?」「子育てと仕事を両立しやすいか?」など、自分の価値観やライフプランを踏まえて明確にしたい点を質問しましょう。そうすることで、自分らしく働ける会社かどうかが見えてくるはずです。
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3
社員同士の会話から
人間関係や風土を読み取る困難な出来事も、信頼の置ける仲間と共に取り組めば乗り越えられます。だからこそ、会社選びにおいて人間関係や企業風土は重要です。インターンシップの休憩時などに、社員同士の何げない会話に注目してみてください。リアルな職場の雰囲気を感じ取れます。