テクノロジーが目まぐるしいスピードで進化する中、「IT系の技術や知見を身に付けたい」と考える学生は少なくない。だが、文系学生の中にはIT業界就職に敷居の高さを感じている人もいるのでは?
そんな人に紹介したいのが、Salesforceのソリューション・エンジニア。ビジネスとITの両方のスキルと知見を生かし、顧客の経営課題を解決する仕事だ。
そこにはどんなやりがいがあるのか。本当に文系出身でも長く活躍できるのかーー。文系・理系双方の若手のソリューション・エンジニアに話を聞いた。
ーーお二人はどのような学生でしたか?
渡辺:私は経営学を専攻していました。高校からずっと文系でしたね。勉強の他には、サークル活動の一環でミュージカルをやっていて、歌やダンスの練習に力を入れていました。
林:私は車が好きで、大学では工学部機械科に入りました。その後日本とアメリカのそれぞれで大学院に進み、そのままアメリカの自動車業界で働こうと考えていました。
ところが、私が卒業する頃はちょうどガソリン車から電気自動車への移行が現実味を帯びてきた時期。改めて進路を考えた結果、成長分野であるIT業界に興味を持つようになり、その中でSalesforceと出会いました。
Salesforceは他社と比べてビジョンが明確にあり、ワークライフバランスや社会貢献に力を入れていたことが決め手になりましたね。
ーー渡辺さんはなぜSalesforceを選んだのでしょう?
渡辺:私はたまたま参加した大学のキャリアイベントでSalesforceの話を聞く機会があり、興味を持ちました。
当時は営業職に対して強引に売りつけるような偏ったイメージがあったのですが、Salesforceは売って終わりではなく、「使い続けてもらい、お客さまの成功を実現する」ことを重視していました。
「文系=営業職」の印象が強かったこともあり、「この会社だったら、営業系の職種でもいいかもしれない」と思ったことが大きかったですね。
ーー結果的に営業ではなく、ソリューション・エンジニアを選んだのはなぜですか?
渡辺:私は「お客さまにいかに製品を使い続けてもらい、成功してもらうか」を考えることに興味があったのですが、それは技術系職種の領域でした。
IT企業で働けるような知識はなく、IT企業でのインターン経験もない私にとってはチャレンジでしたが、会社説明会などで話を聞いているうちにお客さまと接しながら営業と技術の双方の知見を身に付けられることを知り、思い切って応募をしました。
Salesforceは研修が充実していることに加え、『Trailhead』という無料のオンライン学習ツールをはじめ、自分でキャッチアップできる環境が十分にあります。だからこそ「チャレンジしてみよう」と思えましたね。
渡辺:実際に入社後は『ITパスポート試験』の勉強を通じて基本的な知識を学びながら、ソリューション・エンジニア向けの研修でSalesforceの製品に特化した認定資格の勉強をしたり、実際にデモを作ってプレゼン練習をしたりと、キャッチアップできました。
林:私の場合、実は最初は営業職で応募をしました。学生時代の研究でプログラミングは多少やっていたものの、苦手意識があったんです。
ただ、選考の中で技術職を提案いただき、Salesforceが求めている技術職は開発に限らず、お客さまへの提案や運用面での技術的なサポートも含まれることを知りました。私の場合、理系のバックグラウンドを生かしながらビジネス面も学べる点を魅力に感じましたね。
ーーソリューション・エンジニアは一般的にプリセールスと呼ばれる仕事と前回の取材で伺いました。基本的な仕事の流れを教えてください。
渡辺:お客さまのニーズを伺い、それに対する現状を確認し、デモ(お客さま向けにカスタマイズした実際のSalesforce製品)を作り、提案するのが大きな流れです。
ただ、時にはお客さまが課題を整理し切れていないこともあります。その場合は営業とソリューション・エンジニアで「こういうニュースが出ていたから、これに困っているのでは?」と仮説を立てながら、お客さまのニーズを探ることもします。
林:お客さまにヒアリングを行いつつ、同じ業界の事例を社内で探し、課題の当たりをつけることも重要ですよね。そうやって課題を把握した上で、さらにその課題を深堀ったり裏側を読み取ったりする力も求められるなと思います。
ーー課題を整理して、デモを作って提案し、仕様が固まるまでにどのくらいかかるのでしょうか?
渡辺:案件によりますが、ほとんどの場合は数週間〜1カ月くらいでしょうか。Salesforceの製品はコードを書くわけではなく、クリック操作でカスタマイズができるので、最短で1週間後にデモをお見せすることもあり、スピード感があります。
実際にデモをお見せする際も、「ここはもっとこうしたい」といったお客さまの要望にその場で応えられるので、やりとりもスムーズですね。
ーーソリューション・エンジニアとして働く中で、どんなときにやりがいを感じますか?
林:自分が提案し、採用されたサービスがローンチされた時に、「世の中に影響を与えている」という実感が得られます。
私は今、警備業界を主に担当しているのですが、お客さまには『Salesforceの林さん』として認識・信頼していただいており、業務を変えるお客さま側のメンバーの一人として動けています。提案時はデモをお見せしながら説明をするのですが、そこで提案した要素が実際のサービスに反映されることも多々あって。サービスを利用するユーザーはかなりの数になるので、インパクトはとても大きいです。
提案したサービスがニュースに取り上げられることもあり、影響力を感じられるのは、大きな魅力だと思います。
渡辺:ソリューション・エンジニアは地道なステップを積み重ね、最終的な受注を実現することが目的ですが、その一つ一つの過程が楽しいなと思っています。
私は公共セクターを担当していて、複数の省庁を経験しながら、入社以来ずっと環境省を担当しています。最近は職員のリモートワーク化や国民からの各種申請の電子化などのお手伝いをすることが多いのですが、お客さまから「このデモがそのまま使えたらうれしい」とおっしゃっていただいた時は達成感がありました。
お客さまの業務を理解できなければ、適切なデモは作れません。お客さまにヒアリングしながら関係性を作り、理解を深めていくのは大変ですが、一生懸命お客さまを理解しようとやってきたことが実になった感覚がありました。
ーーお二人とも活躍が評価され、社内で表彰されたと伺いました。
林:私は目標達成率上位40人に与えられる『SEアワード』というソリューション・エンジニアリング本部の賞を受賞しました。
渡辺:私は『Chairman's Club Award』に選ばれました。数字の達成率や会社にインパクトのある案件を手掛けたことなど、複数の指標で評価していただいたようです。
林:ちなみに『Chairman's Club Award』は営業とソリューション・エンジニアが対象で、ソリューション・エンジニアが受賞できる中で一番上の賞です。
ーーすごいですね! 成果を上げられたのはなぜだと思いますか?
渡辺:諦めずにお客さまと接点を持ち続けたことが評価されたのかなと思っています。私が担当している環境省の場合、Salesforceをご存じない方も少なくありません。営業と一緒に足繁くお客さまの元に通い、ミーティングを重ね、地道な認知活動を続けたことで、徐々に先方から相談をしてもらえるようになりました。
ただ、それができたのは周りの先輩方や他の部署の皆さんに支えてもらったからこそです。自分一人の力では全くないので、周りの皆さんや環境に感謝ですね。
ーー林さんは、なぜ成果を上げられたのだと思いますか?
林:マネジャーが大きい案件にアサインしてくれたことが影響していると思います。自分が興味を持っていることや、やりたいことに関してマネジャーに伝え続けていれば、社会人歴に関係なくアサインしてもらえる。そんな文化がSalesforceにはありますし、得たチャンスにコミットできたのがよかったですね。
林:その際、渡辺さんと同じく、周りのサポートは大きかったです。Salesforceは人に気軽に話を聞ける体制や文化が整っていて、個別にコンタクトを取って事例を聞いたり、相談したりすると、みんなが喜んで教えてくれます。そんな雰囲気をうまく生かせたことも成功の要因の一つだと思っています。
ーーソリューション・エンジニアは、技術的な知見も必要とされますよね。文系だと難しそうにも感じますが、どう思いますか?
林:結論、全く関係ないと思いますね。私の同期にも文系出身のソリューション・エンジニアがいますが、しっかり結果も出しています。
研修制度をはじめサポート体制はかなり整っているので、きちんと取り組めば大学での専攻に関係なく、必ずできるようになると思います。
渡辺:先ほどお話しした通り、私たちはコードを書くわけではないのでコーディングはできなくても問題ありません。それに、私は技術的な知識よりも「お客さまのことを知りたい」と思えることの方が重要だと思います。お客さまの業界や業務が多岐にわたるからこそ、好奇心が重要。「知りたい」と思ってお客さまに向き合える人は楽しく仕事ができると思います。
林:あとは、人のために働くのが好きな人はやりがいを感じやすいと思います。お客さまから感謝していただくのもそうですが、「ありがとう」を言い合う文化がSalesforceにはあるので、それがモチベーションになる人にとっては良い環境だと思いますね。
ーーでは、ファーストキャリアにソリューション・エンジニアを選ぶ魅力は何だと思いますか?
渡辺:ソリューション・エンジニアは、お得なポジションだと個人的には思っています。技術的な知識を学び、それを基にデモを作ってお客さまに提案する工程を担当しながら、営業と対で動くので、営業の動きも学べる。希望すれば営業の業務も経験させてもらえます。
また、早々に現場でお客さまと接することができるのも魅力ですね。入社後半年間の研修と半年間のOJT期間を終えた2年目から、ソリューション・エンジニアは自分がメインとなってお客さまを担当します。
林:立ち上がりは圧倒的に早いですよね。営業からも早々に一人前のソリューション・エンジニアとして見られますし、入社2年目から提案までのアプローチやデモの内容など、自分の意見を発信できる。
また、ビジネスと技術をバランスよく身に付けることができるので、汎用性はかなり高いと思いますね。プロダクトのマーケティングなど別職種に転身したり、USやオーストラリアなど、違う国で働きたいと手を挙げたりすることもできます。
渡辺:選択肢が広がる職種だというのは強く思います。早い段階からお客さまに提案をし、Salesforceの製品や技術にも詳しくなる。社内でのキャリアはもちろん、Salesforceのような最先端かつクラウドネイティブの会社で働いていれば、自ずと社内外問わず将来の選択肢は広がると感じています。
林:あとは、ワークライフバランスの面でもソリューション・エンジニアは良いと思います。終日予定がぎっちり詰まることがあまりなく、デモ作成など、自分がやるべきことのスケジューリングが自分でできる。キャッチアップしたい技術や業界の勉強の時間もある程度自分でスケジュールを組むことができます。
ーー今後はどのようなキャリアパスをイメージしていますか?
渡辺:しばらくはソリューション・エンジニアを続けていきたいと思っています。公共セクターをずっと担当していますが、まだまだ知らないことがたくさんあるので、業界の知識をより付けて、胸を張って一人前のソリューション・エンジニアと言えるようになりたいです。
あとは、マネジメントにも興味があります。後輩が増えてきたので、自分がメンターとなって、後輩と一緒に案件を進めることもしたいですね。
ーーどのような先輩になりたいですか?
渡辺:困ったらすぐに助けてあげられる体制を作って、それぞれが学びたいことをしっかり伸ばしてあげられる先輩になりたいです。
私自身、「何でも聞いていいよ」とオープンマインドな先輩方に助けられてきました。今はリモートワークがスタンダードになり、コミュニケーションが取りにくいと感じる新卒社員の方もいると思いますが、自分が先輩からしてもらったことをそのまま返してあげたいですね。
ーー林さんはいかがでしょう?
林:私もソリューション・エンジニアとして、まずは自分が担当している警備業界で成果を出したいです。「あの案件といえば林さんだよね」と社内で言われるような実績を作りたいですね。
私は結構飽きっぽいタイプなのですが、担当業界が変わるだけで仕事の内容はガラっと変わるので、まだまだ楽しく仕事ができそうだと感じています。そうやって経験を積み、最終的にはCIO的な立場で仕事ができたらいいですね。
正直に言うと、Salesforceは外資系企業ですし、数年働いたら転職をするのかなと入社前は思っていたんです。でも、今の仕事がかなり気に入ってしまって。仕事は面白いし、会社自体もあまりに居心地が良いので、これからも続けたいと思っています。
ーーうれしい誤算ですね。お二人はSalesforceのどこが好きですか?
林:人と人の距離が近いところですね。何を言っても否定されることはないですし、たとえミスをしたとしても、怒るよりもリカバリープランを考えてくださる人たちが圧倒的に多いです。相談すれば本気で一緒に悩んでくれますし、自分のために動いてくれると感じます。だから私も助けを必要としている人のために動きたいと思えますし、そんな環境に居心地の良さを感じていますね。
渡辺:やりたいことに対して「どんどんやってみなよ」と後押しをしてくれますよね。私はずっと公共セクターを担当しているので、民間の案件にも携わってみたくて。マネジャーに相談したところ、実際に民間の商談に同席する機会を作ってもらえました。そうやってやりたいことに対して、一生懸命かなえようと動いてくれる人がたくさんいます。
あとは、視野が広がるところがすごく好きです。Salesforce自体が「ビジネスは社会を変える最良のプラットホーム」という信条を掲げ、環境問題をはじめとした社会のトレンドをいち早く察知し、社内で情報提供をしています。私自身、何かしら社会を良くすることに携わり続けていきたい思いが強いので、社会の潮流をキャッチアップしやすい環境が気に入っています。
企画・取材・文・編集/天野夏海 撮影/吉永和志