2022/4/28 更新 Salesforce

セールスフォース・ジャパンが「平等の実現」に本気で取り組む理由「ビジネスと社会貢献の両輪があってこそ、セールスフォースなんです」

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ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)に取り組む企業は多々あれど、その本気度は企業によって異なる。

そんな中、ビジネスを通じて公正で公平な社会を実現することを目指し、より良い世の中をつくろうと一人一人の社員が高い熱量を持つのが、セールスフォース・ジャパンだ。

なぜ同社はきれい事で終わらせず、D&Iの実現に向けて行動を起こせているのか。

イクオリティオフィス・シニアマネージャーの酒寄久美子さんと、常務執行役員/ソリューション・エンジニアリング統括本部の根岸 大さんにお話を伺った。

株式会社セールスフォース・ジャパン
イクオリティオフィス シニアマネージャー 酒寄 久美子さん(写真左)
常務執行役員 ソリューション・エンジニアリング統括本部 根岸 大さん(写真右)

「平等」を実現するには「公平性」の担保が不可欠

ーー貴社のD&Iの取り組みについて教えてください。

酒寄:当社には「ビジネスは社会を変える最良のプラットホーム」という信条があり、その実現のために「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「サステナビリティ」「平等」の五つのコアバリューを掲げています。

この五つのコアバリューは相互に作用するものです。平等な世界で多様な人が誇りを持って自分らしく働くことにより、考え方や発想が多様化し、さまざまな考えがぶつかりあうことで化学反応が起こることによりイノベーションが生まれ、多様なお客さまとの信頼関係が強まります。

まだまだ道半ばですが、私たちは、平等の世界を目指す上で、多様性、包括性、そして公平性を中心に据え活動していく必要があると考えています。

ーー平等と公平の違いは何でしょうか?

酒寄:高い柵に対して、全員平等に同じ高さの台を渡しても、個人には身長差がありますよね。結果として、柵の向こうが見える人と見えない人が生じてしまう。これでは平等な機会が与えられているとは言えません。

一方、身長に応じて台を渡せれば、全員が柵の向こうを見ることができます。これが公平な機会を与えるということ。

現状は多くの人が「同じ台を与えているから平等だろう」と思い込んでいます。まずは平等と公平の違いや、性別などの属性、各自のバックグラウンドや経験に対し、無意識の偏見を誰もが持ち合わせていることを理解する必要があるのです。

そして、マイノリティーの方が「平等ではない」と声を上げることも、バイアスに気付くきっかけになります。インクルーシブな職場環境を作るためにも、当社ではワークショップを行ったりケーススタディを共有したりしながら、「イクイティ(公平)を担保した上でイクオリティ(平等)の実現を目指したい」と社内にメッセージを送っています。

根岸:私が見ているソリューション・エンジニアは、一般的にプリセールスと呼ばれる仕事です。お客さまに新しい価値を提案し、ご利用いただき、成功に導くことが使命であり、それはイノベーションとも言い換えられます。

イノベーションを実現するには、多様な考え方が不可欠です。2025年までに女性の雇用比率を25%から30%に引き上げようとしているのも、新卒社員を採用するのも、多様性を確保するため。

特に若い皆さんはデジタルネイティブであり、僕ら世代とは異なる価値観を持っています。そういった年齢や性別、国籍など、バックグラウンドが異なるさまざまな人の考えを取り入れ、新しい提案ができることは、当社の強みでもあると思っています。

D&Iを「自分ごと」にする仕組み

ーーD&Iに取り組む企業は増える一方、実体が伴わないケースもあります。貴社はなぜ目標を掲げるだけでなく、実現に向けて取り組めているのでしょうか。

酒寄:私たちは「ビジネスは社会を変える最良のプラットホーム」という考えの基、社会に貢献したいと本気で考えています。ビジネスと社会貢献の両輪で回っている会社であり、両方があってSalesforce。社会課題への関心は切り離せないものなのです。

これは会社全体の共通認識であり、創設者のマーク・ベニオフも日本法人トップの小出(伸一)も、折に触れてメッセージを発信しています。そこに賛同する社員が集まっていることで相乗効果を生んでいるのだと思います。

根岸:当社はトップがメッセージを発信するだけでなく、『V2MOM』として事業計画を社員に公表し、われわれの目に見えるかたちで実践もしています。だから「この会社は本気なんだ」と現場にも伝わるのです。

ーー『V2MOM』とは?

酒寄:V2MOMはビジョン(Vision)、価値(Values)、方法(Methods)、障害(Obstacles)、基準(Measures)の頭文字を取ったもので、「ビジョンの実現のために大切にすべき価値を掲げ、障害をどう乗り越え、どのように成果を測定するのか」を設定するための考え方です。

年初に会社全体の事業目標としてV2MOMが発表され、それを達成するためのV2MOMを各部門のトップがセールスフォース会長であるマーク・ベニオフと共同CEO兼創業者のブレット・テイラーと話し合って作り、各部門のV2MOMを達成するために各チームが部門のトップと話し合い……という工程を繰り返し、最終的には全社員が個人のV2MOMを作ります。

ーー全社、部門、チームだけでなく、メンバー全員も各自のV2MOMを作るのですね。

酒寄:そうして設定した全てのV2MOMは、社員であれば誰でも見ることが可能です。マークが全社のV2MOMを今期スタート時のキックオフで発表した時の様子も、アーカイブ動画で見ることができ、質問もできる。

経営陣が発表する全社のV2MOMは壮大なものですが、それがどうやって自分のところまで降りてきているのか、全体の流れが分かるからこそ、会社全体の考え方が自分ごとになります。

根岸:個人のV2MOMは、自分自身の行動指針にもなっています。その中にはイクオリティやインクルーシブの視点も含まれているので、社員全員がD&Iを意識できるのだと思います。

やりがいを実感するには「自己実現感」と「自己超越」が重要

酒寄:V2MOMには「社会をどう変えていきたいか」という社会貢献の視点も含まれています。だから、自分たちの日々の仕事が社会貢献につながっている実感が持てるのです。

ーーお二人の個人的な社会貢献の目標は何でしょう?

酒寄:私はまさにジェンダーイクオリティがライフワークです。私の娘は社会人ですが、彼女やその友人、これからの子どもたちには公平で平等な世界で活躍してほしいし、「女性だから」という理由で何かを諦めることをなくしたい。それぞれの価値観に基づいて、納得して選べる世界を実現したいです。そして、自分自身のバイアスも軽減したいと思っています。

根岸:僕は二つあって、一つはカーボンニュートラル。会社としても注力していて、企業のカーボンフットプリントの算出をサポートする『Net Zero-as-a-Service』の日本語版のローンチにも携わってきました。

もう一つは、市民や国民全体、マークの言葉を借りると「地球人」に価値をもたらす活動に興味があります。

国のコロナ対策を支援してきた中、企業活動を支援するツールだったCRM(Customer Relationship Management)は、「Customer」から「Citizen(市民)」まで考え方を拡大し、広く地球人に利益をもたらすことが重要なのではと思っています。

ーーこの質問に、セールスフォースの社員全員が答えられるということですか?

酒寄:全員のV2MOMに入っていますから。社内でもERG(Employee Resource Groupの略。共通の特性や人生経験、関心に基づき、一緒に活動する従業員のグループ)の活動は盛んで、今日のお昼も環境改善に取り組むERGが海洋問題に関するイベントをオンラインで開催し、多くの社員が参加していました。

今は社員の9割以上が在宅勤務ですが、こうやってランチを食べながらERGの活動に参加することで、同じ関心ごとを持つ人との社内ネットワークを広げることができます。

ーーコロナ禍でネットワークを広げるのが難しくなった中、社内でそれができるのは貴重ですね。

酒寄:そうやって関心ごとからネットワークが広がるのは、自分のキャリアを広げることにもつながります。個人のV2MOMは公開されていますから、出会った人の目標や取り組みも見ることができる。さらにそのつながりは日本のみならず、グローバルにも及びます。

ーー社会貢献の志さえ持っていれば、世界中のSalesforce社員とつながれると。

酒寄:やりがいを実感する上で、私は自己達成感や社会貢献意識が重要だと思っています。「マズローの欲求5段階」でも最上段にあるのは自己実現感。たとえ給料や待遇がいくら良くても、自己実現の欲求を継続できないと思います。

根岸:最近では、自己実現感の上に「自己超越(自分の利益だけでなく、社会に貢献したいという思い)」という6段目があると言われています。社会の発展に貢献している実感が持てることは、人間にとって大切なことだと僕自身実感していますね。

最近は、社会貢献活動への関心が高いFutureforce(新卒社員)の方が増えていると感じています。そういう方とぜひ一緒に働きたいですね。

多様なキャリアパスと、多様な人に相談できる環境

ーー学生が貴社をファーストキャリアに選ぶ魅力とは何でしょう?

酒寄:一つは、先ほど申し上げた通り、ボランティアやERGの活動を通じて、年次に関係なく社内のネットワークを広げられることです。他の部門の話もどんどん聞けるから、キャリアに悩むとき、身近な上司や先輩だけでなく、さまざまな視点からの意見を得ることができます。そして、それはキャリアの選択肢を広げることにもつながります。

根岸:それは僕自身が実感しています。僕は新卒で古い体質の日本企業に入社しましたが、振り返ってみると、朝から晩まで、食事の時もずっと同じ上司と一緒にいました。毎日がその繰り返しで、他の部署の状況は全く分からなかった。

根岸:でも当社では、自分がやりたいと思えばいくらでもネットワーキングができる。社内情報の透明性も高いので、他の部署や同僚が何をやっているかも簡単に知ることができます。

酒寄:自ら一歩踏み出さなければ、新しいつながりは持てません。ですが、当社の場合はその敷居が低く、日々ネットワークが広がる。

例えば私のところに「オフィスイクオリティの話を聞かせてください」と、お会いしたことがない新卒の社員、業務上お会いしたことのない社員からメッセージが来ることもあります。

根岸:当社では四半期ごとにマネージャーとの個人面談をやっていますが、その際にやりたいことや目標を話すと、マネージャーがアクションを提案してくれる。マネージャーが間を取り持ち、社内の人を紹介することも多いですね。

ーーでは、根岸さん率いるソリューション・エンジニアを最初のキャリアに選ぶ魅力は何でしょう?

根岸:三つあります。一つ目は、社会やお客さまの未来を良くするためのビジョンを、お客さまと一緒に作れること。そういう提案をチームとしてやっているので、やりがいを感じられると思います。

二つ目は、幅広いスキルが身に付けられることです。「ソリューション・エンジニア」という職種名ですが、われわれはエンジニアではなく、ビジネスとITの両方のスキルを基に、お客さまに最適な提案をする立場です。幅広いスキルを得られるからこそ、その先のキャリアの選択肢も広がります。

ーー具体的にどのようなキャリアパスがあるのでしょう?

根岸:かなり幅広いですね。まずソリューション・エンジニアのキャリアパスとしては、マネージャーのほか、特定の製品や業界に特化したスペシャリスト、お客さまの会社全体のビジネスをヒアリングし、それに応じたシステム設計をコーディネートするアーキテクトなどの道があります。

よりビジネス色の強い仕事をしたい場合は営業やマーケティングにキャリアチェンジしたり、逆にエンジニアリング色を強めたい場合は、製品導入後にシステムを継続的に活用いただき、お客さまの業務改善を支援するカスタマーサクセスの部隊に行ったりと、ソリューションエンジニアの経験をベースに別の道に進む人もいますね。

あとは、営業活動で継続的に成果を上げるための取り組みをする部門、セールスイネーブルメントチームに異動する人もいます。社内の営業チームへワークショップを行うなど、営業組織がより効率的に仕事をするためのサポートをしています。

産休に入る一人の女性のためにプロジェクトチームが発足したことも

ーーソリューション・エンジニアをファーストキャリアに選ぶ、三つ目の魅力は何ですか?

根岸:多様な働き方ができることです。実際に小さい子どもを育てながら働いている人はたくさんいます。それは女性に限ったことではなく、育休を取ったり、夕方早く仕事を切り上げたりといった男性社員も多くいます。

酒寄:キャリアを築いていく時に、結婚や出産、育児、介護など、さまざまなライフステージがあると思います。その際、職場のサポートは不可欠ですが、当社は多様な働き方ができるだけでなく、お互いをサポートし合う風土が根付いています。

例えば4年ほど前、ある女性社員がソリューション・エンジニアチーム初の産休に入ることになったときは、「どうやったら彼女が安心して産休に入って、復職ができるのか」を考えるプロジェクトチームが立ち上がりました。

彼女の上司は男性だったので、「僕に相談しにくいことがあるかもしれないから」ということで私もプロジェクトチームに入り、ウィークリーでミーティングをしていました。最初の一人がうまくいけば他の人も産休・育休が取りやすくなるので、細かくプランを立てましたね。

ーー最後に改めて、セールスフォースとはどんな会社だと思いますか?

酒寄:自己成長ができるだけでなく、自分の行動で世の中を少しでも良くしている実感が持てる会社です。会社の中に同じ思いを持ったメンバーがいて、相談できるメンターもたくさんいます。セールスフォース・ジャパンの社員、女性、日本人といった属性にとらわれず、お互いがお互いを支え合うアライ(Ally)であると感じられる環境があります。

根岸:僕は有言実行の会社だと思います。社会貢献は大事だとうたう会社はたくさんありますが、当社は「社会貢献をやる」と言ったら本当にやる。

実際、創設者のマーク自身が「イクオリティの問題はトップが決断すれば解決する。それなのに誰も女性の給料を上げようとしない」という趣旨の発言を過去にし、本当に変えてきた歴史があります。

そういう姿を見ているからこそ、社員もV2MOMを行動指標として、有限実行する文化が根付いているのだと思います。

酒寄:共同創設者のパーカー・ハリスが以前来日した際、ジェンダーイクオリティをテーマに活動する「Salesforce Women's Network」に参加している社員が、「アメリカはもっと男女平等だと思っていた」とパーカーに伝えたことがあります。アメリカは自由で平等の国というイメージが強いですが、実は男女や人種、民族などでの賃金格差が大きい国でもあるのです。

するとパーカーは「ぜひ良いアイデアがあったら詳しく教えてほしい」と話を真剣に聞き、今でもSalesforce Women's Networkのエグゼクティブスポンサーになっています。

また、その数週間後にアメリカで行われたイコール・ペイのパレード(男女の賃金格差を可視化するパレード)には、手書きの看板を持った、セールスフォース会長のマーク・ベニオフが参加していました。

ーーまさに有言実行ですね。

酒寄:当社のイクオリティはまだ道半ばです。でも、少なくとも声を上げられずに悩むことのない安心、安全な環境を提供することを常に努めています。支え合う風土があり、「相談してみたら?」と背中を押してくれる人たちもいる。

実際に各種制度は人事発案というより、「こうなればもっと働きやすい」という社員の意見をアンケートやデータを分析して施策が決定されます。何か困りごとがあるのなら一緒に解決していきたい。そうやって、より良い社会をつくっていきたいですね。


企画・取材・文・編集/天野夏海 撮影/吉永和志

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