2018年卒学生の就職活動は一段落し、すでに2019年卒学生のインターンシップが始まっている。インターンシップとはいえ、事実上の就活スタートだ。これから何をすればいいのか、不安に思っている就活生は少なくない。
そこで、大手企業からの内定を獲得、すでに就活を終了した2018年卒の就活「勝ち組」の学生に向けて、匿名を条件に集まってもらった。いったい何が他者と勝敗を分けたのか。
(取材協力:ディスコ)
出席してもらった参加学生(進路先業界)
A:青山学院大学 文系・女子(大手金融)
B:お茶の水女子大学 文系・女子(大手電機)
C:東京大学 文系・男子(総合商社)
D:東京外国語大学 文系・男子(総合商社)
E:早稲田大学 文系・男子(大手保険)
――今年は昨年よりも早期化が進んだと聞きます。実際にいつごろから就活を始めたのですか。
A:大学3年生の6月、インターンシップ用の就職サイトがオープンすると同時に、エントリーを開始。有名企業ばかりにエントリーしたが、選考に落ちてしまったので、選考なしで参加できる企業2社でインターンシップをした。不動産会社と生保会社の1日型インターンシップだったものの、参加したことで「私は不動産には向かない」とはっきりわかったため、参加した意義はあった。
私は大学の授業を重視していたので、秋のインターンには参加せず、冬は金融3社の5日型に参加した。とてもハードな内容だったが、業界研究と就職情報収集の両方に役立った。
B:もともと公務員志望だったので、大学2年生の2月から公務員予備校に通っていた。しかし、3年生になってから「このままでいいのか」と思い、6月からインターンシップ先を探して、夏休みには1日型に3社、5日型に1社行った。
ある官庁でインターンシップをしたとき、「官庁では歯車のひとつになってしまう。つまらない」と直感的に感じ、民間企業に進む決意をした。冬には人材ビジネス会社でインターンシップをした。
C:大学3年生の前半はクラブ活動に専念していた。しかし、夏休み明けに「自分は出遅れている」と感じて、就活をスタート。総合コンサルティング会社は早めに内定を出してくれると思ったので、外資系3社で秋のインターンシップに参加、そのうちの1社からは12月に内定をもらった。
コンサルティング会社以外では、11月~翌年1月にかけて、不動産やメーカーなど、3社のインターンシップに行った。
D:就職を意識したのは、イギリス留学中だった2016年4月。人材会社ディスコが主催する、ロンドン・キャリア・フォーラムに参加したのがきっかけだ。このフォーラムは、私より1学年上の2017年卒の日本人留学生を対象にしていたが、帰国すれば就活をするのだと思って、私もフォーラムへ行ってみた。
そこで、「ちゃんと準備しないと大変だ」と危機感を持ち、6月末に帰国してから、就職サイトを通じてインターンシップのエントリーを開始した。
「総合商社や大手コンサルは格好いいなあ」と思ってエントリーしたのだが、全部落ちてしまい、結局受かったのは、やや規模の小さい日系コンサルティング会社と一応受けた金融だった。結局、夏休みは5日型に2社、1日型に4社参加した。
秋は夏のインターンシップ先の決め方がミーハーだったことを反省、知名度の低いメーカーを中心に7社行った。そして、冬は再度、総合商社にチャレンジすると同時に、メーカーにも参加した。夏から合わせると全部で約20社に参加したことになる。
E:大学3年生の5月からインターンシップの合同企業説明会に参加していた。夏休みは4社のインターンシップに参加し、その中で業界を絞っていった。秋には5日型を1社、1日型を2社やった。秋のインターンシップは授業と重なるので、毎日大学に行かなくても済むように工夫して履修した。
年が明けてからは、無名企業のインターンシップにも行き、2月からは合同企業説明会に出席していた。経団連ルールでは3月から説明会の開始とはいえ、実際には多くの説明会が開催されていたと思う。
インターンシップ先を見つけるために活用したのは、フェイスブックやツイッター。就職サイトのインターンシップサイトは活用しなかった。
――インターンシップは就活の一部のように見えますが、インターンシップ参加は有利になりましたか。
C:私は就職先の企業のインターンシップに落ちたが、本番の選考で受かっている。必ずしもインターンシップが有利になるとは、言い切れないと思う。
A:就職先の金融機関のインターンシップ後、社員2人との面談に3回呼ばれた。面談ということだったが、あれはリクルーター面接だったと思う。そして、6月になると、面談に呼ばれた学生の選考が他の学生よりも早く始まった。
別の金融機関では、インターンシップ後の5月中、人事部との面談が3回あった。この金融機関の場合、インターンシップに参加した学生は、面接が1回免除される特典があった。
E:有利に働いた人もいると思う。私は、インターンシップ参加者限定のリクルーター面接には落ちてしまったが、6月から始まる通常ルートの選考で受かった。
ただ、インターンシップをしておくと、その企業に対する情報量がものすごく増えるので、通常ルートの選考で他の学生よりも圧倒的に強かったと思う。
D:インターンシップ参加者をかなり優遇する企業があり、中には面接の回数が半分になるケースもある。しかし、何より重要なのは、インターンシップの選考のため、ES(エントリーシート)を書いたり、面接を受けたりといった経験を積むことだろう。この経験が6月の選考で生きてくる。
B:冬のインターンシップに参加した人材ビジネス会社は私のことを覚えていてくれて、6月の選考では面接1回だけで内定が決まった。しかし、私は就職先の電機メーカーのインターンシップには参加していないし、会社説明会にも1回しか出席していない。インターンシップに参加しなくてもチャンスはある。私の場合、電機メーカーにOG訪問はしたので、それは評価されたと思う。
――他のみなさんはOB・OG訪問をしましたか。
A:私の所属ゼミは20年ぐらいの歴史があるので、まずはゼミの先輩を訪問した。また私の大学では「就職アドバイザー登録」という制度があり、後輩の訪問を受け付けますというOB・OGが、キャリアセンターに、氏名・勤務先・メールアドレスを登録している。
登録しているOB・OG約50人にメールを出した。年が離れたOB・OGよりも、3歳ぐらい年上の先輩に、会社と就活について話を伺ったのが有意義だった。質問は5つぐらい用意し、そこから深掘りして聞くようにした。
業務内容の初歩的なことを聞いていたのでは、OB・OG訪問が実りあるものにはならない。会社状況や業務内容を把握したうえで質問すれば、レベルの高い話を聞くことができる。全部で10人のOB・OGを訪問した。
D:私もまずは、クラブ活動やゼミのOB・OGを訪問した。抽象的な話にならないようにするには、会社についてだけでなく、仕事の内容についても知っておくべきだと思う。OB・OGの名前を検索することで、どんな仕事をしているのか、わかることもある。企業のプレスリリースに名前が載っていることもある。こんなときにはプレスリリースをとっかかりに話をすればいい。
私の大学は少人数なので、OB・OG訪問の相手を探すのが大変だったが、いざOB・OGに会うと、歓迎してくれて、そこからさらに違うOB・OGを紹介してくれることもあった。
C:私は全部で32人のOB・OGを訪問した。まずゼミの名簿を活用して、OB・OG4人を訪問し、そこからゼミに関係なく、OB・OGを紹介していただいた。
あいさつや服装をきちんとして、本気度が高いことを見せるようにした。また、メールの返信を早くすることや、日程を幅広く設定することで好印象を持たれるようにした。
B:私の大学はOGの数が少ないうえ、就職先は教員、金融、公務員が多い。こうした業界を志望していなかったので、大学のOG名簿はほとんど使用せず、「VISITS OB」や「Matcher」など、OB・OG訪問支援サイトを利用して企業の人に会っていた。
E:私はOB・OG訪問をしなかった。就活中にサークル活動も継続していたので時間がなかったし、サークルの先輩は私が希望する業界に就職していなかった。
――筆記試験対策はどのようにしていましたか。
A:2~3月は毎日SPI3の勉強をしていた。使用した問題集は、『史上最強SPI&テストセンター超実践問題集』(ナツメ社)。問題が難しめに作られているので、学生の間では、「何回もやって問題に慣れておけば本番で大丈夫」との評判がある。『これが本当のSPI3だ』(SPIノートの会)は、問題の解き方を知るにはいいが、実際に問題練習をするには物足りないレベルだ。
B:私は公務員試験の勉強をしていたが、公務員試験の中の「数的処理」がSPI3に似ていたので、特に民間企業の筆記試験対策はしていない。ただ、いきなりSPI3に臨むのは大変だと思ったので、ネットでSPI3の問題を見ておいた。
C:実際に問題を解くことが重要だと思ったので、テストセンターでSPI3を受験して問題に触れた。そして友人約20人とLINEで問題を共有した。何回かSPI3を受けているうちに、見たことがない問題がなくなった。
――これから就活を始める学生にアドバイスをお願いします。
D:新卒採用でも転職サイトの活用を勧める。私は「Vorkers」などの転職サイトに登録して見ていた。OB・OG訪問の目的は、働く人の本音を聞くことだと思う。しかし、”本音の本音”を聞くのは難しい。ところが、転職サイトは、働く人のリアルな意見を聞くことができるのでお勧めだ。
A:金融の場合、セミナーがものすごく多くて、スタンプラリーといわれるほどだ。私の就職先は10回もあった。企業は出席状況で学生の本気度を見ているのだろうが、回数稼ぎだけを目的に参加するのではもったいないと思う。
セミナーごとにテーマが異なるので、しっかり聞いて、ESやOB・OG訪問に活かしてほしい。また、メモを取るだけでなく、同時に自分の感想も書き込むようにしていた。
C:私が就活で心掛けたのは、企業に媚びないことと、自分自身の勝負の仕方を考えること。私は面接で自分の意見をはっきり言ったし、黒いスーツも着なかったし、髪型もパーマで前髪を垂らしていた。いわゆるリクルートスタイルをする必要はない。
クラブ活動で自分をPRする方法もあったと思うが、自分の強みを考えて、論理的な思考や話し方で勝負した。
B:就活というと、就活サイトで効率的に行うのがよい、とされる傾向がある。が、効率が悪くてもいいから多くの企業人に会い、そのときに感じたフィーリングを大事にしてほしい。効率を追い求めないほうがいい。
E:飾らずにありのままでいることが重要。これは面接のときだけでなく、企業選びでもいえることだ。人気業界や人気企業が自分に合っているのか、じっくり考えてほしい。私が就職先を決定したのは、この会社でインターンシップを数回行い、社員の雰囲気などが自分に合っていると思ったからだ。
(取材・文/田宮 寛之 [東洋経済 記者])