2017/6/27 更新 BCG流 キャリア&ライフデザイン論

デジタル・ネイティブ世代の理系出身者に広がるビジネスチャンスとは? 「何がしたいか」を探すキャリアの描き方

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 自分らしいキャリア&ライフを確立したい。が、どうすればできるのか――?
 これから社会へ出た後、20代~30代でぶつかるであろうキャリア選択の課題について戦略コンサルティングファーム・BCGのコンサルタントを中心に、第一線で活躍中のプロフェッショナルたちにその解決策や思考法を聞く。より良い人生を送るために、仕事とどう向き合い、キャリアを切り開いていくべきか、本質思考で考えてみよう。
 第3回は、理系出身でBCGに参画し、研鑽を積んだ2人の対談。BCGを卒業してベンチャー起業の道を選択した上野山勝也氏と、現在BCGでコンサルタントとして活躍している上山聡氏に、理系出身者にとってのキャリア形成の在り方や広がりについて、語り合ってもらった。

【File.3】理系出身者のキャリア、その選択肢の広がりとは?

ボストン コンサルティング グループ
プロジェクトリーダー
上山 聡 氏
 【写真左】
1987年生まれ。東京大学大学院工学系研究科にて社会基盤専攻を修了後、外資系戦略コンサルティングファームに入社。コンサルタントとして数々の経営変革プロジェクトに参画した後、2013年にボストン コンサルティング グループへ。現在はプロジェクトリーダーとしてメンバーを率いるとともに、新卒採用業務にも携わっている

PKSHA Technology
代表取締役 工学博士
上野山 勝也 氏
 【写真右】
1982年生まれ。東京大学大学院工学系研究科修了後の2007年、新卒でボストン コンサルティング グループに入社。約4年間、コンサルタントとしてビジネス・インテグレーション等のプロジェクトに携わった後、米国にてグリー・インターナショナルの立ち上げに参画。Webプロダクトの大規模ログ解析業務を担った。その後、東京大学に復学し、松尾豊特任准教授による松尾研究室にて機械学習を学び、工学博士号取得。2012年、PKSHA Technology(パークシャ・テクノロジー)を創業し、機械学習、言語解析技術を用いたアルゴリズム・ソリューションを、大企業向けに提供している。人工知能学会員・情報処理学会員

――お2人とも理工系のご出身で、共にコンサルティングファームへの就職からキャリアをスタートされています。当時、どんな志向や仕事選択の判断軸を持って、就職活動を進めていらしたんでしょうか?

上野山 勝也氏(以下、上野山):
 私の場合、研究していた内容がオペレーション・リサーチと呼ばれるもので、主に企業活動を研究対象としていましたから、周囲にも就職先としてコンサルティングファームを選ぶ人間が少なくありませんでした。

 自分自身、就職活動時には「3~4年ほどの短期スパンで最も“没入”できる仕事に就きたい」という思いがあって、それをかなえられそうなコンサルティングの領域に自然と興味を持ったのです。複数社のインターンシップに参加して、一番面白そうに思えたボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)に入社を決めました。

上山 聡氏(以下、上山):
 一概には言えませんが、理系の中でも工学系の場合、「社会にいかにインパクトを与えるか」という面に絡む研究をするので、修士課程や博士課程に進んで専門性を高めている学生であっても、ビジネス領域への関心は高いですよね。

上野山:
 そう思います。当然、理系の学生の中にはアカデミックなキャリアを選ぶ人もいますが、工学系は比較的自然に企業への就職を考えている人が多かったし、その傾向は今も変わらないはずです。
 上山さんは社会基盤専攻ですが、周囲の学生はどのようなキャリアを選択していましたか。

上山:
 社会基盤、すなわちインフラに関わる事物が研究対象ですから、アカデミック以外のキャリアでは、国やゼネコン、交通機関やエネルギー会社などに就職する人もいました。私自身も研究対象だった土木の領域を通じて「世の中を変え、多くの人々に貢献したい」という志から、当初は国土交通省に進む道を考えていたんです。

 しかし、いよいよ具体的に就職を意識するようになり、さまざまなインターンシップに参加して実務の一端に触れ始めてみると、「膨大な数の人々と、どちらかと言えば間接的に向き合う公共機関よりも、人々により直接的に貢献できる仕事がしたい」と思うようになりました。
 そうして広い意味でのサービス業に興味を持ち始め、最終的に最も自分の価値観に合致したのがコンサルティングの仕事だったのです。

膨大な知的刺激を受け、自身が進化していくのを実感する日々

――実際、コンサルタントとして働き始めてから、理系出身ならではの強みや利点を実感されたことはありますか?

上野山:
 基本的に文系理系は関係ないと思っていますが、あえて言うなら理系出身者は現象に目を向け、因果律でモノを考える習性が染み付いています。研究室時代の仮説検証型の思考プロセスがそのままコンサルティングの仕事で役に立ったのは、強みの一つと言えるかもしれません。

 ただ、コンサルタントが向き合うのは生身の人間たちが営むビジネスですから、サイエンスを学んだ者の発想だけでは問題を解決できません。人を巻き込み、動かすためのソフトスキルを融合させていく必要があります。

 BCGの環境が素晴らしいなと思ったのは、そういう自分の不足分をしっかりカバーしてくれるプロフェッショナルな仲間がいること。コンサルタントとして経験豊富なシニアだけでなく、さまざまな領域で研鑽を積んだ中途入社の方もいる。
 こうした仲間とチームを組み、共にディスカッションを重ねていくことで、多様な視点や意見が融合されて問題解決の答えにつながっていくのが、自分にとっては驚きでもあり面白さでもありました。

上山:
 そうですね。私もコンサルタントとして働いてみて初めて、チームで考えるからこその思考の厚みという価値を、より強く実感するようになりました。研究は基本的に1人で考えていましたから。
 それぞれ違う強みを持つ人と共にチームで取り組む中で、人の馬力の引き出し方や動かし方も学びましたね。

上野山:
 私が入社間もなく驚いたもう一つの点が、新人だろうとなんだろうと、議論で意見を言わない者は価値がない、という文化です。実績豊富なシニアが会議で発した意見に、若手が反論をすると、とがめるどころか褒めてくれる。今もその風土は残っているんですか?

上山:
 もちろん変わっていません。まあ、褒めてもらえるかどうかは反論の内容と質次第ですが(笑)、「1年目なんだから発言できなくても許される」というような甘さがない代わりに、1年目からでもどんどん発言させてもらえる。大変ですが学びがあります。

上野山:
「偉いか偉くないか」なんて関係なく、「議論の中で意見しない者はコンサルタントとして価値がない」という考え方が面白かったし、すごく勉強になりました。
 コンサルティングファームは、「新人だから下積みからスタートする」という考え方ではなく、最初からプロジェクトのいちメンバーとして役割を担う。それをシニアや中途の方にフォローしてもらえる、という仕組みなので、とけ込んで行きやすいとも思いました。

 もう一つ、入社後に実感したのが1週間の密度の圧倒的な濃さですね。学生時代の1カ月分に当たる刺激量が5日間に凝縮されているイメージです。1日の中で大きく自分の考えや価値観が変わるなんてことも日常茶飯事でした。
 知的好奇心や成長欲求の強い人には、とても恵まれた環境だと思います。脳に入る刺激量が違う。振れ幅がとてつもなく大きかったことを鮮明に記憶しています。

上山:
 分かります。短期間でさまざまなレベルの未知なるモノが自分の中にどんどん取り込まれていく感覚。先輩やパートナークラスの上司たちから日々助言やフィードバックをもらいつつ、グローバルな見識や異領域の発想なども、多様な人員構成の中で当然のように触れる毎日ですからね。
 短時間で自分という人間が猛スピードで進化している感覚を私も感じました。今なら修士論文だって3カ月で書き上げる自信があります(笑)。

上野山:
 それ、本当ですよ。自慢話みたいになってしまうんですが、BCGを退職後に大学へ戻り、博士課程に進んだ時、1本目のジャーナル論文を実際3カ月で書き上げました(笑)。
 これはもう間違いなく、BCGで学んだおかげです。コンサルタント時代に、絶対的な頑張りが必要な時の尋常でない馬力の出し方を学びましたから。自分の能力の上限はBCG時代に圧倒的に引き上げられました。

旧来の価値観に目を向けることで、新たなビジネスチャンスの可能性が見えてくる

――お2人は1980年代生まれの30代ですが、「今の20代にとってのキャリア選択」について、どうお考えですか?

上山:
 私は今この時代に安定を志向している大学生を見かけると、人ごとながら彼らのキャリア観に危機感を覚えます。これほど猛スピードで世の中が変化している時代に、「この会社に入って、こういうキャリアをたどれば安定した生活が……」などと発想しても意味がないのではないでしょうか。

 皆が自分のキャリアを自分で描かなければいけない時代です。いち早くビジネスの本質に触れて、汎用性の高いスキルを養い、どのような環境下でも自身の力を発揮できるようになることが、本当の意味での安定を得ることにつながると思います。 そうした意味では、私にとってはコンサルティングの世界で経験を積むことがそのスキルを得る最短ルートだと考えています。

上野山:
 冒頭で、学生時代の私が「短期スパンで最も“没入”できる仕事に就きたい」と考えていたと話しましたが、まさに今、上山さんがおっしゃったことと同じ発想があってのことでした。

 特に今という時代においては、私の学生時代以上に変化が激しいわけです。世の中をまだ知らない学生が「10年後、15年後の自分」を想像して、先々までプランニングをしたところで、おかしな結論にたどり着きかねない。
 それならば、1年後や3年後など、手の届く範囲の未来を一区切りと捉え、その間とにかく全力投球できることに取り組む方が、結果的に後のキャリアに有効な成長が得られるはずです。

 それともう一つ、私や上山さんの世代と、今の10代、20代との間には決定的な“価値観の違い”があると思っています。
 私がBCGに入社した2007年というのは、Google が初めて日本で新卒社員を採用した年であり、Webビジネス界にとっては節目とも言える年でしたが、当時はまだ「Webは怪しい世界」などという風潮がありました。

上山:
 分かります(笑)。「中高生になる頃にはスマホを持っていた」という現代のデジタル・ネイティブ世代とは違いますよね。

上野山:
 そうなんです。一方で2008年にはリーマンショックが起きて、それまでのビジネスの常識のようなものに、大きな疑問が生まれた時代でもあります。
 私や上山さんは、インターネット以前の時代のビジネスと、インターネットが当たり前になってからの時代のビジネスとのちょうど狭間を生きてきた世代。今の50代以上の発想も何となく分かるし、20代のデジタル・ネイティブ世代の気持ちも何となく分かる。

上山:
 我々の世代が「両世代の橋渡しをしなければ」ですね?

上野山:
 そう、それです。私の会社にも20代の社員が多くいるんですが、「たまには(高い)うまいものでも食べに行くか?」と聞くと「いや、別にいいです。(高い)うまいもの、興味ないです」と言われたりしてしまう(笑)。

 彼らには世間一般から「良い」とされている事やモノよりも、自分の好きなものを大事にする価値観が根付いている。インターネットやスマートフォンが浸透したことで、旧来のマス的な価値観にとらわれていないわけです。世の中が大きく変わり始めていることを実感しています。
 恐らく私たちは今、新旧の異なる2つのパラダイムが共存する、不思議なタイミングに生きているのだと思います。

上山:
 個人が好きなものを見つけて、それを存分に追求できるようになったのはいいことですよね。昨今誕生しているスタートアップ・ベンチャーでも、マスではなく個人の小さなニーズにフォーカスしたWebサービスを展開していたり、テクノロジーを活用して大きな資本を必要とせずにビジネスとしてある程度成立しているケースが珍しくなくなってきています。
 しかし、若い世代の価値観だけで創られたビジネスに、「それだけではないでしょ?」と思うことがあるんです。

上野山:
 そう、どんなに時代が変化していても、ビジネスを形作っているのはインターネットが浸透する以前からずっと存在する人であり組織であり会社なわけですね。そうした世の中を形成する大手企業のビジネスを間近で見たことのない世代は、自身が持つデジタル・ネイティブ世代ならではの価値観やテクノロジーを、そこでどのように活かすことができるのかにどうしても気付きにくい。世代の異なるパラダイムのすり合わせがしにくいのです。

 しかし、私はこの旧来のビジネスフィールドと、今の時代ならではの価値観や情報技術との接点を生み出し、融合させるところにこそ、大きなビジネスチャンスがあると考えています。
 狭間の世代としては、前の世代と後の世代の橋渡しをしたい、と思いますし、若い世代にはせっかくチャンスがあるのだから、自分たちの住む世界だけに目を向けてばかりいたらもったいない、と思ってもいるんです。

上山:
 実はBCGで開催しているインターンシップにも、上野山さんがおっしゃったような気付きを得てもらいたいという思いが込められています。
 学生たちにもっと社会のダイナミズムを知ってもらい、彼らが持っている知識や経験、志向が世の中にどんなインパクトを与え得るのか、少しでも体感してもらえるようなプログラムになっているんですよ。

――具体的にはどんなことをするのでしょうか?

上山:
 あえてビジネス寄りではない課題が出されたりしています。学生たちはやはり実際のビジネスを経験していませんから、売上や利益の話をしてもピンとは来ません。そういうものは入社後からでも覚えられる、と考えられています。
 ですから、お題として提示されるのは、例えば「2020年にオリンピックが東京で開催されるが、社会にどんなメリットやデメリットが生まれるか、皆で考えてほしい」といったもの。つまり、ビジネスよりももっと大きな枠組み、社会的な現象というものに触れてもらおう、という主旨です。

 非常に面白いのは、こういうざっくりとしたお題を前にした学生たちが、「自分たちの持っている力が役に立つかもしれない」と考え始めたりするんです。
 例えば理系の学生ならば、「今自分が研究している内容が、もしかしたら世の中のこういう部分に使えるんじゃないか」という発想を得る。社会との接点を見つける。そういう機会になってくれたらうれしいと思います。

上野山:
 それ、いいですね。私も自社の採用活動をする中で多くの若い方とお会いします。当社のビジネスがAIや機械学習の領域をベースにしていることもあって、ほとんどの方が情報技術の世界にいるわけですが、何より伝えたいのが「あなたが好きでやってきた情報技術はこんなにも社会に役立つし、ビジネスとして期待されているんだ」ということ。

「入りたい会社が見つかりません」なんて言っている学生もいるんですが、そういう人にこそ理解してほしいんですよね。自分の力が世の中に大きなインパクトを与えるんだという面白さを。

未来を切り拓くための“コンパス”を持つために、自身の固有性を見いだせ

――これからの社会やビジネスに情報技術は必要不可欠。そうした意味ではテクノロジーのバックグラウンドを持つ理系学生は、今後のキャリアの広がりに、よりアドバンテージがあると言えそうです。最後に、これからキャリアを切り拓こうとしている学生たちへアドバイスをお願いします。

上野山:
 マサチューセッツ工科大学のMITメディアラボ所長である伊藤穣一さんの言葉に、「地図よりもコンパスを持て」があります。キャリアを切り拓いていくのに、プランニングは意味を成さず、“コンパス”つまり「何をしたいのか」という自分の軸が大事になってくるということです。

 私はもともと情報技術を軸に社会へインパクトを与えるビジネスを手掛けていきたいと考えていました。
 PKSHA Technologyを創業し、その思いをかなえるにあたって、BCGで得た知見や経験が大きな力になったことは間違いありません。先に述べた通り、世の中のビジネスの主戦場に立つ大企業の論理というものを理解していることは、事業を進める上でも大きな強みになりました。

 2030年には、ビジネスも働き方も仕事も、世の中全体が予測もつかぬほど変わっていることでしょう。そのような中で、PKSHA Technologyの事業領域もどんどん広がっていくと思います。

 私自身は今後、PKSHA Technologyを「アルゴリズム・サプライヤー」として成長させ、社会に大きなインパクトを与えていきたい。
 AIやIoTの浸透によって、今後ソフトウエアはどんどん知能化し、高度化していきます。そこで鍵を握るのがアルゴリズム。そのクオリティーや機能を強化していくことで、社会の神経網を形作っていくことができると信じています。

上山:
 私も、この激動の時代に、自分が情熱を持ってやりたいと思えるビジネスを定めて挑戦したいと考えています。

 こうした夢を追うための力を付ける場として、理想的な環境がBCGにはあります。「自分の未来を創るためのコンパス」を見つけ、磨きをかけていける場所だと私自身が実感しています。だからこそ、同じように「情熱を傾けるもの」を探し求めている学生の皆さんに、どんどんチャレンジしてほしいと願っています。

上野山:
 そうですね。私もBCGがキャリアの起点になったことは、本当に良かったと思っています。
 今は「やりたいことが分からない」という人も、まずは熱量を持って仕事に没入する経験をしてほしい。多様な人と協働する中で、人との違い、自分ならではの固有性がクリアになっていく。それが、自分ならではのコンパスを見つけることにつながっていくはずです。

 私は「意味」とは「生成」されるものと考えます。やっていない状況では意味など何もないし、分からない。やった結果、意味は生成され、分かるのです。
 学生たちには、社会人としてまずは夢中になれる3年間を経験することを目標に、もっとアグレッシブに自分の知らない世界へ飛び込んでほしいですね。

(取材・文/森川直樹、撮影/竹井俊晴)

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