ビジネスパーソンの転換点を深掘り
キャリアの成長 Before/After
効率や最短ルートの追求だけが「いい仕事」なのか? ビジネスパーソンとしての成長は、試行錯誤を必要とする困難や挑戦を乗り越えた先にあるはずだ。
本特集では、各企業の第一線で活躍する社員のキャリアにおける成長のBefore/Afterを深掘り。彼らが壁を乗り越え、飛躍を遂げたリアルな姿から、効率だけでは語れない仕事の奥深さと、確かな成長イメージを学ぶ。

上席主任


いざという時に助け合えるその大切さ
コロナ禍の到来で、3~4倍に高騰した海上輸送費
大幅なコスト削減を目指す、前例なき挑戦
世界を混乱させた『COVID-19』は物流にも大きく影響し、行動制限で港湾作業が滞る一方、巣ごもり需要は高まり、海上輸送費は従来の3~4倍に高騰しました。この異常事態は私の仕事にとって試練であり、同時に転機でもあったのです。
当時、私はメキシコ発電所建設プロジェクトの調達部門メンバーとして、日本のみならず世界中のサプライヤーから出荷される、建設に必要な機器の輸送手配を担当していました。輸送会社の選定や契約交渉、コスト・納期管理を通じて、機器を期限内かつ予算内で届けることがミッションでした。しかし、海上輸送費の急騰により当初の計画では大規模な赤字が見込まれ、予算内で輸送を完遂するためには輸送費の大幅な削減が不可欠となったのです。
最も困難だったのは、アジア各地(日本・中国・韓国)からメキシコまで別々の船で運ぶ予定だった機器を1隻に集約して輸送する施策です。該当する全ての機器を1隻の出港スケジュールに間に合わせる必要があり、本来の納期より約1カ月早い納品を各サプライヤーに依頼しなければなりませんでした。これは機器の綿密な生産計画を根本から見直していただく非常に厳しいお願いでした。納期調整は容易ではなく、コロナ禍を理由に諦めかけたことも。それでも輸送の集約を実現するため、輸送パートナーや社内関係者にスケジュール調整の重要性を粘り強く伝え続けました。その結果、調達部のバイヤーが丁寧にサプライヤーとの納期調整を進めてくれたことで、輸送の集約は成功しました。コロナ禍という異例の状況下で、多大な負担を伴う納期調整に応じていただけたことは決して当たり前ではありません。三菱重工業と輸送および機器製作のパートナー企業との長年にわたる信頼関係の強さ、そして困難な状況で支え合うパートナーシップの重要性を改めて実感しました。結果として、プロジェクト全体で船の隻数を当初計画の約半数に減らし、大幅なコスト削減を実現。輸送費を無事に予算内に収めることができました。
振り返ると、このプロジェクト以前はパートナー企業との信頼関係を本心から理解できていなかったかもしれません。しかしこの経験を通じて、相手の立場に配慮し誠実に向き合い信頼関係を築くこと、そしていざという時に協力し合える関係性の大切さを学びました。現在では、社内外問わず共に働く方々と深い信頼と協力の意識をもって接することを、仕事の基本姿勢としています。
このプロジェクトでは、何十もの部署、何百人もの関係者が関わる中で、「どうしたら力を合わせられるか」を重視する三菱重工業のチームプレー文化が大きな力となりました。輸送ルートの見直しや情報共有体制の強化など多様な施策も、部門の垣根を越えて知恵を出し合い協力して実行しました。また、各メンバーに責任ある役割を任せながら先輩や上司が手厚くサポートする文化にも助けられ、こうした環境がプロジェクト成功の要因だと考えています。
今後は調達のスペシャリストとして、輸送分野だけでなく、より幅広い知識を習得し、社内外から信頼される存在を目指してさまざまな調達業務に挑戦していきます。