2020年以降、企業はどう成長するのか。
トップが挑む「経営改革」ビジネストレンドが目まぐるしく変わる昨今。2020年以降も、さらなる変化の波が押し寄せてくる――。そんな中、日本を代表するリーディングカンパニーの経営者たちは、“生き残りをかけたチャレンジ”に踏み出した。各社の成長戦略や、経営理念を知り、企業で働く醍醐味を感じてほしい。
サイボウズ株式会社
代表取締役社長 青野慶久氏
あおの・よしひさ/1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現・パナソニック)を経て、97年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人 コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める
サイボウズの理念は、「チームワークあふれる社会を創る」。私たちのすべての事業は、この理念を実現するためのものであり、現在ではグループウェア市場において国内シェアナンバーワンを樹立。すでに世界ナンバーワンへの挑戦が始まっています。
私たちが開発・提供するグループウェアは、時間や場所を越えた情報共有を可能とし、チームのコラボレーションを支援するツール。そもそもグループウェアの開発を始めたのは、「情報を共有してお互いに何をやっているか分かるようになれば、もっと皆が働きやすくなるはずだ」という思いからでした。チームワークあふれる組織は、メンバーの幸福度も、結果としてチームの生産性も高くなります。それを追求するため、1997年の創業から私たちは製品の提供を通じて、さまざまな組織のチームワーク向上に力を尽くしてきたのです。近年では、社会の変化が追い風となり、ますます関心が高まっていることを肌で感じています。今や多くの企業で人手不足が深刻化しており、生産性向上は喫緊の課題となりました。まさに今こそ、情報共有のツールが必要とされており、サイボウズ製品によりチームワークを根付かせ、組織の在り方や企業経営を変えていく必要があるのです。
情報共有は、チームワークの基盤です。同じ時間・同じ場所にいなくても、円滑にコミュニケーションを図り、お互いに仕事の状況が一目で分かる状態になれば、仕事を分担したり、効率的に協業することができるようになります。
私たちの最大の目標は、組織の枠を越えて、こうしたチームを世界中にどんどん増やしていき、「チームワークあふれる社会を創る」こと。だからこそ、ユーザー数にこだわっています。こうしたツールをできるだけ多くの方に使っていただき、誰もが当たり前に利用できる社会のインフラとして根付かせていければと考えています。
技術と意識改革の両輪で 新しい文化を広めていく
そのために力を入れているのが、テクノロジーの活用です。ITの世界では技術革新のスピードが目覚ましく、常に技術の進化を追求していくことが重要です。
近年では、クラウド技術を活用することで、取引先やお客さまなど企業の枠を超えて、簡単に情報を共有することができるようになりました。また、自社でシステムを構築・運用する必要がないので導入コストも抑えられ、少人数のスタートアップ企業や自治体、公益法人など、これまでグループウェアを利用してこなかったユーザーにも広がっています。
今後は、モバイル対応やIoTとのデータ連携など、新しい技術への対応もどんどん進めていく予定です。もちろん誰もが安全・安心に使えるように、セキュリティーやシステムの信頼性のレベルを高めていくことも必須でしょう。
また、グローバル展開も加速しています。国内だけにとどまっていたら、新しい社会を創ることなどできません。現在は、東南アジア、中国、アメリカなど6つの地域に拠点を設置しています。
導入実績は、東南アジアで200社以上、中国で900社ほどに達しました。最も競争の厳しいアメリカでも、チームワーク向上に特化したツールを提供している企業は他になく、注目を集めています。個人主義のイメージの強いアメリカも、最近はずいぶんチーム主義が浸透してきており、現地企業に数多く導入され、着実に売り上げは伸びていますね。
さらに、自社単独で販売するのではなく、パートナー企業と連携し、それぞれの特徴を付加したサービスを提供してもらう「エコシステム」が、海外においてもうまく機能していると感じています。
ただし、世界中にチームワークを広げていくには、良いものを作るだけでは不十分で、ユーザーの意識改革も重要です。そこで今年から、チームワークのノウハウを社会に広める教育・研修事業を立ち上げました。
チームワークとは単なる仲良しの集まりではなく、一人一人が自立して初めて生まれるものです。自分の生き方、働き方に責任を持つからこそ、自分の強みを生かした自分らしい働き方ができる。それぞれの個性を認め合い、協力し合うからチームの力がさらに引き出されると私は考えています。
私たちが挑んでいるのは「社会を創る」という壮大な目標です。簡単ではありませんが、私たち自身がさらに良いチームワークを発揮していけば必ず達成できると信じています。この大きな夢にワクワクする方はぜひこの挑戦に加わってください。新しい社会を共に創っていきましょう。
[Company info]
1997年に創業し、安価で使いやすいWEBベースのグループウェアを独自に開発。2000年東証マザーズ、02年には史上最短で東証二部上場を果たす。06年以降、国内グループウェア事業で11年連続でトップシェアを守り続ける