2017/11/1 更新 トップの決断

【P&Gグループ スキン&コスメティクス事業 アソシエイト ディレクター/長 祐氏】若年顧客の開拓とメディア変革で SK-II市場を大きく成長させた

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トップの決断
ビジネス環境の変化に柔軟に対応し、エクセレントカンパニーとして名を馳せる企業各社の経営トップインタビュー。逆境または好機のタイミングにどんな経営判断を下し、成長を続けてきたのか? その打ち手の数々から、各社が大事にする価値観、行動理念を探ってみよう。

P&Gグループ
スキン&コスメティクス事業 アソシエイト ディレクター
長 祐氏

安定に甘んじない挑戦が真に強いビジネスを創造する

 P&Gは世界最大級の消費材メーカーとして『パンパース』『アリエール』『ファブリーズ』『ジレット』『パンテーン』『ブラウン』など、高い価値の製品を約180カ国で提供しています。

 多様なブランドの中でも異色の存在が『SK-Ⅱ』。低価格帯の商品を広く流通させる他ブランドに対し、高価格帯のスキンケアに特化した製品を美容部員が販売するカウンタービジネスです。

 もともとはロイヤリティの高い既存顧客に向けた戦略を続け、売上は順調でしたが、2010年頃には頭打ちに。収益は安定していたものの、「成長の少ないビジネスモデルに継続性は見込めない」という経営判断のもと、新規を獲得する戦略へと大きく方針を転換しました。しかし、「さまざまな施策を試したものの、売上は伸び悩んだまま」。そんな中、14年に私はSK-Ⅱの経営を担うブランドマネージャーに就任しました。

現状維持に満足することなく常に新しい一手を打つ

 グローバルSK-Ⅱにおいて、他国は成長を遂げている中で、市場の大きな日本が伸びないはずがない。トップ経営陣が私に示したのは、日本市場における売上拡大でした。

 もともと研究開発で入社し、5年目でマーケティングに異動した私は、十分な経験値があったわけではありません。P&Gでは、年齢や経験年数に関わらず、リーダーとして選ばれた者が事業の経営における全ての判断と決断を担い、その結果に全責任を持つのです。

 まず私は戦略を整理した後、マーケティングや営業など、全ての活動を新規獲得に寄せ、恒常的に顧客を増やしていくプランを実行しました。

 長年にわたりロイヤルユーザー中心にした方向性を180度変えた戦略に、就任当初は現場から戸惑いや疑問もありましたし、実際、最初の半年間は伸び悩んだことも。しかし、信念を曲げずに取り組み続けたことで、徐々に結果につながり始めました。それでも現状満足することはありませんでした。SK-Ⅱは「40代女性に向けた化粧品」というイメージが定着していましたが、20〜30代という新たなコアターゲットに魅力を発信することで、もっと成長できると思ったのです。

 そのためには、ターゲット世代が最も接するデジタルを駆使して新たなコミュニケーションをどう作っていくか、我々のメディアの在り方をどう変えていくかが議題でした。そこで、グローバルカンパニーならではのスケールメリットを生かすことにしたのです。

 そもそも日本発ブランドのSK-Ⅱは、日本独自の手法にこだわりを持ち続けてきました。しかし、中国や韓国、ASEAN、USまで、参考になる他国の成功例を活用しない手はない。私は、SNSやインフルエンサーを使う各国の優れたマーケティングプランやPR手法を日本市場に合うようカスタマイズし取り入れました。

 その中でも大きな変革を起こせたのが、世界数カ国で同時展開したプロモーション『運命を、変えよう。』の活用です。各国のユーザーの反響を参考にすると同時に、「世界で6千万回以上再生された動画」としてグローバルスケールのニュースを発信。さらにSNSやインフルエンサーを活用することで、受け手が「自分事化」できる点が各種メディアから大きく評価され、社会に大きなインパクトを生みました。

 これこそ新しい時代のマーケティングであり、我々のメディアの在り方を大きく変えた出来事だったと感じます。

オーナーシップとチャレンジ精神を育む環境

 SK-Ⅱの新規ユーザー数は過去4年間連続で2ケタ成長し、現在、4期連続で最高売上を叩き出しています。

 しかし、我々のミッションはここで終わりではありません。「世界中の女性の運命を変える、ナンバーワンのスキンケア プレステージブランドになる」という、さらなる高みを目指します。

 P&Gには、“勝利への情熱”という価値観があり、誰もが「情熱を持って次のビジネスに向かい、消費者により良い価値を届けたい」という思いを持っています。変化を起こすためには、安定に甘んじることなく、より高い目標を掲げ、成し遂げるためのチャレンジを続ける。これこそが、真に強いビジネスを創造します。日本旧来の積立式のビジネスでは、105%の伸びは目指せても120%をクリアできるプランは生まれないのです。

 時代の変化の中で成長を続けるP&Gの強さの源は、そうした価値観のもと、オーナーシップとチャレンジ精神を持つ人材を育成する環境にあると感じます。私が結果を残せたのも、自分が思う存分トライ&エラーができる環境があったからこそだと思っています。

 そういった仲間と共に新たな挑戦をしていくことで、私たちは次なる価値を生み出し続けるでしょう。

PROFILE
ちょう・たすく/1976年生まれ。東京理科大学卒業。東京大学新領域創成科学研究科修了。2001年に入社し、研究開発職を経てマーケティングに異動。パンパース、ジレットにてアシスタントブランドマネージャーを経験後、シンガポール赴任。2010年に帰国し、ジレット、ウィスパーのブランドマネージャーに。14年、SK-IIのブランドマネージャーに就任。16年より現職。スキン&コスメティクスカテゴリー全体の責任者として、戦略立案やプラン実行の全てを担い、各部署を統括、牽引。部門全体の経営判断を行う

【会社の沿革DIGEST】

●1991年SK-ⅡがP&Gに参入
P&Gグループに「SK-Ⅱ」が加わる。高価格帯のスキンケアに特化した製品をリリース
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●2010年売上が頭打ちに
ロイヤルユーザー中心の戦略を続け安定的な収益を出しながらも、売上は頭打ちに
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●2012年ブランドの若返りを図る
新規顧客獲得の方針を大幅に強化。「40代向け製品」のイメージを刷新するためにブランドの若返りを図る
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●2014年新戦略の実行で顧客拡大
長氏がブランドマネージャーに就任。新戦略としてトライアルキット販売や百貨店でのイベントも展開
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●2016年4期連続最高売上を達成
長氏がアソシエイトディレクターに就任。新規ユーザー数は2ケタ成長を遂げ、4期連続最高売上を達成

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