超AI時代に企業はどう備えるか
経営者たちの課題と挑戦Society5.0の実現を目指す「AI戦略」を国が発表した。 産業分野におけるAI化の促進や、AI人材の育成がさらに加速していく見込みだ。 そんな中で、企業を取り巻くビジネス環境はどのように変化し、それに対してどのような打ち手が必要となるのか。 経営層が持つ課題意識や、今後のビジョンを知り、各社の企業理解を深めよう。
メガネが生まれたのは、13世紀頃のイタリア。日本には、16世紀の半ば、イエズス会の宣教師であるフランシスコ・ザビエルによって伝えられたと言われています。素材やデザインは時代と共に進化してきましたが、「視力補正」というメガネの基本的な機能は現在までずっと変わっていません。そんな普遍的な業界において、私たちジンズはメガネの常識を覆すような商品を数多く生み出してきました。ブルーライトをカットする『JINS SCREEN』をはじめ、花粉対策メガネの『JINS 花粉CUT』、眼の周りを保湿できる『JINS MOISTURE』など、「視力補正」だけではないメガネの可能性を常に追求し続けています。
なぜジンズがこのようなチャレンジを続けているのか。それは当社が単にメガネを売る会社ではないからです。当社のビジョンは「Magnify Life」(マグニファイ・ライフ)。アイウエアを通じて人々の生活を豊かにすること、あたらしいあたりまえを創ることを目指しています。われわれが存在しているのは、メガネをただ提供するためではなく世の中に新しい価値を提供するためなのです。
私は、企業というものは、常に時代に寄り添い、時代を反映していくことが重要だと考えています。時代に必要とされない企業は、生き残ることができないからです。そのなかで当社は、世の中の変化を追いかけるのではなく、誰よりも先に世の中を変えていくイノベーターでありたい。新しい価値を創り続けることで、時代を切り開く存在でありたいと思っています。その思いは、これからも変わることはありません。
AIの進化や5Gの整備など、今後さらなるテクノロジーの進化により、社会全体が大きく変わっていくことは間違いないでしょう。一体どのような世の中になるのか、正直私にも見当がつきません。しかし、より便利な世の中になることで、ユーザーが体験できるサービスの幅が広がるのは確かです。そのなかでジンズにしかできない製品やサービスを届けていくことが、ますます重要になるでしょう。世の中に新たな価値を提供するためであれば、当社がメガネではないツールを使ったコンテンツを発信することだってあり得るかもしれません。
現在当社では、製品や店舗といったお客さまとのタッチポイントとなる「プロダクト」、顧客体験である「エクスペリエンス」、そしてこれまでのビジネスから得られた「データ」という3つの柱をつなげ、ビジネスを生み出すことに注力しています。
例えば、太陽光に含まれるバイオレットライトを使ったメガネ型医療機器の開発に着手。メガネの持つ視力補正の役割を超えて、近視の進行そのものを抑えるメガネを作ろうとしています。これは、メガネを売るという私たちのビジネスと大きく矛盾していると感じられるかもしれません。しかし、世の中が求めていることなのであれば、時に自己否定することも恐れません。
その他にも、最新の学術研究に裏付けられたセンシング技術で、人体のデータをリアルタイムに収集し、ドライブ中の眠気や集中度合いなど、自分のココロとカラダの状態が一目でわかる、メガネ型のウエアラブルデバイス『JINS MEME(ジンズ・ミーム)』を開発。さらに、2017年12月には、「世界で一番集中できる場所」を目指した会員制ワークスペース『Think Lab(シンクラボ)』をオープンさせています。また、16年から、AIがメガネの似合い度を判定してくれる『JINS BRAIN(ジンズ ブレイン)』というサービスを展開。これは、わざわざお店に行かなくても、メガネ選びを楽しめる新しい顧客体験を提供するものです。
さらに加速する時代に対応するために、今後はプロダクト、エクスペリエンス、データの3つの柱をシームレスに連携させて、他社では絶対につくることができない世界を創造していきたい。新しいプロダクトから新しい体験が生まれ、そこから得たデータを使って新しいサービスが生まれる、というように単独のサービスではなく、すべてがつながっていく新しいビジネスモデルを確立していきたいと考えています。
もちろん簡単なことではありませんが、何が正解かわからない不透明な時代には、経験したことのない場所に一歩踏み出す勇気が必要です。守りに入っていては、新しい価値など生み出すことはできませんから。
だからこそ社員には、既存の概念にとらわれることなく、自分自身の殻を打ち破ってほしいと常に伝えています。それは、学生に対しても同じこと。本気で挑戦し続ける人材であってほしいと思っています。「本気は自分への投資」です。常に60%の力で流している人と、何事にも120%の力で挑んでいる人とでは大きな差がつくものです。本気にならないと、仕事の面白さも、なかなか見えてきません。
条件で仕事を選ぶのではなく、好きなことに挑んでほしい。好きなことに本気で取り組めば、自分自身が大きく成長できるはずです。会社としても、挑戦を精いっぱい応援していきたいと思っています。