メーカー業界とは?モノづくりの流れと基本を解説
この章では、メーカー業界の定義や仕事の流れ、そして商社との違いといった基本的な構造を解説します。
メーカーの定義
メーカーとは、自社の工場や設備を用いて、製品の企画から開発、生産、そして顧客への販売までを一貫して手掛ける企業のことです。
つまり、自社で製品を企画・開発・生産・販売する企業です。
私たちが日常で使うスマートフォンや自動車、食品、化粧品など、身の回りにある多くの「モノ」はメーカーによって作られています。
メーカーの仕事の流れ
メーカーの仕事は、製品アイデアを形にし、顧客に届けるまでの一連のプロセスで成り立っています。この流れを理解することで、様々な職種の役割が見えてきます。
- 企画・マーケティング
市場のニーズやトレンドを調査し、「どんな製品を作るか」というプロジェクトの根幹を考えます。
- 研究・開発・設計
企画を基に、製品の具体的な仕様や性能、デザインなどを決め、試作品を何度も作って完成度を高めていきます。
- 調達・購買
製品に必要な原材料や部品を、品質・コスト・納期を考慮しながら国内外の取引先から仕入れます。
- 生産・製造・品質管理
工場で製品を量産します。ただ作るだけでなく、厳しい基準で品質をチェックし、安全な製品を安定供給する重要な役割です。
- 営業・販売促進
完成した製品を、個人や企業、店舗などに販売・提案します。製品の価値を顧客に伝え、市場に届ける最終ランナーです。
メーカーの仕組み
メーカーは、製造工程における役割によって、大きく4つに分類することができます。
素材メーカー【上流工程】 原材料から製品の基となる素材を製造。 |
→ |
部品メーカー【中流工程】 素材を加工し、製品の一部となる部品を製造。 |
→ |
加工メーカー【下流工程】 素材や部品を組み立て、最終製品を製造。 |
総合メーカー
素材から最終製品まで、複数の工程を自社で一貫して行う。
また、メーカー業界は、製品の販売相手が企業か一般消費者かによっても、BtoB(=Business to Business)型と、BtoC(=Business to Consumer)型の2種類に分類できます。
BtoC型の企業は、CMなどの広告を出している企業が多いです。
BtoB型の企業は、一般消費者にはなじみが少ないですが、高度な技術により特定分野で大きなシェアを持っている優良企業も多いです。
商社との違いは?ビジネスモデルで比較
メーカーが「モノを作る」プロであるのに対し、商社は「モノを動かす」プロです。
メーカーと商社は就活でよく比較されますが、ビジネスモデルが根本的に異なります。
メーカー | 商社 | |
---|---|---|
役割 | 製品の企画・開発・製造・販売 | 様々な商材のトレーディング(売買)や事業投資 |
主な機能 | モノづくり | 商流の構築、金融、物流、情報提供 |
収益源 | 製品の販売利益 | 手数料、売買差益、投資先の配当 |
魅力 | 自社製品への愛着、モノづくりの実感 | 幅広い業界との関わり、グローバルな活躍 |
自分の興味が「モノづくり」そのものにあるのか、それとも「モノを世界に広める」ことにあるのかを考えてみると、どちらが向いているか見えてくるでしょう。
メーカー業界の種類は?BtoB・BtoCメーカーの違い
メーカー業界は、顧客や扱う製品によって多種多様な企業が存在し、その分類を理解することが業界研究の第一歩です。
BtoBメーカーとBtoCメーカーの違い
メーカーは、顧客が「企業」か「一般消費者」かによって、BtoB(Business to Business)とBtoC(Business to Consumer)の2つに大別されます。
- BtoBメーカー: 企業を顧客とし、製品の部品や素材、生産設備などを製造・販売します。(例:自動車部品メーカー、化学素材メーカー)
- BtoCメーカー: 一般消費者を顧客とし、完成品を製造・販売します。(例:自動車メーカー、食品メーカー、化粧品メーカー)
知名度が高いのはBtoCメーカーですが、BtoBメーカーにも世界的なシェアを誇る優良企業が数多く存在します。
主要なメーカー7つの分類と代表的な企業
さらに、扱う製品によってメーカーは細かく分類されます。ここでは主要な7つの分野を見ていきましょう。
素材メーカー
あらゆる製品の元となる「素材」を作る業界。鉄鋼、化学、繊維、ガラス、紙パルプなど。
代表的な企業: 日本製鉄, 信越化学工業, 東レ
部品・電子部品メーカー
自動車や家電などに組み込まれる部品を作る業界。半導体や電子部品など。
代表的な企業: デンソー, 村田製作所, キーエンス
機械・電気機器メーカー
産業用機械や家電、OA機器などを作る業界。
代表的な企業: 三菱重工業, 日立製作所, ソニーグループ
輸送用機器メーカー
自動車やバイク、航空機、鉄道車両などを作る業界。
代表的な企業: トヨタ自動車, 本田技研工業, 川崎重工業
精密機器・医療機器メーカー
カメラや時計などの精密機器や、医療現場で使われる機器を作る業界。
代表的な企業: キヤノン, オリンパス, テルモ
食品・消費財メーカー
食料品や飲料、洗剤、文房具など、日常生活に身近な製品を作る業界。
代表的な企業: 味の素, サントリーホールディングス, 花王
医薬品・化粧品メーカー
医薬品や化粧品の研究開発・製造を行う業界。
代表的な企業: 武田薬品工業, 資生堂, コーセー
メーカーの仕事内容 文系・理系別の主な職種
メーカーには、文系・理系それぞれの専門性を活かせる多様な職種があり、自分の適性に合った仕事を見つけることができます。
文系学生が活躍できる職種
文系学生は、製品を顧客に届け、会社の経営を支える重要な役割を担います。
- 営業・マーケティング: 自社製品の魅力を顧客に伝え、販売に繋げます。市場調査や販売戦略の立案も行います。
- 企画(商品企画、経営企画): 新商品のアイデアを出したり、会社全体の事業戦略を考えたりします。
- 人事・総務・経理: 社員の採用や育成、働きやすい環境づくり、会社の資産管理など、組織の土台を支えます。
- 調達・購買: 製品に必要な質の良い原材料や部品を、最適な価格と納期で仕入れる仕事です。
理系学生が活躍できる職種
理系学生は、メーカーの核である「モノづくり」の技術的な部分を担います。
- 研究開発: 世の中にない新しい技術や素材を生み出す、未来の製品の種を作る仕事です。
- 設計・開発: 研究で得られた技術を基に、具体的な製品の設計図を作成し、形にしていきます。
- 生産技術・品質管理: 製品を効率的かつ安定的に量産するための生産ラインを構築・改善したり、製品の品質を保証したりします。
- 技術営業(セールスエンジニア): 技術的な専門知識を活かして、顧客に製品の導入支援や技術的な説明を行います。
メーカー業界に向いている人の特徴
メーカーで活躍するには、モノづくりへの情熱はもちろん、変化への柔軟性やチームで協力する姿勢など、多角的な素養が求められます。
製品に興味があり、学習意欲が高い人
メーカーは常に新しい技術や知識を習得する必要があります。製品に興味を持ち、常に学び続ける意欲のある人が向いています。
手先が器用で、真面目に取り組める人
製造業では、細かい作業や正確な作業が求められます。手先が器用で、真面目にコツコツと作業に取り組める人が向いています。
協調性があり、チームワークを重んじる人
多くのメーカーでは、部署やチームを越えて協力して仕事を進める必要があります。協調性があり、チームワークを大切にできる人が向いています。
モノづくりが好きで、集中力がある人
モノづくりに情熱を持ち、黙々と作業に取り組める人が向いています。また、集中力があり、小さなミスも許されない製造現場では、集中力を維持できる人が重宝されます。
変化を恐れず、柔軟に対応できる人
技術革新や市場ニーズの変化が激しいメーカー業界では、変化を柔軟に受け入れ、新しいやり方を試せる人が活躍できます。
コミュニケーション能力が高い人
営業職や研究開発職など、社内外とのコミュニケーションが頻繁に必要な職種では、高いコミュニケーション能力が求められます。
問題解決能力が高い人
顧客の課題を解決するために、分析力や提案力、実行力などが求められます。
体力と精神力がある人
製造業では、立ち仕事や体力を使う仕事も多いです。また、プレッシャーのかかる状況でも、冷静に判断し、集中力を維持できる精神力も必要です。
メーカー業界の将来性は?今後の動向と課題
メーカー業界は、DXやサステナビリティを軸とした変革期にあり、課題に立ち向かいながら新たな成長を目指しています。
メーカー業界の現状と今後の動向
日本の製造業は、国内総生産(GDP)の約2割を占める重要な産業です。(出典:経済産業省「2023年ものづくり白書」) 今後は、以下のキーワードが業界の動向を左右します。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進: AIやIoTを活用した生産性の向上、スマート工場の実現。
- グローバル化の加速: 海外市場への展開、グローバルなサプライチェーンの再構築。
- サステナビリティ(持続可能性)への対応: 環境に配慮した製品開発(SDGs)、脱炭素社会への貢献。
メーカー業界が抱える課題
一方で、メーカー業界は以下のような課題にも直面しています。
- 少子高齢化による人手不足・技術継承の問題
- 新興国メーカーとの国際競争の激化
- 地政学リスクや円安による原材料価格の高騰
これらの課題に対応し、新たな価値を創造できる企業・人材が、今後のメーカー業界をリードしていくことになります。
【type就活オリジナル】内定者の声から学ぶ!選考突破のヒント
後藤八郎さん(仮名)/ 東京大学・理系学部
日系大手メーカー・事務職 内定
▼選考準備で工夫したこと
- 自己分析(大学3年6月~):大学のキャリアセンターに相談し、専門書やワークシートを使って客観的に自分の強み・弱みを分析しました。
- 業界・企業研究(大学3年7月~):Webサイトでの情報収集に加え、説明会に積極的に参加し、企業のビジョンや社風など、一次情報に触れることを重視しました。
- 面接対策:企業分析を徹底的に行い、聞かれそうな質問を想定して回答を準備することに注力しました。
▼参加をしてよかった就活イベント
・合同説明会(オンライン)
・企業が開催する個別セミナー
・少人数座談会
・インターン
・大学別セミナー
・選考対策(就活サイトが主催しているもの)
\ピックアップ/
少人数座談会では、大人数の説明会では聞けないことや、少人数だからこそ踏み込んだ質問ができる機会がありました。 そのため、企業への理解が深まり、有意義な時間だったと感じています。
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根本祐介さん(仮名)/ 京都大学 ・理系学部
日系大手メーカー・技術職 内定
▼就活・選考準備で工夫したこと
- 企業研究・業界研究(大学院1年6月~):合同説明会に参加して企業の雰囲気を学ぶところから始めました。
合同説明会に参加することで、他の就活生やさまざまな企業の雰囲気を知ることができました。企業選びの軸として職場環境や同期の雰囲気が気になる人にはおすすめのイベントです。 - 自己分析(大学院1年8月~):Webサイトでの情報収集に加え、説明会に積極的に参加し、企業のビジョンや社風など、一次情報に触れることを重視しました。
- GD/面接練習(大学院1年6月~):企業分析を徹底的に行い、聞かれそうな質問を想定して回答を準備することに注力しました。
▼参加をしてよかった就活イベント
・合同説明会(オンライン)
・企業が開催する個別セミナー
・少人数座談会
・インターン
・OBOG訪問イベント
・選考対策(就活サイトが主催しているもの)
\ピックアップ/
複数の選考フローを経るインターンへの参加は、参加学生の雰囲気から将来の同僚の雰囲気がわかり、自身の将来像が想像できる良い機会となりました。
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メーカー業界のまとめ
本記事では、メーカー業界の全体像から仕事内容、将来性までを網羅的に解説しました。
- ✅ メーカーとは:製品の企画から販売までを一貫して手掛ける企業
- ✅ メーカーの種類:BtoB/BtoC、素材/部品/機械/食品など多岐にわたる
- ✅ メーカーの仕事:文系・理系ともに活躍できる多様な職種がある
- ✅ メーカーの将来性:DXやグローバル化を軸に変革期を迎えている
メーカーは、日本の産業を支え、世界中の人々の生活を豊かにする、非常にやりがいの大きい業界です。この記事を参考に、ぜひあなたに合った企業を見つけ、内定を勝ち取ってください。
メーカー業界に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 文系でもメーカーに就職できますか?
A1. はい、全く問題ありません。メーカーには営業、マーケティング、企画、人事、経理、調達など、文系学生が専門性を活かせる職種が数多くあります。製品を顧客に届け、会社の経営を支える上で、文系人材の力は不可欠です。
Q2. メーカーと商社ではどちらがおすすめですか?
A2. 一概にどちらが良いとは言えません。自社製品に深く関わり、モノづくりを実感したいならメーカー、幅広い商材を扱い、世界を舞台にビジネスを動かしたいなら商社が向いているでしょう。両方の業界を研究し、自分の興味や価値観に合う方を選ぶことが大切です。
Q3. 大手メーカーと中小メーカーの違いは何ですか?
A3. 大手メーカーは、安定した経営基盤や充実した福利厚生、大規模なプロジェクトに携われる点が魅力です。一方、中小メーカーは、若いうちから裁量権の大きい仕事を任されたり、特定の分野で世界トップの技術力(ニッチトップ)を持っていたりする企業も多く、専門性を高めやすい環境であると言えます。
Q4. 食品メーカーの業界研究で特に見るべきポイントは?
A4. 食品メーカーを研究する際は、以下の3点に注目すると良いでしょう。
- 事業領域: 冷凍食品、菓子、飲料、調味料など、その企業がどの分野に強みを持っているか。
- ブランド力: 消費者に広く認知されているヒット商品やロングセラー商品。
- 販売チャネル: 主な販売先がスーパー、コンビニ、飲食店、海外のどれか。