2026/10/30 更新 「選ばれる準備」より「生き抜く装備」を

AIと一緒に「指示待ち」になってどうする 「これやろうぜ」と言える人間であれ

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変化を味方につけてきた先駆者5人が出す答え

「選ばれる準備」より「生き抜く装備」を

AIが人間の能力を代替し、昨日までの正解が瞬く間に塗り替えられる時代。これから社会に出る学生に必要なのは、特定の企業や仕事でしか通用しないスキルではない。環境がどれほど変わっても、自ら考え、選び、自分の足で歩き続けるための「生き抜く装備」だ。激動の時代を切り開き、代わりの利かない価値を証明し続けてきたビジネスリーダーたちに、変化に翻弄されず、自らのキャリアの手綱を握り続けるための備えを聞いた。

川邊 健太郎氏のプロフィール画像

前LINEヤフー代表取締役会長

川邊 健太郎 氏

1974年生まれ。青山学院大学在学中の95年に起業。2000年、ヤフー株式会社に入社し、18年に代表取締役社長CEOに就任。23年よりLINEヤフー株式会社代表取締役会長を務める。26年6月の退任後は、AIソロプレナーとして新たな挑戦を開始

AIと一緒に「指示待ち」になってどうする
「これやろうぜ」と言える人間であれ

今、社会人になろうとしている人なら、AIを使うのはもう大前提でしょうね。会社に入れば、いろいろな業務を教わると思います。でも、教わったやり方をそのまま覚えるのではなく、「この仕事を自分ならAIを使ってどうやるか」という前提に立った方がいい。もし「AIを使ってはいけない」という会社なら、理由にもよりますが、転職を考えてもいいくらいだと思います。

ただ、AIを使えればいいわけではありません。AIは、言ってみれば究極の「指示待ち」なんですよ。こちらが指示すれば、ものすごいスピードで実行してくれるけれど、自分から「これをやりたい」とは言わない。一方、人間にも指示待ちの人はいますよね。指示待ち人間と指示待ちAIが向き合っていても、何も始まりません。だからこれから大事なのは、「これやろうぜ」とAIに言える人になること。そのために必要なのが、好奇心と意思だと思います。何にでも興味を持ち、「これ面白そう」「こんなことをやってみたい」と思ったらやってみる。AIはそれをどんどん実行してくれるので、「やりたいこと」が次々に浮かぶ人ほど、この時代には合っていると思います。

AIを使えば、好奇心や意思の重要性はすぐに分かります。やりたいことがなければ、プロンプトの最初の一行が出てこない。「こうしたい」がなければ、どれだけ優秀なAIが目の前にあっても始まらないんです。

僕自身、30年間インターネット産業に携わってきました。以前はサービスをつくりたいと思ったら、優秀なエンジニアを採用し、チームをマネジメントしてかたちにするしかなかった。でも今は、バイブコーディングで、着想さえあれば実装まで一人でできるようになりつつあります。

衝撃を受けたのは、2025年11月ごろ。あるベンチャーの合宿で、若い経営者が複数のAIエージェントを使ってバイブコーディングする姿を見た時です。僕たちがリアルな組織でやっていたことが、画面の中だけで進んでいました。

何より驚いたのはスピードです。僕が立ち上げた自社ホームページも、バイブコーディングで30分ほどで作りました。人間同士でやり取りしていたら、軽く1カ月はかかったでしょう。これほど何でもできるものが手元に来れば、自分はどう変わるべきかと考えざるを得ません。だからAIを怖がっている人ほど、まず使ってみてほしい。ただ調べ物や資料作成をさせるのではなく、バイブコーディングで実際に使えるソフトウエアを一つ作ってみる。「こんなことまでできるんだ」と体感すれば、見える世界が変わるはずです。

AI時代はもっと「エモく」なれ
人間ドリブンで発想しよう

そしてAI時代だからこそ、もっと人間らしくなることも大切です。この30年間、人間は合理的に考え、正解を効率よく出そうと、ずいぶん機械っぽく仕事をしてきました。でも、それを人間よりはるかにうまくできる機械が登場したんだから、そちらへ行ってもしょうがないですよね。

だから僕は、もっと「エモく」なった方が良いと思うんです。ビジネス用語で言えば「共感力」や「コミュニケーション力」でしょうが、もっとプリミティブに喜怒哀楽をはっきりさせればいい。

僕はハロー!プロジェクトの推し活をしているんですが、ファンの人たちと食事をした時、一人ずつ推しや好きになった経緯を聞いていたら、仕切り方が仕事みたいだったんでしょうね。「会議っぽいから、もっと『ヒュー!』とか言いませんか?」と言われたんです(笑)。確かにコンサートでは「ヒュー!」って言うわけで、なかなかいいことを言うなと思いました。

仕事でも同じで、頭だけではなく、感情や五感、身体を総動員する方向に行った方がいい。頭脳だけで、ましてや正解を探す勝負をしたら、AIには大敗しますから。

僕が好きな話に、ポカリスエットの開発エピソードがあります。研究室では糖質濃度の濃い試作品の方が好評だったのに、研究員たちが山に登って汗をかいた後に飲み比べると今度は薄い方が「飲みやすい」と評価されたそう。頭だけで考えているときと、実際に身体を動かして感じるときとでは、出てくる答えが違う。「会議中にヒューと言いましょう」と「山に登った後に飲みましょう」は、僕の中ではほとんど同じ話なんです。

データを見て合理的に判断するなら、AIの方が圧倒的に強い。だからこそ人間は、実際に動いて、見て、聞いて、触れて、感情を動かす。そうすれば発想そのものが人間ドリブンになっていくと思います。学生の皆さんには、自分が関心を持ったことを、とことん突き詰めてほしいですね。

正解を探すより、「面白い」「もっと知りたい」「やってみたい」と思えることの方が、これからはずっと大事です。AIと一緒に指示を待たず、自分から「これやろうぜ」と言う。もっと夢中になって、人間らしく振る舞えばいい。仕事や人生を動かし始めるのは、最後は人間の側です。

AI に勝とうとしなくていい
喜怒哀楽出して「ヒュー!」と言おう

川邊 健太郎氏

もし私が28卒の学生だったら

もし僕が今、28卒の学生だったら、自分が夢中になっていることをやると思います。今は僕が若かったインターネット黎明期より、はるかに起業しやすい時代ですから、おそらく自然と起業するでしょうね。もし「AI駆動型企業」と呼べる会社があれば、そこに入るのも面白い。「AI駆動型企業とは一体どんなものなんだろう」と、自分で体験してみたいです。ただ、今はまだ本当の意味でそう呼べる企業はあまりないと思います。だったら、自分でそういう組織をつくろうとするんじゃないでしょうか。

大事なのは、就職するか起業するかという形式そのものではなく、自分が夢中になれるものに飛び込むこと。

AIは、やりたいことを実現するハードルをものすごい勢いで下げています。だからこそ「どこに入れば正解か」を探すより、自分が何に関心を持ち、何をやってみたいのかを突き詰める。「やりたい」を起点に、自分から仕事をつくっていくと思います。

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