630万部もの発行部数を誇る朝日新聞。その中核を担うのが、記者部門、新聞の普及・拡大の要となるビジネス部門、そしてICTの力を駆使して情報発信を支える技術部門だ。現在、開発部で活躍する勘澤綾さんは、同社の技術部門のインターンシップが、その後の選択を決定づけたと語る。
「私が当社のインターンシップに応募したのは、漠然とマスコミという業界に興味を抱いていたものの、技術職が実際にどのようなことをするのか、まったくイメージがつかなかったからです」
当時、新聞社の仕事=記者のイメージを持っていた勘澤さんは、必ずしも技術的な職種に就きたいと思っていたわけではなかった。
「取材から印刷まで、新聞ができる工程を見学する中で、実にさまざまな技術が使われていることを知りました。システムの革新こそが新聞社の生命線となっていることに気づかされたんです」
アナログに思われがちな新聞業界において、革新的な社風を持ち、新たな技術の導入にも積極的な朝日新聞社。近年では、優れた技術を持つベンチャー企業と協力し新サービスを開発する『メディアラボ』を立ち上げ、新聞紙面にスマートフォンをかざすと動画に誘導されるアプリ『朝日コネクト』などユニークなサービスを展開する。
「ICTの活用に注力している朝日新聞であれば、理系のバックグラウンドを最大限活かしながら、報道に関われると感じました」
技術部門で働きたいという勘澤さんの気持ちを後押ししたのは、現場社員のある言葉だった。
「インターネットが普及した今、報道の真価が問われるのが、正しい情報をより早く届けること。災害現場や世界各地のオリンピック会場など、通信が不安定な場所からでも情報が迅速に届く仕組みを作っているのが技術です。『技術者は、記者を支える裏方ではない。社内の全ての人間が、ジャーナリストだと思って仕事をしている』というインターンシップ講師の言葉が非常に印象的でした」
現在、『朝日新聞デジタル』の基盤となる会員管理システムやECサイトの開発など、多方面でキャリアを積む勘澤さん。彼女にとって、その言葉は今でも原点となっているという。
「日頃から心掛けているのは、技術職だからといって自分の役割を制限しないこと。読者・ユーザー目線でより良いサービスを考え、共有し、今後の情報発信の仕方について議論を交わす毎日です」
また、インターンシップを通じて、新聞を取り巻くさまざまな部門を把握できたことは、現在でも役立っているという。
「技術部門は、他部門との連携が欠かせません。だからこそ、全体を俯瞰できたことは大きな学びになりました。振り返ると、インターンシップは私にとって大きなきっかけになったと、改めて感じています」