世界175カ国以上に展開し、最先端のテクノロジーを駆使して世界を変革し続けてきたIBM。誰もが知るこの世界的大企業の日本法人で、組織変革などの戦略コンサルティングを手掛けているのが國生恭子さんだ。
「海外案件や人工知能を使った事業企画案件を担当して、お客さまと一緒に新しい価値を生み出す仕事をしています。このような仕事に携われるなんて、入社当時は思ってもいませんでした」
新卒で大手IT企業に入社後、転職を経てIBMのコンサルティング部門に入った國生さん。最初のプロジェクトで、自分の仕事観を揺るがす一言に出会ったという。
「先輩に何か聞かれた時、深く考えずに、それはプロジェクトのスコープ(契約範囲)外ですと答えました。すると『計画した作業を全部こなしても、プロジェクトの目的が達成できないと意味がない。お客さまの成功を判断基準に考えなさい』と言われたのです」
作業を完璧に遂行するのが仕事だと思っていたが、ここではどうも違うらしいと気がついた。
「同じ頃、上司に『正解があると思っていないか?』と問われたのも印象に残っています。正解を教えてもらって、その通りにやりたいという気持ちを見透かされていたんですね。『俺たちも、考えながらやっているんだよ』と言われて、そうなのかと驚きました」
答えを知っているのではなく、考えてたどり着く。場合によっては計画の修正や追加の作業も提案する。考え、行き詰まり、先輩たちに相談し、また考える。繰り返すうちに、“正解がない”ことの意味が徐々に分かってきたという。
「確かに100%確実な方法などはない。それでも、お客さまが意思決定できるだけの材料をそろえ、自信を持って進めていただけるよう支援するのが私の仕事です。論理的な整理はもちろん、社員や組織の感情も踏まえて多角的に検討し、『今、考えうるベストな解だ』と信じていただけるまで何度も議論を重ね、手を尽くします」
そんな姿勢が評価され、依頼される内容の幅も広がった。通常であれば、制度設計や企画立案までの仕事でも、國生さんの場合、作ったものを社員に伝え、浸透させるまでの支援を依頼されることが多いという。
「『誰よりも中身を分かってくれているから、一番大変なところを一緒にやりたい』という信頼があってこそのありがたいご依頼です。しかし、社員の気持ちや組織風土はお客さまの方がずっとよくご存知。その中で、常に自分の存在価値を考えて動き続けています」
クライアントに同行して海外拠点を説得して回ったり、ビジョンを物語にして演じたり、時には経営陣と一緒に社員の前で、厳しい質問に答えたりすることもある。
「ともに困難を乗り越えた結果、〝仲間〟として本音を打ち明けていただいたり、『信じているから頼むよ』と言っていただけたりする時は、喜びを感じると同時に、もっと役に立ちたいという思いが湧いてきます」
クライアントに必要とされる存在を目指して、徹底して尽くすというスタイルは、IBMだからこそ可能だと國生さんは語る。
「IBMには社員同士が協力し合う文化があります。自分の周囲に知見がない分野でも、世界のどこかに専門家がいて、声をかければ快く助けてくれます。仲間の力を借りることで、自分の限界を超えてご支援の幅を広げることができ、気がついたら自分ができることの幅も広がっているんです」
心から楽しそうに語る國生さんは、今日も、誰よりもクライアントのことを考え続けている。
PROFILE
こくしょう・きょうこ/東京大学で社会学を専攻。卒業後、大手IT企業勤務を経て2008年に日本IBMへ入社。専門は人事制度設計、組織変革、人材育成、企業理念浸透、社内ナレッジ活用、グローバルプロジェクト管理など。多角的な視点から課題をとらえ、顧客の変革を支援するコンサルタントとして活躍を続けている