2018/8/9 更新 挑戦者たちの人生論

【堀江裕介氏の人生論】誰と何をやるべきかを明確に持ち、常に夢中になっていたい

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挑戦者たちの人生論~仕事がくれた、彩り豊かな景色の数々~
目まぐるしく社会環境が変わっていく中、固定観念や常識に縛られ、安定を追い求めていては、これからの時代を生き抜くことなど到底できない。常に新たな挑戦を続ける者だけが、しなやかに力強く、自分らしい人生を手にすることができるのだ。トップビジネスパーソンたちの挑戦の歴史を振り返りながら、真に豊かな人生とは何かを考えてみたい。

dely株式会社
代表取締役/CEO
堀江裕介氏

ほりえ・ゆうすけ/1992年生まれ。2014年4月、慶應義塾大学在学中にdelyを創業。フードデリバリーのビジネスをスタートさせたが翌年サービスを停止。キュレーションメディア『クラシル』を立ち上げ、その運営事業へ転換した。16年にコンテンツを料理のレシピ動画に特化すると一気にブレーク。月間の動画再生数が1億回を超え、約250万人のファンを持つ国内最大級のレシピ動画サービスとなった。17年3月には約30億円の第三者割当増資を実施。さらなる事業の成長が期待されている

震災当時、学生だった僕は自分の無力さを痛感した

起業しようと思ったきっかけは東日本大震災でした。震災を受けて何か自分にできることはないかと考えたのですが、当時大学生だった僕には何もできなかった。それで自分の無力さを痛感していたんです。

そんな中、ソフトバンクの孫正義さんが復興のために100億円ものお金を寄付されたことを知り、「自分もいつか孫さんのように、社会に影響を与えられる存在になりたい」と思ったのを鮮明に覚えています。それからインターンなどを経験し、ある程度「自分でやっていける」という自信を得たところで早々にdelyを設立したんです。

当初のビジネスはインターネットを活用したフードデリバリー事業でした。日本の物流産業を変えていきたいという志を持ってスタートした事業でしたが、経営者としての僕の手腕が未熟だったということもあり、結果は失敗でした。

もし今のように大量の資金とリソースを投じて再チャレンジすれば成功できるという気持ちもあるのですが、とにかく当時は撤退するしかなかった。それからすぐに『クラシル』というキュレーションメディアの事業にシフトしたわけですが、「まずは会社としての規模を成立させて、それから自分のやりたいこと、やるべき事業というのを考えよう」という心境からでした。

とはいえ「日本の物流を変える」という思いから集った仲間たちは、全く異なる事業を開始したdelyからどんどん去っていきました。

『クラシル』についても、とりあえず経営の黒字化には成功したものの、その後爆発的にブレークする予感はなく、再び僕は考えるようになりました。

社会的な意義を追いかけた最初の事業と、ビジネスとしての一定の成功を追いかけた2つ目の事業。この2つを両立できる何かを見つけなければ、と必死で考え、到達したのが今のメインサービスであるレシピ動画だったんです。

ビジネスに才能はいらない 努力すれば誰にでもできる

レシピ動画サービスがブレークしてから、「失敗をバネに成功した人」として扱われることが増えました。「大変だったでしょ?」と聞かれることも多いのですが、僕自身は大変だったという感覚はあまりないんです。それは、自分の努力は必ず成功につながると信じていたから。

実際に、動画の作成方法どころか料理の仕方も知らないところからスタートしたレシピ動画サービスでしたが、サンプル動画がSNS上でも話題になり、delyの事業を一気にシフトさせるまでになりました。正しい方向に努力すれば必ず報われる。それがビジネスの世界だと思うんです。

むしろビジネス以外の方が、努力は結果につながりにくいと感じています。僕は高校まで野球に没頭していましたが、高校野球で甲子園に出て優勝できる人なんて、何万分の1以下の確率ですし、「社会に対する影響力を持ちたい」と望んだ僕がもし政治の世界に挑戦していたとしても、努力だけではどうにもならなかったと思う。

でもビジネスは違います。「起業なんてハイリスクでしょ」と言う人が多いけれども、掲げたビジネスモデルが評価されれば、投資をしてもらえる環境が今ならばあります。その資金を使ってさらに自分のしたい挑戦ができる。

どれだけ売り手市場の就職戦線であっても、限られた人気企業に入れるのは一部の学生だけ。さらにその会社で出世して、自分のやりたいことにチャレンジできるようになるには、ものすごい倍率の競争に勝っていかなければいけない。僕からすれば大企業で自己確立を目指す人の方がチャレンジャーなんですよね。それはそれでカッコイイと思う半面、僕よりも賢い人たちが起業しないでくれている状況をラッキーだと喜んでもいるんです(笑)。

もちろん起業となれば泥臭いこともやらなければいけないし、人間として強くなければやっていけませんが、自分のしたかった挑戦をずっとし続けられている。起業を考えている方の中には「しっかり勉強してから独立します」という人もいるようですが、僕らは現場の最前線という戦場で、戦いながら否応なく学んでいます。それで十分に戦えることを肌で実感できているんです。

僕にとって、何かに夢中になれている人生こそ、最高の人生なんです。誰とどんな山に登るかが大事。今のように、とてつもなく高い志を持つ仲間が再び集まり、ビジネスを通じて共に学び、共に喜べている状態に何より幸せを感じています。経営を自分でやることばかりが挑戦だとは思いませんが、僕のように常に進んでいないと苦しくなってしまう人間にとって、起業は最高のチャレンジだと思いますよ。

※2017年11月1日発売のtype就活プレミアム・マガジンの情報を転載しています。記事内の情報は取材当時のものです。